五行戦隊センゴクマン!
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「センゴクマン黎明」
ここは函館山をくりぬいて作られているセンゴクマンの秘密基地。 いつもと違って、今日のサポートロボのマカナちゃんは、どうも不満げな様子。 あくびをかみころしつつ作戦司令室から出てきた晴明長官に、こんなことを言った。 「晴明さま〜、晴明さま〜。最近出番が無いですぅ〜」 「…確かにその通りだが、それがどうした」 無表情に晴明が答える。 「ふにゅ〜。ウチも札幌まで鯖芸を見に行きたいですぅ〜。皆さんの応援がしたいですぅ〜」 ずいぶんと、唐突だな、と晴明は思ったものの、なにしろこのサポートロボは自信作。 超高性能(?)な人工知能搭載で、ほとんど普通の女の子と同じ様なメンタリティを持っているのだ。 しかも、自分でどんどん知識を吸収し成長していくのである。 晴明はわが子の成長を見守る父親の心境で、頷いた。 「うむ。お前の気持ちは分かった。だが、お前にはセンゴクマン秘密基地を制御する大事な役割がある。仕様上、基地から出ることは出来ない」 「ふにゅ、それは…、わかってますぅ……、でも……」 いつもにこにこ、癒し系で和み系、はにゅほにゅ系のマカナにしては、珍しく寂しそうな表情。 なので、親馬鹿の晴明長官は情にほだされた。 「…わかった、何か方法を考えてやろう」 「ほにゅ〜、ありがとうございますですぅ〜(はあと)」
明日、センゴクマンのみんなに食べてもらいたくて。 鯖芸を頑張るみんなに、少しでも応援の気持ちを伝えたくて。 「はにゅ〜、おいしく作るですぅ♪」
水色の『フェアレディZ』。通称“死神Z”。立花なつめの愛車である。 なつめはマシンを降りると、基地本部へと向かった。
晴明長官の様子は普段と変わらない。 だからなつめも、いつものような特務なのだろう、と平然と了承した。 センゴクマンの5人と明智瑠華は、昨日から揃ってサバゲーの大会のため函館を離れている。ということは…。 「はっ、了解しました。札幌まで行け、ということですね」 「そうだ。できるだけ早く頼む。それと、すべての試合が終わるまでは、なつめも現場にて待機してもらいたい」 「わかりました」
絶好調。超弩級にハッピー。 はしゃぎまくる“それ”のぷりちーな姿に、なつめもつられて笑顔だ。 「はいはい、マカナちゃん、嬉しいのは分かったから、ちゃんとつかまってね。おねえさんの運転は、ちょっとだけ怖いわよ」 「はいですぅ〜♪」 死神Zのダッシュボードの上、ちょうどペットボトルホルダーの中に、“それ”はいた…。 迷彩柄の割烹着を着た10分の1スケールの小マカナ、否、それはマカナ本人(?)だった。
自分の上官のことをそんな風に評しつつ、なつめは愛車を猛スピードで北上させていく。 「みなさん待っててくださいですぅ〜。ウチが応援に行きますよ〜♪」 まだ見ぬ鯖芸を想像しては心を躍らせつつ、マカナは猛スピードで流れていく景色をフロントガラス越しにメモリーに焼き付けていた…。
(って、ずいどう? …トンネルのこと?) はしゃぎまくるマカナの独り言を聞き流していたなつめだったが、時たま聞きなれない日本語が入ってきて、結構気が散ってみたり。 (晴明長官って、普段からこんな感じで、マカナちゃんの攻撃(?)に耐え忍んでいるのかしら) そう考えると、あの面倒くさがりの上官に、ちょっとだけ尊敬の念が浮かんでみたり。 「ほにゅ〜♪ 凄いですねぇ〜、速いですねぇ〜、揺れますねぇ〜、あっ、また抜きましたぁ〜、行け行け〜♪」 (…はぁ、早くセンゴクマンに届けたいわ) アクセルを踏み込む足に力が入るなつめであった。
孫子
