Mituyaさま作
『戦え! FANG GUNNERS!』外伝
偽りのものたち
第九話
| 「イクサクニヨロズ強襲(前編)」 |
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チサト「飛びすぎです、ユキメさん」 ユキメ「それもそうね。……って言うか、これってあらすじじゃなくて未来予想の一つ?」 チサト「その手の技能は翔子さんに任せてますし、ユキメさんもやらないでください」 ユキメ「嫌ぷー。トリックスターに、まっとうな行動を期待するほうが悪い」 チサト「まっとうな行動をしてくださいっ!!」 ユキメ「えー?」 チサト「えー? じゃなくって!!」 ユキメ「(急に真面目になり)これから語られるのは、三話連続の話。謎の監視の人、センゴクマンを知る少女、そして新たに襲い掛かる敵が、全て語られるわ。ついてこられるかは本人の気力と好奇心次第! ついてきなさいよ!」 チサト「何で急に……」 ユキメ「だって私、トリックスターだもん。嘘はつかないけど法螺は吹く。嫌よ嫌よも好きのうち、ってね」 チサト「だから、嘘も法螺も同じ意味ですってば……」 ユキメ「ってなわけで、チャンネルはそのまま!!」 チサト「……画面を見るときは、部屋を明るくして、なるべく離れて御覧下さい」 ユキメ「まずは前編から、どうぞ!」
そこそこの広さを持つ、その一室で憐たち+ユキメとチサトがそこにはいた。 「わたくしから行かさせていただきますわ!!」 「何のっ! あたしが先よっ!!」 速攻で、麗奈と瑠璃華の二人はリモコンを取りに行く。 が、それはユキメによって止められた。 二人の手は空を切り、その拍子で僅かにバランスを崩した。 「はいはい。とりあえず先に、こっちの話を進めましょう」 と言い、ユキメが取り出すのは『月刊種子島』というサバイバルゲームの雑誌であった。 『月刊種子島』とは、400年は続くと言われる、サバゲー専門誌である。 無論、名の通りに月刊誌であるが、今の時期は全国大会と重なることと、大会開催の時期と月刊種子島の発売日とがかみ合わなかったことにより、今月は増刊号が出ているのだ。 そして、ユキメが取り出したのは、その増刊号である。 「全国大会に向けて、『FANG GUNNERS』と戦うためにはまず、他のライバルを押しのけなきゃね」 「ユキメさんが、クジに細工して、俺たちとセンゴクマンを戦わせたりは出来ないんですか?」 憐の質問もごもっともで、今までユキメはこれ以上に難しいことを、あっさりとこなしたりしている。 あくまで憐たちの目標は、センゴクマンに勝つことなので、それさえ果たせれば言うことない。 「それでもいいけど……して欲しい?」 しかし、答えはNOだ。 確かにセンゴクマンに勝てればいいのだが、それは『イクサクニヨロズ』結成当初の話。 今は、全国大会を勝ち上がりたい、という目標に置き換わりつつあった。 だからセンゴクマンをライバル視するのは変わらないが、あくまで彼らは障害の一つにしか過ぎないのだ。 一同の沈黙を否定と取ったようで、ユキメはさらに話を進める。 「ま、と言うわけだから、色々なチームを研究してみましょう。まずは……強豪チーム、『T・S・C』ね」
作者的な説明であるが、これは優輝少尉さんが現在執筆している作品、「T・S・C物語」で登場する主役チームである。 細かいことは、「T・S・C物語」を熟読すべし。 「あ……この人」 秋彦が、ふと一人の人物を見て声を漏らした。 「もしかして、逃げちゃダメだを連発するような名前の人がいたとか?」 「違うっ!! ンなこと言ったらその弟の方がそれらしい名前じゃないかっ!!」 瑠璃華の横槍で、反射的に秋彦が叫ぶ。 ……もちろんこのネタの対象となった名前の人物は、猪狩という苗字の二人である。 「ただ、オレはこの猪狩兄に関して、いくらか噂を聞いたことがあるってだけ!」 「猪狩慎也。『T・S・C』のリーダーにして、その相手の動きを知っているかの如く行動するその読みの強さで、その名を馳せているベテランプレイヤー……ってとこかしら?」 「そうっす」 ユキメの、その情報力に僅かながら驚愕しながらも、秋彦は頷いた。 というより、ユキメの言葉は秋彦が聞いた噂そのものだった。 「ただ、『T・S・C』のプレイヤーはベテラン揃いだから、一人を潰せばいいってモンじゃないわ。五十嵐レイの速攻性、四十間輝羅の援護、宮本涼二の遠隔射撃、悠木騏の積極性、雛姫彩夏の暴そ……まあともかく、そういうベテランならではのコンビネーションも厄介だし。大体上杉クン……」 「上杉クン?」 ふと疑問に思った憐が、反芻してみせた。 「……知り合いに同じ苗字の人がいて間違えちゃった。上杉優輝も、他の面々以上のベテランだから。強いて言えば、猪狩弟の経験が浅いのが欠点って言えば欠点だけど、チームとして出さなければいい話だし、それに出たとしても初心者ならではの読みにくさが、かえって怖いかな?」 ここで、憐はいったん顎に手を添えて、うなる。 (策を練るのは俺の役目だな。今は知りえることを吸収するのが先だが……) (きゅ〜い〜ん♪ さくっといきましょ〜♪) (……だあっ、てめぇは邪魔だっ!!) (うにょ〜んでございます、うにょ〜んでございます♪) いくら憐が、自分の世界で考え事をしていても、強引に割り込む人物が、彼には存在するのである。 結局、策など練られるはずもなかった。 と、そんなとき、ふと何かを思い立ったのか、瑠璃華がハッとした顔つきとなり、真面目な顔で、 「お前はキ○! キラ・ヤマ……」 「あんたはアスラ○・ザラかぁぁぁぁぁぁぁぁぁいっっ!!」 で、チサトのツッコミが飛んだ。 「瑠璃華さんは、友人のラステ○やミ○ルが、旧友のキ○に殺されたとでも言うんですかっ!? 他にも、この五十嵐という人の苗字をごじゅうあらし、とか読んだり、悠木さんの名前を見てドリルな武器が主なマシンのパイロットを思い出したり、雛姫さんの名前を見て史上最強の女子高生エクストリーマーここに誕生、とか言うつもりですかっ!?」 「……いくらあたしでも、そこまで言うつもりはないんですけど。ただ、この四十間って人の名前を見て、思わず……」 この日を境に、チサトは何気にマニアックな知識を持っている、ということが発覚したのであった。
作者的な説明であるが、これは火山十三さんが現在執筆している作品、「天国なんか待たせておけ! 明日よりも友を選んだ男(+女一人)たち」で登場する主役チームである。 細かいことは、「天国なんか待たせておけ! 明日よりも友を選んだ男(+女一人)たち」を熟読すべし。 「ふむ、ガイジンか」 真っ先に口を挟んだのは、いつもは寡黙な修一だった。 「そ。アメリカ出身の六人組よ。全員の武器は主に拳銃。自動小銃なんかは使わない主義らしく、ハンドガンナーな子たちみたい」 「火力は低そうですね。ユキメさん」 「秋彦君の言うとおりかな、一応。だけどそれを補って余りある射撃精度、反射神経、運動量etc……が彼らにはあるわ。時にはトリックプレーも行うラフさも兼ね備えた実力者、ってとこかしら」 と、ここまでユキメが語ってはいたが、ふと修一に目を向けると、修一は軽くうつむきながら唸っていた。 その表情はどことなく暗鬱としたものである。 「どうした?」 「いや、憐殿。我はエゲレス語が話せぬのだが……我が話しかけたら、この者たちに失礼にならないであろうか?」 「話しかけるな。黙ってろ。寡黙になれ。後方で待機してろ」 (えー? ランゲージは、世界を結ぶ架け橋なんだよ♪ 意思を伝えようとする、熱意、熱意が必要なんや♪) (……じゃあてめぇは、すっげぇにこにこした表情で「ばーか」とか言われてみたら、どう思うんだよ) (やだなぁ、そんなに褒めないでよ♪) (褒めてない。聞いてるんだよ!!) (ボクはテロリストになんて屈しないっ!! ノーモアブ○シュ!!) (……お前に聞いた俺が馬鹿だったよ) (失礼な♪ 本当の馬鹿は楽しいんだよ♪) 途中で修一との会話を切り、憐は霧華と会話をしていたため、どこか百面相気味になっていたりしていた。 傍目から見れば、非常に間抜けな光景である。 だって、他の人には、憐と霧華の会話なんて聞けやしないのだから。 「でも、憐さんの言うことは、一理ありますわね。だって……相手の名前すら言えませんもの」 ガイジンさんの名前すら正確に言えない男、修一。 本当に英語が駄目な男である。
作者的な説明であるが、これは松永和泉さんが現在執筆している作品、「Nuova Legenda〜新しい伝説〜」で登場する主役チームである。 細かいことは、「Nuova Legenda〜新しい伝説〜」を熟読すべし。 「名前、ふりがなをふってもらわないと、読めないね」 何か、どこぞの掲示板の会話を参考にしたような、そんな美奈の発言だが、気にしないで欲しい。 とはいえ、名前が読みづらいのは間違いないのだが。 多分、作者もふりがなをふっていなければ、読めなかったことだろう。 「一般的な見解から言わせて貰えば、唯一の経験者である朝霧舞子のワンマンチームととるのが無難なところね。けど……」 「けど……なんですか、ユキメさん?」 「じゃあ逆に質問よ、秋彦君。皆はサバゲーを始めてから大した時間は経ってない。なら皆は、自分たちが雑魚チームだと思う?」 「……思いませんね」 「そう。経験はどうあれ、代表を自力で掴んだ、実力のあるチームなんだから、決してワンマンチームだなんて思うことは控えた方がいいわ」 ただ、ユキメの言葉に反応する人物は、ここにはいなかった。 別に『Nuova Legenda』をなめてかかっているわけではない。 経験に関しては自分たちも、このチームとどっこいどっこいといったところだからだ。 だからこそ、類稀なる運動神経だったり、神がかった戦術で勝ちたいところである。 だが、チームの頭脳とも言える憐が、今は脳内漫才のおかげで、活躍できるかどうかが疑問視されるという危機的状況だったりする。 (ヌォバッ!! なんか、指先一本でダウンを奪える作品の、雑魚みたいな感じだね♪) (ローマ字読みするな! 大体そんなやられ方をした雑魚はいねぇ!!) 最近憐は、心の中でこのようなボケとツッコミが毎日のように交わされている。 どれだけ言っても、霧華はボケを止めようとはしないので、一時期ツッコミも止めたのだが、そうすると延々と霧華のボケを聞く羽目となり、気が滅入る一方なのだ。 しかも気落ちすればするほど、憐は精神が崩壊して、この身体を霧華に明け渡すことになってしまうのではないか、という被害妄想にかられるようにもなってしまっていた。 だから、憐のこのツッコミは、憐自身を保つための行為でもあったりするのだ。 無論その分、いつ胃薬が必要になるのか、という恐怖もあったりするのだが。 と、そんなとき、ユキメがぽつりとつぶやいた。 「有馬麻耶のこの性格は、きっとあり(の)ままや……」
その日、北海道函館では、記録的大雪が観測されたと言う。 ただし同時に、直江雨続大先生が函館に帰郷していたので、結局「いつものことか」という結論に落ち着いたらしい。
作者的な説明であるが、これはまるえさんが現在執筆している作品、「ガブリエル様の白き翼の下に〜猫かぶりお嬢さま奮闘記〜」で登場する主役チームである。 細かいことは、「ガブリエル様の白き翼の下に〜猫かぶりお嬢さま奮闘記〜」を熟読すべし。 「へへ〜、実はここって、私が前に通っていた学校の姉妹校なのよ」 以前、さりげなくユキメが持ってきた資料の中に、確かにこのチームの情報も存在した。 そのときは、ユキメはあまり期待はしていなかった。 「頑張って欲しいが、勝ち残るのは難しい」という奇跡にすがるような見解だっただけあって、彼女らの出場はユキメにとっても少し嬉しいらしい。 もっとも、『イクサクニヨロズ』の敵になるかもしれない相手なだけあって、そうなったらと思うと心境は複雑なところだが。 「全体的に見たら、相手の裏をかくような戦術が多めかな? もっとも最後は失敗したみたいだけど」 ユキメはぬたりと、どこか粘着質な笑いを浮かべる。 もっとも、そのあからさまにあくどいことを考えているその表情を見た憐たちは、経験上ろくでもないことを考えていることが、コンマ1秒もたたないうちに脳から導き出されていたり。 「だったらユキメさんの見解は、どんなものなのですか?」 あえて憐は、自らの思考に頼らずに、ユキメに対し率直に切り出すことにした。 もっともそれで茶を濁すようなユキメではない。 大抵はあっさりと嘘をつくか、本音を話す……とまあつまりアテにはならないのだが、念のためである。 「うーんそうね。女の子がかわいいかな?」 「……関係ねぇっす。しかも全員女性ですし」 やっぱり、ユキメの考えていることは、憐にはよくわからなかった。 そんな、憐とユキメの会話をよそに、一方では他の面々が、『聖ガブリエル女学院高等部サバイバルゲーム愛好会』の写真を見て、それで語っていた。 「何だよ……。この全員が全員コスプレなんかして……。特にミニスカだなんて、美奈ちゃんとは違って、ナイフくらいならダメージを通さない戦闘用ストッキングをつけてないんだし……無茶苦茶危ないじゃないか……」 彼らの中で、最もサバゲーの経験が多い秋彦は真面目に考え、 「ふ、ふん。わたくしとは違って、正真正銘のお嬢様みたいじゃない。けど、負けませんわよ!」 妙に対抗意識を燃やす麗奈。 「……アンネにオソカルとはな」 やっぱり英語が下手な修一。 「……あの子には、顔をあわせないようにしよう」 千歳とのことを思い出し、チサトは心に誓う。 そして瑠璃華は、妙に真面目な表情で、写真に写る一人の人を見つめていた。 「……ん、どうした瑠璃華? その思いっきりオスカルな人がどうかした?」 「秋彦。この人って、悪魔が聖なる力に目覚め、ヘッド化したっていうワンダー・マ……」 「そりゃ、シヴァ・○リアだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!」 誰にもわからないであろうネタだった。
「1万キロと2千キロ前から走ってる〜♪ 8千キロ過ぎた〜頃か〜らもう劣化しなくな〜った♪」 瑠璃華が美声で、アニソンを熱唱していた。 次に歌うのか、もう一個のマイクを片手に待機する麗奈。 憐、美奈、修一の三人も、熱心に曲を選んでいる。 余談だが、憐は例の霧華事件の影響で、男性と女性の声を使い分けられ、一人デュエットを出来たりする。 で、そんな5人を尻目に、何故かユキメとチサトの二人は、勉強していた。 今も歌を聞きながら、ユキメは数学Vの問題文とにらめっこ。 チサトは英語の単語を、黙々と暗記している。 そんな本人たち曰く、 「だって、私たち受験生だし」 一応、彼女たちは勤勉な学生であった。 そして、秋彦は……。 「……あの、肝心なセンゴクマンの資料は?」 秋彦以外の一同は、センゴクマンのことをすっかり忘れていた。 お前ら本当に、センゴクマンのことを敵視しているのか?
