投稿小説だぜ

火山十三さま作

『戦え! FANG GUNNERS!』外伝

天国なんて待たせておけ!

明日よりも友を選んだ男(+女一人)たち

第五話


◇明日に向かって撃て◇


◇1◇


「入りやす!(コロコロコロ)…さぁ、張った張った!」

『デスペラード』との戦いに勝利した『OK牧場の血統』の面々が控えテントに戻ると、そこで異様な光景が繰り広げられていた。

「…これは悪い冗談か?」

と、思わず呟いてしまったのは、『OK牧場の血統』リーダーのワイアット・アープ五世(以下、ワイアット)である。

流れるブラウンの髪に、鷹の目を思わせる鋭いスカイブルーの瞳を持つ長身の男。彼こそ、アメリカフロンティア時代伝説の保安官、ワイアット・アープの子孫である。

性格は冷静沈着、それでいてドライ。一見、冷たい印象を与えるが、その半面、真面目で几帳面、そして友人想い、家族想いと言った一面も持っている。

彼は3年前に日本に留学してきた留学生で、現在、栃木県日光市にある私立ワイルド・ウエスト高校に通う高校3年生である。

彼が驚いたのも当然である。彼の目の前で、今まさに丁半博打が行われているのだ。

「丁!」

「半!」

控えテントの中は、任侠集団「清水一家」のにわか作りの賭場と化していた。

「清水一家」は東海から関東一帯にかけて勢力を誇る大任侠集団である。初代親分はかの有名な大任侠、清水次郎長(しみずのじろちょう)で、現親分清水謙次郎(しみず けんじろう 以下、謙次郎)は初代次郎長から数えて4代目、曾孫に当たる。

なぜ、このような裏社会の者と『OK牧場の血統』が関わっているかと言うと、「清水一家」若頭、つまり謙次郎の跡取りである孫の五代目清水次郎長こと清水哲雄(しみず てつお 以下、哲雄)がワイアット達と国籍を超えた厚い友情で結ばれているからである。

哲雄は、生まれも育ちも東京浅草。中背だが柔道家を思わせるがっちりとした体躯を持ち、髪は短く角刈りにしている。

性格も江戸っ子をそのまま絵にしたような、明るく豪快で義理人情に厚く、喧嘩っ早くて涙もろい。座右の銘は「火事と喧嘩は江戸の華」。

ワイアット達とは去年の浅草三社祭で知り合い、それ以来交流を深めてきた。「祭り」と言うものは、言葉では言い表せない独特な雰囲気を持っており、名も出自も知らぬもの同士でも一つの神輿を一緒に担ぐことで一瞬にして「仲間」となれるのである。保安官の子孫とアウトローの子孫、一見相容れない者同士が「仲間」となれるのも「祭り」と言う特殊な環境のなせる業なのかもしれない。

ちなみに哲雄自身は、盆胡座から少し離れた後ろから子分たちが楽しむ様子を見ている。

「丁半そろいやした!…四・一の半!」

中盆に座り、壺を振っているのは哲雄の許婚であるお蝶(おてふ、と発音する)。

本名を江尻帰蝶(えじり きちょう)と言い、年齢は16歳。哲雄と同じ東京にある私立北洋高校に通う高校1年生である。顔立ちはなかなかの美少女で、可愛いというよりはカッコイイという印象である。少し長めの髪は後ろでひねってまとめている。

豪快で男勝り、自由奔放で明朗活発、粋でおきゃんなチャキチャキの江戸っ娘。「清水一家」の若衆からも「お嬢」と呼ばれ、慕われている。

「だぁ〜!ちくしょ〜!また負けちまった〜!」

「俺もだぎゃ〜!」

と、細身の男と尾張弁の大男が同時に叫んだ。

細身の男の名は、大瀬半五郎(おおせ はんごろう)。ツッコミ担当。

性格は真面目で几帳面。父親は東京八王子署に所属する警察官。銃を使わせれば一家一であるが、根が真面目なためか、博打はとことん弱い。鬼吉(おにきち)とは気が合う。

その鬼吉と言うは、尾張弁の大男のことである。名前を桶屋吉五郎(おけや きちごろう)と言い、通称が鬼吉である。ボケ担当。

性格は素朴で純情。どこに行くにも尾張弁丸出しである。体の大きさは大政、相撲常(すもう つね)についで大きく、大の大人を片手で持ち上げることの出来る怪力の持ち主である。根が純情なためか、博打は弱い。鬼吉も半五郎と気が合う。

「…そういやぁ、さっきから小政の野郎、ずいぶんと勝ってるとは思わねぇけぃ?」

と、半五郎が鬼吉に聞いた。

「ああ、ほりゃー俺も思っておった」

と、鬼吉もいつもの尾張弁で答える。

「ちょいと聞ぃてみっか?」

そう言うと半五郎は小政の席へと歩み寄っていった。

小政(こまさ)は「清水一家」若衆のリーダー格である大政(おおまさ)の実弟で、2メートルを超す兄と対照的に、身長は150センチほどしかない。居合い抜きの達人。

性格はクールだが気が短く、ちょっとしたことで長ドスを抜こうとする。そんな小政であるが、和菓子屋の娘に惚れて甘いものが苦手にもかかわらず、毎日足しげく通っている。当の娘はと言うと、いつも恐い仏頂面の小政が毎日羊羹を買いに来るので、正直ビビッている。