「決まったな。やはり上がってきたのはあのチームだったか…」 186センチの長身に青のマントの元帥服をまとった貴公子。文句の付けようのない美男子である。 ダークブラウンに染めた髪に端正なマスク。高校生とはとても思えない渋い声。 なぜか両目に色の違うコンタクトレンズをつけているのがチャームポイント。 彼の名は若本徹(わかもととおる)。陸別拝根川高校の3年、そして道東地区大会優勝チーム『新領土(ノイエラント)総督府』のリーダーである。 そして、全国のサバイバルゲーマーの間では、1年前の偉業をもって、その名を轟かせる人物である。 すなわち、彼は去年の全国大会優勝チーム、福島県代表『白河英雄伝説』のメンバーだった男なのだ。 某スペースオペラに登場する銀河帝国の軍服に身を包み、初出場ながらいきなり全国大会を制した伝説のチーム『白河英雄伝説』だが、残念ながらチームメンバー間でのいさかいが原因で、若本君はチームを離れ転校。 福島の白河市から北海道の陸別にある拝根川高校に転入し、そこで一から自分のサバゲーチームを作り上げたのである。 目的はただひとつ。 去年の優勝チーム枠で、すでに全国大会への出場が決まっている『白河英雄伝説』と戦い、勝利することだ。 そのためにも、北海道大会などで足踏みするわけにはいかないのである。
傍らに控えていた細目&ひげの副官に若本君が問いかけた。 「閣下、私の名前は田中です」 「うむ、そうだったなベルゲングリューン」 「田中…」 さびしげにつぶやいた田中君だったが、変な名前で呼ばれるのはいつものことであるので、気を取り直して応えた。 「初戦では敗れはしましたが、そこから2連勝。着々と実力を付けてきていると思われます。恐らくは勢いにも乗り決勝リーグでは台風の目となりうるかもしれません。ただ、現在の実力からすれば、我らが負けるとは考えにくいですが……」 と、そこで田中君はいったん言葉を切った。 自分でも何か考えているようだった。 若本君が、渋い声で、さらに聞きなおす。 「保留つきか、その理由は」 「なにしろ彼らはイロモノチームであります。どのように巧妙に切り札を隠していることか…」 「『FANG GUNNERS』もたいしたものだ。歴戦の勇者をして影に恐怖せしむ、か」 「閣下!」 「カッカするな」
若本君は、眉ひとつ動かさず、冷静に言い直した。 「もとい……怒るな。おれとてやつらの詭計が怖いのだ。むざむざ勝利を掴みかけて大逆転された『地獄のも釧路区』の後継者になるのはぞっとしないしな」 言いながら若本君は人の悪い微笑をひらめかせ、右手で前髪をさらりとかきあげた。 実に気障なしぐさだったがそれが妙に似合っている。 現代に生きる貴族趣味の妙なヤツだが、その実力と前評判は今大会に出場する選手の中でも随一である。 彗星のごとく現れた武田広奈が居なければ、間違いなく大会ナンバーワンの優勝候補だっただろう。 そんな若本君に“無二の忠臣”田中君が忠告した。 「閣下、あるいは無用の言かと存じますが、彼らは入場のときからこちらのペースを乱しにかかるでしょう。どうぞお気をつけくださいませ」 そうだな、と若本君は渋い声でうなずいた。 「たしかに、卿の忠告は正しい。戦いは戦場に立つ前から始まっていると見るべきだな…」 自戒の意味もこめつつ、若本君はそうつぶやいた。 なぜなら、彼は稀代の名将であると同時に類を見ないほどの女好きでもあったのだ。 『FANG GUNNERS』の誇る美女3人組を間近に見て、心が揺れない自信は無かった。