ここは貸しアパート『むつ』の101号室。 101号室は、別名管理人室。 つまり、来栖浩二が住む部屋だ。 だが二、三日程前から、この部屋には住人が増えていた。 その人物の名は、来栖海里。 浩二の養女にあたる、ショートヘアの小柄な少女だ。 海里は、少し大きめの制服を身につけ、鏡の前で、その着こなしに間違いがないかを、熱心に探していた。 その制服は、濃紺のセーラー服。 知る人ならば、その制服は『むつ』からさほど遠くない位置にある高校、山城高校の女生徒の制服であることがわかるだろう。 「小学生並みのたいか……ごぶへっ!!」 海里は、余計なことを漏らした浩二に対して、容赦ない飛び道具攻撃をかました。 ちなみに弾は、金属製の目覚まし時計だったりする。 「酷いじゃないか!! 昨日今日で親子の関係になったばっかりの者に!!」 「都合のいいときだけ、他人になるな!!」 少ない時間で父娘喧嘩がかませるほど、二人は仲が良くなったらしい。 「うう……わしの娘が、もう反抗期に……」 「……そんな発言ばかりしていたから、兄や姉が父から離れたのだと思うが」 補足しておくが、浩二にはしっかり実の息子や娘が存在する。 浩二は元々、関東圏でエリートサラリーマンでやってきて、そのとき出来た子どもたちらしい。 だがその子らは既に親離れをしているそうだ。 「海里も、いつかはわしの遺産を狙って……」 今となっては、その子どもたちは浩二の遺産だけに興味を持つようになってしまっていた。 だからかどうかは知らないが、今は青森で貸しアパートの管理人になっているそうだ。 海里も、自分の兄や姉にあたる人と出会ったが、そのときの海里の評価は最悪ともいえるレベルだった。 だからこそ、せめて自分が浩二の力になってあげたいと思うようになってきたところである。 「父。私は別に、父の遺産が欲しくて養女になったわけではないのだから、落ち込むな」 最初から、養女になったことなんかに目的なんてなかった。 しかし今の彼女は、養女になった直後以上に浩二の養女になったことに感謝していた。 『むつ』には“彼ら”が……あの人が住んでいたからだ。
「今日こそ負けねぇぞ! オラオラオラァ!!」 「ふむ、やるな。憐殿」 本当にいつものように、憐と修一は箸を使っての小競り合い……つまりは食事争いに精をなしていた。 無言にかつ優雅に食べる麗奈。 秋彦と瑠璃華の、バカップルぷりも、相変わらずだ。 そんな中、細々と食事をとっていた美奈が、ふと皆に質問をした。 「ねえ皆。管理人さんの娘さんって、見た?」 「ああ、見たぜ。小学校高学年くらいの女の子だろ?」 質問に返答したのは憐だった。 憐は何かを思い出そうとするように、視線を上にして思案する。 「あの子って、実は高校生らしいよ。山城高校に転入するんだって」 「マジ!? ……って、修一、コラァッ!!」 一応美奈の言葉には反応した憐だったが、次の瞬間には修一とのチョップスティックバトルが再燃していたり。 と、そんなとき。 ぴ〜んぽ〜ん。 「ん? 誰だろ?」 どこぞのマンションとは違い、まっとうなチャイムの音で、秋彦と瑠璃華は動いた。 時間的にはあまり人が来るとは思えないが、チャイムが鳴っている以上は人がいるのは間違いない。 無心で秋彦が扉を開けると、そこにいたのは彼らの管理人だった。 「おはよう、秋彦君、瑠璃華君」 「「おはようございます、管理人さん」」 『むつ』の管理人さんこと、来栖浩二の登場に、二人は軽く戸惑った。 そんな二人を尻目に、浩二は単刀直入に切り出した。 「実は君らにお願いがあってな。……海里、前に出なさい」 「初めまして……」 (なるほど。この子が美奈ちゃんの言ってた子か……。本当に小学生にも見えるなぁ) (ちょっとかわいい……。秋彦に色目を使わないよね……) 海里は、二人の感想の通りの女の子だった。 ショートヘアーで活発的に見えるのだが、身長は小学生並みと言っていいくらいで、もちろん容貌はかわいらしいという評価を受けるものだ。 少し表情が硬い印象を見受けられるのだが、それさえなければ間違いなく人気者になれるだろう。 「私の名前は、来栖海里と申します。今日から先輩方の後輩になります。よろしくお願いいたします」 表情と同じで、やや言葉も硬い。 しかし丁寧なやりとりは、決して秋彦と瑠璃華の両名には不快感を与えるものではなかった。 「うん、こちらこそ。オレは伊達秋彦。苗字で呼ばれるのが嫌いだから、名前の方で呼んで」 「あたしは明智瑠璃華。苗字で呼ばれるのが以下同文。というか、あたしたち全員のこと、苗字で呼ばないで欲しいな」 「……とまあ、こんなわしの娘なんだが、海里はまだ学校の場所を知らなんだ」 「つまり、オレたちが一緒に登校すればいいんでしょう? 任せてくださいよ、管理人さん」 何気ない、日常でありふれている、そんなごく普通会話だった。 だがそんな状況で、海里はにやりと笑っていた。 日常に溶け込んでいいはずの笑顔なのに、溶け切ることのないその笑顔で。 彼女の目は、“彼”を見つめていた