「おう、小政、おめぇさっきから随分とついてるようじゃねぇか?」

と、半五郎は小政の隣にどかりと座り込むと小政に聞いた。

小政は一瞬、半五郎に視線を移すとすぐに盆へと戻し言った。

「…俺はおめぇらが賭ける方と逆に賭けてるだけだよ」

「「な、な、な、なんだとー!?」」

小政の答えに半五郎、鬼吉の二人は同時に叫んだ。

「てめぇー!さっきからそんなことやってたんけぃ!」

「そうだぎゃー!俺たちを出汁に使いやがって!」

二人は自分達が弱いことを棚に上げて小政に食って掛かる。

「っるせぇー!てめぇらが弱ぇのが悪ぃんだろうが!グダグダ言ってるとぶった斬るぞ!」

売り言葉に買い言葉、気の短い小政もぶち切れ、長ドスに手を掛ける。

「おうおう!やれるもんならやって見やがれ!このスットコドッコイが!」

半五郎も啖呵を切る。だがその時、それまで沈黙を守っていた哲雄が切れた。

「…てめぇらー!いい加減にしやがれー!」

哲雄の雷に、三人はシュンとまるで飼い主に怒られた犬のように身を丸くした。

「すまねぇ、ワイアット。子分共が迷惑掛けちまって…ほら!てめぇらも謝れ!」

と、哲雄はワイアットに詫びを入れると小政達も「すんません…」と頭を下げた。

「…今度から喧嘩は外でやってください」

ワイアットは強面三人組に頭を下げられ、一瞬引いたが気を取り直して三人に忠告する。

「ほんとよね〜。でも、ギャンブルならいつでもいいわよ♪」

と、ワイアットの後ろから金髪美女がウィンクを三人に投げかけならが言った。

この金髪美女は“ドク”・ケイト・ホリディ(以下、ドク)。ワイアット・アープの親友として知られているギャンブラーにして早撃ちガンマン、ドク・ホリディの子孫で彼女は五代目に当たる。まばゆいほどのブロンドの髪を持ち、薄茶色の瞳を持つ。180センチに達しようとする長身をもち、モデル並のプロポーションと美貌を持つ。

しかし、その容姿に反して性格は皮肉屋で毒舌家、喧嘩っ早くおまけにギャンブルが大好きと言うじゃじゃ馬娘である。

ドクの言葉に、哲雄のみならず、若衆一同が顔を青くした。ドクは以前、「清水一家」の賭場に遊びに行ったとき、一夜で高級外車一台分が買えるほど勝った事があるのだ。その時、「清水一家」大親分の謙次郎に「頼むから、おめぇさんはもう賭場にはこねぇでくれ」とまで言われたほどである。

「ま、まぁいいじゃないか。喧嘩の一つや二つ、ね、ねぇ?」

と、「清水一家」の苦境(?)に助け舟を入れたのはバット・マスターソン五世(以下、バット)。

正式な名はバーソロミュー・マスターソン五世。アメリカフロンティア時代、ダッジ・シティの保安官にして政治家であったバット・マスターソンの子孫である。180センチの長身に引き締まった体躯、黒に近いダークブラウンの瞳を持つ。温和そうな顔立ちで、年の割に落ち着いた雰囲気を持つ。

西部劇サバイバルゲームチーム『OK牧場の血統』の作戦参謀的な存在で、チームのまとめ役。温厚で常に他人を第一に考えて行動する人柄が、多くの人から慕われており、彼らの母校『私立ワイルドウエスト高校』では生徒会長をしている。

「ま、賑やかなのはいいこった」

「…俺は丁半博打よりポーカーのほうが好きだがな」

「おいらも丁に賭けてたんだけどな〜」

と、三者三様の感想を述べたのは“カーリー”・ビル・ブローシアス五世(以下、ビル)、ジョニー・リンゴ五世(以下、ジョニー)、アイク・クラントン五世(以下、アイク)の三人である。

ビルは、アメリカ最初のギャング団「カウボーイズ」の首領として名高い、映画「OK牧場の決闘」の悪役、アイク・クラントンをその配下におさめていた、カーリー・ビルの子孫。巻き毛が特徴的な黒い髪と同じく黒い瞳を持つ、長身で細身の体つきの男である。

気さくで明るい性格で、学校内でもかなり人気がある。また、彼は無類の子供好きで、休みの日などは公園で小さい子供のお守りをしたり、サッカーを教えたりしている。

しかし、いざサバイバルゲームとなると、その性格は一変。自分より弱い相手はいたぶってから倒すと言うかなりのサディストで、フリーズコールをされても油断させておいて騙まし討ちするというかなりの卑怯者である。

ジョニーは、西部一の早撃ちと恐れられたリンゴ・キッドこと、ジョニー・リンゴの子孫である。ブロンドの髪にグレーの瞳を持ち、長身でかなり美形なハンサムガイ。

クールでニヒル、絵に描いたような二枚目キャラであるが、性格は冷酷非情。サバイバルゲームでは、ビルと組んで、卑怯な策を弄するかなりの策士である。しかし、その美形ゆえ女の子からはモテモテのモテお君で、常に何人かの女の子をはべらせている。

また、彼は西部劇で良く見かける「ガン・スピン」が得意で、いつも取り巻きの女の子達に見せてはいちゃついている。

そのため、ドクなどからは良く皮肉られることもしばしばで、さらにサバイバルゲームでも敵を倒した後にガン・スピンなんかやるものだか始末が悪く、つい先ほど行われた2回戦ではその瞬間を狙撃されてしまった。

どん尻に控えるアイクは、その名も高き悪党、西部一の牛泥棒として、アープ兄弟、ドク・ホリディと血で血を洗う戦いを起こした張本人、アイク・クラントンの子孫である。実家の農場できたえた頑丈そうな長身でがっちりとした体が特徴である。

豪快で怒りっぽく単細胞な性格で、日本に来てからは「アメリカ版@ャイアン」と陰口を叩かれている。頭も決して良くは無く、学友達はなぜ日本に留学できたのか不思議がっている。

