Mituyaさま作
『戦え! FANG GUNNERS!』外伝
偽りのものたち
第十三話
| 「イクサクニヨロズ変装」 |
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チサト「……足をがくがく震わせて余裕に見せても無駄ですよ」 ユキメ「ハハハ、ソンナコトハナイヨ(棒読み)」 チサト「復活早々で何ですけど、前回のあらすじを説明しましょうよ」 ユキメ「えー?」 チサト「えー、じゃありません!! ……って、このツッコミ、前にもしたような気がします」 ユキメ「しょうがないなぁ。常識人、かっこ自称、森嶋久美は平穏を求めて上京した。しかしそこに待ち受けるのは、お気楽極楽忍者こと、真田淳二。そしてSE○Dの持ち主、バーサーカーガールこと赤橋園美。そこに加わるのは、変態怪盗最上晶! そんな彼女らの非日常が始まろうとしていた!」 チサト「却下です!!」 ユキメ「えー、前説としてはしっかりしていたはずよ」 チサト「……別の作品でね」 ユキメ「ええとじゃあ……。そんな森嶋久美の新たなるオフ会が、再び始まろうとしてい……」 チサト「(銀河をバックにして、技を繰り出す)」 ユキメ「(吹っ飛びながら)銀河爆裂!」 チサト「……作者が書きそうな話ですけど、遠日公開未定ですので期待なさらずに。では、部屋を明るくして、離れて御覧ください」
生徒の自主性を重んじる、青森の中ではかなり大きい私立高校だ。 来る者は拒まず、去るものは追わずをモットーにしているため、生徒間の出来不出来は結構激しい。 それでも生徒らが一様に来るのは、やはり自由があるからだろう。 そしてその自由の幅が大きいのも、この学校の特徴だ。 まあそんなことは、誰も知りたくないだろうから、この辺りで学校説明は終わりにしておこう。 「苦節一年。……長かった」 「ああ。勝利を我が手にしたと思った矢先、我らはあのような目にあってしまった」 「しかしその苦しみを乗り越え、今度こそ……」 「はい。あの憎き『チーム不戦勝』を倒したあのチームを」 「「「「「「我々の手で!!」」」」」」 という会議が、山城高校の一室で起きていた。 どんなに邪悪な相談でも、この学校は自由が特色。 この程度の会話なぞ、山城高校が関与するはずもなかった。 ってーか、邪悪な会話でもなかった。
当然、修一が英訳で残した影響は大きく、クラス一同が吐き気と戦っていたそうな。 本当に修一は英語が苦手だ。
いつもなら、修一は麗奈が作ってくれた弁当を適当な場所で食べるところだが、今回は少しばかり状況が異なってくる。 「あら修一。貴方も養育部へ?」 「うむ。先生に頼まれ、我は体操のお兄さんとやらをする事となった。麗奈殿は?」 「わたくしは、この超絶的な音楽の腕を見込まれて、オルガンを弾きに行くのですわ。ヲルスバンのオープニングテーマなら余裕で弾けますし」 山城高校の部活動の一つ、養育部。 これは、学校の一角にいる幼児たちを正しい方向へと導くという、要するに某よしな○先生とかと同じ幼稚園の先生を育成するという部活動である。 幸い、ここの顧問はその手の免許を所得しているため、顧問の目が行き届くのであれば、問題はないらしい。 しかしやはりと言うべきか、オルガンを弾ける人物はあまりいないため、音楽の才能が有り余っている麗奈に白羽の矢が立ったのであった。 修一はその運動神経から、教育番組でよくいるお兄さんな役回りがきただけである。 「しかし、同級生が既に二児の母とは、我も少し驚きだ」 「まったくですわよね。ですけどこの学校って、そういう生徒が多いらしいですわよ」 養育部なるものが存在した理由の一つが、この『女生徒が既に母親である』ということだった。 もちろんその数は多くはないのだが、決して少なくもない。 どんな人でもやる気さえあれば入れる、というこの学校の特徴があるからこそ……まぁ若気の至りでこのよーな事態になった女子生徒の駆け込み寺となっている訳である。 よい子の皆は「わかげのいたり、ってなーに?」ってお父さんやお母さんに聞いちゃいけないよ。 作者との約束だぞ。 ちなみにこの学校、在学中の結婚も、法律上という限定こそあれ、認められている。 だから、愛し合う若いカップルがこの学校に来る、というケースも決して少なくはない。 他にも、闇の組織から抜け出した暗殺者とか、逃げ込んできた上官を捕えるために入り込んだ軍人だとか、実は人間じゃない人物とか、まあそういう眉唾ものの生徒の噂があったりするのだが、それは余談である。
