投稿小説だぜ

松永和泉さま作

『戦え! FANG GUNNERS!』外伝

Nuova Legenda〜新しい伝説〜

第5話


「県予選にて(その2)」
☆ゲーム終了後観客席☆

「危ない勝ち方やなぁ。一歩間違ったら終りやで」

朝霧明志がため息とともに吐き出すように言う。

「そーなん? 結構余裕っぽい勝ち方に見えたけど」

伊川潤が事も無げに返す。

「相手がショボすぎてよかった。あと作者の無知すぎなんも、やな」

(「ぐさっ」 作者心の声)

「第1戦を勝ったから、勢いついて一気にいっちゃうんちゃう?」

潤は妙に嬉しそうである。

「そう思いたいけどな…」

何となく先が思いやられる明志だった。

☆ゲーム終了後控え室☆

「ウチらホンマに勝ったんですよね?」

「元気があれば何でもできる!」

小野柄若菜と神仙寺郁華がはしゃぐ。

「元気があれば何度でもできるんです」

楠多聞がぼそっと呟く。

「何度でも? 何が何度でもなの?」

それを聞いた東雲美幸、多聞に尋ねる。

「あ、いや、何でもないです」

慌てて手を振る。

「おーい、ちょっと話があるからええか」

チームの隊長、朝霧舞子がみんなの注目を促す。

「危なかったが勝ちは勝ち、や。けど勝って兜の緒を締めよ、という。浮かれるのもええけど程々に、な」

「了解です。隊長殿」

右手をこめかみに当てて、おどけた敬礼をする有馬摩耶。

「次の試合まで余裕があるからそれまでは自由。時間までには戻ってすぐ出れるようにしといてな。そんなカッコじゃ目立つから気ぃつけよ」

「隊長は何するんですか?」

若菜が尋ねる。

「偵察に行ってくるわ。他所のチームの闘い方も見とかなあかんしな。一緒に来てもええけど大人しゅうしといてな」

結局郁華と美幸を除く4人が偵察、その郁華と美幸は控え室に残る事になった。

控え室の荷物番の役もあるが、何かしら相談する事があるようだ。

舞子、摩耶、若菜、多聞が控え室を出て行くと、郁華は自分の荷物の中から何やら取り出した。

「じゃーん。どうこれ?」

「何これ? どっから手に入れたん?」

意外な物が出てきて少々驚く美幸。

「とある筋から回してもらったの。これと美幸のそれ、あとこれで会場の視線はわたしらのもん!」

「… それって、朝霧先輩からオッケーもらってんの?」

「ええって言ってたし、ええでしょ」

「んー、じゃあ、それ以上は突っ込まない。好きにして」



迷彩服、女学生、空手家、素浪人がぞろぞろと歩く。

「白刃取りのねーちゃんや」

「やられ役の侍だ」

回りからひそひそと囁かれている。

「次も取るから応援してぇや」

若菜は気さくに声をかける。

(この人には緊張感ってないんか?)

歩きながら侍こと多聞は、そう思う。

(ワシなんて胃に穴が開きそうや…)

「この辺で見よか」

舞子はスタンドの隅の空席に腰を下ろし、3人もそれに倣う。

「この試合だけ見よ。見るだけでも色々と勉強になるし」

舞子の言葉に頷く3人。

「あっ、巫女さんがいたチームや」

回りが目ざとく見つけ、一気に広まる。

「巫女さんは?」

観客の一人が声をかける。

「おらん」

舞子が素っ気なく返す。

「呼んで来てや」

その声をかけた男性は、どうしても美幸を見たいらしい(そういう趣味なのか?)。

「あの子は用事言いつけてるから無理や」

舞子の声にやや怒りがこもっている。

観戦してるのに邪魔されてはたまったものではない。

「どうしてもか?」

なおも男性はしつこく尋ねる。

「あかんもんはあかんてゆーとぉやろがぁ!」

怒ったのは舞子ではなく、若菜だった。

「俺は客やで。客の言う事聞くんが務めやろ」

サバゲーマーにそんな務めはないと思うが…? どうなんでしょう?

