陰陽五行戦記おまけ劇場第三弾

SSSSS(スペシャルサイドストーリーショートショート)

★『輪と綾瀬の愛の日々』その1★


今日は休日。輪は服を買いたいという綾瀬に付き合って、駅前のデパートに来ていた。

「輪くんと一緒にお出かけするの、なんか久しぶりだね」

にこにこ笑いながら、綾瀬が実に嬉しそうに言う。

「そうだったか?」

つい先月も映画を見に行ったんだがなぁ、2週間ぶりは久しぶりなのか。

そんな事を考える輪君である。

そして、二人は春物の婦人服が並ぶ階に到着。

「じゃあ、適当に選んでくれ。俺はその辺で待ってるから」

色とりどりの可愛らしい服が並ぶコーナーには、ちょっと近づきがたい輪君である。

「ええーっ、せっかく一緒に選んでもらおうと思ったのに…」

口を尖らせてうつむく綾瀬。

と、言われてもなぁ…。

どうもああいうところは苦手である。妙に気恥ずかしいお年頃なのだ。

逡巡する輪に、綾瀬は

「お願い輪くん。今日の夕食は、輪くんの好きなラザニアを作ってあげるから」

直江家の台所を一手に仕切る、綾瀬ならではの切り札の投入である。

「…分かった」

夕食を持ち出されては輪に拒否権はない。

かくして、満面の笑みの綾瀬に連れられ、輪は禁断の領域に突入した。

「ね、輪くん。このワンピースはどうかな?」

水色で、ふりふりのひらひらのそれを、綾瀬は胸の前に掲げてみせる。

「まぁ、悪くはないと思うが…」

そして、値札を見て輪は目を丸くする。

「…高いな、ずいぶんと」

基本的に輪は服装にはお金をかけない主義である。

そんな金があったら、歴史小説を買ったり、映画を見たり、CDを買ったりしたほうが有意義だといつも思っている。

服はあくまで外見を飾るものである。

輪は内面を磨くためにこそ、お金を使いたいと思うわけである。

そんなわけで、輪が余りいい顔をしないので、綾瀬はまた別のものを捜すことにした。

「じゃあ、このスカートにこのTシャツなんて、可愛いと思うんだけど〜」

「……ちと、短くないか、それ」

「もう〜、これくらい普通だよ」

「そういうものか…」

「あ、でも、こっちも可愛い〜。ね、輪くん」

「………違いが良く分からん」

「む〜」

買い物を開始してまだ5分とたっていないが、早くも輪の顔には、「まだ終わらないのか」と極太マジックで書かれてしまっている。

綾瀬はしばらくは輪を従えたままあれこれ服を手に取っていたが、どうも落ち着かない。

やがて綾瀬はため息を一つ。そしてこう言った。

「輪くん、やっぱり退屈なら先に本屋に行ってていいよ。わたし、ひとりで買うから」

寂しさ6割、諦め3割、怒り1割の綾瀬である。

輪としても、そうしたいのは山々だが、さすがにそこまでしたら顰蹙ものだと理解する程度の分別は持ち合わせている。

「いや、付き合うよ」

若干つらそうにそう言うのがミソである。

綾瀬は賢い娘だから、ちゃんと助け舟を出してくれるのだ。

「ね、輪くん。じゃあさ、せめて、その服が好きか嫌いかくらい言って。わたし、せっかく一緒に選んでるんだし、輪くんにも何か言ってほしいな。そしたら早く選べるのに」

「そうか。よく分かった」

早く選べる、という綾瀬の言葉に、輪が俄然やる気を出した。

「ね、輪くん、この服…」

「よし、それがいい、それにしろ」


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