陰陽五行戦記
初心者の為の、陰陽五行戦記の世界観講座
はじめに
このコーナーでは、本来小説の本編で徐々に明らかになっていく、この作品の世界観を、まとめて説明してしまう。
作者自身、ネタの出し惜しみをした結果、世界観の説明が終わるのが作品のかなり後半になってしまった事を反省しており、こういう企画が出来上がったわけである。
言うまでもないことだが、この小説のタイトル『陰陽五行戦記』にあるように、この作品は“陰陽五行説”が世界観の根底にある。
なにせ主役の5人のキャラクターからして“木火土金水”の五行に対応しているほどである。
ってなわけで、陰陽五行説やこのお話のキーワードでもある律令、そして魔王史観や5人が変身するメカニズムなどなど、薀蓄気味に語っていく。
ネタばれが嫌いな人や細かい世界観にこだわらない人は、特に読まなくても本編を楽しむ上では支障がない。
言うなれば作者の自己満足企画。それがこの世界観説明コーナーなのだ。
では、ミッションを開始する。
鬼や天狗などの妖怪や怨霊が存在し、陰陽師は呪文を唱えれば色々凄いことが出来、主人公は変身すると鎧兜で武装され、スーパーヒーローや格闘ゲームのキャラのように非常識なほどに強くなって戦う。
これが、この作品の世界観である。世界観のジャンルを大まかに言えば『剣と魔法の和風ファンタジー』
「万物には必ず陰と陽、相反する二つの状態がある。能動的・攻撃的・昂進的状態に傾いているものが“陽”、受動的・防衛的・沈静的状態に傾いているものを“陰”と呼ぶ。そしてその陰陽に、五行、つまり「木・火・土・金・水」の五つで森羅万象を範疇化する概念を取り入れたものが『陰陽五行説』だ」(本編11話より安倍晴明のセリフ)
言うなれば陰陽五行説は世界のあり方を定義する理論体系であり、万物を5つにカテゴライズする。
主役5人の五行の配当は以下の通り。
| 伊達春樹 | 真田淳二 | 武田広奈 | 本多美亜子 | 直江輪 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 五行 | 木 | 火 | 土 | 金 | 水 |
| 五輪 | 風 | 火 | 地 | 空 | 水 |
| 五星 | 歳星(木星) | 螢惑(火星) | 填星(土星) | 太白(金星) | 辰星(水星) |
| 五色 | 青 | 赤 | 黄 | 白 | 黒 |
| 五方 | 東 | 南 | 中央 | 西 | 北 |
| 五神 | 青龍 | 朱雀 | 麒麟 | 白虎 | 玄武 |
| 五時 | 春 | 夏 | 土用 | 秋 | 冬 |
| 五常 | 仁 | 礼 | 信 | 義 | 智 |
| 五徳 | 温(おだやか) | 良(すぐれる、すなお) | 恭(慎み深い) | 倹(つづまやか、無駄のない) | 譲(ゆずる、他人を立てる) |
| 五声 | 呼(話す) | 笑 | 歌 | 哭(叫び) | 呻(うなる) |
| 五事 | 貌 | 視 | 思 | 言 | 聴 |
| 五臓 | 肝 | 心 | 脾 | 肺 | 腎 |
| 五味 | 酸 | 苦 | 甘 | 辛 | 鹹(しょっぱい) |
| 五音 | 角 | 徴 | 宮 | 商 | 羽 |
| 十干 | 甲・乙 | 丙・丁 | 戊・己 | 庚・辛 | 壬・癸 |
それぞれ木火土金水の関係を表したもの。
五行は互いに循環したり、対立したりするのだが、ゲームっぽく考えればじゃんけんのようにそれぞれの属性は有利な相手を苦手な相手がいることになる。
グーはチョキに勝ち、チョキはパーに勝ち、パーはグーに勝つが、それと似たようなもの。
「そして『五行相生』という考え方がある。すなわち“木から火が生じ、火から土が生じ、土から金が生じ、金から水が生じ、水から木が生じる”。これは五行の循環を表している。逆に五行の対立を表すのが『五行相克』であり、“木は土に克(か)ち、土は水に克ち、水は火に克ち、火は金に克ち、金は木に克つ”」(本編11話より安倍晴明のセリフ)