一説には、彼の父親が大農場を経営しており、その父親が裏で手を回したのではないかと言われているが、真相は定かではない。

だが、サバイバルゲームでは農場で鍛えた体が役に立ち、足を生かしてのアタッカーからディフェンダーまでをこなすマルチプレーヤーである。しかし、頭が悪いのは相変わらずで、ビルやジョニーに囮にされることもしばしば。

「ま、まぁいいじゃねぇか。それよりもほら、次の試合が始まるぜぃ。準備で急がしいだろう?俺らは観客席に行ってっからよ。ほんじゃまた後でな!」

哲雄はドクの言葉に想像以上に恐怖を感じたらしく、子分たちにさっさと盆を片付けさせると慌てて出て行った。

「あら、あたし変な事言ったかしら?」

と、ドクは首をかしげた。そんな様子を見ていたワイアット達は「自分が以前賭場で何をしたのか忘れたのか?」と言いたげであったが、呆れて物が言えなかった。



◇2◇


同時刻、環境破壊怪人は第二の刺客を放とうとしていた。

環境破壊怪人は日本を支配しようとする悪の魔王、クラーマの命により自然豊かな栃木県の自然環境を破壊しようと送り込まれた怪人である。

だが、環境破壊怪人の思惑はワイアット達『OK牧場の血統』に阻まれていた。ワイアット達はアメリカ西部の大自然の中で育ったため、自然をとても愛していた。そして、日本に来てからも栃木の四季折々の自然を愛し、その美しい自然を守ろうとする活動も行っているのだ。環境破壊怪人にとってはこの上なく目障りな存在であった。

一計を案じた環境破壊怪人はワイアット達が出場する全国高等学校サバイバルゲーム選手権大会を利用し、彼らを亡き者にしようと企てた。第二回戦の直前、ワイアット達に恨みを持つサバイバルゲームチーム『大栃木陸軍』を刺客として送り込み、ドクを誘拐し、ワイアット達『OK牧場の血統』を出場辞退に追い込み、あわよくば自ら手を下さずワイアット達を消そうと目論んだ。だが、その目論見はワイアット達の親友である哲雄達「清水一家」の前にもろくも崩れ去ったのである。

『…次こそはあのアメリカ人を亡き者にしなくては…』

環境破壊怪人はそう呟いた。

「フフフフ、だから私に頼むんでしょう?環境破壊怪人さん…ククククク」

と、環境破壊怪人の言葉に怪しく笑う男がいた。

肩にかかるほどの頭髪は白く、肌の色は死人のように青白い。その男は栃木県でも名の知れた名門校にして武闘派高校として知られている「私立戦国婆娑羅学園」の制服を着込んでいた。

『頼みましたよ、武智明秀(たけち あきひで)さん』

「クックククク…しかし、私が貴方方に協力する理由も忘れないでくださいよ」

『わかっています。魔王クラーマ様から授けられた力があれば、貴方の望みも達成できましょう。…では、健闘を祈っていますよ』

そう言うと環境破壊怪人は姿を消した。 武智と呼ばれた男は数刻の間その場に佇んでいたが、不意に笑い声を上げた。

「クーックククク、アーッハハハハ!信永(のぶなが)公、ああ、早く貴方が悶え、苦しみ、血を流す姿が見たい…フッフフフフ…」

武智は不気味な笑い声を上げながら環境破壊怪人のように姿を消した…。



◇3◇


全国高等学校サバイバルゲーム選手権大会栃木県予選の第三回戦は程なく開始された。この際三回戦の後、準々決勝、準決勝と続き、決勝戦となるのである。

ワイアット達『OK牧場の血統』は二回戦同様、第一試合である。

『ドラゴンゲートより、チーム「OK牧場の血統」の登場だー!』

司会者が『OK牧場の血統』の登場を宣言する。観客席から声援が跳ぶ。一回戦、二回戦の戦いぶりから徐々に『OK牧場の血統』のファンが増えてきたのだ。

ジャジャーン、ジャジャーン、ジャジャーン、ジャジャーン♪…

O.K. Corral…O.K. Corral…

最初の激しい音楽からカントリー調の小気味良い音楽へと代わっていく。そして、歌われる歌詞。これは西部劇映画の傑作として名高い、バート・ランカスター、カーク・ダグラスと言う二大俳優が競演した「OK牧場の決闘」の主題歌byフランキーレインである。