購買部で売られているという、超レアと言われた焼きうどんパンをかじりながら、その人物は部室の扉を凝視する。 購買部での激戦の後故、所々軽傷を負ってはいるが、彼のその眼光は衰えていない。 その視線は、弱った草食動物を全力で狩る獅子の如く鋭く、油断ないものだった。 一口一口かじる焼きうどんパンは、彼の傷ついた身体に染み渡る。 某ゲームだったら即座にHPが回復するところだが、これ、悲しいけど現実なのよね。 体力こそ回復するが、傷が治るはずもなかった。 全てを食べ終えたときには既に10分近く過ぎていた。 しかしそれが終わるときこそ、彼の任務の開始の合図だった。 思いっきり扉を開く彼。 扉は固く閉められていた訳ではないので、その過剰に働いた力のままに開かれ、大きな音まで部室の中へと響かせた。 当然ながら、部室にいる全員はびくっとした様子で、彼の姿を見つめている。 やはり子どもが大半なので、中には涙目で脅えた表情をする者もいた。 だがそんな彼も、やはり動揺していた。 第一の目標である修一はすぐに見つかった。 修一は男の色気がまるで出ない、さわやかそうな服を着て、子どもたちを引率している。 子どもたちの前だというのに、修一の目は鋭く、いつもの忍者マンだ。 しかしそんな修一はいるのに、麗奈の姿はどこにもいない。 ここにいる大の大人は、顧問の先生と、茶髪のセミロングという髪型の美少女だけ。 彼はその少女を見たことなく、怪訝に見つめるしかない。 少々きつめのその目つきではあるが、学校の生徒だとすれば間違いなく気づいてもいいはずだ。 それだけの美少女であり、彼だって思わず見とれてしまうほどの逸材だった。 そんな美少女も、修一と同様に色気のかけらもない、教育番組のお姉さんみたいな格好だ。 「……どのようなご用件ですの?」 いぶかしげに、教育番組のお姉さん風の美少女は尋ねてきた。 そんな彼女に見とれていた彼は、一瞬視線が釘付けとなり、動きが止まったのだがはっと気づくと同時に、あわただしく動いてみせる。 「わっ、わっ、私はぁっ、そこにいる真田修一、そしてここにいるはずの武田麗奈、そして他『イクサクニヨロズ』というサバイバルゲームのメンバー全てに宣戦布告をしに来たのだ! 詳しくは十分後、体育館でだ。必ず来い、真田修一!!」 それだけ言うと、あわただしく彼は去っていった。 嵐が去ったかのように、どこか物静かなここ養育部で、一人の幼児が呟いた。 「れーなせんせいってきづかなかったね」 「……わたくし、学校では縦ロールしか印象にないみたいですし」 「やっぱりれーなせんせいは、こっちのほうがにあうって! な、しゅーいちせんせい」 「どのような姿をしようと、麗奈殿は麗奈殿だ。容姿など、我には無意味だ」 さらりと修一が言って、その言葉に麗奈が顔を真っ赤にするのだが、そんな様子は子どもたちにしか気づかれてはいなかった。
わー、わー。 わー、わー。 「……どういうことだよ、これは?」 「いや、我々にもさっぱり……」 約束どおり、というか馬鹿正直に『イクサクニヨロズ』の面々は、体育館へと集まった。 もちろん憐や秋彦なんかは、多少の警戒こそしたが、別に命が取られる訳でもなく、なおかつそうであったとしても、まず殺されない自信があったので、あまり関係はなかった。 不安があるとすれば、やはり翔子の処置である。 あの後、しばらくの間は身体を思うようには動かせず、立ちごけ、突起物のないところでの躓き、その他諸々とドジっ子状態だったのだ。 他にも、箸を思うように扱えなかったり、物を持つ際に少し手が震えたりといった副作用もあったのだが、今は割と抑えられてきている。 そんなことよりも、今は憐たちの状態だ。 ここにいるのは『イクサクニヨロズ』と、彼らを呼んだ数名の男女、そして体育館を埋め尽くす野次馬たち。 そう、憐たちは野次馬に囲まれていたのであった。 「よっ、頑張れよ」 「きりター……」 ぼこすかぼこすか……。 「やっちまえー!」 「血が滾るぜーっ!」 そんな野次は飛ぶが、憐たち一同は無視を決め込むことにした。 「それはともあれ、我々、山城高校サバイバルゲーム部『いちごに』は、貴様ら『イクサクニヨロズ』に宣戦布告を申し込む! 我々が勝ったら、貴様らの持つ青森県代表の座を渡すという条件の下、な」 「ちょっと待てよ。それじゃあ俺らに利点がないじゃないか!」 かちんときた憐は、少し感情的になって『いちごに』のリーダーに食って掛かるが、リーダーはふふんと憐の怒りを受け流す。 「当然だ。サバゲーが強い者が、全国大会に進むのは道理であろう?」 その言葉に、一同はぐっと言葉が詰まった。 彼の言っている事は確かに正しい。 「で、ですけど貴方たちが参加する術は……」 おどおどと美奈が意見を言うが、『いちごに』リーダーは、一言で切り返す。 「まだお前たちは、参加申込書を持っていたはずだ。それに我々の名前を書き込み、貴様らがサブとして参加すればいい」 「だからといって、納得いくはずはありませんわ!」 「そーよ、れいちゃんの言うとおりよ!」 強気な女性陣が、頬を膨らませて文句を言うが、馬耳東風と言わんばかりに『いちごに』リーダーは聞いていない。 そのことに腹を立て、麗奈が一歩踏み出すのだが、そのときかぶっていたニット帽がズレ落ちそうになり、言いたかった文句を押し殺した。 なお、麗奈の現在の髪型は、滅多に他人には見せない、セミロングのストレートヘアーである。 その姿を見せれば、一気に彼女のファンが増えるのだろうが、麗奈はニット帽でそれを隠していた。 一部では有名人である広奈と間違われる可能性があったからだ。 縦ロールに直せばいいのだが、麗奈の髪は広奈に負けず劣らず、というか異常なまでのサラサラであったのだ。 だから下手な整髪料を使っても効果はないし、強力な奴であっても一瞬でストレートヘアーに戻ってしまうので、縦ロールにするには非常に面倒となっているのである。 