変わった口調で、海里の自己紹介を終わらした。 ここは山城高校1年5組。 先ほど、秋彦や瑠璃華と出会ったときは、先輩後輩の関係だったので丁寧な口調だが、今度は同級生。 猫を被るより、素の自分をさらけ出した方が、彼女にとって楽だった。 もちろんそれで、クラスから孤立する恐れはあったのだが、そのときはそのときの精神で、海里は気楽に考えていた。 もっともその判断は、ここ山城高校では大正解だったのだが。 「うわー、あたしの妹にしたい……」 「ハァ、ハァ、海里ちゃん……」 「我が校はぁ〜、来栖海里を〜、歓迎するでぇ〜ありますっ!!」 「よろしく、来栖さん!!」 相変わらず、山城高校はお気楽なメンバーの集まりだった。 「彼氏いるの?」 「好きな本は?」 「勉強できる? 私に教えてっ!」 「前はどこに住んでいたの?」 「スリーサイズを教え……ごべへっ!!」
「来栖さん、大丈夫?」 クラスメートの心配は、質問攻めにあった海里の耳には届いていなかった。 せめて授業が始まるその時まで、身体と心を休めようと、机につっぷす海里であった。 (ち、本当なら適当なときに抜け出して、彼らを呼び出す予定だったのに……。こんなことなら、道中で話しておくべきだった) 優しげに囁くかの如く、緩やかな眠気が海里を睡眠にいざなっていく。 (1時間目が終わってからが勝負か……。待っていろ……センゴク……すぅ、すぅ……) ちなみに、海里の寝顔がかわいくて、クラスメートたちが海里の顔を覗き見していたのは、限りない余談である。
海里は何とかクラスメートの質問攻めから抜け出し、2年の教室の方へと早足で向かっていた。 周りの生徒は、見慣れない生徒でしかも小学生ともとれる体格の少女の存在に、一様な様子を見せていた。 本来なら、驚きとかそういう感情なのかもしれない。 けどここの生徒は……まあ特殊な性癖があるとだけは言っておこう。 「わたくしが勉強を教えている意味が、ないじゃないですの。ここを、どうしたら「炎の闘球児の握力は500kg以上で、その力は墓石を破壊したほどのものである」なんて訳せますの?」 「すまぬ」 「謝るくらいなら、わたくしの時間を返して欲しいものですわ」 海里が探した人物が、いた。 「……来栖殿?」 「管理人さんの所の……?」 修一と麗奈は、海里の姿を見つけると同時に(どうしてこんなところに?)といった表情を共に見せていた。 別に1年と2年の棟が遠いわけではないのだが、やはり1年が2年を尋ねるというケースは滅多にない。 「どうかしたのか? 手助けできることがあるならば、我らが手を貸すが?」 「苦労を一人で背負うだなんて、水臭いですわよ。来栖さん。わたくしに出来ることがあるならば、力になりますわ」 修一は嫌味がまったくない薄い笑みを浮かべ、麗奈はどことなく不敵な笑みを海里に見せた。 海里はというと、笑顔が隠せず、少しの間だけ俯いた。 年頃の少女らしい、そんな笑みで。 顔を再び上げたときには、再び感情を殺したような表情に戻っていたが。 「いや……今から話が出来ないでしょうか? 出来れば人気のない場所で」 用件だけを言うと、海里は二人を牽引するように、修一と麗奈の横を通り過ぎ……。 「ついて来てください。センゴクレッド、センゴクイエロー」 海里はにこりと笑った。 当然ながら、修一と麗奈の表情は強張ったものとなっていた。
別に人気がまったくない、というわけではないにしろ、学校では不人気スポットの五指に入るほどの場所だった。 以前は見渡しがよく、カップルの安住の地(?)として、結構人気はあった。 が、自殺騒ぎがあり、再び自殺が発生しないようにバリケードを作ってしまったのだ。 おかげで見渡しが悪くなったので、ここは不人気なスポットとなってしまったのである。 だが言い換えれば、ここに人が来ることは滅多にないことになる。 「この辺りでいいでしょう」 吹かれる風に対し、短めの髪を押さえ、海里はにこりと微笑みかける。 笑みを向けられた修一と麗奈は、逆に眉をひそめている。 「言いたいことがあるなら、さっさと言いなさい」 麗奈は、冷たい声で単刀直入に切り出した。 率直に切り出すのは危険と言えば危険である。 だからといって、話を長引かせて余計なカードまで相手に渡したくない。 既にセンゴクマン絡みだということが明らかなので、切るべきカードそのものが存在しないのかも知れないが、勘違いというケースもないわけではない。 自分の生活が危ぶまれるからこそ、麗奈は慎重に話を進めたかった。 