投稿小説だぜ

松永和泉さま作

『戦え! FANG GUNNERS!』外伝

Nuova Legenda〜新しい伝説〜

第二話


「メンバー集まり会議の巻」



☆日曜日、ファミレス『ロイヤルゲスト』、午後1時半☆

天気のいい日曜日の昼下がり、先日の相談の通りファミレスに6人全員集まった。

朝霧舞子、有馬摩耶、小野柄若菜、東雲美幸、神仙寺郁華、楠多聞。

楠多聞だけ男である。しかも一番最年少である。

「それじゃ会議を始めよぉ、まずはチーム名を決めよぉか。これがないと始まらんからね。諸君らの忌憚ない意見を期待する」

舞子が口火を切る。既に隊長気取りだ。

実際唯一の経験者なんで自動的に隊長になるのだが。

「ハイッ!」

郁華が手を上げた。

仕草が小学生っぽい。見た目からしてそう見えるのだが…

「よし、許可する」

ジュースの入ったコップを持ちながら舞子がすかさず言う。

「しんせんぐみ、と言うのは如何でしょう?」

「新撰組? 去年ドラマでやってたアレ? 少し旬を過ぎてるような…」

少しつまらなそうに若菜が聞く。

「違うって」

「じゃ、何?」

美幸が聞く。

「神に仙人で神仙組、それでみんな新撰組の羽織と袴を着て出るの。で私は沖田様で…」

「くだらん! 却下!」

にべもなく舞子が言った。

「新撰組と変わらんやん」

若菜も続く。

「あのー…よろしいでしょうか?」

恐る恐る多聞が尋ねた。

「あいよ、どうぞ」

舞子は多聞の発言を認める。

「『La Traviata(ラトラヴィアータ)』、てのはどうでしょうか?」

「なんかカッコいい、何ちゅう意味?」

興味をそそられた若菜が聞く。

「『椿姫』というオペラの原題です、意味は『道を踏み外した女』で娼婦のおはな…」

「キーッ! しっ、失礼な! 却下却下! まだ神仙組の方がよっぽどまし!」

多聞が言い終わる前に郁華が判断した。

舞子も当然むっとしている。

サバゲーする女性はある意味「道を踏み外してる」とも思…これ以上は言うまい。

「では口直しに『Brigantia(ブリガンティア)』、てのは?」

「これも変な意味の言葉なんやろ?」

若菜が警戒する。

「今度はいい意味の言葉です。ケルト神話に出てくるブリガント族の守護女神で…」

「そんなん誰も知らんしわからんから却下!」

これも多聞が言い終わる前に舞子が言葉を遮った。

ちなみに『高貴なる者』という意味である。

「ホンマにしっかり考えようや。チーム名で皆のやる気も違うし相手チームの態度も変わる。これはごっつ重要やで」

舞子が力説するが、本人はまだ案を出していない。

一通り意見を出してもらってから自分の案を言おうと考えているみたいだが…

「普通に考えると『六甲山高校サバゲーチーム』っちゅう愛想もクソもないチーム名になりそうやから、ここは一つ、カッコよぉ決めようや」

「それでいいんじゃないでしょうか? わたくし達の高校の名前入っててアピールできるし」

摩耶がおっとりとした口調で言う。

皆飲み物を飲んだりぼんやりと考えたりして数分間の沈黙が続いた。

「あのー、今度は真面目に考えましたが…」

その沈黙を破り、多聞が恐る恐る発言する。

「次ろくでもない名前出すとこの場の勘定全部多聞君持ちやで」

若菜が冗談とも本気とも取れるような発言をする。

「Nuova Legenda(ヌーヴァレジェンダ)」

「レジェンダ…レジェンド…伝説? ヌーヴァは…わかんない」

少し考え込んで摩耶が呟く。

「ヌーヴァ…ヌード…裸? 裸の伝説?」

続いて少し赤面しながら美幸が聞く。

「もしかして…わたし等ネネカ隊? あんな恥ずかしいカッコは絶対イヤー!」

一人でよくわからない妄想をして頭を振る郁華。

まるで子供が嫌々してるようだ。

「イタリア語です。レジェンダの意味は有馬さんの仰る通りです。ヌーヴァは英語のニュー、新しい。つまり『新しい伝説』です」

「ほーぉ…なかなか賢いやんけ。どこでそんなトリビア仕入れてんの?」

舞子が感心する。

「これから新しい伝説を作るっちゅう事で考えてみました。お気に召さなければもう一つ」

「一番最初のんよりよっぽどまし。で、もう一つはどんなの?」

皿の上のフライドポテトをかじりながら美幸が聞く。

「『Primo Ordine』(プリモルディーネ)。これもイタリア語で『一番』とか『最高』という意味です」

「最初からこういうカッコええ言葉を言えばよかったんよ」

若菜が『コイツ意外と賢いな』という感じで言う。

「横文字ってカッコいいね」

『六甲山高校サバゲーチーム』でええやんと思ってた摩耶も同意する。