その歌に合わせ、ワイアット達は颯爽と登場、観客席の観衆の声援に手を振ってこたえた。

「ようやく、体力も回復したし、今度は殺って殺って殺りまくるわよ♪」

と、ドクが怪しく微笑む。

「ああ、この戦いはお前の好きなようにやっていいぞ」

ワイアットも完全復調したドクにそう答える。

ドクの長所は足の速さを生かした機動戦である。ワイアットはドクの長所を殺さないよう、逆に気持ちを高揚させるためドクの言葉を肯定したのである。

「う〜ん、おいらもそろそろ撃墜してぇな〜」

と、アイクが呟く。

「…なんでこの俺が、アイクと一緒で撃墜数0なんだ…」

アイクの呟きを聞いたジョニーもおわず呟く。

三回戦まで進んでいるがこの二人にはまだ一人も撃墜していない。

「焦るなよ、ジョニー、アイク。焦りは禁物だぞ」

と、ワイアットが二人に注意を入れる。

「わかってる。だが、試合では俺の好きなようにやらせてもらうぜ」

ジョニーはワイアットの注意を理解しつつも自分のプレースタイルを崩すことはないようだ。

「それはかまわないが、さっきのようなことは困るぞ」

と、ワイアットが言った。

ジョニーは先ほどの二回戦で対戦相手『デスペラード』のカロリーナに油断した挙句撃墜されてしまった例がある。

「俺だって同じ失敗を二度するほど馬鹿じゃあないぜ」

「…それならいいが」

ジョニーはそう言ってワイアットの懸念を一蹴した。

ワイアットもジョニーにそう言われると他に反論のしようがなく、一抹の不安を抱えつつもここは大人しく引き下がった。

『タイガーゲートより、チーム「戦国婆娑羅」の登場だー!』

ワイアット達の会話が終わるタイミングを見計らったように、司会者がワイアット達の対戦相手『戦国婆娑羅』の登場を宣言した。

♪咲かせた、吐息を盃に〜♪注ぎ、飲み乾すその先の、華に酔う〜♪

♪誰もに焼き付く夢の、屍は〜♪二度と下るつもりのない、熱のよう〜♪

そう、これは大人気歴史アクションゲーム「戦国婆娑羅」の主題歌「crosswise」byT.M.Revolutionである。

「戦国婆娑羅」は同じく人気歴史アクションゲームの「戦国武装」のいい意味でのデッドコピーと言われている。戦闘システムなどはまんま「戦国武装」なのであるが、硬派な「戦国武装」と違い、本編でのとんでもない馬鹿さ加減が「戦国武装」と大きく違うところである。

具体的に言うと、武多真玄(たけた しんげん)の侠気にべた惚れな真田虫雪村(さなだむし ゆきむら)、言葉の節々に英語を入れる暴走族な館正宗(たて まさむね)、戦国の中心で愛を叫ぶサンフランシスコ・ザビー、からくり機動兵器な本田勝忠(ほんだ かつただ)、等々プレイしていて「そりゃないだろ」と突っ込みどころ満載なゲームがこの「戦国婆娑羅」である。

♪駆り立てて、焦れ合えば、痛みもない〜♪明日だけが、この胸を騒が〜せる〜♪

♪想〜が〜瞬を駆け抜けて〜♪紅蓮〜の〜碑を描く♪研ぎ澄ま〜された生命(いのち)だけ♪その眸(め)に潜ませて〜♪

♪時空(とき)〜の〜露に〜消〜え〜る〜♪

歌が終わると同時に、『戦国婆娑羅』の面々が登場する。

『戦国婆娑羅』の面々はゲームに登場する武将のコスプレだ。大会の登録名までその武将の名に統一するなどコスプレもここまで来ると、なかなか堂にいっている。

彼らはステージに登場すると一人ひとり自己紹介を始めた。

「奥州筆頭、館正宗、推して参る!」

と、最初に自己紹介したのは三日月形の前立ての兜を被り、右目を眼帯で隠した青年である。腰にはゲームのキャラクター館正宗になりきり六本の刀をさしている。

「気をつけな。俺たちぁ、強えぜ…」

と、館正宗(以下、正宗)が獰猛な笑いを浮かべながら言った。

「ふっ、それは面白そうだ。強い相手とやりあえるのはこちらも願ったりだ」

ワイアットもそれに答える。正宗は「楽しみにしている」と言いたげにフッ、と一つ笑みを浮かべると一歩引き下がった。

正宗が一歩引き下がるのと同時に一歩前に出たのは全身赤い具足に身を固めた、二本の槍を手に持った青年である。

「某は真田虫昌雪(さなだむし まさゆき)が次男、真田虫源五郎雪村(さなだむし げんごろう ゆきむら)!お命頂戴仕る!」

真田虫雪村(以下、雪村)も完全にキャラクターになりきっている。

「そしてお館様の御ため、天下を取って見せまする〜!」

と、膝を地面につき、両手を天にかざしながら、いささかオーバーリアクションに叫ぶ。

「おお!その心意気じゃ、雪村ー!」

雪村の叫び声に、隣で控えていた高校生にしてはふけ顔で筋骨隆々の大男が答えた。

「お館様ー!」

雪村もそれに答える。

「雪村ー!」

「お館様ー!」

「ゆーきむらぁー!」

「おやかたさまぁ〜!」

「ゆぅぅぅきぃむぅぅらぁぁぁー!!」

「おぉぉやかたさばぁぁぁ〜!!」

と、いきなり二人で叫びあいを始めてしまった。

「…あのぉ、自己紹介していただけるんじゃ…」

と、バットが控えめに発言した。

「おお!これは失礼した。わしこそが甲斐の虎、武多真玄(たけた しんげん)じゃあ!」

雪村と叫びあいをしていたのは、武多真玄(以下、真玄)。

鬼の角のような巨大な角と獅子を思わせる真っ赤な鬣をつけた兜を被り、同じく真っ赤な虎柄の鎧を着込んでいる。そして小道具なのか、巨大な軍配の形をした斧を手にしている。

「オンベイシラマンダヤソワカ…我は毘沙門天が化身、下杉兼信(しもすぎ けんしん)!」

と、今度は女か男か分からない中世的な顔立ちの青年が名乗った。白一色の具足と同じく純白のおこそ頭巾がより性別の判断を難しくしている。

「栄枯盛衰…最後に滅ぶは貴方方ですよ」

「はん!言ってくれるじゃないの。男女さん」

下杉兼信(以下、兼信)の挑発に、ドクも言い返す。

「貴方は早撃ちが得意のようですね。フィールドで出逢ったら私と勝負しませんか?」

「いいわ、あたしに勝てると思うんだったらいつでも挑んできなさい」

と、兼信はドクに勝負を挑んだ。兼信は『戦国婆娑羅』で一番の早撃ちなのである。

「私は魔王が妻、農(のう)!」

次に自己紹介したのは『戦国婆娑羅』の紅一点、農姫(のうひめ)である。

紅葉柄が鮮やかな着物を着ているのであるが、胸や足をわざと肌蹴させ、非常に艶っぽい。

そして、彼の夫(?)と言うのが、最後に控えている男である。

「我こそは第六天より来たりし魔王、尾田信永(おだ のぶなが)ぞぉ!」

そう名乗った尾田信永(以下、信永)は明らかに他の五人とは違っていた。

殺気が体中から滲み出ている感じで、それは第二回戦直前にドクを誘拐した『大栃木陸軍』とはくらべ物にならないほどであった。南蛮風の甲冑に真紅のマントを纏ったその姿は、まさに魔王そのものであった。