あとは駐車場を探し、晴明長官からの届け物をセンゴクマンに渡すだけ。 …その、“届け物”は、実はそろそろなつめの精神を破壊しかけていた。 「ほにゅ〜♪ そろそろ到着ですか〜? あっ、駐車場ですね。車がたくさんとまってますぅ〜。なつめさん? 元気ですかぁ? さっきからお顔の色が悪いですよ? ウチの話聞こえてますかぁ?」 「…きっ、聞こえてるわ」 うなるようになつめが返答する。 そう、この純真無垢なサポートロボは、ロボだけに悪意というものが無い。 悪意が無いだけに、この「〜〜ですぅ。〜〜ですかぁ?」攻撃が札幌までのドライブ中延々と続けられ、なつめは精神的に抹殺されかけていたのである。 なにせ車の中に二人きり、というシチュエーションなので、そこに逃げ場というものが無い。 (い、一刻も早く、センゴクマンの誰かにこの子を渡さないと…、アタシの精神衛生上かなりピンチだわ) 内心冷や汗ダラダラ、どんな強敵とのバトルのときよりも精神的に消耗しつくし、なつめは駐車場にマシンを止めた。 そして、ほとんど足元が覚束ないフラフラの状態で、車から降りる。 もはや気絶寸前、といった面持ち。 それでもなんとかマカナとマカナが作ったクッキーの入った巾着袋を車の外に出してあげたのは、なつめの使命感の強さによるところが大きい。 「どうもですぅ」 死神Zのルーフの上にマカナを立たせると、マカナは巾着袋をごそごそと開けて、中のクッキーを一枚取り出した。 「なつめさん、ここまで運転してくれて、ありがとうですぅ(ぺこり)。これどうぞですぅ」 センゴクマンのみんなへの大切なお土産である。 昨日の夜、マカナが作った心のこもったクッキー。 でも、まずはマカナはそれを、なつめへ進呈したのである。 「ありがとう、それじゃいただくわね」 程よくキツネ色に焼けた、直径3センチほどの円形のクッキーを、なつめはパキっと半分に割ると、その欠片を口に運んだ。 さくさく。 「あ、おいしい…」 「ふにゅ〜、それはよかったですぅ」 もう半分も食べる。 なるほど、普段晴明長官の食事のまかないも担当しているだけあって、さすがの料理の腕である。 しかし、クッキーを食べたら気付いたが、さっきからのどが乾いていたのだった。 自動販売機を探して、なつめの目が泳ぐ。 ついでにトイレにも行きたい。 なにせ函館から札幌まで、休憩なしのノンストップ走行だったのだ。 「マカナちゃん、ちょっと待っててくれる? お手洗いに行ってくるわ」 「はいですぅ♪」 普段のなつめにあるまじき、これはミスであった。 なにせ、今のなつめは精神的に相当な疲労がたまっており、マカナの姿を人に見られないように隠そうとか、そんな配慮は全く出来ない。 なので、そのまま死神Zのルーフにマカナを放置したまま、トイレに行ってしまったのである。
しばし興味深げにきょろきょろと駐車場を見渡していたが、やがてその目が一点で止まった。 さっきなつめが立っていた足元、クッキーを割ったときに地面に落ちた小さな欠片を、小鳥さんがついばんでいたのである。 「ふにゅ〜、可愛いですねぇ。あ、そうですぅ」 ごそごそ。 巾着をまさぐり、もう一個クッキーを取り出すマカナ。 そしてパキっと、クッキーを小さく割ると、それを手に持って小鳥さんを誘う。 「よかったら、こっちも食べてくださいですぅ」 チィチィ。ばっさばっさ。 その小鳥さんは、誘われるまま、Zのルーフに飛び上がってきた。 そして、マカナの手から、クッキーをもらって、食べる。 「おいしいですかぁ?」 チィチィ。 マカナと小鳥さんの、心の交流。 と…。 ばっさばっさ、チィチィ。 もう一羽。 「あっ、また来たですぅ。よいしょ(パキっ)。はい、どうぞですぅ」 チィチィ。 「ふにゅ〜♪」 小鳥さんと戯れるマカナ、幸せの図。 やがて、もう一羽、二羽と、マカナの周りに小鳥さんが増えていく。 「あっ、皆さんも食べたいですかぁ?」 チィチィ、チィチィ…。 「はにゅ、待ってくださいですぅ、順番ですよぉ?」 センゴクマン基地の中にいたのでは、決して体験できなかった小鳥さんとのふれあい。 マカナは今、とっても幸せだった。
