五行戦隊センゴクマン!
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「センゴクマン沈黙」
当然ながら、観戦していたリンスリーガールズこと辺見悦子、鳥枝杏樹、倉田里子の3人は、試合後の輪の元へと近付こうとしていた。 しかし、3人の前に強力なライバルが立ちふさがっていた。 ご存知、片倉真理姐さんである。 本日の最初の試合、“大佐”の狙撃で真っ先にやられたのは真理姐さんの不覚だったが、今度は違う。 なにせ、3人をしとめフラッグを奪う大活躍で、間違いなくチームを勝利に導いたのである。 まさに試合のMVPだ。 この実績をもって、真理姐さんはリンスリの接近を思いっきり阻止。 …というか、実際には近付いてきた3人を真っ先に発見すると、誇らしげな顔をして右手でVサイン。左手を腰に当てて、ふんぞり返って見せたのだ。 (どーよ。見たか、あたしの大活躍)のポーズである。 「うっ…」 その真理姐さんと思いっきり目が合ってしまい、鳥枝杏樹は急停止。 「あの人…」 ちょっと気まずそうな表情で、倉田里子も足を止めた。 「どうしよう……。あれじゃ、ナオさまにも話しかけにくいな…」 と悲しそうに悦子。 自信満々で絶好調の真理姐さんとは対照的に、輪はどんより沈んでいた。 これでますますリンスリは輪に近付きがたい。 「…どうしたらお話できるかな。もし…、もしわたしたちが、次の対戦相手の事を調べてきたら、ナオさまは話を聞いてくれるかな」 自信なさそうに、悦子がそう言うが、目を輝かせたのは里子だった。 「…エッたん、それは名案かもしれないわ」 結構計算高い里子である。たちまち打算のソロバンをはじき出した。 「うまくいくと思う? その手の突発的な言葉は、たいてい実現しないと思うけど」 杏樹が首を左右に振ると、特徴的なツインテールがふるふると揺れた。 「でも杏樹、私たちに出来ることはそれくらいしかないんじゃない?」 里子が眼鏡を光らせ、冷静な口調で諭すと、悦子も同意した。 「わたし、ナオさまのお役に立ちたいな」 見るものの保護欲をそそらずにはいられない、悦子のひたむきな表情に杏樹の心も動かされた。 「…しょうがない、一応言っとくけど、うまくいく保障はないんだからね」 これで、リンスリのとるべき道が決まった。 彼女たちは回れ右すると、ステージの裏手、運営委員会の本部テントの隣に設置された道北地区優勝チーム用の荷物置き場兼本営へと向かったのだった。
すなわち、大活躍して『FANG GUNNERS』に逆転勝利を呼び込んだ片倉真理姐さんと、敵の奇襲によってヒットの憂き目に遭った、直江輪作戦参謀の微妙な関係についてのことである。 “どーよ。見たか、あたしの大活躍”攻撃でリンスリを撃退することに成功し、真理姐さんはますますご機嫌。 「んっふっふー、どう? ダーリン。あたしは役に立ったでしょう?」 真理姐さん、超ニコニコ顔である。輪にとっては、むしろその機嫌の良さと笑顔が怖い。 「…は、それはもうこの上なく。感服仕りました」 伏せ目がちの輪君。無論、敬語(?)で返答だ。 地区大会、練習試合と絶好調だった軍師輪君だが、北海道大会に来てからというもの、二試合が二試合ともぼろぼろである。 当然ながら、自信喪失気味。 それこそ、みんなに罵倒されてもしょうがない、と覚悟を決めていた。 そんな様子を見て、真理姐さんは内心(さすがに、凹んだと見える)と、輪の心情を分析。 年長者として、チームのリーダーとして、ちょっとは輪を楽にしてやるべく、さりげない一言を掛けてあげることにした。 「あたしがフラッグを奪いに走ったのも、そもそもがお前の作戦をあたしなりに応用した結果。だからチームを勝利に導いたのも、お前の策だ。もっと自分の軍略に自信を持ちなよ」 「…先輩」 その言葉に胸をつかれ、感激の面持ちで真理を見返す輪君。 チームメイトの失敗も笑って許し、やる気を持続させる。これぞリーダーの器というものである。 改めて、輪は思い知った。真理姐さんというリーダーあってこその『FANG GUNNERS』なのだ。 そんな輪に対し、真理姐さんは天使のような笑顔で、こんな事を言った。 「ってぇわけで、もう失敗は許さない。次の試合で負けたら罰ゲームとしてあたしにチューしてもらうから」 「!」 たちまち輪の表情が凍りつく。 「…それは困る」 「ぷっ」 その輪君のリアクションに、たまらず噴き出す真理姐さん。 なるほど、直江輪という男、実にからかい甲斐がある。 育てるなら春樹、からかって遊ぶなら輪、茶飲み話なら淳二だな。 『FANG GUNNERS』が誇る(?)駄目男三人をそう評価する真理であった。 「まぁ、負けないようにせいぜい頑張って策を練ることだ、軍師殿。どうしても嫌ならほっぺで許してやる」 そう言い含めるとぽんぽんと、輪の肩をたたく。 輪君が沈黙したのは言うまでもない。