今回は、縦ロールに戻す時間がなかったので、このような目にあったのである。 閑話休題。 押し問答は、その後も続いた。 だが結局は平行線のままで、『イクサクニヨロズ』は戦う必要はなく自分たちが代表だ、『いちごに』は戦って勝った方が代表の権利がある、で両者一歩も引く事はない。 とはいえやはり有利なのは『イクサクニヨロズ』なのは間違いない。 が、彼らの不幸は、この押し問答が公衆の面前で行われていたことだった。 「臆病風に吹かれたかー!!」 「つまんねーぞー!!」 「サバゲーで勝負つければいいじゃねーかー!!」 「ハァ、ハァ、きりタン……」 「行けーっ! ぶっ殺せーっ!」 「サバゲーファイトォォォォ!! レディーーーッ、ゴォォォォッ!!」 「ぶっ殺せ、はったおせ!」 共感を得られたのは『いちごに』だった。 山城高校の生徒はお祭り好きなのである。 理はあるのに、場の流れは完全に『いちごに』に傾き怯む『イクサクニヨロズ』は反論しても、観客にあっさりと却下されてしまう。 さらに、悪いことは重なるもので。 「わかったよ♪ ボクは皆のため、そして哀れな子羊のような『いちごに』の彼らのために、ボクは戦う♪ 皆、応援してね♪」 一瞬、憐の意識が乗っ取られた。 霧華は満面の笑みで観客の心をがっちりと掴み取り、その笑みに心奪われた恋の奴隷たち(笑)に「ありがとう♪」と手を振るう。 理性の箍がはずれた観客たちは、もう霧華のなすがままであった。 「L・O・V・E、き・り・タン!!」 「らぶりぃげっちゅう!!」 「青き清浄なるきりタンのために!!」 熱狂コンサートモードになったこの場で、一言美奈はこう呟く。 「……最悪」 「絶対運命黙示録だよ♪ 輪廻は螺旋と似たり♪」
霧華に聞かれてたし、その反応もよくわからなかった。
体育館の隅の方で、どす黒いオーラを纏いながら体育座りをしているのだが、そんな彼を励まそうとした面々は、全て霧華LOVEな人たちだったので、より一層黒いオーラを身に纏う羽目となっていた。 ともあれ、なし崩し的に『いちごに』vs『イクサクニヨロズ』の決戦が出来上がってしまい、美奈たちは否定しきれなくなっていた。 「で、何をすればいいの?」 瑠璃華は不機嫌なのか、少しすごんで見せたが、『いちごに』リーダーはそんな彼女に対してなびくことはない。 元々瑠璃華自体が美人なので、すごんで見せても怖くないのが、理由の一つだ。 「我々6人、そしてお前たちが6人。これでサバイバルゲームを行う。場所は学校の敷地全部。生徒会室だけはなしな。時間制限は4時間。ただし勝利条件は、我々とお前たちでは異なる。我々はお前たちを全滅させること。お前たちは、制限時間まで一人でも生き延びること。異論は?」 「……授業があるって」 秋彦が呆れたように呟く。 しかし『いちごに』リーダーは、ふふんと鼻を鳴らす。 そんな仕草に、秋彦は少し眉間に皺を寄せた。 「甘いな。今回のサバゲーのため、授業を休止するように申請したところ、受諾された」 美奈たちは、そんな予想だにしない返答にずっこけ、対して観客たちからは、休校情報に声をあげて喜んだ。 「他に異論は?」 「……」 美奈や修一、瑠璃華なんかは咄嗟に秋彦を見る。 そんな秋彦は、少し眉をひそめながらも沈黙をつらぬいた。 そしてその彼らにならい、一同は同様に沈黙を決め込む。 憐がいるならば彼を見たのだろうが、軍師不在の今、知恵を使うのは秋彦の役目だ。 (この条件ならば、間違いなくオレたちが有利だよな……。この学校は敷地が異常なまでに広いし、隠れる場所はたくさんある。だけど……それだけの自信があるって訳か) だが、秋彦はその程度の理由で、脅えることはない。 自分たちだって、強くなっているはずだから。 「わかった。受けてたとう。それと、オレたちのメンバーは、オレと憐、美奈ちゃん、シュウ、麗奈ちゃん、瑠璃華だか……」 「待て。きりタ……憐と秋彦は、生徒会の会議に参加しなければならないはずだ」 「……なんですと? 授業がないのに、生徒会はあるって?」 「そうだ」 実はこれ、『いちごに』の策略だった。 確かに生徒会の会議は、これからの予算案を考えると重要な項目ではあったが、何も今日でなくていい。 だがそれをすることによって、憐と秋彦を不参加にさせることが目的だったのだ。 憐の知謀と秋彦の経験は『イクサクニヨロズ』にとっては間違いなく武器だった。 彼らが存在しなければ、牙をもがれた獣も同然。 無論、他の面々が弱いわけではないが、彼らを活かすのが憐と秋彦なので、実力は半分以下になったと考えてもいい。 秋彦は、自分たちのチームの危機に歯軋りをする。 「はっはっはっは……。貴様らはこれでは四人になってしまうなあ。流石にこれではかわいそうだから、助っ人を用意するがいい」 『いちごに』リーダーは仁王立ちをする。 そんな彼に胡散臭さは十分にあったのだが、だからといって反撃する術は『イクサクニヨロズ』にはなかった。 リーダー格二人を失った『イクサクニヨロズ』は、弱々しいチームでしかない。 だがそんな最中、一人の人物が『いちごに』の前に現れた。 ショートヘアーの小柄な少女で、どこか可憐なイメージを与えるが、視線は鋭い。 「ならば私が参加する。