陰陽五行戦記おまけ劇場第三弾

SSSSS(スペシャルサイドストーリーショートショート)

★『覇王みあこ』その4★


あたし、本多美亜子、函館市立碧血中学校の3年生よ。

もうじき中学時代最後の文化祭。

文化祭実行委員のあたしとしては、やっぱり最後に究極の青春のメモリーを残したいの。

そこで、文化祭実行委員全員と、綾瀬を使って、ある大きな罠を仕掛けてみたの。

それは何かって? もちろん秘密よ。

だけど、それはもう大掛かりなんだから。


「というわけで、賛成多数により1組のミスター碧中コンテストの代表は、直江輪に決定しましたー」

おおーっ、ぱちぱちぱちぱち。

「……なぜ、俺?」


「あのね、輪くん。わたし、ミス碧中コンテストの代表に選ばれちゃった…。どうしよう、ステージで緊張しそう…。輪くんが同じステージに立っててくれたら、心強いんだけどな」


「…昨日はああ言ったが、やはり、出場することにした」

「ホント? さすが輪! もう優勝間違い無しね」

…さすが綾瀬の説得はこいつには効果抜群だわ(笑)

「別に、優勝したくて出るわけじゃない…」

ま、出てさえくれればこっちのもんよ。


「課題曲?」

「そう。美亜子ちゃんから聞かなかった? 男女とも課題曲があって、ステージで歌わなきゃいけないんだって」

「…聞いてないぞ」

「じゃあ、日曜日、美亜子ちゃんと3人でカラオケボックスに練習しに行こうよ」


「おっ、来たわねぇ。さすが」

「…何がどうさすがなんだ?」

「ん〜…、こっちの話。ささ、行きましょ」


「あー、のど痛い。さすがに20回も歌ったら疲れるわねぇ」

「…まったくだ。聞かされるほうの身にもなってみろ。いい加減、覚えてしまったぞ」

「ふふ、輪くんも歌う?」

「冗談じゃない」


「最後のルール?」

「そっ、大会当日にならないと明らかにならない、一番重要なルール。コンテスト開催1時間前に発表になるから、お楽しみに〜♪」


『ミスター碧中コンテストの参加者はセーラー服、ミス碧中コンテストの参加者は学ラン着用のこと』

「…帰る」

「何言ってんの。はい、これ」

「…なんだその紙袋は」

「決まってるでしょ。あたしのセーラー服」

「美亜子……」

「ありがたいと思いなさいよ。世の男性陣が泣いて欲しがるあたしの制服を着れるのよ」

「…誰が着たいと言った。冗談じゃない。帰るっ」

「はぁ、予想通りのリアクションね。でも、これでも意地を張るつもり?」

あたしの指差す先には、顔を真っ赤にして照れてる学ラン姿の綾瀬。

「輪くん、どう? 似合うかな…」

固まる輪。

「えと、輪君?」

「………………ああ、似合ってる」

「ほんと〜? よかったー☆ じゃあ、早く輪くんも着替えて。わたし、お化粧してあげる」

「…………………………………くっ、わかった」


セーラー服に着替えた輪は、それはもう…可愛かった(笑)

あの真っ赤な顔といい、ひたすら恥ずかしげな表情といい、ほんと輪ってからかい甲斐のあるやつなんだから♪

「じゃ、輪くんちょっと我慢してじっとしててね」

「ああ」

ぱたぱた…、ぬりぬり…。

「できたよ〜☆ 美亜子ちゃんも見て見て〜」

「どれどれ」

…びっくりした。

涼しげな目元、整った顔立ち、長いまつげ、美少女でも全然通用しそうだわ。

ていうか、こいつ、へたすりゃあたしより色気あるんじゃないの?