「まぁね」 こちらは淳二と美亜子。 何気に美亜子をほめ殺ししている淳二と、結構気持ちよく賞賛を受け入れている美亜子の図式である。 「でも、結果としては美亜子ちゃんの撃墜数は一つしか増えてないから、まだまだオレにも逆転のチャンスはあるけどねー」 いたずら小僧の表情で、淳二が挑発。 「なに? 撃墜数であたしに勝てるつもり?」 まんまとその挑発に乗る美亜子。 「やってみなくちゃわからないぜ。何せオレは、あのサーフィン万歳野郎を撃墜した男だぜ」 「それって自慢になるの?」 あっさりと言い返されて、淳二はしばし沈黙。 「……なるような、ならないような」 「まぁ、いいんじゃないの? イロモノ対決はあんたが勝ったってことで」 「うにゅぅ…」 せっかくの戦果をイロモノ対決と評され、しかも、それがかなり的確な表現だった為、淳二は言い返すことも出来ずに黙る。 「まぁ、撃墜数1で終わらないよう頑張りなさい、あたしはさらにその上を行くから」 なんて余裕のコメント。そんなわけで、美亜子はとってもご機嫌であった。 そんな美亜子を見ながら、淳二は口には出さずに内心で呟く。 (よしよし、計算通りだぜ) 淳二流、美亜子操縦術の3原則。
「…ああ」 「一応、僕たちの予選Aリーグはこれで全チーム1勝1敗になったから、次で勝てば決勝リーグ進出が決まるみたい」 「…そうか」 「でも、次の相手はあの『夕張のガンマン』に勝ってるし、強敵だね。頑張らないと」 「…ああ」 なんか変だ。 「………」 「………」 二人の間を流れる沈黙。 伊達春樹は困惑していた。 明智瑠華が無口な少女であることはよーく知っている。 しかし、最近は以前ほど無口の度合いがひどくはなく、ちゃんと会話が成り立っていたのに…。 昔の明智さんに戻ってしまったのだろうか。 春樹が心配になったのも無理はない。 しかし、ちょっと違う。春樹の中ではなんとなくだが、それは分かっていた。 昔の瑠華は他人を拒絶し、馴れ合いを拒むような無意識のバリアが張り巡らされていた。 でも、今の瑠華はそれとちょっと違う。 そう、ただ上の空というか、意識が別の次元をさまよっているというか、ひょっとして何かに悩んでいるというか…。 思い当たる節はあるような、ないような…。 ともあれ、何か悩み事や心配事があったりしたら、相談して欲しい。 なぜか瑠華に対しては騎士道精神を発揮する春樹。思い切って瑠華に直接聞いてみることにした。 「明智さん、何か悩み事でも?」 「………………」 春樹の呼びかけにも応答なし。 もう一度トライ。 「ねぇ明智さん? 聞いてる?」 今度は、まじまじと瑠華の顔を覗きこむようにして、声を掛けてみる。 それで、瑠華も気付いた。 あっちの世界から帰ってきたら、春樹が自分の顔をまじまじと見つめている。 その美しい瞳をこの上なく見開いて驚きの表情を作り、反射的に真後ろに1mほど飛び退いてから、瑠華は焦りまくった様子でスカートのすそを押さえて一言。 「や…、やはり短かったか?」
状況を把握できない春樹。 「…いや、なんでもない、忘れてくれ」 瑠華は、赤い顔してうつむくのだった。
どういうわけか、偽装カップル3組が3組とも沈黙していたが、それぞれにそれぞれの事情というものがあるわけで…。 ともあれ、本日の8試合目となる次の試合は、ご存知『チーム風林火山』が出場するのだ。 しかも、予選Bリーグでは、すでに道東地区優勝チームが2連勝を上げて決勝リーグへの出場権を獲得していた。 そして、もしこの試合で『チーム風林火山』が勝てば、3試合目を待たずして決勝リーグ進出が決定するのである。 そんな大一番、果たして武田広奈はどんな戦いぶりを展開するのか。 『FANG GUNNERS』の面々も、興味津々である。
リデル・ハート(英国、戦略理論家)