が…。 不吉なる声が、上空から響いてきた。 バサバサバサバサ…。 マカナの周りにいた小鳥さんたちが、一斉に飛び立つ。 「ふにゅ? えっ? どうしたんですかぁ?」 慌てて辺りを見回すマカナだったが、次の瞬間。 バッサーーッ。 風きり音とともに、上空から一気に舞い降りる巨大な影。 それは、この北天王山森林公園の生態系の頂点に君臨する、巨大なトンビだったのだ。 そのトンビが、マカナの巾着袋に狙いを定め、急降下。 鉤爪でむんずと巾着袋を掴むと、そのまま飛び立とうとした。 「ふにゅ〜、駄目ですぅ、それはウチの、ウチの大事な〜」 マカナも負けじと巾着袋にしがみつく。 だが、所詮今のマカナは身長14センチ。 トンビにしてみれば、ウサギ程度の獲物のようなもの。 なので、マカナごと巾着袋を持ち上げ離陸。 「にゅ? はにゅーっ!?」 マカナ、生まれて初めての飛行体験。
「ほにゅ〜〜、なつめさ〜〜ん。助けてですぅぅぅぅ〜」 「まっ、マカナちゃん!?」 「は〜〜〜〜にゅ〜〜〜〜〜〜〜〜ぅ……」 ばっさばっさ。 飛び去っていくトンビ。 小さくなっていくマカナの悲鳴(?) なつめは今更ながら、事の重大さに気付いて真っ青になった。 マカナにもしものことがあれば…。 「ど、どうしよう…。晴明長官に殺される…」 なつめは大慌てでクルマに戻ると、平時着用している“白衣”に着替えた。 無論、ただの白衣ではなく、センゴクマンの遊軍としての能力を果たすための、色々な秘密機能満載の白衣である。 つまり、なつめにとっては、戦闘服みたいなものだ。 それを着ると、多少冷静さが戻る気がする。 「…助けなきゃ」 なつめはトンビが飛び去った方向。すなわち、サバゲーのフィールドに向かい、早足で歩き出した。
用兵のダイナミズムには欠けるが、堅実で安定した手腕を有している熟練のサバゲーマーである。 射撃の名手であるが、獲物を前にして気が高ぶると目が血走り、非常に怖いため、「サバゲーをするときサングラスが必要な男」などとあだ名されている。 その堀くんが副官(このチームは補欠の選手が多いため、レギュラーメンバーには、副官役が一人ずつ付いている)をつれて歩いているときである。 二人の目の前を、年のころは24〜5歳ほどの綺麗なお姉さんが通り過ぎた。 しかも、なぜかナースチックな白衣を身にまとっており、一瞬サバゲーの戦場に白衣の天使が舞い降りたのか、と二人を錯覚させたのである。 忘我の一瞬が過ぎ、堀練康くんは自分の左鎖骨の下に電撃にも似たなにかが走り抜けるのを感じ、それが全身に拡散するのを実感した。 彼は、半歩だけよろめき、外見上はわずかに眉をひそめただけで、彼自身に起こった現象を受け止めていた。 軍服の胸に左手を当てたとき、早鐘のような鼓動を掌全体が受け止めていた。 堀くんは顔を上げた。 その女性、立花なつめの後姿を、賛嘆の思いを込めて、無言で見送る。 やがて、なつめの姿が小さくなる頃、堀くんは黒い目にやや血走りの彩りをおびさせて、ごくさりげなく、副官に宣言した。 「ああ、ところでな、おれは来年にでも結婚することにした」 五秒半の絶句の後、副官がようやく型どおりに祝辞を述べると、堀くんは血走った目を隠そうともせず、 「今年のうちは不可能だ。おれはまだ17だからな。ところで誰と結婚するかわかるか?」 わかるはずがない、と思ったが、副官は答えた。閣下の目の前を通り過ぎた、今の看護婦ではありませんか? 「そうだ、どうしてわかった?」 (なんでやねん) 副官は心の中で突っ込みを入れつつ、上官の血走った目を見た。 このとき初めて、自らが仕える人が極度のナースフェチであることを知ったのであった。 彼はこの上官を敬愛していたが、それだけに、いま少しまっとうな恋愛をやってほしいとも思う。 帝国軍上級大将ともあろう身が、いろんな意味で危険ではあるまいか。 (一目惚れならともかく、いきなり結婚を宣言するなんて、何を考えているのだ、この人は…) 戦場では不屈の勇将である堀くんにも、こういう一面があるのだった。