それに基づき、主役5人の属性に応じた五行相生と相克。
| 伊達春樹 | 真田淳二 | 武田広奈 | 本多美亜子 | 直江輪 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 五行 | 木 | 火 | 土 | 金 | 水 |
| 得意な相手 | 広奈(土) | 美亜子(金) | 輪(水) | 春樹(木) | 淳二(火) |
| 苦手な相手 | 美亜子(金) | 輪(水) | 春樹(木) | 淳二(火) | 広奈(土) |
| 良い影響を受ける相手 | 輪(水) | 春樹(木) | 淳二(火) | 広奈(土) | 美亜子(金) |
| 良い影響を与える相手 | 淳二(火) | 広奈(土) | 美亜子(金) | 輪(水) | 春樹(木) |
「普遍的な世界を司っている決まり事です。いわゆる物理法則もこれに当てはまります。ですから輪さんが石を持ち上げたいと思ったとしても、そうするには自分の体を使うしかありません。ですが、陰陽道や真言密教の術では“言葉”によってこの律令に干渉し、律令の仕組みそのものを自分に都合良く変えることによって、通常では有り得ない現象を引き起こしているのです」(本編15話より広奈のセリフ)
「コンピュータを例にとって説明しますが、律令とは言うなればウィンドウズなどのOS、つまり基本ソフトウェアに当たります。そのOSに従ってこの世界のありとあらゆる現象が起こっているのです。これはOSに対して個々のプログラムを想像して下さい。今わたくしはOSを通してそのプログラムの基本部分をちょっと書き換えたのです。そうすれば本来宙に浮かない石も、わたくしに向かって飛んでくるように出来るのですわ」(本編15話より広奈のセリフ)
広奈様のセリフでほとんど説明が完了しているような気がしないでもないが、要するに“律令”というのが、この世界観の根幹である。
RPGに詳しい人なら『マナに満ちた世界で“力ある言葉”を唱えて魔法を使う』というのと同じ概念だといえば分かりやすいだろうか。
律令は物理法則の上位に位置し、律令を変えることで世界のあり方を変化させることができる。
陰陽師が人型の紙に命を吹き込み“式神”を生み出せるのも、律令を変えているからである。
真言密教僧が真言を唱えることで驚異的な力を発揮できるのも、真言によって律令を変えて自らの力を増大させているから、となる。
この前提を踏まえれば、5人の主人公の変身や、彼らが使う必殺技の原理は分かったも同然だ。
さて、この小説では主役の5人が戦国武将の鎧兜を身にまとうことで、超人的な強さを発揮する。
物語的な固有名詞で言えば、彼ら『陰陽武道士』は『式神武戦具』を身にまとい、『五行妖術』を使いこなして戦う。
では、なぜこのようなことが可能なのか、検証する。
彼らの変身プロセスと、彼らが使う強力な五行妖術=必殺技についてその原理を説明しよう。
設定その1:長い年月を経た名品には魂が宿る
日本には古来よりこの考え方が根深い。
21世紀の現代でも、愛用した古い人形を捨てるとき、わざわざ供養したりする。
それが単なるモノではなく、人間と同じように魂が宿っていると考えるからである。
日本では付喪神(つくもがみ)と呼ばれる、妖怪の存在が信じられてきた。
たとえば手鏡なら『雲外鏡』、文章や手紙なら『文車妖妃』、雨傘は『から傘』や『骨傘』、琴は『琴古主』などなど。付喪神は多種多様である。
『陰陽五行戦記』では、主人公が纏う鎧兜は400年以上前の戦国時代のものであり、当然持ち主だった武将の魂が宿っている。
いわば、彼らの鎧は、それ自体が一個の付喪神、つまり妖怪と考えることができる。
それゆえ、不思議な力を発揮できるというわけだ。
また、妖怪なればこそ、生物と同じように自然治癒や能力の成長といったことも可能となっているのだ。
設定その2:特殊な力をもった武具が存在する。