「まずは自己紹介ですね。私は怪人作成怪人と呼ばれた者です。以前、貴方方の仲間である直江霧華のファンクラブたちを怪人へと変身させた、張本人です」 「……ちょっとよろしいかしら?」 引っかかった点があったのか、麗奈は小首をかしげながら海里に尋ねた。 「まず、わたくしたちの仲間の名前は直江霧華でなくて、直江憐ですわよ。あともう一つ。……ファンクラブの怪人って、何のことですの?」 「? 知らないのですか? バックに“双剣”のユキメがいるから、てっきり知っているのかと……」 ここで、修一と麗奈の二人は、予想外かつある意味予想できる人物の名前が出てきたことに、バナナの皮を踏んづけたが如く、激しくずっこけた。 幸い、二人とも頭を打つようなことはなかったが。 「すまぬが、事情を説明してくれないだろうか」
「ふむ……」 「確かに私は、一度“双剣”のユキメに銃口を向けた。……だけど今はそれを後悔してる」 修一と麗奈の二人は、海里と似た過去を持つ少女を思い出した。 彼女と同様に、魔王クラーマに裏切られ、途方にくれ、自殺未遂までして……今は愛する人の下で、笑顔を振りまいている少女、瑠璃華のことを。 ここにも、魔王クラーマの被害者がいたのだ。 「当然、“双剣”のユキメから、貴方方がセンゴクマンのクローンであることも聞いている。私を信じられなければ、私を撃てばいい。だから……」 海里の表情は、自分の存在が消えるかもしれないという恐怖と、自分を受け入れてくれるかもしれないという希望の表情が、共に浮かんでいた。 嘘偽りが、全く存在しない、ただ何かにすがる小動物のような、そんな表情。 それでいて恥ずかしいのか、目を逸らしながら頬を指で掻く仕草がどこかかわいらしい。 「……私の友となって欲しい」 正直な話、修一と麗奈が今の話を聞いて、全てを信頼できるか、と言われたら嘘になる。 憐だったら、戦略的に考える傾向があるので、この答えはきっと悪いものだっただろう。 そうなると美奈も憐の意見を取り入れるに違いない。 秋彦はわからないが、瑠璃華は自分と似た海里を受け入れるかもしれない。 でも、そんな彼らのするであろう意見には惑わされず、修一と麗奈はにっと笑って、答えた。 「ああ」 「力になる、って言ってしまいましたから。わたくしに二言はありませんわ」 「そうか!! ありがとう、先輩!!」 と、ここで海里は満面の笑みを浮かべて、真っ先に修一の胸に飛び込んでいった。 どことなーく、お兄ちゃん大好き♪ 的な雰囲気が漂わないでもないが、そんな雰囲気は妹萌えの属性を持つものでない限りわからない。 もちろん、この場にそんな人物がいるはずもないし。 「ふふ、修一先輩の胸の中、暖かい……」 ぴしぃっ! 「ちょっと!! いきなり修一になれなれしすぎるわよ!!」 「ではいきなりではなければいいのですね。修一先輩、好きです」 「なっ!!」 いきなり振り返っての、愛の告白。 もちろん、海里の表情は、恋する乙女のそれである。 顔をほのかに赤らめて、上目づかいで男の人を見つめれば、誰だって……。 「む、我は隙だらけだったのか……」 「いや……私が言ったのはその“すき”ではなく……」 まるでわざと、愛の告白を無視するかのような、見事ともいえる修一の返答だった。 要するに、修一は超にぶちんだった。 「私は修一先輩を愛……」 「って、させませんわ!!」 「何故ですか!? 麗奈先輩は、修一先輩とは何の関係もないはずですよ」 「うっ……そっ、それは……と、ともかく修一にひっつくのはやめなさい!!」 「嫌だ!」 「何ですって!」
「ふむ。麗奈殿も来栖殿も、早速仲良くなったか。いいことだ」 どこをどう見たら、そういう感想が出てくるのかわからないような感想を、修一は呟いていた。
彼女は3人にわからないように、身体を遮蔽物に隠して、3人の様子を見つめていた。 どのような動きをしても対応できるように身を構えているが、実戦経験のほとんどない彼女は手汗がにじむし、武者震いも止まらない。 彼女の表情は、決して晴れやかなものでなく、歯をぎりっと噛み締めた。 とはいえ、彼女は動かない。 まだ……そのときではない。