ステージでの顔合わせを前に、『サイレント・ネービーズ』のメンバーは、ひたすら闘志を高めていた。 なにしろ、『サイレント・ネービーズ』は一回戦で惜しくも敗れてしまい、もう負けは許されない状況なのだ。 そこで、第二戦の相手が優勝候補の呼び声も高い『チーム風林火山』である。 気合を入れるな、というほうが難しい。 「弟よ、われら二人ともに生き残るのでなければ完璧な勝利とは言えぬ」 「分かっている兄さん。いよいよ決着をつけるときが来た。武田広奈は絶対に逃がさぬ。見ていてくれ米津家魂を!」 …なんて事をやっているのは『サイレント・ネービーズ』が誇る兄弟アタッカー、米津兄弟である。 「…この俺の尊厳にかけて、負けるわけにはいかん」 1人気合を入れる大男の安藤君。 「…………」 じっと耳を澄ませ、入場の指示を待つ細目の河原君。 「いよいよか、楽しみだ」 「我々は軍人としてすばらしい一瞬を共有できる…、というわけですな」 なんて事を言いながら、にやりと笑いあうのは、ちと太めの体型に眼鏡の練村君と、立派なあごがいかにも日本男児って感じの長渕くん。 試合前からテンション上がりまくりである。
今井さんの進行により、まずはスピーカーから大音量で『サイレント・ネービーズ』の入場曲が流れ出した。 さて、このアメリカ海軍コスプレのチーム、当然のことながら、入場曲はアメリカ海軍がらみ。 ってことで、超有名な映画『トップガン』のテーマで入場である。 これは盛り上がった。というかこの曲は非常にノリがいいのだ。 入場曲は、やっぱりギャラリーを盛り上げてなんぼ、というのがこのチームのポリシー。 「よし、弟よ、オペレーション『see wolf』だ」 「OK兄さん」 ごそごそごそ…。 ステージに上がる直前、米津弟がなにやら作業。 そして曲に合わせて登場したのは、おそろいの艦長服に身を包み、海軍帽をかぶった、6人の勇士。 ん? 「なんじゃあれ?」 ギャラリー席にて素っ頓狂な声を上げたのは淳二だったが、そう思ったのは淳二だけではない。みなが一様に驚いていた。 というのも、カッコいい海軍帽の中、一人だけ、変なヤツがいたのである。 狼さんのきぐるみ帽子をかぶっているのが約一名。 「ウルフだ…」 ギャラリーざわめく。 非常に可愛らしい狼さんが大口を開け、そいつの頭を丸呑みしているようにも見えるデザインである。 ちょうど口の中にそいつの顔があるのだ。 …非常に精悍で浅黒い、実に男らしい顔だった。ナイスミスマッチである。 とりあえず、『サイレント・ネービーズ』はそのウルフこと米津弟が非常に目立っていたが、ほかのメンバーも負けてはない。 何より驚くのが、装備の充実っぷりだ。『月刊種子島』の記事にもあったとおり、とんでもなくお金がかかっているようなのだ。 まず、チーム一の大男。安藤礼くんの装備は、“Vz61スコーピオン短機関銃”。
チェコスロバキア製の世界最小クラスのサブマシンガンである。 それを二挺携えているところを見ると、どうやら真理姐さんのように両手で操って戦うスタイルらしい。 しかも、二挺とも真っ赤に塗装したオリジナル仕様なのだ。 まさに戦慄の“レッドスコーピオン”。それだけで非常に強そうである。 続いて例の狼きぐるみ帽子こと米津くんは、最強最後のM16シリーズ“ナイツ・アーマメント/ストナーライフルSR−16 M4カービンタイプ”である。
そしてもう一人の米津くん、お兄さんのほうは普通の海軍帽をかぶり、使用する銃は同じ“ナイツ・アーマメント/ストナーライフルSR−16 M4カービンタイプ”だ。 さて、実はここまでの3人の装備はまだ普通である。それ以外の3人の装備こそ真に恐ろしいものであった。 河原くん、長渕くん、そして練村くんの3人の武器は“リボルバーランチャー”。 これがどういうものかというと、『FANG GUNNERS』と『地獄のも釧路区』の戦いでも使われたBB弾300発同時発射のグレネード弾が、リボルバー形式で6発撃てるという、とんでもない代物なのである。 まさに、恐怖の巨大リボルバー。サバゲーに出すのはほとんど反則な、とんでもない火力なのだ。 入場曲はノリノリ、服装も(一部の狼を除き)完璧、メンバーは強面、そして装備は空前絶後。 世界最強のアメリカ海軍を思わせる、とにかくすごいチームである。 「いやはや、すげー金かかってるなぁ…」 呆れ半分、羨ましさ半分の真理姐さん。 「火力だけなら、確かに『チーム風林火山』より上かも」 そう漏らしたのは春樹。 『チーム風林火山』は600発の多弾数マガジン装着のAK47やM60重機関砲を擁していて、装備の充実ぶりは『FANG GUNNERS』以上。 だが、このチームはそのさらに上を行く。 「装備に関しては、記事どおりか。気になるのはあのウルフだが、何ゆえあんな格好を…」 地方大会ではあんなのは出ていなかったと思うが、何故? 軍師輪君の悩みは尽きない。