身長14センチのマカナに比べ、このトンビは体長65センチ。羽を広げると160センチにもなる。 そんなトンビの巣なので、結構な大きさである。 クッキーの入った巾着袋ごとその巣の中にマカナはぽてっと落とされた。 「ふにゅ」 だが、ここからが真の恐怖の始まりだった。 マカナが身を起こすと、ちょうど巾着袋を狙うトンビと真正面から対決するような位置関係。 マカナの背後に巾着袋、正面にトンビ。 「ふ…、ふにゅっ!」 マカナは気合を入れた。なんとしてもこのクッキーを守らねばなるまい。 せっかくセンゴクマンのみんなを応援するべく、心を込めて焼いてきたのだから。 ピィィィッ! トンビが羽を広げて威嚇する。 鋭いくちばしがマカナの目の前。 「だ、駄目ですぅ。これはみんなのですぅ。あげてもいいのは一枚だけですぅ」 その言葉を理解したとは思えないが、トンビはちょっと威嚇をやめて羽をたたんだ。 そしてくいっと首を傾げて、マカナの様子を伺う。 「ちょ、ちょっと待ってくださいですぅ。おとなしくしてくれれば、一枚あげるですぅ」 ピィ。 「よいしょ、よいしょ…」 巾着袋からクッキーを一枚取り出すと、マカナは両手でそれをトンビの目の前に掲げて見せた。 ピィピィ。 さくさくさくさく…。 マカナに給餌されるトンビの図…。 「あっ、よかったですぅ。おいしいですかぁ?」 ピィ。 「ふにゅ〜。からだは大きいけど結構かわいいお顔してますねぇ〜」 もちろんマカナにとってはトンビを間近に見る事は初めてである。 トンビのからだは褐色と白のまだら模様。特徴的なのはその顔で、タヌキのように目のまわりが黒褐色になっている。 それが、なかなかの愛嬌をかもし出しているのだ。 なので、マカナは情にほだされた。 「特別ですよ? もう一枚あげるですぅ」 ピィピィ。 さくさくさくさく…。
しばらくその巣に居候させてもらうことにした。 なにせ、このトンビの巣はサバゲーフィールドの中。一番高所の丘ポイントに生えている大木の上にあるのだ。 ちなみに美亜子が『地獄のも釧路区』相手に大立ち回りを演じていたとき、体を隠していたのがこの木だったりする。 この巣からはフィールド全体を見渡すことが出来、両陣営の動きも手に取るようにわかる。 つまり、マカナは一番の観戦ポイントをゲットしたわけである。 「ふにゅ、ここからなら皆さんの鯖芸がよく見えそうですね〜」 さて、そんなマカナであるが、残念ながら、このタイミングで試合が終わってしまっていた。 『FANG GUNNERS』対『富良野防衛家族黒井田家』の試合は、『FANG GUNNERS』の勝利。 試合終了の笛が響き渡るのを、マカナははるかな高みから見下ろす。 そして淳二、輪、美亜子、さらには抱擁する(!)瑠華と春樹の姿を発見。 ただし、春樹がなにやらエマージェンシーであることも、同時に把握していた。 センゴクマンの健康状態などは、常時リアルタイムでマカナにレポートされているのである。 「ほにゅ〜、春樹さんが大変なことになってるですぅ」 大慌てのマカナ、早速なつめと連絡をとることにした。
「…強いものだな。人の遺志というのは」 万感の想いでつぶやき、しばらく瑠華は空を見上げていた。 その間、気絶し座り込んだ春樹を、立ち膝の瑠華が抱きしめる体勢のまま。 当然ながら、こんなオイシイ状況を放って置けるほど、『FANG GUNNERS』の残りメンバーは寛容ではなかった。 「よっしゃよっしゃ、これで決勝リーグ進出なり〜♪」 見事な包囲殲滅作戦を完遂し、上機嫌の淳二。 試合が終わったのでフィールドを去ろうとしたところで、なにやら木の陰に隠れ、前方を窺っている真理姐さんを発見。 「姐さん?」 小声でお伺いを立てると、真理は振り返って口に人差し指を当てた。無論、静かにしろ、のサインである。 そして淳二を手招き。 さらに、何事かと輪と美亜子も寄ってきた。 4人が見たものとは? 「むっ…」 「にょっ…」 「へっ…」 「ふふ〜ん」