舞子は平然と観戦。

摩耶もやや落ち着かない気分ながらも、同じく観戦。

「まーまー、落ち着いてください。巫女さんは大事な準備があるんです。どうしても見たいっちゅうんであれば次の試合で見れますから」

多聞が一触即発を察知し、大人な対応をする。

そしてその男のすぐ傍に近寄り、小声で囁く。

「巫女さんは怒ると手がつけられなくて、ワシと空手家のねーさん、武道合わせて10段ですが、二人がかりでも手におえま せん。それでもええんですか?」

武道合わせて10段というのは、もちろんハッタリである。

真っ赤だった男の顔が、一気に蒼くなる。

「お、俺、だ、大事な用思い出したわ。また今度にしとくわ」

喚き散らしていた男は、そそくさと去っていった。

「物分りのええヤツでよかったわ」(舞子)

「これでゆっくり観戦できるね」(摩耶)

「チッ、おもろないな」(若菜)

「やっぱりこんな事するんやなかった…」(多聞)



試合観戦後、控え室に戻る4人。

試合の感想や戦術等について、色々と話しながら帰ってきた。

舞子がふと時計を見ると、次の試合の準備をする時間になっていた。

「そろそろ準備しとこ…かぁ?」

部屋に入るなり言葉が途切れる舞子。

「な、何そのカッコ?」

たまらず若菜が尋ねる。

「エヘヘ。どぉ、似合う?」

嬉しそうに返す郁華。

「ちょっと前にテレビのCMでやってたのん、やってさ」

美幸が説明する。

「テレビのCM… そんなのしてたっけ…」

摩耶が考え込む。

「うーん… あ! アレっすか! けど…」

突如思い出したのは多聞。

「ワシも気になって調べたんですけど、知らない方が身の為かと…」

そういう言われ方をされると知りたくなるのが人間である。

「何々? 教えてぇや」

興味津々の若菜が、多聞に迫る。

「その話は後にして、そろそろ準備しとかなアカンで」

隊長からのお叱りが入る。

「ほなまたあとで教えてぇや」

「はぁ…」

二人は慌てて、次の試合の準備にかかり始めた。



「坤の方角よりNuova Legendaの登場ですっ!」

観衆がどよめく。

実力よりも衣装で、人気が先行してしまったようである。

「巫女さーん!」

一躍時の人(?)になった美幸。

1回戦では全く何もしていないのに、知名度はメンバー1である。

そして音楽が流れる。

「皆さーん、元気ですかー!! それでは早速、いってみよー!! ハイ!」

「1・2・3・@ース!!!」


途中まで歩いていた舞子はこの曲がかかった瞬間、顔が引き攣った。

「な、何やねん…」

その後ろを歩いてた摩耶、

「これはどっかで聞いたような…」

続いて出てきた若菜、

「あー、これかー! テレビで聞いた事あるなー」

そして多聞、

「…」

ネタを知っているだけに、赤面して俯いている。

一呼吸おいて、美幸と郁華が同時に登場。

美幸は1回戦と同じ巫女さんのカッコ。

郁華は看護士さんのカッコ。

いわゆるナースである。

「巫@み@ナー@! @女@こ@ース!」

郁華は一人ノリノリ(死語)で、歌いながら歩いている。

美幸はよくわからず、郁華の後ろを付いて歩く。

「最後にもいっちょー、ハイ! 巫@み@ナー@!」

ノリがよくテンションが高い曲だけに、観客も盛り上がる。

特に「その手」のお兄さんにはたまらなかった。

「最初に巫女さん出た時に、これはするて思てたんや」

「次の試合の登場も楽しみやな」

試合より登場や衣装の方で盛り上がってしまっている。

「な、何やねん…」

観客席で唖然としていたのは朝霧明志。

「ホンマに色物チームになってまうで」

「でもこのくらいの方がウケもいいし、相手チームに対するプレッシャーになるかも」

楽しそうな表情の伊川潤。

「いくらなんでもこの曲はまずい… 知っとぉ人は知っとぉからな」

「ちょい前にテレビのCMで流れてたやつでしょ。ケータイやったっけ」

「この曲の元ネタはパソコンゲームなんや。それもエロゲー」

「へ? した事あんの?」

「うん? な、ない。知らん知らん!」

慌てて頭を振る明志。

「やっとってもええけど。お互い大人やし、エロゲーしたらアカン事ぁないしね」

さらりと言い切る潤。

「で、それって面白い? 絵はエロエロなん?」

「だから知らん、っちゅーとるやろ!」



「むぅ、話には聞いてたが、かなりの人気やなぁ」

「人気はあちら、実力はこちら。最後は実力が勝つ!」

「せやな。一揉みに蹴散らすか!」

旧日本陸軍の軍服を着た男が言い合う。

「それじゃ登場してくださーい」

係りの人に促されて入場の通路に向かう。

「巽の方角より姫路歩兵第436聯隊…えーと第1大隊司令部付特務小隊の入場ですっ!」

「貴様と俺は同期の桜…」

入場曲、同期の桜が流れて一糸乱れず行進する様子は、某国の閲兵パレードを髣髴とさせる。

どこかで聯隊長(首領様)が見ているのかもしれない。

「ぜんたーい、止まれっ!」

先頭の者の掛け声で全員が一斉に止まる。

「ばんごー!」

「いーち!」

「ある!」

「とろわっ!」

「ふぉーーー!」(なぜか腰を振っている)