私も『イクサクニヨロズ』のメンバーの一人だからな」 来栖海里は不敵に微笑んでみせる。 小さい身体ながらも、ここでの助っ人は『イクサクニヨロズ』にとっては救いの神も同然だ。 美奈たちは思わず笑みがこぼれ、普段は寡黙で表情の変化に乏しい修一も口の端がゆるんだ。 そんな修一の反応に、海里は顔を少し赤くして微笑み返してみせる。 「だがまだ一人足りないぞ!」 「……」 観客たちの中から、無言で挙手をする人物がいた。 黒頭巾、黒い学ラン、黒手袋に黒い体育館履きという黒ずくめの少年……実は少女の真夜(まや)だ。 「これで六人ですわね。わたくし、修一にみーなさん、ルリーさん、来栖さんに真夜(まよ)さん。異論はあるかしら?」 「ない。では試合開始は1時50分。10分間、お前たちに隠れる暇を与え、2時に我々が行動を開始する。6時に終了だ」 増援が来てくれたことは嬉しかったが、秋彦には一抹の不安が残る。 それは、彼らの中で唯一、サバゲーの経験がない人物。 しかしそんな彼女が、この戦いの鍵を握るとは、誰も予想していなかった。
いつもなら、率先して話す憐と秋彦の存在がないからである。 美奈はもとより内気だし、修一は寡黙、海里はサバゲーとしての経験は薄く、真夜(まや)に至ってはサバゲーの経験すらないからだ。 故に必然的に、重い沈黙を破るのは、麗奈と瑠璃華の二人ということとなる。 「ルリーさん、貴女がリーダーをなさい」 「へっ!? な、何でよ、れいちゃん?」 「わたくしが頭脳派を担当するからですわ」 思いもよらない発言を受けた瑠璃華は、戸惑った様子で目をぱちくりとさせる。 しかし次第に正気を取り戻した瑠璃華は、麗奈の発した言葉に対して疑問を生じさせた。 「……れいちゃんが頭脳派? それ、本気で言ってる?」 「マジもマジ。大マジですわ。それでも不安が残るなら、わたくしの意見に補足を加えていただければ結構です」 「心配なさるな、瑠璃華殿。麗奈殿は無謀で無茶ではあるが、決して頭の悪い人物ではない」 「……わかった。で、れいちゃん。そこまで言うからには、策があるんでしょーね?」 少し皮肉っぽく、目を細めて麗奈を睨みつける瑠璃華だったが、麗奈の表情はあまり晴れない。 「状況から考えてみても、難しいところですわね」 そこまで言うと、一旦ため息をついて、麗奈は言葉を続けた。 「目的は生き延びること。撃墜することではありませんわ。もちろん、全部を撃墜した後に、悠々と制限時間一杯使いきるということもできますけど。ですけど、それは難しいとみていいですわ」 「……なんで?」 美奈は、少しおずおずと尋ね、それに麗奈は晴れない表情で美奈を見つめた。 「恐らく、わたくしたちより経験があるからですわ。……で、話を続けますわね。ですから、なるべく方針は「隠れて生き延びる」がいいと、わたくしは思います。ですけど、制限時間は4時間。はっきり言いますけど、全部を調べまわるには十分過ぎる時間ですわね」 一同に絶望感が漂う。 やはり無理なのか、と、そんな雰囲気だが、麗奈の話はまだ終わってはいなかった。 「ですから、隠れるためには常に場所を変えるようにすれば、見つかりませんわ。無論、エンカウントの可能性もありますけど。それと、一つに固まって行動するのは危険すぎますので、なるべくばらけるように。かつ遭遇戦になっても対処できるようにペアになっての行動がいいと思いますわ」 一同は、麗奈らしからぬ、理にかなった説明に「お〜っ」と思わず感嘆の声をあげた。 少しそんな反応に頬を膨らます麗奈だったが、自分に対する低評価が変えられたこともあって我慢する。 だがここで、一人の人物が挙手をした。 素人、真夜である。 「……」(あたし、足引っ張りたくないし、一人でいい?) 「一人で、って……まあいいよね、れいちゃん?」 「本人の希望ですし、構いませんわよ」 「ならば、一人余る計算となる。我も一人で行動しよう」 ここで、少しだけ麗奈が眉をひそめた。 が、即席軍師としては、修一のアンブッシュ能力を活かすためには一人で行動した方がいい、というのは理解出来ている。 自分に内在する女としてのエゴを振り切り、麗奈はしぶしぶOKを出した。 結局、美奈と海里、麗奈と瑠璃華がペアとなることになった。
その様子を、麗奈と瑠璃華の二人は視認する。 『いちごに』が体育館から出て行くさまを、学校の屋上から。 「今よ、れいちゃん!!」 スナイパーライフル並みに特化したβスペツナズは、多少の距離ならものともしない。 だが、学校の屋上は予想以上に風が強い影響で、狙いを十分につけていたとしても外れる可能性は大いにあった。 しかしあくまで、麗奈のβスペツナズはスナイパーライフル風に特化しただけの小銃である。 だから、連射が利く。 「なっ! ヒット!」 「予想外だ……!」 「攻撃出来るのは5分後とかにすればよかった……。ヒット」 『いちごに』の方はいきなりの奇襲に対応できずに、一気に半数を失ってしまう。 「へへー、やったねれいちゃん」 にこにこと、瑠璃華は麗奈の方を振り向く。 が、当の麗奈は早々にβスペツナズを接近用にパーツの付け外しを行って、屋上から移動しようとしていた。 「何をしてますの? 移動しますわよ」 「……何で?」 「スナイパーたるもの、撃ったらすぐ移動して、相手に狙いをつけさせないようにする。これ鉄則ですわ」 「……って待ってよれいちゃん!」