というわけで、ご存知優勝候補筆頭『チーム風林火山』の入場である。 今回、広奈様が入場曲に選んだのは…。 ちゃーん♪ ちゃーんちゃーらー♪
いきなりのオーケストラ演奏。フィールドに優雅な旋律が流れ出た。 クラッシックファンの中では有名だけど、ギャラリーの中で分かる人はあんまりいないかもしれない、そんな曲。 入場曲として必要な、盛り上がりも何もあったものではない。 思わず長渕くんが渋い顔して一言。 「この入場曲は衆人環視の中、サバゲーチームが取るべき曲ではない。禁断の入場曲だ」 とにかく、この優雅な雰囲気の中、まさしく優雅で可憐で清楚で美しい少女が入場。 5人の忠実なメンバーを引き連れ、一歩、また一歩とステージの中央へ。 彼女が現れただけで、その場の雰囲気がぱぁっと明るくなるような、見る者の心が洗われるような、そんなオーラが照射されている。 とにかく、その存在感は圧倒的である。
安藤「相手の指揮官の顔、もっとじっくり見たいものだ」 河原「OK〜〜〜」(…なにが?) 米津弟「ふん、あたかも国家元首の表敬儀式のような行動だな。元首のように壇上に現れ、テロリストのように戦う。そこには大きな矛盾があるのだよ、ミスタケダ」 米津兄「武田広奈、いくら美しい顔をしていようが、ギャラリーに対して友好的なポーズを作ろうが貴様の奥底にある薄ら寒い企みは隠しおおせない。こんな入場をやらかす貴様はこの世でもっとも危険な魔性の女だ」 練村「うろたえるな、相手はただの高校生。これはゲームだ。考えろ練村。知力13のわが頭脳は風林火山との勝負のためにあるのだ」 長渕「なんという美しい女だ。……いかん余計なことを考えるな。あれは我々の敵なのだ」
なにしろ、彼らは全員同じ男子校に通う生徒。当然彼女いない暦18年近い猛者どもばかり。 そんな彼らにとって、こんなに綺麗なお嬢様とご一緒するチャンスなんて、もう二度とないだろう。 その気持ちに正直な者、逆に過剰なまでの敵意に変換する者、ひたすら見とれてしまう者。 6者6様の反応であった。 と、そこに…。 「ごきげんよう、皆さま」 広奈様の微笑みはハープーンミサイル並みの破壊力で、彼らに直撃した。 「「「「「「ごっ、ごきげんよう!!」」」」」」 揃いも揃ってどもった挙句に鸚鵡返しである。 むさい男6人のごきげんようは、さすがにギャラリーの失笑を買ったが本人たちは気付いていない。 「はいはい、ちょっとよろしゅうおすか? 今かかってる曲はなんでっしゃろ?」 と、そこにマイクを持って割り込んだのは今井さんだった。 たしかに、それはこの場にいた全員の共通の疑問だったのだから。 「モーツァルトの“ジュピター”ですわ」 ごくあっさりと答える広奈様。 「じゅぴた〜?」 首を傾げる今井さん。 もうちょっと解説が必要らしいと思い、広奈様はさらに付け加えた。 「“ジュピター”とは通称で正確には、ウォルフガング・アマデウス・モーツァルトの交響曲第41番ハ長調 K.551のことです。今お聞かせしたのは第4楽章モルト・アレグロ。ニューヨークフィル演奏、指揮はブルーノ・ワルター。数あるジュピターの中で私の一番好きな演奏ですわ」 ごく自然に答える広奈様だったが、誰も内容までは理解していなかった。 (こんな長い名称をすらすら言えるなんて、広奈様ってすごい) これが、この場にいた全員の気持ちであった。 「はい、おおきに〜」 よく分からなかったけど、とりあえずお礼を言ってごまかす今井さん。 続いて観客の視線を広奈様並に浴びていた、某ウルフにインタビュー。 「ええと、何でこんなきぐるみ帽子を?」 米津弟は、自信たっぷりに答えた。 「無論、目立つ為だ!」 ぽむっ。 思わず手を打ったのは淳二。 「ナイス!」 「ああ…、アホがまた1人」 喜ぶ淳二と、呆れる美亜子の図であった。 「…本当にそれだけなのか」 輪はやっぱり何か腑に落ちない様子である。 かくして、試合前の顔合わせも終わり、試合開始時刻となった。