「ふゅんふ!」

各国の言葉でバラバラであるが、一応1〜5まで揃っているようだ。

「我々が姫路歩兵第436聯隊第1だいた…んがっ!」

喋っていた先頭の者が、慌てて口を抑える。

どうやら舌を噛んだらしい。

「相手さん大丈夫ですか?」

「ウチに聞かれてもわからんわ」


それを見ていた多聞と若菜が、ひそひそと小声で囁きあう。

「姫路歩兵、第436、聯隊、第1大隊、司令部付属、特務小隊、だ」

2番目に並んでいた人物が、代わりに説明する。

セリフ(と舌)をかまないように、少しずつ区切って喋る。

「今舌を噛んだのは小隊の隊長、御国野(みくにの)。私は大塩(おおしお)、だ。江戸時代の平八郎とは無縁だ」

舌を噛んで喋れない御国野に代わって、大塩がメンバーの紹介を続ける。

「次に控えしは花田、趣味は麻雀。姫路の雀荘に行けば会えるぞ」

「四暗刻単騎!」(意味不明)

ひょろりんこで目の下に黒っぽい隈ができており、不健康な生活を送っているように見える。

徹マンのしすぎかもしれない。

「その次が的形(まとがた)。同名の海水浴場が姫路にあるが関係ないぞ」

「じぇっとすとり〜むあた〜く!」(意味不明)

見た感じはややイケ面っぽいが、ガノタのようである。

「5人目が別所(べっしょ)。体格からもわかるように、かなり体をいじめてるぞ」

「ふぉーーー!」(意味不明)

メンバー中一番の体格を誇り、なぜかレイバンっぽいサングラスをかけている。

「殿(しんがり)は白浜(しらはま)。競馬が好きで、週末には姫路競馬場に引き篭もってるぞ」

「ライアン! ライアン!」(意味不明)