「我の役目は影。これこそ忍の役目なり」 やっぱり修一は忍者オタクであった。
『いちごに』のメンバーは女性が一人しかおらず、他の男性陣が躊躇してくれることを期待してだ。 当然、美奈と海里は別れて女子トイレの個室へと入っている。 もし発見されたとしても、美奈の戦闘能力は底知れないし、海里も実銃を扱っているだけあって戦闘能力は意外と高い。 そんな二人だから、この作戦を選んだのである。
正直言えば、麗奈がさらに追撃を加えていたら、そのまま勝負は決していたであろう。 だがそれをされなかったのは『いちごに』にとっては幸いだった。 昔の麗奈であったら、彼らはどうなっていただろうか? 「慌てるなっ!」 そんな慌てた彼らを一喝したのは『いちごに』リーダーであった。 もう面倒くさいので、これからはリーダーと省略させてもらうが。 「まだ勝負は決していない! ……しかし、相手も中々だな」 「「はい……」」 『いちごに』メンバーの二人が、リーダーに対して神妙な顔をして頷いた。 なお彼らのことは、A君(仮名・男)、Bさん(仮名・女)とする。 「だがな、我々が勝つことはもはや運命なのだよ」 リーダーはにやりと笑う。 Bさんは、そんな彼の表情に、少しうんざりしたような表情を見せた。 A君もそんな彼女と同様な表情を浮かべる。 しかしそんな雰囲気もお構いなしと、リーダーは一言、こう叫んだ。 「サルっ!」 「はい、お館様!」 サル、お館様って何やねん、と部下二人は思いながらも、止める理由がないからとりあえず聞き流すことにした。 ちなみにサルは、言葉通りのサル顔の少年である。 サバゲーそのものには不参加だが、リーダーの舎弟として、リーダーに協力する一人であった。 「学校全部のカメラを掌握できたか?」 「もちろんでございます。わたくしめは、少しは名のあるハッカー。あの最上一義(もがみ かずよし)の作るセキュリティでない限りは、数分とかからず突破できますから」 なお、最上一義というのは数ヶ月前に逮捕されたという、怪盗一家の次男である。 パソコンをいじらせると、全てのパソコンを掌握されるのと等しい、と言われるほど、ハッカー内では有名な人物なのだ。 無論、それをしないのだからこれは眉唾モノの噂でしかないのだが、逮捕されるようなことをやっているくらいだし、かなりの腕前なのは間違いない。 閑話休題。 「で、奴らの位置は?」 「本多、来栖の二人は西館二階女子トイレの個室、入り口から二番目、三番目。武田、明智の二人は現在南館一階の廊下を直進中。真田は南館四階の通風孔に入りましたが、そこから先は確認できませんでした。最後に太刀華ですが、保健室の中に入ったまでは確認しました。もっとも、保健室の中の隠しカメラは見つかってしまったので、そこから先は……」 「ふむ……」 そのとき、Bさんはふと思った。 女子トイレに監視カメラがあるんかい、と。 「ふははははははは……。情報を制する者が、サバイバルゲームを制するのだよ。悪く思うなよ『イクサクニヨロズ』!」 リーダーは、勝利へのロードの一歩を歩んだ……というか一歩目を踏み出したのだが、そこでくるりと振り返り、サルの下へと駆け寄る。 小声でサルの耳に囁いたのだが、Bさんの耳にまで、運悪く届いていた。 「……女子トイレの映像、ダビングしてはくれんかね?」 「もちろんで……」 どかばきぐしゃ。 「させるわけないでしょう!!」 結局Bさんの鉄槌を食らい、そのテープ等は回収されることとなった。 無論、この戦いの後、そのカメラは破棄されたのは言うまでもない。
まだ始まってから時間は経っていないのだが、彼女らの体感する時間はとても長く感じてしまう。 多くの人は、することがない時間、しかも何かを期待して待つ間というのは、得てして長く感じてしまうものだ。 こういうときに、美奈としては身体を動かしたくなる。 彼女のオリジナルである美亜子からの癖で、そうしないと落ち着かないからだ。 でも、物音は出したくない。 「……美奈先輩」 「ふっ……ふっ……はっ……何です……はっ……か……はぁ……はぁっ……」 「何、しているのですか?」 「ヒンズースクワットですけど?」 「……じっとしてください」 「ふぅっ……。駄目ですか?」 「駄目」 海里はセンゴクマンの知識があり、なおかつそんな彼らのクローンの存在との関わりあいが強い。 つまり、詳細こそ知らないが、センゴクマンがどういう性格のメンバーで構成されているのか知っているということを知っているのだ。 その中での、センゴクホワイトとそのクローンである美奈が、性格は大きく違うのに、海里は妙にかぶるところに気づいた。 猪突猛進、唯我独尊のセンゴクホワイト。 引っ込み思案で、内気な本多美奈。 なのに顔はまったく同じで、なおかつ二人とも肉体派で、さらに戦闘狂ときている。 そんな美奈の様子を見て、海里は苦笑せざるを得ない。 「どうかしました、来栖さん?」 「いえ……」 他のメンバーにしたって、この感想は同じだ。 だから海里は、まだまだ憐たちを知りたくなる だから海里は、憐たちと一緒にいたい。 