徳川家に仇なす『妖刀村正』や退魔の太刀と呼ばれる『鬚切』『膝丸』。敵の矢が決して当たらない『避来矢(ひらいし)の鎧』など、日本には伝説に彩られたさまざまな武器や防具がある。
これらは特別な能力を秘めており、持ち主の力になってくれる。
多くの場合、それらの能力は、使い手の力量によってさらに効果が高くなったり、逆に低くなったりする。
主人公が纏う鎧兜も、もちろんこれらのような特殊な力を持っているという設定だ。
そして物語が進むにつれて、徐々に彼らが使える力が増えていく。
設定その3:梵字を書くことで能力UP
梵字とは梵語を書くために考案された文字で、梵語とは古代インドの文章語であるサンスクリットのこと。
日本には仏教を通じてもたらされた。そのため仏教の神様は梵字で表記される。
言葉によって律令を変化させるのと同じように、モノに梵字を書くことで律令を変えることも可能である。
これは西洋の魔術で言うところのルーン文字と似たような概念である。
『陰陽五行戦記』にも真言密教僧が登場し、彼らは梵字を唱えたり、自分の体に梵字を書いておくことにより、超人的な力を発揮している。
同様の呪術的処理が、実は主人公が纏う鎧兜にも施してある。
表面的には見えない部分に、実はびっしりと梵字が書いてあったりするという、設定なのだ。
これにより、常人の数倍の怪力を発揮したり、すばやく動けたり、防御力が高くなったりしている。
設定その4:律令を変えれば物体は消えたり現れたりする
これこそが、主人公の変身プロセスの原理である。
通常、つまり変身前にはデフォルトで律令は“消去モード”になっており、彼らの纏う鎧兜は存在していない。
しかし、変身セリフを唱えることで律令に干渉し、鎧兜が出現。勝手に彼らに装着されるのだ。
そしてそれまで彼らが着ていた服はどこかへ消え、変身を解くとまた現れるのはこのためである。
設定その5:五行に応じた律令への干渉
上記の設定に基づき、変身した状態の主人公はそれぞれ独自の必殺技(五行妖術)を持つ。
春樹なら木なので風と植物、淳二は火なので炎と光、広奈は土なので大地、美亜子は金なので剣気と空、輪は水なので冷気と氷。
これらはいずれも律令への干渉によって現出しているが、この“律令への干渉”が彼らの『式神武戦具』には最初から組み込まれていると考えられる。
つまり、変身したときにどんな必殺技=五行妖術が使えるのかは、最初から決まっているのだ。
そしてその五行妖術を繰り出す為に必要なのが、いわゆる決め台詞=律令へ干渉する為のコマンドワードである。
逆に言えば、この決め台詞を言わないと律令への干渉は起きず、五行妖術は出せないのだ。
毎度毎度技の名前を叫ぶ主人公たちの背景には、こういう事情がある。
(ちゃんと呪を唱えないと発動しないゆえ注意いたせ。えっとぉ技の名前は何がいいかのう…)(本編第一話より葛の葉姫のセリフ)
ファンタジー小説のお約束、それは主人公に立ちはだかる強大な敵である。
RPGのお約束といえば、もちろんラスボス。
『陰陽五行戦記』におけるラスボスが“魔王”である。
じゃあ、魔王って何? とお思いだろうが、詳しいことはここでは触れないでおく。
それこそ、ネタばれになってしまう(笑)
『1000年に渡り、この国の歴史の影に魔王がいた』というのが、このお話の世界観である。
その魔王史観についても本編ではたっぷり触れられており、それがこのお話を日本史ファンタジーたらしめているのだ。
つまり教科書で習う日本史とは一味違った歴史の見方をしているのが、作者的にはこのお話の目玉である。
当然歴史上の人物も今後たくさん登場してくる。
平安編では安倍晴明、平将門、平貞盛、藤原秀郷、源経基、源満仲、元三大師良源といった実在の人物たちが登場する。
もちろん、時代が進むにつれて登場人物も増え、ますます日本史ファンにはたまらない展開になる予定だ。
あとは本編を読め!
読み出せば知識となり、ネタが分かれば面白くなる。
迷わず読めよ、読めばわかるさ。
ありがと〜っ!!
…このように隙あらばネタを盛り込むのもこの作品の見所だ(多分)。心せよ。