こちらはどこにでもいそうな、ごく普通の高校生である。

「ホンマに大丈夫なんでしょうか…」

「色んな意味で心配やけど、今一番思ってんは、こいつらとは関わりたないな」

「同感です…」

またも多聞と若菜が囁きあう。

「我が隊の紹介はこれで終り、だ。そこで…」

言葉を続ける大塩。

「そこで、何?」

若菜が合いの手を入れる。

「そちらのチームの紹介をお願いしたい。お互い自己紹介してこそ正々堂々というもの」

「そっちが勝手に言うたんちゃうん?」

「何でせなあかんのん」


今度は郁華と美幸が囁きあう。

「はぁ、なるほどね。じゃ、自己紹介。私は朝霧。一応リーダー。趣味は音楽鑑賞」

舞子は素っ気なく答える。

「私は有馬摩耶です。趣味は映画鑑賞です」

「小野柄若菜。趣味は他人に完勝」

「神仙寺郁華です。趣味は内政干渉です」

「え? こうゆう流れなんか?」


前の人のコメントを参考に、適当な事を言おうとしていた多聞は、予期せぬ方向に進んだ流れを妨げないコメントを考える為に慌てだした。

「東雲です。趣味は寺社仏閣鑑賞」

「うーんうーん」

気の利いたコメントを考えるが、焦って出てこない多聞。

「楠です。趣味は、えーと…他人への干渉です」

姫路歩兵(長いんで以下略)の全員はあっけに取られたようだが、大塩が口を開いた。

「…んー、何というか『かんしょう』が好きなんだな。でもいい、完勝するのは我が隊だ。そこで…」

「まだあんの?」

「紹介は済んだで」


郁華と若菜が小声で言う。

「この試合は『ボスヒット戦』でやりたいと思うが、どうだろうか?」

「なんそれ?」

若菜が即答で答える。

「お互いのチームから一人『ボス』を決めて、その『ボス』がヒットされたら負け、というルール、だ」

大塩が説明する。

ボスヒット戦は、動かない旗と違いボス自身もちろん動ける上に、もちろん狙って撃ってくる。

しかし人数的に劣勢であっても、ボスをヒットすれば勝ちになるので、逆転のチャンスも十分にある。

フラッグ戦より難易度が上がる。

「向こうが提案してくるっちゅう事は、そのルールに慣れとぉっちゅうこっちゃな」

「これは相手の罠じゃけぇ、乗っちゃいけん」

「わざわざ向こうの有利なルールに合わさんでええやん」


若菜と多聞と郁華が小声で囁き合う。

そんな部下の心配を他所に、舞子は決断を下す。

「ちょっと待って。確認やけど、それはボスがヒットされても負けってのを加えるんやね?」

「隊長! 話聞いとったんですかぁ?」

若菜が小声で突っ込む。

「そうだ」

大塩は頷く。

「んー、じゃあ、やりましょう」

「へ?」(若菜)

「おい!?」(多聞)

「マジっすか?」(郁華)

「え?」(美幸)

「隊長の仰せなら」(摩耶)


隊長である舞子の判断に驚く、NLのメンバー(約1名除く)。

「では交渉成立、という事で。してそちらのボスは、どなたが?」

提案したルールがあっさりと受け入れられ、喜びを隠せない大塩。

口調にその辺りが現れている。

「私がなるよ」

舞子はそのまま答える。

「ではこちらは御国野がボスに」

大塩は御国野の方を向くと、舌を噛んで喋れない御国野は、うんうんと頷く。

「あとこのバンダナを左腕に巻いて下さい。ボスという目印です。もちろんこちらも巻きます」

大塩は舞子にバンダナを手渡す。

赤い色のバンダナで、一見どこにでも売っていそうな物である。

舞子は摩耶にバンダナを結んでもらい、御国野は器用に片腕で結ぶ。

「それでは戦場でお会いしましょう」

キザなセリフを残して、大塩以下姫路歩兵(以下略)のメンバーは、自軍陣地に戻っていった。

隊長である御国野は、最後まで喋ら(れ)なかった。

「もう遭(お)うてるやんけ!」

若菜が思わず突っ込む。

「隊長、相手の土俵で相撲とるんですか?」

陣地に向かって歩きながら、多聞は舞子に聞いた。

「そんなん相手に『勝ってくれ』って言うてるようなもんですやん」

若菜も口を尖らして言う。

「私がヒットされなきゃええんやろ? 何とかなるやろ」

「な、何とかって…」

郁華も絶句する。

舞子にそう言われてしまえば、みんな納得せざるを得ない。



「ボスヒット戦て、どんなん?」

チーム同士の自己紹介からの成り行きを、スタンドで見ていた潤が明志に聞く。

「お互いのチームから一人大将を決めて、その大将がヒットされたらそこで終り」

「ふーん。相手チームからそうしようっていう事は、そのやり方に慣れてるって事なん?」

「普通に考えればそうやろな。ちょっとでも自分のチームが有利な立場でゲームができれば、それだけ勝つ可能性が高くなるからな」

「それって卑怯ちゃうん? 舞ちゃんなんで断らんかったんよ!」

いきなり怒りだす潤。

「そんなん知るかいや(知らないよ)。まぁ、舞子にゃ何か勝算があって、その条件を飲んだと思うけどな…」

当惑しながらも、冷静に判断する明志。

「けどな…」

言葉を続ける明志。

「あの姫路歩兵、っちゅうチーム、前の試合でもボスヒット戦を申し込んでたんや」

「へー。それで、相手チームは受けたん?」

「受けてたったけど、きっちりボスだけ炙り出されてヒット。あっけない勝ち方やった」

「それやったらー、舞ちゃんとこもそうなんの?」

とても不安げな潤。

「ここまで来たら、なるようにしかならんやろ。しかし…」

「しかし?」

「相手チームもなかなか、『濃い』な」

「あの『フォー!』の人?」

「時の人やからな。その本物の人は、作者の家の近所の出身らしいで」

「て事は、ここが地元?」

「そ。あと作者と年齢が近く、学生時代に学生プロレスで見たかもしれん、てさ。あと…」

「…ところでさ、その事とサバゲーと何か関係あんの?」

「…」



戦場のフィールドではゲーム前の作戦会議が行われていた。

「隊長、今回の作戦は?」

口火を切ったのは若菜。

先ほどのゲームでは『魅せ』ようとしたが、空振りに終わったので今回こそは、と意気込んでいる。

ゲーム前のアドリブで十分だと思うが…

「今回は前と戦場が変わったからな。ちょうどフィールドの中央に流れる川が、東西を二分してる。もちろん橋があるけど、簡単に渡れるほど甘ないと思う」

舞子が腕組みしながら言う。

(ここにフィールドマップ)