「なんなのあいつ?殺気が今までの奴らとは比べ物にならない…」

「ああ、それは俺も思った。普通の奴らだったらこの殺気だけで射竦められるな」

ドクとワイアットは小声でそう話した。そう感じたのはワイアット達だけではないようで、バット、ビル、ジョニー、アイクの四人も背筋に冷たいものを感じていた。

「貴様らが死ぬに、相応しい場所よぉ…」

信永はその容姿、殺気にふさわしいおどろおどろしい声でワイアット達を挑発した。

「ふん、魔王だかサタンだかなんだかしらねぇが勝つのは俺たちだぜ!」

「そうだそうだ!魔王だろうがなんだろうがドンっと来いってんだ!」

と、ビルとアイクが言った。

「是非もなし。やってみよ」

信永は軽くそう言い放ち、他のメンバーと共に自軍の本陣へと歩いていった。

「なんなんだ奴は?たしかに、他のメンバーの殺気もすごかったが最後の奴の殺気はなんかこう…」

「邪悪…?」

「そう、そんな感じだ。それも一回戦で戦ったあの『大栃木陸軍』の殺気に似ている気がする。いや、それ以上かも…」

ワイアットとドクが自軍の本陣へと向かいながらそんな会話をする。

「確かに…そういえば哲ちゃんも奴らには変な殺気を感じた、って言ってたな」

二人に会話にバットも参加してきた。

第二回戦の始まる直前、ドクが『大栃木陸軍』に誘拐された時、救出に向かったのが哲雄なのである。『大栃木陸軍』はドクを囮にワイアット達を誘い出し、『OK牧場の血統』を出場辞退に追い込もうとした。しかし、その野望は並みのヤクザが束になっても勝てない哲雄以下の最強の戦闘集団「清水一家二十八人衆」に阻まれたのである。

『大栃木陸軍』のメンバーは環境破壊怪人から魔王クラーマの力を授けられていたが哲雄達の敵ではなかった。

しかし、哲雄もワイアット達も環境破壊怪人と言う人智を越えた存在までは気づきようもなかった。

「とにかく、あの魔王は要注意、と言うことだな」

「そうだね…ところで、そろそろ作戦の打ち合わせをしないか?」

ワイアットがそう言った所で、バットが一応話を終わらせた。

「そうだな、奴らの基本的な戦術はわかっているのか?」

と、今度はジョニーが発言した。

「ああ、『戦国婆娑羅』はかなりスタンドプレーが目立つチームみたいでメンバー全員がお互いいがみ合いながら結局はそれがプラスに働き勝ち上がってきた、そんな感じかな」

バットが『戦国婆娑羅』を分析する。

「基本的には二人一組で行動するらしい。そのペアもほとんど一緒で、館・真田虫、武多・下杉、農姫・魔王のペアみたい」

 さらにバットが説明を続ける。

「しかも、それぞれのペアが同時に攻撃してくるんじゃなく、ペアごとに攻撃してくるみたいなんだ」

「なるほど…なら俺たちは数の上で優位に立てるな。奴らがペアごとで攻撃してくるなら俺たちは全員で一気に攻撃すればいいんだからな」

と、バットの説明にワイアットが補足を入れた。

「そう、つまり俺たちは『攻者三倍の法則』を満たしているわけだ」

バットが今回の戦術を決定付けた。

「でも、今までもそれで戦ってきたんでしょ?それなら『戦国婆娑羅』に負けてきたチームはよほどのバカか無能者だったわけ?」

と、今度はドクが言った。

「そうなんだ、たしかに二人ずつ攻撃してくるといって油断したところもあるんだけど、それよりも彼らが予想以上に強いんだよ。最後に控える農姫・魔王のペアまでは一度も突破されていないんだよ」

ドクの問いにバットが答えた。

『戦国婆娑羅』はバットの説明どおり、一回戦、二回戦とも二人一組のペアが順々に攻撃するという変わった戦術をとっており、一回戦、二回戦で『戦国婆娑羅』と対戦したチームもバットが考えた同じ戦術で戦おうとした。しかし、結果は『戦国婆娑羅』が三回戦に進んだことで明らかである。たしかに、負けた方に油断があったことは否定できない。しかし、それ以上に『戦国婆娑羅』の力が強大であったのだ。