貸しアパート『むつ』のポストに、一通の手紙が投函された。 で、その数時間後。 「よく聞け、一同」 なんだかよくわからない、憐の掛け声から、『イクサクニヨロズ』ミニ会議が始まるのであった。 「先日、俺たち宛てに、一通の手紙が届いた。嬉しいことに、俺たちに対し、練習試合を行いたいとのことだ。異論はあるか?」 「「「「「「ありません」」」」」」 「……」 憐たちは、地方大会、東北地区大会と試合経験が明らかに少なく、他のチームとの練習試合はほとんど出来なかった。 実際、両大会の前日も、自分たちが分かれて試合をしていたくらいだからだ。 他に試合をしたことあるチームといえば、秋彦が所属している社会人サバイバルゲームチーム『ファングクラッシャー』くらいである。 まあ『ファングクラッシャー』は、実はサバゲー会ではそこそこ知名度もあるし、実力も少数ながら高い。 よって、相手に不足はないのだが。 しかしやっぱり、同一のチームばかりと戦って、サバゲーが上手くなるとは限らない。 「はーい、質問です」 「美奈。何だ?」 「何処のチームですか?」 「東北大会、青森代表決定戦での対戦相手『ITACO』だ。何でも彼らだけでなく、『ITACO』の師匠にあたるチーム『OSYO』も、俺たちを稽古してくれるそうだ」 ここで、一同は「お〜っ」と感嘆の声を上げた。 とはいえ、全員が全員、『OSYO』を知るはずがな……。 「『OSYO』かぁ。一度戦ったことあるけど、すんごいベテランチームで、戦い方は参考になるよ」 と、秋彦曰く。 どうやら彼は、『ファングクラッシャー』のメンバーとして、一度対決したことがあるらしい。 同じ青森県のチーム同士、やはり戦う機会はあったようだ。 「とまあそこでだ。次の日曜日に向けて、秘密兵器やら少なくなってきたBB弾やらを購入しておきたいと思う」 「「「「「「異議なし」」」」」」 「……」 ここで賢い読者の皆様方なら、現状での不審点に気づくであろう。 そう、人数が多いのだ。 「……どうして来栖と、真夜がここにいるんだよ」 そんな、振り絞ったような憐の声に、無口な真夜はともかく、海里は表情をあまり変えずに即答した。 「サバイバルゲームに興味があるからだ。それに、ここにいれば修一先輩と一緒にいられるからな」 「って海里! 修一にひっつくのをおやめになったほうがよろしいのではなくて!?」 「そういう麗奈先輩こそ、修一先輩の腕を硬い胸に押し付けて、先輩が嫌がっているのではないですか?」 「!! そ、そういう海里の方が、よっぽど硬い胸じゃあありませんこと!?」 「!!」 まあ、麗奈と海里のやりとりから、海里の発言の後半が本音であることは明らかであった。 とはいえ、前半が全部嘘かと言えば、それは違う。 海里自身、実は結構ガンマニアだったりするのだ。 あと、修一と麗奈は、海里の正体のことを憐たちに話していない。 元々修一は人のことを思いやる人間で、話せば少なからず憐たちとの間に亀裂を生むことを恐れていた。 故に、二人は相談して、結局そのことを話しはしなかった。 恐らく、憐たちが知ることはないことであろうし。 「……」 「そういえば、オレと瑠璃華が、真夜のことを呼んだんだっけ。大体、こんな会議自体が唐突すぎだし、まあ我慢してくれよ」 「……」 「ごめんね、真夜」 とまあ、真夜はそんな理由だった。 遊びに来て、いきなり訳のわからない会話をされても柔軟に事態に対処するあたり、意外と真夜は応用が利くのかもしれない。 「……」 「えーと、自分も買い物についていく……って、あんまし面白くないかもよ?」 「……」 「ま、気にしないならいいんだ」 秋彦の言葉に、適度に首を使って返答する真夜。 今日は休日ということもあって、真夜は私服なのだが……そんな真夜の服装はいつもの黒頭巾、黒手袋を装備しながら、黒装束に黒の足袋だった。 もしこの場に、黒子研究部の部員がいたならば、真夜を「貴方こそ黒子の中の黒子!!」と賞賛を称えること、間違いなしである。 「……それにしても、先輩たちは真夜先輩の言いたいことが、何故わかるんだ?」 元……というか現在でも特殊能力を保持しているので、現、なのだが、怪人である海里にも謎の出来事だった。 「……」(ヒ・ミ・ツ♪) 「真夜って、結構お茶目なんだね……」
最近のご時世から言って、商店街というのは不況の波にさらされているものなのだが、ここはその限りではない。 都市部から少し離れているため、便利なものが集う場所が、ここにしか存在しないのが、その理由の一つだ。 実際、麗奈はここにあるスーパーを愛用していたりする。 「ここで結婚すると、必ず仲睦まじい夫婦になるって伝説があるんだよね、憐君」 もう一つの理由が、この噂だ。 わざわざ遠くから、ここを結婚式場として選ばれるほど、ここは有名なスポットなのだ。 6月なんかは、仏滅であるにも関わらず、式場が埋まったりするし。 他にも、裏でコロシアムや非合法のカジノが開かれ、大々的な資金の流通の場となっていたりするのだが、(現)一般人である海里や、ここから少し離れて住んでいる真夜なんかは、知らない。 なお、『イクサクニヨロズ』の面々は、ユキメのつながりから裏の人間と知り合いだったりするので、一応知っていたりする。 「ここだよ、真夜君、来栖さん」 目的の場所に到着した海里と真夜の二人は、美奈の言葉に顔を上げて看板を見て……仰天した。 