「こちら乱波、敵軍は2人を本営に残し、4人が進撃。2人はフィールド中央を進みましたがロストしました、あと2人はフィールド右翼、山の方向に進撃中。先陣は“レッドスコーピオン”。1人だけ突出しています、速い!」 「ご苦労様。まずは“レッドスコーピオン”を迎撃します」 広奈様はてきぱきと指示を出すと、またもや御自ら先頭に立った。 ちなみに広奈様の服は例によってオーダーメイドの白い将校服である。 これは非常に目立つ。 当然ながら真っ先にそれを捕捉したのは、全速力で進んできた“レッドスコーピオン”こと安藤くんだった。 「見つけたぞ、武田広奈。米海軍の意地を見せてやる!」 ちゃきっと二挺のブローバックガスガンVz61スコーピオン短機関銃を構えると、安藤君はさらに速度を上げた。 さて、この安藤くんの戦法は、実は真理姐さんの得意技に良く似ている。 すなわち、軽くてフルオート射撃可能な二挺の銃を撃ちまくりながら、自分は全速力で駆け抜けるのだ。 走っている敵に命中させるのは難しい。その上敵は撃ちまくりながらこちらに突撃してくるのだ。 攻撃は最大の防御、戦場では常に最大戦速、いつもイケイケ青信号。これが安藤くんのポリシーだ。 「オレは軍人になったことを今ほど感謝したことは無い。これほどの敵を自分の手で葬れるのだ。この森に永久に眠れっ!」
ドガガガガガガガガガガガガガ!! 二挺の真っ赤に塗られたスコーピオンがけたたましい音を立てる。 ブローバックガスガンは撃つたびに激しくスライドがリコイルし、実銃さながらの動作音を上げるのだ。 しかし、BB弾が届く寸前で広奈様は木の陰に隠れ、しかも反撃のそぶりが無い。 「何故反撃しない?」 安藤くんは全速で駆けながら自問していた。 「お前は軍人ではない。軍人なら報復としてこっちにBB弾を撃ち込むはずだ。お前はいったい何者だ」 「俺らのお姫さまさ」 「なにっ?」 すっかり広奈様に気を取られていた安藤くん、茂みに潜んでいた弾正を完全に見落としていたのだった。 否、広奈様自身がおとりとなって、敵の目を引き付けていたのだが、無論、安藤君には分からない。 ずばばばばばばばばばばばばば!! 「ぐはっ!?」 背後からAK47のフルオート射撃を受けてはひとたまりもない。 「無念…。ヒットだ」 レッドスコーピオン、これにて撃沈。 たった一人で敵陣に突入し、あっさり迎撃されるという、見事な猪武者っぷりを見せ付けてくれたわけである。 こうして、蠍の毒針は誰にも刺さることなく、フィールドから消えた。 「決勝リーグで待っていろ風林火山。もう一度正面から挑んでやる」 安藤くん、負け惜しみにそう呟くが、実際には決勝リーグで再び顔を合わせる可能性は0である。 すでに2つある枠のひとつは道東地区の優勝チームが得ているのだ。 …一応、念のため。
安藤くんと広奈様の対決をじっと見ていたのは河原くん。 すでにフィールド西側の山の上に陣取り、ひっそりと身を隠していた。 河原君の武器は“リボルバーランチャー”。300発のBB弾を6回もばら撒けるまさに最強兵器である。 だが、弱点があるとすれば射程の短さ。そのため、必然的に取るべき戦法はアンブッシュとなる。 そしてそのアンブッシュ作戦において、敵の姿を先に捕捉できたことは、ほとんど勝利と等価であった。 「風林火山、お前たちは永遠にここを突破はできぬ。この俺がいる限り」 そうしてにやりと笑い、河原くんはさらに身を低くした。 さて、一方の広奈様、戦場を見渡して一言。 「じっと動かず、どこかで耳を済ませている厄介な敵がいます。その方の戦闘能力を奪わない限りこれ以上の進撃は危険ですわ」 以心伝心。その広奈様の声に、陣馬奉行が動いた。自分が何をすべきか、ちゃんと分かっている。 「乱波へ、残る敵の位置を報告せよ」 陣馬奉行の声に乱波が即座に応じた。 「2名が本陣に残っていますが、それ以外は現在捕捉出来ていません。リボルバーランチャーを持った敵が、おそらくは山の上に潜んでいると思われます」 「高所から撃てば、ランチャーの射程の短さを補える、というわけですね」 広奈様はしばし考えた後、作戦を発動した。 さて、じーっと身を潜めて敵の出方を待っていた河原くんだったが、早速獲物を捕捉した。 陣馬奉行がゆっくりした足取りで、遊歩道を山に向かって歩いてきたのだ。 現在、陣馬奉行の周りには身を隠す遮蔽物はない。 「なるほど、よだれが出るほどランチャーを撃ちたくなる地形だが、撃てばこちらの位置も知られてしまう」 河原くん、細い目をさらに細めてしばし考える。 「そうか、あれはおとりか。ということはあのお嬢様は味方一人失うほどの危険を冒しても、俺との決着をつけたがっているんだな」 河原くん、にやりと笑うと、ゆっくりと身を起こし、ランチャーの発射準備。 