口ではそう言いながらも、瑠華はいまだに気絶したままの春樹の髪を愛しげに撫でていたり。 その表情は、愛犬ルシリスに向けるものとほぼ同じであり、瑠華の中での春樹の地位は、そこまで上昇していたことを雄弁に物語っていた。 (とりあえず、犬と同レベルだ、春樹君。喜べ)
「…あの瑠華がねぇ」(←美亜子) 「…何の冗談だ?」(←輪) 「あらあらあらあら(笑)」(←真理) なんともいえない甘ったるい空気が4人の間を流れていた。 が、一方の春樹であるが、相変わらず力なく瑠華に体重を預けているのであるが、そのだらりと垂れ下がった両手がびくっ、びびくっと痙攣。 やがて、その痙攣は全身にまで。 「…なんか、ハルがぴくぴくしてねぇか?」 「そういえば…」 「ふむ、あの体勢では呼吸が出来ないのではないか?」 「…ってことは、窒息?」
ケータイから響いてきた“着うた”になつめは音速で反応。 「マカナちゃん? どこ? 無事なの?」 はっきり言って自分の身の安全と給料がかかっている一大事である。 自然、なつめの声は緊迫感を増す。 「ふにゅ〜、ウチのことなら大丈夫ですぅ。それより、春樹さんが大変なんですぅ。急いでウチの言う場所に向かってくださいですぅ」 「えっ? ええ、…わかったわ」 さすがに凄腕のエージェントでもあるなつめ、あっという間に冷静さを取り戻すと、マカナの指示に従い、サバゲーの試合が行われたフィールドに向かった。
やがて、4人が見ている間に、春樹の微妙なぴくぴくは終了。 さらにだらーんと力が抜けた。 「…にゅ、死んだ」 「ってか、やばくない?」 「そろそろ助けたほうがいいだろう」 「…う〜ん、もっと見ていたかったなぁ」
年のころは24〜5歳、なぜか白衣を羽織った妙齢の美女。 「瑠華ちゃ〜ん、そろそろ離してあげて、ハルちゃん死んじゃうわよ〜」 その声に、瑠華は思いっきり動揺して振り向いた。 「なっ…、なつめ?」 なぜこんなところに居るのだ? 一瞬、瑠華は混乱状態。 そして、春樹を胸に抱いたままの自分の状況に思い至り、そりゃもう、慌てた。 どんな風に慌てたかというと、とにかく春樹を突き放して自分は立ち上がろうとした。 まず両手で春樹の肩を掴んで自分と距離をおく。 そして膝を立てて急いで立ち上がろうとする。 …だが、意識の無い春樹である。瑠華の胸から引き離された瞬間、支えるものがなくなりがっくんと頭が落ちた。 そこに、瑠華が凄い勢いで膝を立てた。
その際、後頭部も強打していたが、まぁ、そんなのはおまけみたいなものである。 伊達春樹、本日二度目となる鼻血の出血大サービス。 顔面と、のび○の衣装を再び鮮血に染め、問答無用のノックアウトである。
「痛っ」 「むぅ」 「げっ…」
そして、この事態の原因を作った張本人は、深くため息をつくと、こうつぶやいた。 「晴明長官は、この事態を予期して、アタシをここに派遣したのかしら」 ちなみに、瑠華であるが、さらに慌てて春樹を介抱しようとしたところで、自分たちをじーっと見つめる無数の視線に気付いた。 淳二、美亜子、輪、真理。 さらになつめ。 そしてなつめがフィールドに入ってきたことで、何事かとそのあとを追ってきた『富良野防衛家族黒井田家』の皆さん。 だけでなく、上級大将服を着た堀練康くんとその副官まで。 合計10人以上の視線が、瑠華に突き刺さる。
そして…。 「……っっ」 たまらず、その場を逃げ出した。 「なんというか、……青春よねぇ」 ぴくぴくしている春樹と長い髪をなびかせて可憐に走り去る瑠華を交互に眺め、なつめはつぶやいた。
フラー(英陸軍少将)