「……っと。ターゲットが来たか」 海里のその言葉に、美奈は息を潜めた。 それとほぼ同時期に、足音が響き渡る。 恐らく二、三人。 そんな彼らは、ごそごそと物音をさせるだけで、まだ美奈や海里の扉には手をつけていない。 美奈も海里も、シミュレーションは出来ている。 上から覗こうものなら、上にぶっ放し、扉から来ようものなら、先に構えている自分たちが有利。 さらに言えば、二人とも一般女性としては反射神経はかなりいい。 タイマンならそうそう負けない二人だからこそ、選んだ戦場。 地の利は美奈たちにあったも同然だ。 しかし、相手がそれを知っていたら、その有利な条件は全て覆される。 「きゃっ!」 「冷たっ!」 突然の水攻めに、二人は軽く悲鳴をあげて、咄嗟に扉から飛び出してしまう。 無論、そんな彼女らに甘い『いちごに』ではない。 完全に有利な位置を陣取っていた『いちごに』の集中攻撃に、美奈も海里もなす術がなかった。 「ひ、ヒット!」 「くっ……」 これで3対4。 まだ勝負は決まらない。
リーダーの突飛な発言に、A君は「ルリレイ組って何だよ?」と小さく呟いたのだが、それは余談である。 作者も言っていて語呂がいいから使っているが、本当に何なのでしょうね? 「きゃつらは現在、渡り廊下を使って旧南館から旧東館を通り、西館へと向かおうとしていると思われる」 「きゃつら、って何よ?」 Bさんは、A君と違って大きな声でツッコんでいたのだが、リーダーは話を聞かないタチなので、あまり関係がない。 当然、ツッコミを入れている本人も辟易してくるのだが、そこは同病相憐むという奴で、A君がしっかりとBさんを励ましていた。 猪突猛進なリーダーを持つ苦しみというのは、得てしてこんなものなのかもしれない。 「さて、ここで質問だ。我々の現在地はどこかね?」 「西館だろ……あ」 「その通りだよ、A。狙いは我々だ。ふふふ……。このような策を取る相手は嫌いじゃない」 「Aは仮名なんですってば」 結論も出たところで、作戦もおのずと見えてくる。 とるべき策は、当然迎撃だ。 相手の進路さえ読めれば、隠れる場所も攻撃しやすい場所も思いのまま。 「ふ、だからこその情報さ。猪武者どもを一掃することなぞ、たやすいからな」 「ですが、部長。情報によりますと、武田は遠距離射撃が得意との事ですが?」 「A。意見を述べるときには、挙手をしたまえ」 「だからAってのは仮名なんですってば」 ぶつくさと文句を言うA君は、小声で文句を言いながらも、律儀に挙手をする。 「先ほどの質問だが……すっかり忘れてたのだよ」 「「くおら!」」 A君、Bさんが、リーダーのオトボケ回答に抗議の声を挙げた。 とはいえリーダーは、やばいと言いながら、傍目からは冷静そのもので、何かをしでかすのではないかと、A君、Bさん共に思ってしまう。 だが長年の付き合いから、A君もBさんもそれがハッタリであることは承知済みである。 そんなとき、ばばばとBB弾が雨あられの如く降り注いだ。 真横からの攻撃だったが、全員奇襲を受けるのは予測済みなので、咄嗟に遮蔽物に隠れることに成功したため、大事には至らない。 銃弾の嵐は、ほんの1秒足らずで済み、全員が追撃を予想したのだが、それはなかった。 「どういうことでしょうか、部長?」 「サルからの情報から推測すれば、一部が攻撃、一部が生き延びるのを目的としている可能性があるな。今回の事を考えると、ルリレイ組がオフェンスのようだ」 「つまり、武田、明智の二人が攻撃を行うことによって、他への注意をそらす、ということですか?」 「その可能性もある。だが私の推測だとそうではなく、我々の捜査時間を減らすために挑んでいるのだと思われる。違うか、Aよ」 「だーかーら、Aは仮名……」 まあいくらA君が文句を言おうが、リーダーはお構いなし。 数秒で性格が変わるほど、人間に性格改善が出来るわけもなし、三つ子の魂百まで、という諺があるように、その辺はA君Bさんともに諦めていた。 「部長。まずは真田と太刀華を捜してみては?」 「B。この二人は恐らく隠れる役回りだ。ルリレイ組が注意をそらすのが目的ならば、真田、太刀華を攻撃するのは危険だよ。かえって挟撃を受ける羽目となる」 「Bは仮名……」 「つまり、相手の奇をてらうならば、ルリレイ組を先に始末した方が、効率がいいのだよ」 もっともらしいことを言われて、A君もBさんもぐっと言葉が詰まった。 だが今話したリーダーの説明は、あくまで仮説であって事実ではない。 その証拠に……。
「あら、ルリーさん。これはあくまでサバイバルゲームですわ。与えられたルールを達成するのももちろんですけど、わたくしはサバゲーを楽しみたいのです。文句あります?」 「だからって、わざわざ攻撃しに行かなくても。……ほんっと、れいちゃんて猪突猛進だね」 「あら、何か仰いました?」 「ううん、何にも」
