おいかけマカナ

陰陽五行戦記おまけ劇場第三弾

SSSSS(スペシャルサイドストーリーショートショート)

★『おまかな天国』その5★


ここは函館山をくりぬいて作られているセンゴクマンの秘密基地。

今日も今日とてサポートロボのマカナちゃんは、にこにことゴキゲンな様子。

ほんわかオーラを盛大に撒き散らしながら、第23回目のセンゴクマン定例ミーティングに参加中だ。


「…というわけで、怪人発見から現場到着までの所要時間をさらに短縮したい。“小マカナ”とも協力して平均3分を切るべく各自努力するように。それからセンゴクマン五人で繰り出す合体必殺技だが、まだまだ起動時間が遅く命中精度も悪い。このミーティングのあと、模擬戦闘ルームで1時間の特訓を命じる」

事務的にセンゴクマンに指示を伝える晴明長官の後ろに控えつつ、マカナは微笑を絶やさずにミーティングのやり取りを聴いている。

内容をちゃんと理解しているのかどうかは、いまいち不明であるが。

「今回のミーティングは以上だ。最後にマカナから皆に頼みがあるそうだ。聞いてやってくれ」

と、晴明長官に促されて、ミーティングの間中ずっと黙っていたマカナが、ずずずいっと前に出てきた。

満面の笑みで、ごそごそと割烹着の袖をまさぐり、なにかを取り出した。

てけててん♪(効果音)

「でじたる写真機ですぅ」

いわゆるひとつのデジカメだった。

いまどきの売れ筋機種。コンパクトで薄型で背面に液晶がついていて初心者でも使いやすいタイプである。

「え? マカナちゃんそれどうしたの?」

早速淳二が興味津々と言った様子で右手を上げて質問した。

発言があるときは挙手してからするように、というセンゴクマンミーティングのルールをしっかり守っている。

「日ごろのウチのがんばりに対するご褒美で、晴明さまが買ってくださったんですぅ〜♪」

満面の笑み。非常に嬉しそうである。

「ふ〜ん、マカナちゃんデジカメが欲しかったんだ。なんか意外な取り合わせね」

と、美亜子。なんとなく見た目にも古風なたたずまいを強く残し、かつ英語がまったく出来ないマカナにしては、ハイテクなものを欲しがったものだ。

「はい。ウチは皆さんが一緒に写った記念の写真が欲しいんです。そしたら晴明さまがこれを」

マカナは実に誇らしげに、そのでじたる写真機を掲げてみせる。

「なるほど。デジカメはつまり手段であって、目的は俺たちの写真というわけか」

微笑ましい対象を見る目で、輪が柔らかく頷いた。基本的に輪はマカナには甘い。

日ごろのマカナの献身的な仕事ぶり(…ときどき大恥をかかせてくれるが)を考えると、写真を撮らせるくらい、輪にとってはお安い御用だ。

「集合写真、素敵ですわね。考えてみれば、今までわたくしたちが一緒に写った写真を撮ったことがありませんでしたし。ぜひ撮りましょう」

百万の言葉を積み上げるよりも強力な説得力を持って、広奈様の美声が響いた。

となると、

「集合写真、撮ったら僕にも一枚欲しいです」

至極当然のことながら春樹は合意。だけでなくその写真を所望した。

そりゃもちろん、同じフレームに広奈様と一緒に写っている写真なのだから、春樹にとっては一生もののお宝だ。

「…そうだな、私も欲しい」

そんな春樹の内心を知ってか知らずか、瑠華も無表情で頷いた。

「んじゃ決まりね。どこで撮る?」

美亜子の一言に、淳二が即答した。

「今日は天気もいいし、外で撮るべ」


というわけで、センゴクマン秘密基地の秘密のエレベータに乗り、函館山の頂上、千畳敷のあたりに出ると、6人は撮影に使えそうなロケーションを探した。

数分後…。

「よっしゃ、ここにしようぜ。こっちがちょっと段になってるから、二列になって撮れそうだし」

淳二がよさげな場所を発見。自らは上の段にてみんなを手招きし、待ち構える格好。

「美亜子ちゃん、前にどうぞ〜」

ここポイント。

身長168センチの淳二的には167センチの美亜子の隣に立つのはちょっと気が引ける。

その点、自分は上の段にいて、美亜子を前に立たせれば身長差は気にしないで済むという寸法だ。

「そう。じゃ輪はこっち」

と、美亜子は自分の隣に輪を立たせた。

これまた長身の美亜子としては、さらに長身の輪が隣にいれば、バランスよく写るだろうという計算が入っている。

「では、わたくしはここでよろしいですか?」

と、さらにその輪の隣に広奈様が陣取った。

「えっと、僕は…」

一瞬躊躇する春樹に対して、瑠華が無言のまま視線で先に詰めろとメッセージ。

「う、うん」

ということで、後列真ん中に春樹。広奈様の後ろに瑠華という順番になった。


「はい皆さん、もうちょっと真ん中に寄ってください。ぎゅぎゅ〜っとですぅ〜」

デジカメの液晶をこれ以上ないくらい真剣なまなざしで見つめながら、名カメラマンになったつもりのマカナが指示を出す。

6人の後ろに広がるのは、津軽海峡。その上に広がる夏の雲、そして青い空。

初夏の太陽が照りつけるなか、海から吹く風が涼しげに6人の髪を揺らす。

「もっともっと寄ってください〜。くっついちゃってください〜♪」

マカナの指示に広奈様はそっと輪に肩を寄せ、美亜子は美亜子で自然な感じに輪の肩に手を置いた。

瑠華もまた、半身にしてさらに春樹に接近。

(し、しまったー、輪でも春樹でもいいけど,場所変わってもらえばよかったーーーーっ)

前列は両手に花の輪。後列は瑠華と密着状態の春樹。

「…うにゅぅ」

一瞬だけ残念そうな表情がよぎった淳二だが、まぁ、そこはそれ、センゴクマンのリーダーらしく謙譲の美徳の精神ってことで…。

「それじゃ撮りますよぉ〜。ハ〜イ、乾酪♪」

パシャッ!

センゴクマン+瑠華、集合写真

「はい、素敵に撮れましたですぅ〜♪」


超笑顔のマカナに対し、6人がいっせいに聞いた。

「「「「「「乾酪(かんらく)って何?」」」」」」


それがチーズのことだと分かったのは、しばらく経ってからである。


こうして撮影した6人の記念写真はきっちり7枚現像されてみんなの手元に配られた。

たとえば春樹の場合、その写真は自分の部屋の壁にささやかに飾られている。

共に何度も苦しい戦いを乗り越えた、心許せる仲間の写真。

みんなで一緒に写ったこの一枚は、もちろん春樹にとってかけがえのない宝物だ。


おしまい。


★あとがきとお礼★

というわけで、久々のSSSSSを書いてみました。

今回のお話は、如月綾さまに描いていただいたセンゴクマン+瑠華のイラストを元に書き下ろした作品になります。

私からささやかなお礼の気持ちってことで、楽しんでいただければ嬉しい限りです。

素敵なイラストをお寄せくださり本当にありがとうございました。


2006年7月1日、直江雨続。


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