各チーム、この時間を利用してお弁当を食べたり、北天王山森林公園から出て、外食したりと、思い思いに過ごしていた。 この昼休みが設けられたことは春樹にとっては不幸中の幸い。 なつめの治療と戻ってきた瑠華の治癒の術により、なんとか復活。 だが、副作用(?)というかなんと言うか、しばらくの間瑠華は春樹と顔を合わせることが出来なかった。 春樹本人は気絶していた中での出来事ゆえまったく記憶が無いのだが、目覚めてみれば瑠華は顔を真っ赤にして自分を避けている。 何がなにやらわからぬが、おぼろげな記憶では自分は瑠華に銃を向けたような…。 (ううぅ、本格的に嫌われた…。明智さん、今度こそ決定的に僕を避けてる…) そう思い込み、春樹は泥沼のように落ち込んでいったのである。 嗚呼、やっぱり春樹ってば不幸。
みんなを集めたところで、『FANG GUNNERS』のリーダーである片倉真理は、半分笑いながら、輪に向かってこう言った。 言われたほうも、何となく頼まれることが何か、分かっていたので、ことさら表情を変えたりはしなかった。 「…昼食の調達だろう?」 真理は大きく頷いた。 「ご明察だ」 「やれやれ…」 ため息と共に、輪はメンバーを見渡した。 U菜歌姫Ver、T田、あずみあこ、のび○、マッハ夕張。 明らかにコンビニなんかに入った日には、一種異様な光景が繰り広げられそうな面々である。 その点、ナオのコスプレの場合、コートさえ脱げば、黒いズボンに黒いシャツ。 まぁ、普段着に見えなくもない。 『迷彩服のまま、公園の外に出ないでください』 という、ルールもあるわけで、それに照らせば『FANG GUNNERS』のコスプレ衣装の中で外出可能なのは輪だけなのである。 「よっ救世主!」 淳二がふざけてはやし立てる。 たしかに、腹が減っては戦は出来ぬ以上、補給担当こそが、この場合は救世主たりえるわけだ。 「では行ってくる」 北天王山森林公園の駐車場の先にコンビニがあった。 とりあえず、そこで人数分の弁当を買ってくることになり、輪は一人きりでステージの裏手、運営委員会の本部テントの隣に設置された『FANG GUNNERS』用の荷物置き場兼本営を離れたのだった。
「あっ、ナオさま〜」 甘くて可愛いキャンディボイスが輪を呼び止めた。 声をかけたのは辺見悦子だったが、その隣では鳥枝杏樹がツインテールを揺らしながら、輪に向かって手招きしている。 「今ちょっといいですか?」 輪は彼女らと一緒にいた人物を見て、少なからず驚いた。 倉田里子が何事か話しかけている相手は『富良野防衛家族黒井田家』の黒井田悟郎さんではないか。 この妙な取り合わせに興味を引かれたことと、黒井田悟郎さんがなんとも人のいい笑顔で輪に向かって会釈したこともあり、輪は弁当よりこの4人との会話を優先させることにした。 「いやあ〜、先ほどはどうも〜」 負けた悔しさなど微塵も感じさせず悟郎さんがそう言って頭を下げた。 「いえ、こちらこそ」 輪君的には、ちょっと緊張しつつ、この50歳のおじさんに向かい合った。 一体何の用だろう。この3人との関係は? 疑問は色々あったが、悟郎さんのほうはさらに深々と頭を下げてきた。 「決勝リーグ進出、おめでとうございます」 「…あ、どうも」 輪としては、とっさに答えようがない。自分達が勝ったために、悟郎さんのチームは予選リーグ敗退が決まったのだ。 にもかかわらず、悟郎さんは笑顔で『FANG GUNNERS』の戦いぶりを称えた。 そして、こんなことを言い出したのである。 どうせなら自分達を破って勝ち上がったチームには全国大会まで進んでほしい。 そのために協力したいことがある。 自分に『FANG GUNNERS』のエアガンのメンテナンスをさせてほしい、と。 輪は一瞬面食らったが、すぐに冷静な計算により、悟郎さんにはこうお願いした。 「では、時間も限られているし、まずは昼休み中に美亜子のサムライエッジと春樹のスナイパーライフルを見てやってほしい」 かくして輪は悟郎さんを連れて一旦本営に帰り、事情を説明。 そして、もう一度弁当を買うために引き返してきた。 当然というか、リンスリーガールズは輪に同道を申し出た。 「ナオさま、お手伝いさせてください」 「お弁当、持ってあげます」 輪としても、渡りに船である。 「そうか、すまない。そうしてもらえると助かる」