「まぁ、とやかく言っても始まらねぇ。とりあえず、バットの作戦で行って見て、駄目だったら臨機応変にいきゃあいいじゃねぇか」

「そうだな、それにそろそろ試合開始の頃だろう…じゃあ、基本はバットの作戦で行く。あとはいつも通り、各個人の判断で動いてくれ」

と、ビルが会話の打ち切りを提案してワイアットもそれに同意した。

そしてワイアット達は戦いの場へと歩みを進めていった。



◇4◇


フィールドマップ

ワイアット達は警戒しつつフィールド上を進む。

すると、噴水『OK牧場の血統』側に予想したとおり、正宗、雪村の二人が待っているのが見えた。

双方の距離はおよそ20メートルある。

「YO〜、待ちくたびれたぜ」

と、正宗が悠然と言い放った。

「なかなか余裕じゃないの。そっちは二人、こっちは六人。勝負は目に見えてるんじゃない?」

「ハッ、吼えるな吼えるな、暑苦しい」

ドクが正宗に言い返すが、正宗は軽くあしらう。

「さぁ、これからがPatyってやつだ!」

正宗はそう言うと、9o機関拳銃をむりやり三丁まとめたサブマシンガンを両手に持った。

六爪流ならぬ、六丁流とでも言うべきか。

正宗に習い、雪村も二丁の89式小銃を構えた。

「Let’s Paty!ya-ha-!」

正宗は叫ぶと同時に特製のサブマシンガンを撃ちながら横へ走る。

雪村もそれに呼応し、正宗と反対方向に走りながら89式小銃を乱射する。

しかし、ワイアット達の反応も迅速だった。

ワイアット、ドクの二人がホテルA、バット、ビルがフィールド中央のバリケード、ジョニー、アイクが銃砲店の陰にそれぞれ飛び込んだ。

「ヒュー、やるなぁあの独眼竜」

「ああ、あの赤いのもなかなかやるみたいだな」

バリケードに隠れたビルとバットはそのような会話をする。

そんな会話をしながらもやることは忘れない。バットはダブルバレルショットガンを、ビルはコルトS.A.A.45キャバルリーをそれぞれバリケードから腕だけ出し牽制射撃をする。

「Oh!やるねぇ…退かせてもらうか」

正宗はそう言うと電信所脇のバリケードから飛び出し、噴水方向へと走った。

「逃さねぇぞ!」

アイクはここぞとばかり、銃砲店の陰から身を乗り出し正宗を撃墜しようとした。

「!待てアイク!隠れろ!罠だ!」

一緒に居たジョニーが叫んだがその時はすでに遅かった。

「うぉぉぉ!そのみしるし、頂戴いたす!」

ダダダダダダダダダダダダダダダ!

「痛痛痛痛痛〜!」

アイクが飛び出した瞬間、雪村が雄たけびを上げながら吶喊してきたのである。

「なんでおいらはいいトコないんだ〜!」

と、叫びながらアイクはセーフティーゾーンへと歩いていった。

「ったく、あの馬鹿が…」

ジョニーはアイクがセーフティーゾーンへ歩いていく姿を見ながら思わず呟いた。

「うぉぉぉぉぉ!やりましたぞ、お館さまぁ〜!」

アイクを撃破した雪村はまたも地面に膝をつき、大声で叫んだ。

「でかしたぞ雪村ぁー!」

すると、『戦国婆娑羅』本陣方向から真玄の叫び声が聞こえてきた。

「お館様ー!」

「雪村ー!」

「おやかたさまぁ〜!」

「ゆーきむらぁー!」

「おぉぉやかたさばぁぁぁ〜!!」

「ゆぅぅぅきぃむぅぅらぁぁぁー!!」

また始まったようである。

「…なぁ、あいつ殺っちゃっていいんだよな?」

「いいんじゃない?油断してるほうが悪いんだから」

 と、ワイアットとドクがそんな会話をする。その間にも雪村と真玄の叫び愛が続いていた。

バシュ!

パチッ!

「!なんと!」

「Shit!あの馬鹿野郎…!!」

 ワイアットが放ったBB弾は本陣方向に向いて叫んでいる雪村の背中に命中した。

 撃たれた本人は驚きの色を隠せず、その様子を見ていた正宗は「またか…」と言った表情で呆れていた。

「…ぬぅおぉぉぉ!しかってくだされ〜おやがたさばぁぁぁ〜!」

またもや叫ぶ雪村。

「後はわし任せるのじゃ、雪村ぁー!」

「お館様ー!」

「雪村ー!」

「おやかたさまぁ〜!」

「ゆーきむらぁー!」

「おぉぉやかたさばぁぁぁ〜!!」

「ゆぅぅぅきぃむぅぅらぁぁぁー!!」

「いいからてめぇはさっさとセーフティーゾーンへ行きやがれ!」

ドガッ!

「どわぁぁぁ〜!」

と、またまた叫びあいを始めた雪村に堪忍袋の緒が切れた正宗が、隠れていた噴水から出てきて雪村を思いっきり蹴り上げた。

パチッ!

「なっ!?」

「…あんたら、馬鹿だろ?」

自分が撃墜されたことに唖然としている正宗にワイアットが思わず言った。

「God damn!」

正宗は思わず吐き捨てた。

「Good…ほめとくよ。ま、どうせ魔王のおっさんまでは到達できねぇだろうがな」

と、正宗は捨て台詞を残してセーフティーゾーンへと歩いていった。

「ふぅ、そいじゃあ次行こうか?」

正宗の後姿を見送りながらバットが言った。

「だな…っと向こうから来てくれたぜ」

と、ビルが『戦国婆娑羅』本陣方向から真玄と兼信がこちらに歩いてくるのが見えた。

「フッフッフ、やりおるわ。雪村と竜の小童を倒したか」

「敵ながら褒めねばなりませんね」

真玄と兼信の二人が悠然と歩いてきた。

「さぁ、男女さん、あたしとファストドロウ勝負するんでしょ?」

「ええ…真玄公、よろしいですか?」

「おお!軍神の力、特と見せ付けてやれぃ!」

真玄が了承すると二人はホルスターに手を掛けた。

「フッフッフ、何故私が軍神と呼ばれているかお教えしましょう」

兼信はそう言ってドクを挑発する。もちろん、ドクはそんな手には乗らない。

二人の距離はおよそ10メートル。至近距離である。

ドクはゆっくりと、ニッケルシルバーが美しい愛銃コルトS.A.A.45シビリアンのグリップに手を移動させる。

兼信も腰の9o拳銃へと手を移動させる。

「……」

「……」

「日光ウエスタン村」は静寂に包まれた。フィールドに居るワイアット達だけでなく、観客席もが静寂状態である。

10秒、20秒、30秒、静寂の時間が流れる。

「!」

「!」

二人が同時に動いた。

目にも留まらぬ速さでホルスターからエアガンを抜くとすぐさまハンマーを起こし、そしてトリガーを引き絞る。

バシュ!