「やっぱり、その二つある橋付近でぶつかりそうですか?」

多聞が尋ねる。

「多分そうなるやろ。橋を渡らん事には向こう側へ行かれへんしな」

「それじゃボスだけこっち側へ誘い込んで集中砲火、というのは?」

郁華が提案する。

「ボスだけ、っちゅうんは無理やろ。それに、ボスが必ず橋を渡るとは限らんし」

「ですよね。向こうも何か考えがあって、こんな条件で挑むんですから」

少し不安げな美幸。

「ま、とりあえず、やるだけやってみよ。んーと、若菜と多聞君は、左側(マップでは下側)の橋ら辺で待ち構えて、相手が来たら撃つ」

指示を出す舞子。

「うぃっす!」

「わかりました」

やや気負い気味の若菜と冷静な多聞が、対照的である。

「んで、郁華と美幸は右側(マップでは上側)の橋ら辺で同じく待機、来たら撃ってよし」

「ハイッ!」

「がんばります!」

こちらは気合十分のようだ。

「摩耶はとりあえず本陣におって、守っといて」

「了解ですっ!」

「以上、終りっ。『皇国の興廃この一戦にあり。各員一層奮励努力せよ』だ」

カッコよく締めた舞子。

「Z旗ですね。あれ? ところで隊長は?」

多聞は、舞子の行動が気になったので尋ねた。

「私? 私はボスやから撃たれんようにするだけ。何かある?」

「あっ、いっ、いえ。何にもありません!」

多聞は慌てて口を噤んだ。



「…という具合か」

「ボスの動きがわからんかったな」

「アレでわかる」

「そやな」

こちらは一方の姫路歩兵(以下略)の陣地。

NLの作戦を盗聴後、あっさりと作戦が決まった。

大塩が舞子に渡した、ボスという印のバンダナに小型の盗聴発信機がついていた。

それにより作戦は筒抜け、ボスの位置も丸わかり。

この方法で、1回戦も勝ち抜けたのである。

反則スレスレ、というか反則という規定には書かれていないので違反ではないが、「正々堂々」とはいえない。

『サバイバルゲーム』という名の通り、どんな手段を持ってしても生き残らねばならない… 訳ではない。

ていうかスポーツである以上、規定に書かなくても反則だと思うが…

開始前から姫路歩兵にとっては有利、NLにとっては不利な条件での戦いとなりつつあった。

  

「ぴぃー!」

フィールドに、ゲーム開始を告げる笛の音が響く。

「まずは相手の動きを見てからやな」

ボスの御国野は一人呟いた。
 
姫路歩兵は6人全員、陣地に篭ったままである。

発信機の動きでどちらの橋に向かうかを判断する。

そして適当な場所で待ち構えて、6人全員でもって攻撃すれば、必ずヒットさせる。

舞子の動きがでるまで、行動しない事にした。



NLの隊員は、舞子の指示通りに動く。

ボスである舞子も、陣地から出る。

「郁華、一人先行って右の橋抑えとき!」

「りょおかーい」

舞子のドスの効いた声に、少々間延びした声で答える郁華。

「美幸はややセンターよりに橋に向かって。敵が必ず橋を渡るとは限らんからね」

「ハイッ」

舞子は美幸にそう告げるなり、右側の橋向かって駆け出した。

一方の若菜多聞コンビ。

「レディーファーストです。先輩お先にどうぞ」

「危険な場所は、男が先に行くもんや」

先陣は武士の誉れ、というが、二人とも武士ではないので、『逆』先陣争いをしている。

結局、後輩で男である多聞が先を進み、少し後ろを若菜が追い駆ける。

「心配すんな、死んだら骨は拾ってやる」

「僕は死ねましぇん!」 (古っ! てか知ってますか?)

若菜の呼びかけに、ボケで返す多聞。

多聞に多少(かなり?)のイヤイヤ感があるが、コンビネーションとしては悪くない、かもしれない…?