ホビーショップ“武器屋” 「何だ、この矛盾した名前はぁぁぁっ!!」 「……!」 「ったく、何だよ。来栖も真夜も、突然」 真夜は相変わらず言葉を発していなかったが、どうやら海里と同じようなことを言っていたらしい。 そんな呆然としている二人を尻目に、一同は怖気づくこともなく、入っていった。 まあ多少怪しげな名前ではあるが、前の六人に倣って二人はついていくことにした。 「いらっしゃい」 「お久しぶりです、取猫(とるねこ)さん」 出迎えてくれたのは、少し小さめの帽子を被って、りんご型の太った体型で、柔和な表情の髭のおじさんで、なぁんとなくステテコパンツが似合いそうな男の人――もうちょっと具体的に言えば、8人の導かれし者たちの一人で、その後1000回遊べる洞窟とかに潜ってそうなおじさんに良く似ていた。 ここでその人物の名前を言ってしまうと、キャラクターの使用料云々で訴えられそうなので、あえて言うのはやめておく。 もう言っているのかもしれないが、やっぱり止めておく。 「今日は寧々(ねね)さんじゃあないんですね」 「流石に、寧々ばかりに頼ってもいられないよ」 秋彦と取猫は、常連ということもあって、仲良く会話をする。 以前に会ったことのある憐たちはともかく、海里と真夜の二人は、どうしてもファンタジー世界に入り込んだこの雰囲気に飲まれ、呆然と立ち尽くすだけであった。 その間にも、取猫の勧めで『イクサクニヨロズ』の面々はグッズの数々を選んでいった。 購入したのは、こちら。
特に真夜は。 「……」(カ・イ・カ・ン♪) 「真夜、それはネタが古いよ」 電動ガンのその振動と、相手に当たる瞬間などが面白かったのか、弾を込めては撃ち、撃っては弾を込め……と、多分店にある全ての銃を撃ちつくしていた。 なお、真夜はサバゲーをやるわけではないので、購入はしなかった。 海里も海里で楽しんでいたが、ここで少し海里の好みが判明した。 小銃の類を選ばないのだ。 とはいえ生粋のハンドガンナーというわけではなく、ショットガンも選んで買っていった。 「にしても、お嬢ちゃんのような子が、大きいデザートイーグルやコッキングが固いM3ショーティを選ぶとはね」 「店長、それは違う。この固さ、それにこの反動が、銃を撃っているという気にさせるんだ」 まあそれなりに、海里には持論があるらしい。 美奈は、前回の戦いにおいて、弾切れとなったことが印象深いのか、弾をたくさんしまえるようなベストを購入。 ユキメの知り合いに改良してもらったコルトと、最速の弾込め、そして数多くの弾。 ここに青森最強(多分)のアタッカーが誕生したのであった。 修一は、さらに隠密性を増すべく、最新式のサイレンサーを購入。 さらに忍者らしくなったと言える。 「……それにしても、憐。お前は“それ”で何をしようってんだよ?」 秋彦の疑問はごもっともで、秘密兵器はともかく、糸を何に使うのか、疑問は増すばかり。 「秘密だよ。ま、ウチにはシュウもユキメさんもいるし、役には立つだろ」 ただにやりと笑みを浮かべる、その憐の表情は、間違いなく策士の笑みであった。 普段、ユキメにいいようにされているからなのか、それとも霧華にふりまわされているからか、彼は間違いなく鬱憤はたまっていた。 要するに、来週の『ITACO』との試合は、彼にとっては鬱憤ばらしなのかもしれない。 ただ、他愛も無い一日だったはずだった。 しかし、そんなときだった。
突然、瑠璃華が叫んだ。 そう、皆にとっては「突然」の出来事だった。 ただワイワイガヤガヤして、楽しい時を過ごしていたそんな平和な時間での、突然の悲鳴。 秋彦を始め、一同は困惑した表情で瑠璃華を見つめていた。 しかし瑠璃華当人にしてみたら、それを気にしている状況ではなかったのだ。 身体を突き刺すような無数の殺気が彼女を包み込み、その殺意の意思が瑠璃華の脳を焼く。 「嫌っ!! 嫌ぁっ!!!」 瑠璃華の心を蝕むその殺気は、瑠璃華の平常心を削ぎ落とし、彼女を狂気へといざなう。 と、そんな半狂乱した瑠璃華の身体を秋彦は強く抱きしめた。 「大丈夫だ、瑠璃華!! オレはここにいる! オレはお前を裏切ったりしない!!」 理由こそわからないが、秋彦は瑠璃華の味方であり、彼女の支えだ。 そんな秋彦の行為の甲斐あって、瑠璃華の狂気は次第に治まりつつあった。 とはいえ、恐怖は取れることなく、秋彦の腕の中で、瑠璃華は身体を際限なく震わせていた。 ((……?)) 憐は、思わず視線を逸らし、あらぬ方向を向いた。 別に何があったというわけではない。 ただ、何かを感じた、としか説明は出来ないだろう、そんな……。 (殺気?) 憐の心にも届かない、そんな霧華の呟きは、憐自身の頭の中へと消え去っていった。
「再び出会うのは、かつて戦った戦友(とも) |