陰陽五行戦記おまけ劇場第三弾

SSSSS(スペシャルサイドストーリーショートショート)

★『瑠華といたなつめ』その1★


「…ただいま」

肩に担いだガンケース、そしてセーラー服姿。

一風変わった姿の瑠華が帰宅したとき、さすがになつめは目を丸くした。

「あんた、その格好…」

じろじろと見られて瑠華も照れたのか、少しうつむく。

「…チームの方針でな、こういう姿で戦ったのだが」

言い訳めいた呟きをもらす。

「…………」

なおも、言葉もなく瑠華を見つめ続けるなつめ。

「…………」

瑠華もこうなると、どういうリアクションをしていいものやら。

と、その時、瑠華の足元に駆け寄る小さな仔犬。

「ルシリスおいで」

(おねーちゃんおかえりー)

ってな雰囲気をかもし出しつつ、その仔犬ルシリスは瑠華の腕の中に納まった。

「よしよし、いい子だ」

あの鉄面皮の瑠華が、実に年相応の笑顔を見せる。

この笑顔を最初から出していればもしかしたら『FANG GUNNERS』が人気投票で一番だったかも、ってなくらいの破壊力だ。

「…まずい、なんでアタシが年下の、それも同姓にドキドキしなきゃならないのよ」

ぽりぽりと頭をかきつつ、なつめがそう言ってようやく瑠華から視線を外した。

「ん?」

「なんでもない。あんまり似合ってるんで、ついつい見とれちゃったわ。あんた明日からそれで学校行ったら? 一瞬でファンクラブできるわよ」

「嫌だ」

むげに断ると、瑠華はルシリスを抱いたまま自分の部屋に入っていった。


そう、実は明智瑠華と立花なつめは、函館白楊高校に程近いマンションで共同生活を送っていたのである。

どうしてこの二人が一緒に住んでいるのか、それはおいおい明らかにしていこう。

ともあれ、無口、無表情、無感動、ほとんど他人と話もしない瑠華も、なつめとの生活の中で、少しずつ心を開いていた。

さすが、白楊高校の校医だけあって、なつめは瑠華の心のケアにも長けていたのであった。

それに、二人が飼っている室内犬の仔犬“ルシリス”の存在も大きかった。

今では瑠華もこの仔犬にだけは心からの笑顔を向けることが出来る。

元々、瑠華は魔王クラーマを倒すことだけを自分に課せられた運命、至上命題と考え、それ以外のあらゆることを無駄と考え、排除してきた。

だが、それだけでは一人の人間として、未成熟なままである。

魔王を倒すことだけに特化した、研ぎ澄まされた存在だった瑠華は、いわば諸刃の剣。

純粋すぎるがゆえに、そのままでは周囲との摩擦の中で自らを傷つけてしまう。

そこで、なつめはそんな瑠華を導く役目を自らに課し、いわば専属のカウンセラーとして瑠華と暮らしていたわけである。

今日のサバゲーの道南地区大会への出場も、なつめにしてみれば、瑠華がいよいよ友達と打ち解ける、そのステップになるだろうと考えていたわけだ。

(あの様子だと、結構楽しんできたみたいだけど)

と、ドアが開いて部屋着に着替え終わった瑠華が出てきた。

瑠華の部屋着、それはひじょ〜に可愛らしいキタキツネのきぐるみパジャマだったりする。(もちろんなつめセレクションだ)

ぷりちーな耳付きフードの下からのぞくのは、無表情の超絶美貌…。

(ちょっと他では見せられないわね、この格好)

ある意味なつめだけの独占画像である。

「どうだったの今日の大会。優勝した?」

瑠華はふるふると首を横に振ると、ちょっとだけ、悔しそうな様子でこう答えた。

「決勝で武田のチームに負けた。準優勝だった」

「あら、ひーちゃんも出てたの? だったらセンゴクマンのメンバーでワンツーフィニッシュじゃない」

さりげなくレース業界の用語を使いつつ、そしてなにげに広奈様をひーちゃん呼ばわりのなつめである。

「ああ、そして私たちと武田のチームが北海道大会に進出ということになった」

「ふぅ〜ん。じゃあもうしばらくみんなと一緒のチームで戦えるのね? 良かったじゃない」

「ああ」

素直に頷く瑠華。

そして、何かを思い出したらしく、生真面目な表情を作ると、なつめにこう言った。

「それで、壮行会と称して皆でカラオケに行くことになった。…だが、私は歌など何も知らないのだが、断ったほうが良かっただろうか」

もちろん、なつめが喜び勇んだのは言うまでもない。

「だめよぉ。ちゃんと参加しておいで。みんなと仲良くなるいい機会じゃない」

「そうか。しかし、私には歌える曲などないのだが」

「おっけーおっけー、お姉さんにお任せ。月に代わってぇ〜、選曲してあげる☆」

「? なぜ月?」

「細かいことは気にしない〜。じゃあ、早速練習しましょ」

瑠華はこくりと頷いた。その拍子にフードのきつね耳がぷりちーに垂れ下がる。

「よろしく頼む」


こうして何気なく瑠華のために選んだ曲…というか、瑠華自身のとてつもない歌唱力が原因であの事件が起きるとは、神ならぬなつめにはまったく予測不能であった。


センゴクマン十七話半につづく。


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