「いつまでも名前に時間をかける訳にもいかんから、その『新しい伝説』か『最高』のどっちかで決めよぉや」

舞子が多数決を取る。

「まずは…新しい伝説…えーっと、何て言うんやっけ? ヌードレジェンド?」

「ヌーヴァレジェンダ、です」

多聞が言い直す。

「そう、それでええ、ていうのは誰?」

手を上げたのは舞子、摩耶、郁華、多聞の4人。

6人中4人挙手により多数決であっさり可決。

「プリモルディーネはちょっと語呂が悪くて言いにくい、かなぁ」

最初に手を上げなかった美幸が考えながら言う。

「…(それなら最初に手ぇ上げとけよ!):多聞心の声」

実際にこの名前の元ネタを知るとどうなるのか…それだけは絶対言うまい。

多聞は心の中で決めた。

「んじゃ、これから新しい伝説を作ろか。んで次は銃なんやけど…」

舞子が話題を変えてカバンから本を取り出す。

出てきた本は『最新エアガンカタログ』…女子高生が読むような本ではない…

「とりあえずこの本で自分の気に入ったんを見つけて後日エアガンショップで試し撃ちしてみよか」

「どこの店ですか?」

本を覗き込みながら郁華が聞く。

「店は私がよく行く店。元々はアニキに連れられて行ったんやけど雰囲気ええし色々オマケしてくれるしな」

「ところで…銃って結構高いんですねぇ…」

そう呟いたのは美幸だった。

舞子も初めて銃を買った時は結構な値段だった のを思い出した。

舞子以外の人間はサバゲー道具を全く持っていない。

銃はもちろんゴーグルやヘルメット等、必要な装備をすべて揃えなければならない。

「そっか、お金がいるんやな…私は一通りあるからええけど、問題は君らやねぇ」

舞子が一人呟く。

「こういう物を買うお金なんてありませーん」

郁華がおちゃらけた感じで言った。

「右に同じ」

多聞も続く。

「私もー」

「ウチもー」

半ばヤケ気味に美幸と若菜がハモる。

「皆資金難か…しゃあないなぁ…手っ取り早くお金を稼げるんは…何か方法ある?」

舞子が聞く。

「宝くじ」

摩耶が間髪入れずに答える。

「宝くじは難しいですよ。ジャンボ宝くじは当たるとでかいんですが、当てるにはそれなりの知識と経験が…」

多聞がすかさず説明する。

「そっか…じゃあ競馬、競輪、競艇、パチンコは?」

若菜が言う。

「パチンコは18歳以上ならOKですが競馬、競輪、競艇は無理っす。てか競輪はこの近くではやってません」

またも多聞が説明する。

「競馬…私がバイトしてる店の店長は週末になるといつもスポーツ新聞読んでるけど競馬してるんかなぁ?」

思い出したように郁華が言う。

「週末は競馬以外にも競艇もしてます。けど競馬の方がメジャーですから…」

多聞が続く。

「多聞君、ギャンブル詳しいね。もしかしてー、してんの?」

若菜がからかう。

「競馬なら小学生の頃に少し…もちろん今は買ってません。けど、知識ならありますが…」

「不良小学生だったのね」

『不良』とは全く縁がなさそうな摩耶が言う。

しばらくじっと聞いていた舞子はここでひらめいた。

「よっしゃ! 郁華、バイト先の店長さんを垂らし込め! 競馬場に連れてってもらお。もちろん多聞君も一緒やで!」

「もしかして…競馬で資金稼ぎをするんですか?」

『まさか?』といった感じで美幸が聞く。

「ご名答。手っ取り早く稼ぐにはこれしかない。私らは買われへんけど、その郁華のバイト先の店長さんに買ってもらえば問題ないはず」

舞子は一気に捲くし立てた。

自分の考えに酔っているようだ。『私って何て賢いんやろ』と思ってるのだろう。

「今月は土日なら仁川で馬走ってます 。仁川はこっから1時間ぐらいです」

考えながら多聞は説明する。

「それじゃ店長を呼べるように頑張ってみます…」

郁華が自信なさげに言う。

「厳しいならもう一人道連れにするか? 若菜はアカンで。垂らすというより力ずくやからな」

笑いながら舞子が言う。

「いえ、頑張ります! 私だって色気のあるとこ見せますから!」

「うむ、成功を期待している!」

若菜が舞子より先に言った。

「それは私のセリフや!」

舞子がツッコんで言葉を続ける。

「ま、とにかく、来週の日曜は競馬場に行くで。ところでー、競馬場て何時からやってんの? 多聞君?」

「1レース始まるんが大体朝10時ぐらいで、大体40分間隔でレースがあります、最終の12レースが4時20分ぐらいに発走、ですね」

「よっしゃ、わかった。詳しくは追って連絡するから。とにかく次の日曜は空けておくように。で、次に…」

「まだあるんですか?」