と、その瞬間。 「敵発見。陣馬奉行、逃げてください」 双眼鏡で敵を探していた乱波からの緊急通信だった。 河原くん、不用意に動いたことで、それと気付かないうちにチーム風林火山の索敵網に引っかかってしまったのだった。 (アスロック、ファイア!) 心の中でそう叫ぶと、河原君はトリガーを引いた。 シュバーーン。 勢いよくガスが放出され、それに伴って300発のBB弾が発射された。 しかし、直前に無線で指示された陣馬奉行は、すんでのところで猛ダッシュし木の陰に隠れることに成功したのだった。 「こっちの位置も発見された?」 河原くんの独り言に答えるかのように、木の陰から撃って来る陣馬奉行。 だが、河原くんは武器と地形の面で圧倒的に有利だった。 というのも、広範囲にBB弾をばら撒くこの武器は大まかに狙うだけでいいので、敵を目視する必要がなく、完璧に遮蔽物に隠れたままの状態でも攻撃を仕掛けられるのだ。 「いくら撃ってきても無駄だ風林火山。そっちの位置はすでに見えている」 そしてリボルバーを回転させ、次弾を装填。即座に第二波攻撃。 フィールドに再びBB弾の雨が降る。 勝利を呼ぶはずの完璧な攻撃。だが、彼はひとつ失念していた。 敵を見ないで攻撃したそのわずかな隙に、弾正が動いていたのだ。 しかし、それが河原くんには分からない。 ヒットコールがなかったので、隠れたままさらにもう一発撃ったのだ。 合計3回のBB弾シャワー。だが陣馬奉行は、広奈様の指示で隠れたままだったので、何とかこの攻撃にも耐えられた。 河原くんは舌打ちしたが、すぐに別の策を考え出した。 「反撃が可能なら撃ってくるはずだ。ヒットコールも認められないということは、完全に身を隠して縮こまっているのだ。よし、木の陰で断末魔の悲鳴をあげている敵の息の根を止めてやる。ここは四次攻撃の用意だ。向こうは動けん」 過去3回は仰角45度で大雑把に撃ち、BB弾の雨を降らせたが、今度は違う。 しっかり銃口を敵に向け、直接300発をお見舞いしてやる。 河原くんは即座にその場を離れ、陣馬奉行を別の角度から狙えるような場所を求めて移動開始。 これにて、戦闘の第二幕である。 さて、その間も、実は広奈様と陣馬奉行の間にこんな通信が繰り広げられていた。 広奈:「3度も撃ってくるとは、叩いた石橋も渡らぬ方のようですわね」 陣馬奉行:「敵はまだこちらを狙っています。今脱出しなければ、今度こそやられてしまいます」 広奈:「このままです。敵はそれを待っているのですから。大丈夫、銃口さえ出せればあの敵と勝負できますわ」 陣馬奉行:「しかし、それまで」 広奈:「こちらにランチャーを3度も撃って来る念の入った方です。もう一度止めを刺しに来るはずです。そのときにチャンスができます」 と、そこに割り込んできた声。 「こちら弾正、そのチャンスが出来たぜ」 弾正はいつの間にやらフィールドの端を大きく移動し、河原くんの背後に回っていたのだった。 広奈:「あの敵の戦闘能力を完全に奪ってください」 弾正:「了解。どんな優秀な武器だろうと、後ろに付かれたら小回りの効く小銃に勝てはしねぇさ」 さて、そんなことも知らない河原くん、移動先で目視し、陣馬奉行を発見。 どうやら自分が移動したことに気付いていないらしく、こちらに隙だらけの姿を見せていた。 「もらった!」 と、リボルバーランチャーのトリガーを引くより早く。 ずばばばばばばばばばばばばば!! 「なにっ!?」 背後からAK47のフルオート射撃を受けてはひとたまりもない。 「甘いな。こっちは6人いるんだぜ」 2人目の敵を仕留め、弾正はご機嫌。 「ヒット…だ」 がっくりとうなだれる河原くん。呆然と呟く。 「この世界最強を誇るランチャーシステムで武装した俺が、しかも、完璧なアンブッシュ作戦を取りながら、負けた。もう、どんな攻撃を仕掛けようともあのお嬢様をしとめることは不可能ということか」 そして、リボルバーランチャーを両手で高々と上げると、そのままセーフティゾーンに向かって歩き出した。 「…総員退艦」 総員ってあなた一人しかいません、河原くん。
そして、橋を渡り、いよいよ敵本営に近付こうとしたところで、敵を発見。 「こちら三郎兵衛、“ウルフ”がいたぞ」 かの狼さんのきぐるみ帽子が森の中、茂みの上にひょっこり見えていた。 そして、発見されたと見るや、すごいスピードで逃げた。 たちまち木々に隠れて見えなくなる。 「よし、鬼美濃と修理は援護してくれ、俺が追う」 三郎兵衛は追跡を開始。
