陰陽五行戦記おまけ劇場第三弾

SSSSS(スペシャルサイドストーリーショートショート)

★『輪と綾瀬の愛の日々』その4


今日は休日。輪と綾瀬は最近話題のハリウッド製逆輸入サムライ映画の鑑賞である。

「輪くんと一緒に映画見るの、なんか久しぶりだね」

にこにこ笑いながら、綾瀬が実に嬉しそうに言う。

「そうだったか?」

つい二ヶ月前も映画を見に行ったんだがなぁ、二ヶ月ぶりは久しぶりなのか。

そんな事を考える輪君である。

そして2人は上映時間の最後まできっちり鑑賞。

エンディングロールが流れ終わり、会場が明るくなるまでは席を立たずに物語の後味をかみ締めるのが輪君のスタイルなのだ。

綾瀬もちゃんとそれが分かっているので、付き合って一緒に待つのである。

「ふむ、負けたら敗戦の責任を取って即切腹、なんてのは、武士道の悪い面だから、アレはどうかと思うが、全体的には良くできていたな。作った人間、相当勉強していたと見える」

いっぱしの評論家気取りでそんな事を言いながら、輪と綾瀬は映画館を後にした。

口ではなんだかんだ言いながらも、輪の機嫌は良さそうだ。

ちゃんと感情移入して見ていたし、映画をすっかり楽しんでいたみたいだ。

輪の機嫌がいいと綾瀬も嬉しい。

しばらくにこにこと輪君の顔を眺めながら歩いていた綾瀬だったが、唐突にその輪が口を開いた。

綾瀬に、というよりは独り言を聞かせるように。

「それにしても、武士道ってものをこうも真っ向から提示されると色々考えさせられるよ。なるほど、今の日本人に欠けているものばかりだ。厳しい自己鍛錬、質素な暮らし、礼節を重んじ、恥を知り、自分に厳しく他人に優しく。そして大切なもののためにこそ、剣を取る」

うんうん、と何度も頷く輪君である。

「輪くん、帰ったら木刀で素振りしようとか考えてるでしょ」

綾瀬の何気ない一言に、輪は目を丸くした。

驚きと畏敬の入り混じった目で、綾瀬を見つめる。

その顔には「どうして分かったんだ」と黒マジックで書いてあった。

「分かるもん。輪くんの考えてることなんて、お見通しだよ」

そう言って綾瀬はくすくす笑った。

輪は完全に一本取られてしまい、右のほっぺたをぽりぽり掻いてから、おもむろに大事な事を聞いた。

「ところで、映画は面白かったか? 俺の趣味で選んでしまったが」

「うん」

綾瀬は即答。

「輪くんが好きなものは、わたしも好きだよ」

屈託なくそんな事を言う2つ年下の幼なじみ。


輪くんが好きなものは、わたしも好きだよ


「そうか…」

ドキドキした。

だから輪は、また正面を向いて歩き出した。

「その理屈だと、綾瀬は相当なナルシストになってしまうな…」

小さく呟く。

「えっ? 輪くん何か言った?」

「…なんでもない」

自然と頬が緩んだ。

「なに笑ってるの?」

「いや、別に…」

「言いなさ〜い」

映画は面白かったが、やっぱり綾瀬が一番だ。

しみじみと、輪はそんな事を考えつつ、綾瀬にぽかぽか背中を叩かれるのだった。


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