ゴルツ(独元帥)
「私は田中です…」 反射的に反論するが、やっぱり無駄なので改めて田中君は返答した。 「あれは『FANG GUNNERS』の作戦参謀、直江輪どのですな」 答えたところで田中君はぎょっとして上官の顔を見直した。 どうやら、かなり怒っているようだった。 「ベルゲングリューン、やつが誰なのかはおれにもわかっている。だが、あの周りに居る3人は何だ?」 「なんだ、と申されましても、中学生くらいの年頃の子でしょうか。なかなか可愛い子ばかりですな」 まるで他人事のように田中君はリンスリを評してみせた。 「くっ、これだからモテない男は…」 「閣下、何かおっしゃいましたか」 「いや、…だが、許せんな。直江輪とやら、チーム内にあれだけの美女が揃っていながら、さらに女子中学生にまで手を出すとは。しかも3人。まったく許せん。これだからロリコンというのは度し難いのだ」 そう吐き捨てた上官に対し、田中君は物怖じせずにこう進言した。 「総督閣下、めったなことをおっしゃいますな。無益な誤解を招くことになりかねませんぞ。帝国軍屈指の名将たる閣下が、よもや同じロリコンだと誤解されては、他への影響が大きすぎますぞ」 すっかり輪君がロリコンであることが二人の間では確定事項として話が進んでいた。 「たしかに、卿の忠告は正しい。少し口を慎むとしようか」 平静を装って、若本君は前髪をかきあげた。 だが、その実、色違いの両目は実にうらやましそうな視線で輪とリンスリを見送っていたのであった。 「ロリコンか…、なるほど作戦参謀だけに食えない男のようだな。何を企んでいるのやら」 自分自身のことを棚に上げて、輪をそう評価する若本君であった。 ストライクゾーンが広い若本君にとって、輪は自分と真っ向からキャラが被るライバルに見えていたのである。 「閣下、あまりお気に病みますな」 「おれもそう思う。人の女を羨ましがるなど、無益なことと分かるまでは、おれもまともだ。その後がどうもゆがんでいる。ゆがんでいる。分かっているのだ…」
「ふにゅ〜、鯖芸はいつになったら始まるんでしょう…」 ピィピィ。 「そうですねぇ、ちょっと待ちくたびれました〜」 せっかく応援に来たにも関わらず、マカナは退屈をもてあましていたのだが、それはまた別のお話である。
あの邪魔なお姐さんはいない。(悟郎さんとのエアガン談義に夢中になっていた) 背の高い、凶暴なお姉さんもいない。(悟郎さんにサムライエッジをメンテナンスしてもらっている) 髪の長い、綺麗なお姉さんもいない。(なぜか顔を赤くして延々と沈黙していた) 「あの、ナオさまはサバイバルゲーム暦は、長いんですか?」 「どうしてサバゲーをはじめたの?」 「コスプレして参戦しているのはどうしてなんですか?」 などなど、この機を逃すまいと色々と輪に質問しては、その答えを嬉々として聞いているのだ。 輪としてももともと“説明したがり”な属性もちである。 なにげに聞き上手な3人相手に、結構積極的に会話を楽しんでいたりする。 その姿に、これから戦う『新領土総督府』の若本君がめらめらと対抗心を燃やしていたことに、輪は気づいていなかった…。
すなわち、食事、武器のメンテナンス、他チームとの交流、そして最後の15分では輪君主導による決勝リーグに向けての作戦会議、そして淳二による決勝リーグ初戦の入場パフォーマンスの打ち合わせ。 盛りだくさんの1時間はあっという間に過ぎ、いよいよ決勝リーグのスタート。 『FANG GUNNERS』初戦の相手は『新領土総督府』である…。
「決勝リーグ初戦、『FANG GUNNERS』の相手はいきなりの強敵。
宇宙を、手にお入れください『FANG GUNNERS』」 |