「これで捕捉できていない敵の数は1人、弾正はこのままフィールドの端を進み、南端で待機。陣馬奉行は山の上で敵を探してください。三郎兵衛、そちらには今からわたくしが参ります。それまで深追いは避けてください」 が、広奈様の指示は少しだけ遅かった。 ウルフを追跡していた三郎兵衛は、目標をロスト。 だけでなく、前方にいるはずのウルフが、なんと三郎兵衛の真横に出現したのだ。 「なっ!?」 ばばばばばばばばばばば! 「馬鹿なッ!??」 いつの間に真横に回りこんだというのだ。 「ヒット!」 『チーム風林火山』に最初の犠牲者が出てしまった。 一矢報いたウルフ、次の獲物を狙うと思いきや、またも木々に紛れて走り去った。 追いかけようとした鬼美濃と修理だが、ここはじっと我慢の子。広奈様の到着を待った。
驚きの声を上げたのは淳二。 それに真理姐さんや春樹も賛同する。 「だな、やるじゃん、ウルフ」 「足を使った攪乱戦法ですね」 素直にびっくりしている3人。 一方で、瑠華は口には出さないが、首を傾げていた。 (妙だな、あのオーラ、微妙に…) そして美亜子は、天才の勘で、何かに気付いていた。 「う〜ん、なんか違和感。輪、あんたはどう思う?」 美亜子に話を振られるまでもない。輪は深い思考の海に沈んでいた。 そう、そもそもどうしてわざわざ“ウルフ”の格好を選んだ? 目立つ為? 確かにそうだ、目立つことは事実だ。だが、目立った上で、何か深い思惑が…。 そういえば、ウルフと同じ装備をしたもう一人、背格好や体格も良く似ていたが、まさか。 輪の中で、何かが繋がった。 思わず立ち上がる輪君。 「俺の考えが確かならば、これは敵が確信犯的に仕掛けたトリックだ」 そう言って、輪は口の端を吊り上げた。 自分は見抜いたぞ。さぁ、武田広奈、お前ならどう戦う? どう対処する? 輪君の視線の先、『チーム風林火山』は…。
ナポレオン(仏皇帝)
「分かりました。これは敵の策です。ウルフは二人いるのです」 あっさり。 「二人?」 「どういうことですか?」 半信半疑の鬼美濃と修理。 「簡単なトリックですわ。ステージ上に現れたウルフは一人。ですが、ウルフと同じ装備をしたもう一人の方が、試合開始後に同じウルフのきぐるみ帽子をかぶったのです。わたくしたちがウルフは一人だけ、と思い込んでいれば、この罠に嵌ります」 「そうか」 「なるほど」 さすが我々の指揮官は美しいだけでなく、賢くていらっしゃる。 鬼美濃と修理が激しく感動していると、早速広奈様が対処策を考え出した。
自信満々に輪君から説明され、『FANG GUNNERS』は割と素早く状況を把握。 「なるほどねぇ」 「さすがダーリン」 「直江君、どうして分かったの」 「…そういうことだったのか」 「ふぅん、違和感の正体はそれか」 どういう思考ルートでこの解を導いたか説明を続けようとした輪だったが、『チーム風林火山』が動いた。 「むっ、見ろ、馬場と内藤が…」 先ほど山県を仕留めたウルフが消えた辺りに向かい、慎重に接近中。 「おそらく、二人が向かった先にウルフBが潜んでいる。だが、ウルフAがこの二人の背後に回るはずだ。よく見ていろ」 『FANG GUNNERS』の11個の瞳が戦場を注視。 …ん? 「痛っ、目にゴミが…」 春樹の右目だけ閉じていたのだが、そんなことはどうでもいい。 「いたわ」 最初に見つけたのは美亜子だった。 輪の言うとおり、ウルフAこと米津弟くんは、馬場と内藤の背後を狙い、静かな足取りで大きく迂回中。 そして、二人を射程に捉えると、木の陰からじっくりと狙いを定める。 当然ながら銃口の先、あの間抜けな二人はこちらには全く気付いていないだろう。 「ふっ、俺達兄弟のオペレーション『see wolf』の成功率は、パーフェクトだ。米津家の戦い方をこれから見せてやる」 と、その瞬間。 ずばばばばばばばばばばばばば!! 「なにっ!?」 背後からβスペツナズのフルオート射撃を受けてはひとたまりもない。 振り向けば、そこには美しすぎる敵の指揮官の姿。 自分がここに来たとき、周りに敵の姿はないと思った。少なくとも何も動くものはいなかった。 つまり、武田広奈は、最初から自分がここに来ることが分かっていて、完璧なアンブッシュを仕掛けたことになる。 「ヒットっ。なぜだっ、なぜ分かった?!」 あまりの悔しさに、思わずそう聞かずにはいられないウルフAこと米津弟。 「もう一人のウルフとの連携を考えれば、貴方がこの位置に移動することは分かっていました。戦闘において、1プラス1は必ずしも2ではありません。自らの策におぼれたとき、1プラス1は1になるのです」 「……くぅっっ」 オペレーション『see wolf』は完璧に読まれていたのだ。 そして、時を同じくして、背後からの奇襲の心配がなくなった鬼美濃と修理が、ウルフBこと米津兄を仕留めていた。 「ヒットだ…。オペレーション『see wolf』の罠を逆用するとは、たいしたチェックメイトをかけてくるではないか、風林火山」