ボケと突っ込みの役が、時々入れ替わってるしな。



「動き出したぞ。左の橋に向かってる。出るぞ」

発信機から出る舞子の動きを見ていた御国野は、号令をかけた。

「全員左の橋の手前に向かいそこに散開。お客が見えたら銃で持って歓迎、や」

御国野が一気に捲くし立てる。

「本陣は開けっぱで大丈夫か?」

大塩が尋ねる。

「相手が旗を取りに来る前に、ボスをヒットさせとぉわ」

御国野は、大塩の不安をほぼ無視した。

「それじゃ、行くぞ!」

御国野の号令とともに、姫路歩兵の隊員達は本陣を出た。



『まだ誰も渡ってへんみたい。待ち構えるか、一気に渡るか…』

持ち前の足を生かして、橋が見える所に着いた郁華はぼんやり考える。

そこへ美幸が到着。

「どうする? 待つ? それとも突っ込む?」

着くなり美幸が郁華に問い掛ける。

「多分ねーさんの援護やと思うから、渡るんは待った方がいいと思う」

「それじゃ隊長が来るまで待っとこ」


二人はお互いに少し離れて隠れて舞子と、舞子より先に来るかもしれない敵を待つ事にした。

『巫女と水茄子は私が来るまでは動かんやろ。けど空手家と新撰組はなぁ。若菜に引っ張られて、慎重な多聞君もヤられそやな…』

右の橋に向かいながら舞子は考えていた。

水茄子とは郁華の事である。

ナース→なーす→なす→茄子の連想で、水茄子とは普通の茄子より小さくて丸っこい。

大阪の泉州地方(大阪南西部)で作られる品種で、その名の通りみずみずしく、生でも食べられる珍しい茄子。

ほとんど漬物に加工されるため同地方では、水茄子の漬物を食べないと夏を越せないらしい(嘘)。

ちなみに私の名前は泉州の和泉から、ですが、水茄子の漬物は食べられません(茄子の漬物が苦手)。

ボ@ナスと思われなくてよかったね(暴言)。

こんな事はどうでもいいので続きを。

そう思うととても不安になった舞子は、急遽方向転換、左(南)の橋に向かった。

とりあえず姑よろしく一言注意しておかないと、何をしでかすかわからない。

「ビリッ」

コソコソと走っていると、何か変な音が聞こえた。

『何の音? 何か破れたような…? そういえば腕が一瞬引っかかったような…』

少し立ち止まって、自分の体を確かめる。

『あ… 端っこだけやからわかるやろ。後で言うとこ』

左腕に巻いてたバンダナの端が破れてしまっていた。

木か何かに引っかかって、その部分だけ破れて欠けてしまったようだ。

細かい事は気にしない舞子は、何事もなかったかのように駆け出した。

橋の手前で隠れている若菜を見つけた舞子は、コソコソと傍に寄る。

「あれ? どーしたんですか?」

舞子の姿を見た若菜は尋ねた。

「相談や。今から橋を越えるで。そこで… ボソボソ」

「ま、マジっすか? でも銃が…」

「心配すんな。これに入れたら大丈夫や。でもしっかり封しとかなあかんで」


言うと同時に、若菜に袋を手渡す舞子。

「で、でも…」

「この作戦はうまく行くかもしれん。相手もまさか、て思てるやろからな」

「で、でも…」

「あー、それなら後で何とかするから」

「…わかりました」


『まだ何も言うてへんけど… 読心術?』

そう言うなり舞子は、橋に向かって駆け出し、多聞の姿を見つけると傍に寄った。

「沖田君、行くで」

多聞に声をかける舞子。

「へっ? え? うわっ、何でおるんですか?」

後ろは若菜だと思い込んでいた多聞は、いつの間にか舞子が来ていたのを知らず驚いてしまった。

「しーっ」

慌てて口を、人差し指で抑える舞子。

「行くってのは、吶喊ですか?」

「漢(おとこ)の敵陣一騎駆け。武士の誉れや。感謝しぃよ」


若菜と同じ事を言う舞子。

『武士やないし… こんなカッコしてるからよぉ言わんけど』

呟きたいのを堪えて駆け出す用意をする多聞。

「ありがたき幸せ… ほいじゃ、行きま… 腕のバンダナ、破れてますけどいいんですか?」

「終わったら、相手さんに事情話すわ」


「そっすか」



発信機から出る位置情報を頼りに、舞子を常にロックオン状態の姫路歩兵。

左(北)側の橋方面に向かっているのがわかったので、全員でもって舞子の向かった方向へ向かう。

そして橋のやや手前で、舞子が橋を渡るのを待っていたが…