顔には『早く帰りたい』な表情を見せている多聞が応じる。

「これも結構重要。どんなカッコで試合に出るかって事」

話題が変わって皆が舞子に注目する。

「普通に考えれば皆迷彩服で揃えるのが無難なとこやけど…何かアイデアある?」

皆少しの間思案する。

最初に郁華が何かひらめいた。

「皆手にマシンガンを持つ事になるから、全員セーラー服というのはどうでしょう?」

20年以上前にそのような映画があったのだが、ここにいるメンバーは上映当時まだ生まれていない。

「それならウチは舞子先輩と多聞君とでヨーヨー持って三姉妹するから。おんしゃら、許さんぜよ!てね」

若菜がとんでもない事を言い出す。

これまた15年以上も前にそのような映画があったのだが、ここにいるメンバーは上映当時でも舞子と摩耶がかろうじて、かな?・・・というとこである。

「え゛…ちょっ、ちょっと待って下さい! わ、ワシもですか…?」

そういったのは多聞である。

「もちろん!」

若菜が即答する。

若菜の言葉を聞いて本人は頭の中で想像したに違いない。

自分自身がセーラー服を着ている姿を(爆)。

こんな姿を級友に見られたりしたら、これからの高校生活3年間、もしくはその先一生十字架を背負って生きなければならない(大袈裟)。

「そんだけは絶対イヤです! ていうか(セーラー服)持ってないし」

ひとりっ子の多聞が持ってたらある意味問題だろう(謎)。

「誰かの借りたらええやん、それに化粧したらわかんないって。眼鏡取ったら結構イケると思うけどな〜 」

郁華がからかう。

「じゃ私は化粧したげる。変身後は『私に惚れるなよ!』て言ってね」

美幸も続けてからかう。

「そんな問題やないて! それだけはアカンて!」

多聞も必死である。

何しろ人生がかかっているのである(爆)。

「そこまで言うんやったらしゃあないなー。全員セーラー服はとりあえず保留。他に何も浮ばなかったら、て事で」

舞子が判断する。

「却下」と言わないところをみると本人も乗り気だったのかもしれない。

多聞、とりあえず一安心。

「んで、君のカッコはどうすんの? ブレザーか? メイド服か?」

舞子が真顔で尋ねる。

「うっ、ぷっ…そ、そこまでして楠君にじょ、女装させたいの?」

手を口に当て笑いを堪えながら摩耶が言う。

メイド服着て女装した多聞でも想像したのだろうか。

「…(みんな好き勝手言いやがって…):多聞心の声」

「それじゃ昔の陸軍の軍服にする? もちろん君の階級は下っ端やから三等兵」

若菜もここぞとばかりにからかう。

「…(ホンマ好き勝手言いおって…)ワシは、そ、さ、し、し、(思い出した! )新撰組のカッコで出ます!」

「うん、エエよ。で、誰のカッコ? 沖田総司? 土方歳三?」

舞子はあっさり許した。

「だ、誰と言われても…うーん…井上源三郎…でいかがでしょうか?」

「誰それ? 知らなーい」

郁華が即答する。

「井上源三郎は新撰組隊士の中で最年長で、多摩の天然理心流道場では近藤勇や土方歳三の兄弟子にあたる人物で一応…」

「そんな人誰も知らんと思うよ(暴言)。それに最年少のくせに最年長の役はおかしいて。君はもう、アレだ、沖田様になれ!」

多聞の言葉を遮るように若菜が被せる。

「…(井上源三郎て地味なんかなぁ…個人的には好きなんやけど):多聞心の声」

「ちゃんと『お腰の物』も持っといてよ」

郁華がダメだしする。

「はぁ…(菊一文字則宗…? あれは超国宝級やし、普通に考えれば加賀清光やけど…)」

その後喧々諤々の協議の末、各人の衣装も決まった。

朝霧舞子、迷彩の上下(自前で持ってたもの)。

有馬摩耶、上セーラー服、下もんぺ、頭には防空頭巾(戦争中なカッコをイメージした)。

小野柄若菜、空手着(特注品、色は黒、帯も黒)。

東雲美幸、巫女さんの衣装(家は神社なので商売道具)。

神仙寺郁華、セーラー服(言い出しっぺの責任で)。

楠多聞、新撰組の衣装(口からの出任せがそのまま通ってしまった)。

「これで今決めておく事はほぼ決まったから今日はこれでお仕舞い。皆ご苦労さん。資金稼ぎの件は沙汰を待て。以上解散!」

続く。


☆オマケ☆

土曜日の晩、三宮にあるとある高級寿司屋、お客はいかにも社長と思しき品のいい男性や着物が似合う上品な女性がちらほらいる。

有馬摩耶(以下有):わざわざお越し下さいまして申し訳ありません。

松永和泉(以下松):いやいや、ていうかものすごい落ち着かないんですが…明らかにウチら「浮いて」るよなぁ…

有:このようなお寿司屋さんにはあまり行かれないんですか?