この時は、麗奈の心境の変化に、本人は気づいていない。 いや、それどころか『イクサクニヨロズ』の全員が持つ心境の変化が起こっていたのだが、誰もが誰も、それに気づいてはいなかった。 それはともかく、会話を終えた『いちごに』は、サルからの情報を基に、移動を開始し始めた。 サルの情報は完璧だった。 無論、その手の実力の持ち主から見ればアマチュアレベルなのだが、戦闘能力以外の点では一般人に程近い『イクサクニヨロズ』を捕えるのには十分。 カメラに写っている麗奈、瑠璃華の二人の動きは手に取るように把握されていた。 だから必然的に、麗奈と瑠璃華の二人の位置は操作できる。 二人は『いちごに』の位置を予測するように、逐一場所を変えていた。 その選ぶポイントは、比較的狙いやすく、なおかつ攻撃を防ぎやすい位置を選んでいる。 距離がずいぶんあるポイントを行ったり来たりしていて、よく疲れないなぁ、というのがA君とBさんの感想である。 狙うべきポイントは、そうなると当然移動中であった。 「きゃあっ!」 「何をしているんですの、ルリーさん!」 「しょうがないじゃない! 師匠の一件以来、何か、身体のバランスが、取れないし、妙に、息があがって、ハァ、ハァ……」 「否定はしませんわ。わたくしも、いつもに比べて疲れてますし。ですけどおかげで、わたくしたちはこれからも生きていられるのでしょう?」 言葉どおり、麗奈と瑠璃華の二人には疲労の色が濃いように見受けられる。 麗奈は運動神経はそれほど悪くなく、丈夫な方なので、肩で息をしている。 しかし瑠璃華は、最近専ら運動不足。 身体を動かす機会はあったが、麗奈と比べるとやはり差があるため、落ちた体力は戻せない。 しかも、これは全員がそうなのだが、もっと速く走れる気で走ると、意識は走っているのだが身体がついていかず、足がもつれてしまう。 麗奈は自分のペースを掴みつつあるから問題ないのだが、瑠璃華は未だにそのギャップに悩まされていた。 「ほらほら、さっさと行かないと間に合いませんわ」 麗奈は自らの手を瑠璃華に差し出した。 瑠璃華もそんな麗奈のさりげない優しさが嬉しく、軽く微笑んで手を取り、麗奈の力も使って立ち上がった。 そしてそれが合図だった。 前後からハリネズミの針のように満遍なく、二人にBB弾が撃ちつけられた。 左右によけようとした二人だったが、生憎そこは壁。 「わたくしがヒットされるなんて……何かの間違いよ。……くっ、ヒットですわ」 「秋彦、ごめんなさい……」 本気でいらついている麗奈と、正反対に少しうれしそうな瑠璃華の表情が、A君とBさんにとって印象的だった。
「ほら、そこはヒット確認をして、アサシンブレード・エアリアルに繋ぐ。そして大ジャンプと同時に強斬りを当てるんだって。三発当たるから、その三発目にキャンセルかけて、空蝉の術を強で……そうそう」 「空蝉の術の後も、目押しだけど吹き飛ばし攻撃が当たるから、狙ってみるのもいいぞ、瑠璃華」 「うー、ポニーテールの情報屋って難しい……」 「麗奈さん。オスカルは特殊技が二つ入りますから、強斬りから斜め弱斬り、前弱斬りにつなげて、とどめにシヴァ・トライアングルを決めるんです。画面端なら超必が確定しますから」 「わかってますわよ! うるわいですわねー!」 「その割には失敗してますね、麗奈先輩」 保健室では『イクサクニヨロズ』内で、格闘ゲーム「陰陽五行戦記2」をやっていた。 憐、秋彦の二人も会議が終わったのか、しっかりと瑠璃華に茶々を入れている。 妙に和やかで、妙にやかましい保健室の様相に、A君、Bさんは呆れ気味だ。 保健室の主、長巻飛鳥(ながまき あすか)教諭のこめかみは、今にもはちきれそうである。 その中で、やかましい輪に入っていない生徒も、少ないが存在していた。 保健室の片隅で、カップに入っているコーヒーをずずーとすすっている、髪にウエーブのかかった二年生の少女。 そしてカーテンで見えないが、ベッドで横になっている生徒。 当然リーダーはその生徒を怪しんだが、Bさんが調べたところ、男性ではなく女性で、しかも二年でなく一年だったらしい。 「だからこの情報屋は、超必が弱いんだって。ジャックナイフは接近状態で対空、サウザントナイブスはケズリとして使うんだよ」 「アサシンブレード・キャンセラーは、ヒット確認してガードされたら使うようにするといいよ。キャンセルかける技は、シューティングダガーが適任かな?」 「はーい、秋彦」 「だから麗奈先輩。オスカルは座高が高いんですから、ユキメの弱斬りもしゃがんで当たりますって」 「わかってますわ!」 「でも足が長いですから、中距離でちくちく弱蹴りしてれば、結構いい感じですよ。情報屋はリーチが乏しいですから」 そんな様子を見ながらずずっと、さらにコーヒーをすすり続ける少女。 そしてベッドで寝込み続ける少女。 何はともかく『いちごに』は典型的なRPGよろしく、会話で情報を収集することに決めた。 「長巻先生。ここに太刀華真夜は来なかったか?」 「真夜? 来たけど、すぐ通風孔を通って移動したぞ」 基本的に中立だと思われる飛鳥の言葉に偽りはないと思い、リーダーは一言礼を言うと、次の会話の相手を探し始める。 彼が次に視線を向けたのは、寝込んでいる少女だった。 『イクサクニヨロズ』に会話をしても、まともな返答が返ってくるとは思えない以上、会話をするのはたった二人だけ。 しかし、リーダーが行動を起こそうとしたその瞬間、コーヒーをブラックで飲む飛鳥が口を挟んだ。 「ああ、その子は今日調子が悪いそうだ。