バシュ!

二丁の銃からBB弾が発射される。

しかも同時に。

誰もが相打ちか、と思った。

パチーン!

なんと、発射されたBB弾は空中で衝突、あさっての方向へとはじけ飛んだ。

「あなや、これはみごとな」

思わず兼信が呟く。

「…やるじゃないの」

ドクも兼信を賞賛するように言った。

「では仕切りなおしといきましょうか?美しき雌豹よ」

「あら♪美しき雌豹、だなんて…いいわよ、やろうじゃない」

「では…」

二人は一度銃をホルスターに戻し、再び構える。

再び静寂が二人を包む。

「へ、へ、へーくしょん!」 と、観客席から特大のくしゃみが発せられた。犯人は言うまでもなく「清水一家」の若衆、森石松(もりのいしまつ)である。

「またけぃ、石!てめぇは何度言えやぁわかるんでぃ!」

石松を叱責する哲雄の怒号が響き渡った。

その刹那、ドクが動いた。

突然のことで驚いている兼信の意表を完全に突いた。兼信も銃を抜こうとしたがこの時はドクの方が速かった。

バシュ!

パチッ!

「まさか、この私が敗れるとは!?」

「フフッあの程度で油断するなんて、軍神、て言う名が泣くわね」

悔しがる兼信にドクが追い討ちをかける様に言う。

「口惜しや…しかし、良い戦ができました。またいつかお会いしましょう」

兼信は純粋にドクを賞賛し、セーフティーゾーンへと向かった。

「ふむぅ、あの兼信がやられたか…だが、ワシは奴のように甘くはないぞぉ!」

と、二人の勝負を見ていた真玄が愛銃の5.56mm機関銃MINIMIを構える。その体格に相応しく、かなりの重量を誇るMINIMIを片手で構えている。

「では行くぞ!」

「!みんな、散開しろ!!」

真玄がそう言うのとワイアットが散開を指示するのはほぼ同時であった。

その直後、真玄の持つMINIMIから猛然とBB弾が連射された。装弾数を8000発まで増やしたカスタムエアガンである。

ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ!

「な、なんつう連射だ!」

ビルは何とかバリケードに張り付きながら言った。

ワイアット、ドク、バット、ジョニーらも何とかバリケードや建物の陰に取り付くことが出来た。

真玄はと言うと、こちらはバリケードなどには隠れず、噴水の前に仁王立ちしていた。

ワイアット達が少しでもバリケードから身を出そうものならそこへ猛烈な射撃を加えていく。

「ふっはっはっは!ワシこそが天下の虎よぉ!」

と、真玄は高笑いする。

すると、観客席の一部に陣取った戦国婆娑羅学園の生徒たちが真玄に歓声を送り始めた。

「完璧、カンペキでござるぅぅーっ!」

「皆の者、胴上げの準備だぁー!」

「皆の者、宴会の準備だぁー!」

「お見事でござるうぅー!!」

「さすがでござるうぅー!!」

「感激でござるうぅー!!」

そしてなぜかすり鉢で胡麻をグリグリすりながら歓声を送っている。

「な、なんなのあれ?」

ドクが唖然として観客席を見やる。

その歓声は次第にエスカレートして言った。

「つめの垢を拙者に下されぇ!」

「お見事なりぃ!涙で前が見えませぬ!」

「感激!兄貴と呼ばせて下されぇ!」

「うおお、拙者を養子にして下されえ!」

ここまで来るともう何をしたいのか分からない。

さらに、観客席だけでなくセーフティーゾーンからも声援が聞こえてきた。

「うぉぉぉ!さすが、さすがでござるぅぅぅぅ〜!」

声の主はやはりと言うか例の雪村である。

「ぬぉぉぉ!雪村ー!」

「お館様ー!」

「雪村ー!」

「おやかたさまぁ〜!」

「ゆーきむらぁー!」

「おぉぉやかたさばぁぁぁ〜!!」

「ゆぅぅぅきぃむぅぅらぁぁぁー!!」

本日四度目の叫び…(以下、略)。

「…もう、なんなのよこいつら」

ドクが思わず呟く。

雪村と真玄がまた叫びあいを始めたため、あれだけ猛烈だった射撃が一時的にやんだ。

「へっへっへ、今のうちに…」

と、ビルは射撃がやんでいる今こそ好機、と思いバリケードから身を乗り出した。

「フッフッフ、ワシは雪村とは違うわぁ!どりゃどりゃどりゃどりゃあッ!」

ビルがバリケードから身を乗り出した瞬間、MINIMIの銃口をビルへと向けた。

ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ!

パチッ!パチッ!

ビルもすばやくバリケードへ隠れようとしたが、BB弾が到達するほうが早かった。

「Snobbish(げす野郎)!」

ビルはそう吐き捨てるとセーフティーゾーンへと向かった。ビルも一回戦で一人撃墜して以来、撃墜数が増えていない。そのため、この三回戦の意気込みはかなりのものであったのだが、残念ながら次の準々決勝へと持ち越しになった。

あくまでも『OK牧場の血統』が準々決勝に進めたら、の話であるが。

「ふっはっはっは!ひとひねりよぉ!若僧共が、このワシに勝てると思うてかぁ!」

真玄の笑いがフィールドにこだまする。

「くそっ!あのおっさんを何とかしなくては…」

と、ワイアットが呟く。

「ワイアット」

そこへ、バットが話しかけてきた。

「なんだ?バット」

「このままじゃ、あのおっさんに手出しが出来ない。かと言って、弾切れを起こすのも期待できない。そこで…」

と、バットはワイアットにハンドシグナルで作戦を伝える。

「…なるほど、それは面白いかもしれない…やってみよう」

ワイアットも了承し、ドク、ジョニーの二人にも伝える。

二人とも頷き、作戦を了解したことをしめした。

「ほらほらどうしたぁ!全力を出さんかぁ!」

その間にも真玄の攻撃はとまらない。

その時、真玄の目の前を何かが通り過ぎた。

すぐさま真玄はその“何か”に向け銃口を向けた。

ダダダダ!