「…やばい、あんまり似合ってるから、笑うタイミングを逃した」

「ねー、輪くん、綺麗〜(はあと)」

「んなこと言われても全然嬉しくない」

「大丈夫だよ輪くん、頑張ればきっと優勝できるよ」

「誰も優勝したいとは言ってない」

心底いやそうな輪。

まったく、いい加減観念してよね。

「ねぇ、輪、これはあたしたちにとって最後の文化祭なのよ。それに綾瀬と一緒の文化祭もこれが最初で最後なのよ。わかってんの? 綾瀬のためにもぐだぐだ文句言ってないで、しっかり楽しんで、一生残るような思い出を作りなさいよ」

(必殺、それっぽいこと言いつつあたしのいいように輪を操り作戦!)

「そうだよ、輪くん。一緒に文化祭盛り上げようよ、わたしもがんばるから」

「そうか…、分かった」

(ぷぷっ、輪ってばホントにバカね(笑))


かくして、輪は素敵にメイクを施され、まんまと全校生徒の前に引き出されたの。


『うぉぉぉぉーっ』

『きゃぁぁぁぁー』

「……………………………悪夢だ」

歓声と悲鳴が舞い飛ぶ中、完全に顔面が引きつったまま、輪はその素敵なセーラー服姿を観衆に披露。

あの輪の顔ったら、傑作ね(笑)

でも、まだまだこれからが本番よ。


ノリノリの司会が、輪に死刑宣告に等しいとどめの一言。

「さぁ、それでは3年1組代表の直江輪君に課題曲を歌っていただきましょう。“猛蒸す”のナンバーから『愛のウェブサイト』どうぞ〜♪」

「…なっ、なんの冗談だ」

マイクを渡されて絶句する輪。

そう、ミスの課題曲とばかり思っていたこの曲、実はミスター側が歌う段取りだったのである。

「やってられるか」

いい加減我慢の限界を迎えた輪がくるりと観客に背を向けた。

で、ステージ上の綾瀬と目が合った。

(輪くん、照れちゃ駄目だよ。がんばって)

「…うっ」

またも固まる輪。

しかも容赦なく大音量で伴奏が流れ、大観衆は大盛り上がりの手拍子である。

前門の綾瀬、後門の客席。

直江輪、八方塞り、四面楚歌。

結局、散々美亜子と綾瀬の歌を聞いていたこともあり、哀れ輪君、知らないふりも出来ず、バカ正直に歌いだした。

…しかも、それなりにフリつきで(笑)

更新するたび、胸、ばびばのんのん♪

『うーはー♪うーはー♪』

観客もノリノリで合いの手を入れ、会場全体が一つになる。

感想来るたび、嬉し、ばびばのんのん♪

『うーはー♪うーはー♪』

集団の熱狂というものは恐ろしいパワー(強制力)を発揮する。

おかげで輪君も徐々に乗ってきた。

いつの間にやらすっかりその気になって会場に負けないボルテージで歌っていたりする。

そーぉねー、小説のホームページぃ♪
更新するわ、ラブラブビームでぇ♪

そして、一世一代の大バカ輪君は、よせばいいのにやってしまった。

綾瀬のため、そして一生の思い出を作るため、マイクに向かって、大音量で叫ぶ。

らぶらぶ・びぃぃぃぃぃぃぃむっ☆

『うぉぉぉぉーっ』

『きゃぁぁぁぁー』

会場、史上最大の盛り上がり。

セーラー服で、しかもセクシーポーズ付きのシャウトである。

すっかり罠にはまった輪、世紀の醜態をまんまと見せてくれたのである。

「あははははははははっ、輪、さいこー!」

のちに、輪はこのことを途轍もなく後悔するが、若気の至りとしか言いようが無い。

この日、間違いなく輪は文化祭の一番のおいしいところを全部持っていった。

「本年度のミスター碧中は、3年1組直江輪くん!」

『うぉぉぉぉーっ』

『きゃぁぁぁぁー』

「………………くっ」


これ以降、輪はセーラー服に途轍もないトラウマを持たされてしまう。

でも、ミスター碧中に選ばれた輪と、ミス碧中になった綾瀬のツーショット写真は、慎ましやかに、綾瀬の机の上に飾られたのをあたしは知ってる。

嗚呼、青春だねぇ輪君。

あたしの作戦大成功!


この4コマ漫画に続く。


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