あまり無理をさせないでやってくれ」 飛鳥の言葉を聞くと、リーダーはしぶしぶ了承した。 本音では、意地でも聞き出したかったところなのだが、先生が見ている以上そのような真似は出来なかった。 まあ幸いなことに、聞く相手は他にもいる。 「そこの女子。忍者と黒子を見なかったか?」 リーダーの言葉は、微妙な湾曲こそあったが、修一と真夜のことを聞く上では、これ以上ない説明ではある。 だが少女は、首をただ横に振るだけ。 思いもよらず、情報を手に出来なかったことに『いちごに』のメンバーは難色を示した。 サルからの情報は、まだ入ってこない。 そんなとき、Bさんがふと思い出す。 彼女は二年生であるが、この女子を見たことがなかった。 確かにクラスは4クラスもあって、全員の顔を覚えるのはちょっとだけ難しいが、ここまで印象にない女子はいない。 「あの子……私、見たことないわ」 そうBさんがつぶやいた瞬間、おかしなくらい『イクサクニヨロズ』の残りメンバーの空気が固まった。 固まりすぎて、ぴしっという効果音が響きそうなくらい、見事な固まりっぷりだ。 そんな空気をリーダーもA君も感じとった。 「なるほど……。ところでそこの女子、名前は?」 リーダーはいやらしいにやけ顔で、二年生女子に向けて質問をかける。 女子は、そんな状況でも非常に落ち着いており、遅々とした動きでカップを口から遠ざけ、それを長椅子の上に置いた。 そんな女子の、リーダーに向ける視線は非常に鋭い。 場が動いたのは、ほんの一瞬だった。 女子が咄嗟に飛び上がると、何処からともなくP−90を取り出すと、それを『いちごに』目掛けて撃ってきたのだ。 上空に高く飛び上がったのもあり、全員が全員、反応が追いつかずに銃弾を浴びる羽目となった。 が、撃った側も狙いをつけることが難しく、リーダーには当てることは敵わない。 リーダーもさるもの、一瞬の朦朧からすぐに覚め、素早くサイドアームを抜き、上空へと狙いを定めた。 そこで彼が見たものは、女子がつけるはずもない、少し派手目のトランクスだった。 「ヒット」 「私も」 「我もひっとーだ」 A君、Bさん、そして女子が一斉に手を上げ、ヒットを口々にした。 女子の声は、女性のそれとは大きくかけ離れ、落ち着きのある渋い声だ。 「ユキメさんから学んだ女装も、中々使えるな。ふむ……」 元々背はあまり高くない修一は、女装しても大して目立たなかった。 もちろん腕とか足とかの細部を見てみると、無駄な脂肪なんかは一切つかず、男性特有の筋肉質である。 だがこれだけなら、美奈を始めとする山城高校の運動部所属の女子だって似たようなものだ。 修一がかつらを取ると初めて修一だとわかるくらい、A君やBさんには生粋の女性にしか見えなかった。 「……お前ら」 そんなとき、ごごごという効果音がよく似合う、そんな怒りの気に渦巻いた飛鳥が『イクサクニヨロズ』と『いちごに』のメンバーに対して鋭い眼光を放った。 「出てけーーーーっ!!!!」 結局、教諭自身と寝込んだ少女を除いて、一同は尻を蹴られて追い出されることとなった。
頼りになる仲間もなく、サルからの情報もまったくない。 ただ、無情に試合終了の合図を聞くしかなかった。 「く……我々の負けだ。だがしかし、我々が貴様らのサブとして参加するのは問題ないだろう?」 転んでもただでは起きない男『いちごに』リーダーここにあり。 しかし、リーダーのサバゲー全国大会への思いは、思いもよらぬところで破綻する羽目となっていた。 A君、Bさんを始めとして、残りの『いちごに』メンバーががっしりとリーダーの身体を掴んだのだ。 「部長。元々我々が全国大会に参加するのなんて、無理なんですから」 「そうですよ。私たちはサバゲーイギリス大会に出場が決まっていて、日程が重なってるんですから」 「そもそも俺たちが戦ったのは『チーム不戦勝』より強いことを証明したかっただけなんですから」 「諦めましょう」 「そうそう。往生際が悪いですよ、部長」 ずりずりと引っ張られ、リーダーは『イクサクニヨロズ』へと手を伸ばす。 だがそれを掴むものはおらず、ただリーダーは部員たちのなすがままとなるしかなかった。 「い、いやだぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!」 結局、この日一日無駄に過ごした『イクサクニヨロズ』でありました。 ちゃんちゃん♪
「……」(つらい) 「朝は割と平気だったのに。真夜としてはサボって休む予定だったのに、災難だったな」 真夜は、保健室に置いてあった一年のセーラー服を着て寝込んでいた。 病気ではないのだが、やはりこの時期は本人にとってあまりよろしくない。 元々体調が少し悪かっただけなのだが、ちょっと前からそれが悪化し始めたのであった。 真夜はカーテンから顔を出し、その顔色の悪い表情で飛鳥を睨む。 そんな強がりも、飛鳥にとっては滑稽にしか見えない。 「睨むな睨むな。予備はカバンに入れてあるんだろ?」 真夜は、首を横に振る。 「ん、そうか。なら保健室にも予備はある。そこの引き出しから必要な分だけとってけ。痛み止めもあるしな」 「……」(わかった) 立花真夜と長巻飛鳥。 この二人は現在、同居中であった。
「それはあまりにも唐突なことだった。 |