真玄は連射でそれを捉えた。

「な、なんとぉ!?」

真玄が撃ち落した物は黒いシルクハットであった。

唖然とする真玄に、ワイアット達が一斉にバリケードから飛び出して攻撃した。

「もらったぁ!」

バシュ!

パチッ!

「へっへっへ…こう言う時、日本ではなんと言ったかな?ああ…武多真玄、打ち取ったぁー…てか」

真玄を撃墜したのはジョニーであった。ジョニーは戦国武将にそう言うと、得意のガン・スピンを披露した。

そう、バットの作戦とは自分のシルクハットを投げ、真玄の注意をそちらに向けさせ、攻撃のチャンスを作り出す、と言うものだったのだ。攻撃の際、全員で一気に攻撃したのは仮に真玄が帽子のトリックに引っかからなかった場合、的を絞らせないようにするためであったのだ。

しかし、作戦は成功、真玄は見事バットのシルクハットに油断し、結果、ジョニーに撃墜されたのだった。

装備品の帽子に当たったのだからバットの撃墜されたのではないか、そう思われる肩もいるだろう。確かに、装備品つまり体の一部分に命中した場合はヒットとなるのであるが、体から離れた物に関してはヒットにはならない。つまり、体から離れ、投げられた帽子に命中してもヒットとはならないのである。

『キャー!ジョニー!ジョニー!ワ〜!』

観客席からジョニーファンクラブの女の子たちが、ジョニーの大会初の撃墜と言うことでチアダンスをしながら歓声を送る。

「ヌゥ、ワシも老いたわ。甲斐の虎が…笑わせるわ」

と、真玄は完敗を認めた。

「雪村、竜の小童、軍神、そしてワシの四人でようやくお主らの二人を削ったのみか…武多軍以外にも強い奴はおるのぉ…」

そう言って真玄はセーフティーゾーンへと向かっていった。向かいながら真玄が叫んだ。

「ゆーきむらぁー!これから特訓ぞぉー!」

「わぁかりましたぁ〜!おぉやかたさまぁぁ〜!」

セーフティーゾーンから雪村が叫び返す。

「…さぁて、残るは魔王と女か」

と、ワイアットが呟く。

「そうね。じゃあ、気張ってきましょうか!」

ドクもワイアットの言葉に同意し、気持ちを高揚させようと気を吐く。

「うん!これに勝てば準々決勝進出だね!」

「ふん、また俺の華麗なガン捌きを見せ付けられるな」

と、バットとジョニーが言った。 四人は足並みをそろえて『戦国婆娑羅』本陣へと歩いて行く。



◇5◇


「フ、フハハハハハハハ!真玄でも押さえられなんだか!」

信永は真玄達の敗戦を聞くと、笑いながら喜んだ。

「下総介(しもさのすけ)様、不利でさえ、ものともせず…」

と、農姫は半分恐れを含めた声で呟いた。

「フハハ、フハハハハハハ!フフフ、ハッハッハッハッハ…」

信永は高笑いから不気味な、まるで侠気を含んだような声で笑い始めた。

「ああ、笑っているのね…」

と、農姫は呟いた。

すると、信永は突然笑うのをやめた。

「…是非も、なし!」

キッと前を見つめた。前方から悠然と『OK牧場の血統』が歩いてくるのが見えた。

「小童が…勇猛と愚かは別よ…農、ついて来い!」

そう言うと、信永はワイアット達へと歩き出した。

「は、はい!」

農姫もそれに続く。

第三回戦もいよいよ大詰め。

ワイアット達は魔王信永に勝てるのであろうか。

風雲急を告げる栃木予選。果たして、勝敗の行く末はいずれに…。

そしてここに、己の欲望に突き動かされる男が一人。

「クックックック、面白くなってきましたねぇ…しかし、そろそろ私も参加するとしましょうか…クックック…」

と、武智は低く不気味に笑った。

「信永公、そして『OK牧場の血統』、そろそろ食べごろですかね…美味しそう…クックック」

そう言うと武智は姿を消した。

武智が消えた後、環境破壊怪人が武智の居た場所に現れた。

『ようやく、あの変態男も動き出してくれたな。まったく、尾田といい、武智といい、どうして人間はこうも扱いづらいのか。尾田など、魔王クラーマ様から力をいただいたと言うのに、力を手にした途端我に牙を剥くとは…武智が首尾よく「OK牧場の血統」と共に尾田を始末してくれるとありがたいのだがな。あの男も何を考えているか分からん』

と、環境破壊怪人はいささかボヤキながら再び姿を消した…。

次回予告

「ついに、第三回戦第一試合も大詰め!
奥州筆頭・館正宗、天羅絶槍・真田虫雪村、神速聖将・下杉兼信、戦神羅王・武多真玄を屠った『OK牧場の血統』。
そして、最後に立ちはだかるは繚乱無比・農姫、そして征天魔王・尾田信永。
さらにワイアット達と信永の命を狙う武智明秀が現れる。
そして、友の危機に再び清水一家が立ち上がる。
次回、天国なんて待たせておけ!明日よりも友を選んだ男(+女一人)たち第六話『真昼の決闘』

クックック、さぁ、楽しい宴の始まりですよ…」


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