「一番より各員へ。お客は橋のやや手前で止まったままで動かない。寝てるんちゃうか?」

「二番、もうちょっと様子を見よう」

「三番、故障したんかも」

「四番、寝てんなら起こしに行く」

「五番、敵の罠かも」

「六番、右に同じ」

発信機が同じ位置のまま、動かない事を不審に思った御国野は、各メンバーに呼びかけた。

「一番より各員へ。三番と六番は右より回り込め。残りは前の橋を強行突破。以上」

動かないならこっちから動く。

痺れを切らした姫路歩兵が動き出した。



「相手が来たよ」

目のいい美幸が相手を見つけ郁華に注意を促す。

「えっ? どこどこ?」

郁華はキョロキョロ辺りを見回す。

「橋を渡りかけようとするとこ。まだ渡ってないけど」

「あなたな〜らどぉ〜する〜?」


往年のヒット曲を歌いながら尋ねる郁華。

「…いや、どうするって聞かれても、普通に迎え撃てばええんちゃうのん。てか、あんたいくつ?」

「あんたと同い年よ。じゃ、橋を渡りきったら攻撃、て事で」

「らじゃ」




一方南側の端付近の舞子と多聞。

「んじゃ、行くで」

舞子が多聞に声をかける。

「ご武運を」

そう言いながら片手拝みする多聞。

「あんたが先に行くんやで。私が撃たれたらそこで終わりでしょ」

「えー? それでは僭越ながら、先陣を承りましてございます。敵見つけたら撃っていいですか?」


「当り前やんか。しっかり私を守ってや。トシ様」

「お雪さんを気取るなら江戸訛りでないと。んじゃ、吶喊します」

斎藤一を気取っていた多聞も、沖田総司や土方歳三にされてしまっている。

橋を注意して見るが、特に相手は見当たらない(当り前)。

銃を構えて一気に橋を渡る。

でででっ。

渡りきると、すぐに草むらに隠れた。

が、勢い余って前のめりに倒れ、地面と抱擁する多聞。

「ダダダッ」

「ババッ!」

銃声が聞こえ、伏せた状態のまま慌てて銃を構える多聞。

「…ヒット」

「ヒット! ザマーク

『え? ワシ撃ってないで』

中腰で起きると、姫路歩兵の二人が両手を上げて、フィールドの外に出ようとしていた。

後ろを見ると、舞子が「早く行け」と、手をひらひらさせている。

『こっちゃあまだ息が整ってないんや』

そう思っても一番下っ端の悲しさ、先輩の命令には逆らえない。

多聞はまた起き上がると、コソコソと走り出した。

『やっぱおったな。先に行かして正解やったわ』

そう思ったのは舞子である。

『鉄砲玉を先に行かして、ヤサへ殴り込み、や』

鉄砲玉とはもちろん多聞の事である。

撃たれた姫路歩兵の隊員は、三番こと花田と、六番こと白浜である。



ざぶっ。

「うわっ、ちべた!」

いきなり川の中に入ったのは、若菜である。

舞子から耳打ちされて、川を渡って後方撹乱、というとんでもない命令を受けたが…

『川ん中にいるとこ撃たれたら逃げようがないやん!』

川の中に入ってしまった以上後の祭り。

『着衣水泳なんてした事ないで』

川の中に入ってしまった以上後の祭り。

目立たないように岸沿いを歩くようにして(実際歩いているが)、ちょうど橋と橋の中間ぐらいで上陸。

『服が張り付いて気持ち悪っ。しかも重っ』

川の中に入っ(以下略)。

ジッパー付きの袋に入れていたサイドアームを取り出し(メインは濡れないように腕を上げたまま持っていた)、草むらの中に隠れた。

「あー、何かおるなー。撃ちごろ? ちょっと遠い、かな?」

若菜は一人呟くと、銃を構えた。



「三番より各員へ。ヒットされたから離脱する」

「六番より各員へ。右に同じ」

「何やっとんねん」

「役立たず」

「恥さらし」

「人でなし」

花田と白浜に対して、罵声を浴びせる姫路歩兵の隊員たち。

「一番より各員へ。敵ポイント位置へ突っ込む。まずは威力偵察や。ほんまにおるかどうか確認せんな(しないとな)」

御国野が各員に命令する。

茂みに隠れていた隊員のうち、的形と白浜が偵察にでた。

着かず離れず、程々に別れて橋を窺い、まず的形が橋を渡ろうとした。

その時、

「ばばっ!」

「ヒットぉー! 自分自身の若さゆえの過ち…」

的形、あっけなくヒットされ離脱。

「役立たず」

「恥さらし」

「ろくでなし」

