『伊達ハルキの遭難』


いきなりだが春樹は平安時代の森にいた。

五稜郭で魔王と戦った際、時空を超えてここに飛ばされてしまったのだ。

「ふぇっ、ふぇ、へっくちゅ、……うううぅ、寒い」

言うまでもないが、夜の森である。そして周りには誰もいない。

「みんなどこなんだろ、無事なのかなぁ……」

そりゃまぁ、無事は無事だが、春樹がみんなと再会できるのはまだ先の話である。

すでに春樹は自分が遭難の危機にあることを理解し、体力の消耗を避けるために木陰にてじっと座っていた。

「ふぅぅ、でも5月だってのにやっぱり夜は冷えるなぁ」

その認識にすでに重大な勘違いがあるのだが、今の春樹には知る由もない。そしてそれが彼の不幸だった。

夜はまだまだ長い……。

時折フクロウの声や狼の遠吠えが聞こえるたびに身を固くして周りを気にする春樹。

彼に安眠は訪れない…。

と、そのとき、春樹の胸ポケットからやおら振動と夜の森に似つかわしくない着メロが響いた。

(伊達なんだか♪ だって伊達なんだもん♪)

メールの受信音だった。

「あっ…」

慌てて携帯を取り出し開く。

受信メールをチェック。

差出人は……、明智瑠華。


>見えているか?


「は、はいっ」

思わず携帯に返事をする春樹。

だが、すぐに冷静さを取り戻し、返信メールを送る。


『はい』


たったそれだけ。とにかく急いで入力。

そして送信。

すぐに瑠華からもメールが届く。

(伊達なんだか♪ だって伊達なんだもん♪)


>そっちの時空間とはまだ完全には連結を絶たれていない。
>だが時間の問題。
>そうなれば最後だ。


最後?

最後ってなに? 連結が絶たれる? どういうこと???

事情が飲み込めない春樹。慌てて返信。


『どういうことですか? 僕はどうすれば?』


(伊達なんだか♪ だって伊達なんだもん♪)


>どうにもならない。
>葛の葉姫は失望している。
>これで魔王を封印する可能性は失われた。
>お前は何もない所から生命エネルギーを引き出し自らを修復する力を持っている。
>それは立花なつめにもない力。
>この超自己治癒能力を解析すれば
>魔王を封印する糸口がつかめるかもしれないと考えた。


「明智さん、僕には何のことなのか、全然分からないよ…」

メールを見ながら春樹が呆然と呟く。

一体なんと返信すればいいのか。

しばらく困っているとまた瑠華からのメールが届く。

(伊達なんだか♪ だって伊達なんだもん♪)


>お前に賭ける。


「何をですか?」

さっぱり理解できない。

その通りにメールを返信する。


『なにをですか?』


(伊達なんだか♪ だって伊達なんだもん♪)


>もう一度こちらへ回帰することを我々は望んでいる。
>お前は重要な観察対象。
>葛の葉姫だけでなく私も
>お前には戻ってきて欲しいと感じている。


間髪をいれず、もう一通。


(伊達なんだか♪ だって伊達なんだもん♪)


>また屋上で流星群を



「明智さん…」

よくわからないけど、明智さんのところに戻ればいいってこと?

明智さんは僕に戻ってきて欲しいって。

戻ってきて、そしてまた校舎の屋上で流星群を一緒に見たいってことかな。

うん、なんだかよくわからないけど、頑張るよ。

頑張って戻る。明智さんのところに戻るよ。


でも、でも…。

一体僕はどうすればいいの?


(伊達なんだか♪ だって伊達なんだもん♪)


>sleeping rin-kun






「え゛っ…」



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