松:そんな身分ではございません。会社員は世を偲ぶ仮の姿、本当は百姓やから。シーズン中は米こさえてるよ。先日田植えしたし。

有:お百姓さんですか(驚き)。それじゃお米の味にもうるさいんでしょうねぇ。この店は神戸でも指折りなんで松永さんも気に入って頂けると思います。

松:あ、いや、そんな味にうるさいという訳では…(焦)

有:この店は父が会社の接待で使う店ですので会社の接待という事にしますからご遠慮なく注文して下さい。

松:接待…された事もした事もないよ…(ちゅうかこれは接待なんか?)

有:ウニ、イクラ、タイ、ヒラメ、中トロ下さい。

松:(さすがお嬢様、高いものばかり…)キス、アジ、サヨリ、コハダを…

有:お飲み物もどうぞ。

松:じゃあ…「倭小槌」(日本酒)を冷やで。お猪口は一つでいいです。
(徳利とお猪口が出される)

有:おつぎします。やっぱりお百姓さんは米から作った日本酒ですか?

松:これはこれは恐縮です。別にビールが苦手やから日本酒で。して、本日のお招きして頂いたご用件は?

有:わたくしについて、です。

松:と、いいますと?

有:わたくしがサバゲーするって意外だと思ってるでしょう?

松:まぁ、ね。摩耶ちゃんは「お嬢様」な設定やけぇ銃持って匍匐前進して泥んこになるようなキャラやないし。

有:わたくしもある程度は苦労してるんですよ。

松:お金はあるし勉強もできるし何不自由はないでしょう。

有:「お嬢様」だからプライド高そうとか思われててあんまりお友達がいないのです…

松:そぉかなぁ?

有:だから他の方と同じような事をしてみたいと思ってサバゲーに挑戦したのです。

松:他の方が皆サバゲーしてるわけやないけどね。ワシした事ないし。

有:だからわたくしもお嬢様ではなく普通の女子高生と思って頂きたいのです。

松:べっちょないよ。君は「天然」っちゅうジョブを持っとるけぇ、他の下々の人とも付き合えるよぉにはなっとるよ。

有:そうですか?

松:そうやで。ワシなんかその「他の下々の人」やし。ごめん、ちょっとお手洗い行ってくるわ。
(松永中座)

有:すいません、お水下さい。
(水が入ったコップをもらい一気に飲み、飲み足りないのか松永の前にあった徳利をおもむろにコップ一杯に注ぎ3分の2程飲む。しばらくして松永戻ってく る)

松:失礼しました。君も一応モデルがいるから(言いながら手酌でお酒を注ごうとする)。あれ? ない…

有:もでるー? 誰なのぉー? 美人ー? (顔が真っ赤)

松:…? まぁ美人というか可愛い系やね。その子はお嬢様やないけどかなりの天然(まだ2、3杯ぐらいしか飲んでなかったけどなぁ?)。

有:わたくひの方がぜぇーったい可愛いよねー? その子は年ひくつなのー? (呂律がおかしい)

松:…?? ワシより一つか二つ年下。本人はかなりすっとぼけとるけど天然て自覚しとらん。何そのコップは?

有:みゃつにゃがしゃんより一つか二つぐりゃいならわたくひの方がずぅーっと若いよねー。ただの水だよぉー(とコップの中の液体を一気に飲み干す)。

松:(慌ててコップを取り上げ匂いを嗅ぐ)! あっ! これ酒やんか!

有:よぉーっし! これからカラオケ行こー! 今日は朝まで歌うよー(と外に出ようとする)

松:ちょお待ってぇや! 未成年に酒飲ましたゆうてワシが怒られるー! ん? そういや飲ました記憶はないぞ!

有:だぁーいじょぉーぶ! 酔ってなんかないって! ほらー行くよー! れっつごー! (千鳥足でふらふら)

松:やめてくれー!
(以後収拾つかず)


次回予告

「装備を揃えるための資金稼ぎに競馬場へ。
冴え渡る多聞の相馬眼で資金は徐々に増えるのだが、
一方観光気分のおねいさま方は…
次回『Nuova Legenda(ヌーヴァレジェンダ)〜新しい伝説〜』
第三話『お金を稼ごう競馬場の巻』(仮)

勝馬投票券の購入は二十歳以上から」


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