「人でなし」

またもボロクソに叩く隊員であった。

『援護の弾幕薄いぞ! 何やってんの!!』

白浜は心の中で呟きながら、的形を撃ったと思われる方角に対して乱射した。

「ババッ、ババッ、バババッ」



全く反応がない。

「ダダダッ」

「ヒット…」

逆に撃たれる始末。

「一番より各員へ。向こうは凄腕がいるようだ。右翼から再度攻撃をかける」

一気に二人失った御国野は不安になり、作戦の変更を指示した。

「ほな、護るから行ってや」

「同じく」

大塩と別所も、同意見である。

二人は周りに注意しながら、移動し始めた。



『2時の方向に撃て』

眼のいい美幸が敵を見つけ、その位置をハンドサインで郁華に送る。

『了解。攻撃する』

ハンドサインを見た郁華は、その位置を正射する。

その攻撃は見事ヒット。

すかさず移動、しかし美幸が見える範囲内である。

その後、射撃音が聞こえたが、弾は明後日の方向を空しく通過した。

『11時の方向に撃て』

『了解。攻撃する』

再び美幸からのハンドサインを確認した、郁華はその位置に射撃を加える。

またもやヒット。

『これぞレーダー連動射撃、かな?』

と、郁華は思った。

なわけない(と、作者は突っ込んでおきます)



一方、左翼をコソコソと忍びながら、早足で歩く多聞。

いつでも撃てるように、銃は構えたまま。

後ろには、ボスである舞子が付いてきている。

はずである。

『これじゃ鉄砲玉やな』

そう思いながらも、耳を研ぎ澄ましながら、敵陣地を目指す。

しかし、敵からの攻撃は全くない。

不思議だと思いつつ、陣地が見える場所まで、何事もなく移動できた。

「隊長、これ以上は進めません」

陣地の前は茂みがなく、身を曝さねばならない。

陣地から攻撃される事は、明らかである。

「何言うとんねん。鉄砲玉が引き帰したり止まったりするんか?」

「え? もしかして、死ニ方用意?」

「わかってんなら、行ってこい。援護するから」


またも舞子にやり込められた多聞は、ヤケクソで突っ込む。

『うおおおっ』

銃を構えて、本陣目掛けて突撃する。

多聞、無我夢中で、フラッグを奪取。

「ぴぴー!」

フラッグが取られると、それに反応してブザーが鳴るようになってある。

その時点で、ゲームは終了する。

「え? マジ? 勝ったん?」

フラッグを取ったにも関わらず、多聞は信じられないような表情である。

「鉄砲玉、ようやったな」

舞子が近寄り、肩を叩いた。



「ぴぴー!」

試合終了のブザーが鳴った瞬間、御国野は「しまった」という表情になった。

1回戦でボスヒット戦を申し出て、あっさりヒットさせてから、フラッグに関しては、すっかり忘れてしまっていたからだ。

「そういや相手のボスは何か言ってたが、あれはフラッグに関しての事なんやな…」

今さら呟いても、後の祭りである。

そこへ相手のボスである、舞子がやって来た。

「ごめんなさい。預かったバンダナやけど、端っこが破れちゃいました」

そう言うなり、端が破れたバンダナを手渡された。

「あっ、ハイ。えっ? ない?」

それを手にとった御国野は、愕然とした。

発信機を取り付けていた部分が、なくなっていたからである。

『ボスのおらん所を、おるて思て狙って行きよったんか・・・』

そう思っても、後の祭りである。



NL、運良く2回戦突破。

次回予告

「辛くも2回戦を突破した『Nuova Legenda』。
3回戦を目前にした休憩時間に、次々と事件(?)が起こる。
果たしてゲームはできるのか?
Nuova Legenda〜新しい伝説〜第6話「県大会にて(その3)の巻

別方面なら伝説かもしれない…?」




☆あとがき☆

めっちゃ遅くなりました。

実際には11月ぐらいまでに7割ほど上げていたのですが、12月に入ってからお仕事が忙しくなり、1ヵ月半ほど放置してました。

まぁ、年末年始は凄まじく忙しくなるので…

年度末の繁忙前に仕上がってやれやれ、です。

サボりすぎです、ハイ。

何とか第5話まで辿り着きました。

どうぞ長い目で見てやって下さい。


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