「兄さん、あの女が存在する限り、俺はもう一度この大会に戻ってくるぞ。決勝リーグだろうが全国大会だろうが、あの女を追い詰めるぞ。俺の戦いは武田広奈に勝つまで決して終わらぬ」 「ああ、お前にはまだあと一年ある。もう一度サバゲーの何たるかを考え、自らを鍛えなおせ、弟よ」
輪君、広奈様の鮮やかな戦いぶりに脱帽である。 全くもって恐るべき戦術の天才だ。もう一度やって勝てるのだろうか。 「これで、5対2だ。『チーム風林火山』の決勝進出は決まったな」 そう言う真理姐さんに対し、全員が無言で頷いた。 もはや、それは『FANG GUNNERS』にとって確定事項なのだから。
両チームの布陣はマップの通り。 『サイレント・ネービーズ』の練村くんと長渕くんは、揃ってバリケードの中。 最終決戦兵器のリボルバーランチャーを構えて、虎視眈々。 対する『チーム風林火山』は、まず広奈様が伝家の宝刀である銃座付きM60重機関砲を構えている。 これは、戦いの最中、陣馬奉行に本陣まで取りに行かせたものである。 そして広奈様の前には陣馬奉行、鬼美濃、修理の3人が横一線に並ぶ。 当然、敵のリボルバーランチャーの射程外である。 姿の見えない弾正は、ずっと敵本営の左に潜んだままである。 そんなわけで、戦場ではちょっとしたにらみ合いの状態が続いていた。 「風林火山がついにわがチームの前衛を突破した。私はこの緊張したギャラリーの目前で破れることは許されぬ」 バリケード越しに『チーム風林火山』を見やりつつ、長渕くんが感慨にふける。 「来い風林火山! ゲームは終わりだ」 気合十分の練村くん。 そして、いよいよ『チーム風林火山』の攻撃準備が整った。 「敵の攻撃は熾烈を極めます。勝敗を決するのはスピードです。…では、参ります」 「「「「了解」」」」 そして、広奈様は射撃を開始。 長射程のM60が狙う先は練村君の潜むバリケード。 絶え間なく続く弾幕に、練村君は当然ながらバリケードから顔を出すことが出来ない。 そして、前衛の3人が猛然とダッシュ。 3挺のAK47の猛烈な射撃が長渕くんのバリケードを襲う。 (この弾幕で我々の眼を塞ぎ、速攻でバリケードに張り付くつもりか) 『チーム風林火山』の戦術を、図らずも練村くんと長渕くんは同時に見抜いた。 そして同時にほくそ笑んだ。 無駄だ、このリボルバーランチャーの攻撃範囲を持ってすれば敵を目視する必要などない。 猛スピードで、長渕くんめがけて突っ込んでくる3挺のAK47の銃声。 派手に聞こえてくるこの発射音めがけ、ランチャーを撃てばいいのだ。 「この状況ではトリックは使えぬはずだ。この進路に決戦への明確な意思が込められているなら、いったいどんな作戦だ」 長渕くん、自問自答するが答えは出ない。 そして、満を持して練村君が叫ぶ。 「アンブッシュオペレーション『ナイアガラ瀑布』発動!!」 「ファイアッ!」 長渕くんがそれに答え、二人合わせて600発のBB弾がバリケードの陰から、仰角45度で撃ち出された。 「量を惜しむな!!」 間髪いれず、さらにもう600発。 これで、こちらに突撃してきた3人はひとたまりもないはずだ。 「愚かなり武田広奈。これが貴様の最後の戦術かーーッ!」 練村くんが叫ぶたびに600発。 まさにナイアガラ瀑布のように、空中から雨あられと1800発のBB弾が降り注いだ。 そして、AK47の銃声が3つとも止んでいた。 「手ごたえあり!」 練村くんが快哉を叫ぶ。 「残るは一人か。武田広奈、堂々の一騎打ちというわけだな」 満足げに微笑む長渕くん。 と、その二人の背後で、それぞれ1発ずつBB弾の発射音。 「何だとっ?」 「そんな…」 「ふん、一人忘れてるぜ」 長渕くんを仕留めたのは、ずーっとフィールドの端に潜んだままだった弾正だった。 最後の最後、ここぞというところで一気にダッシュし、長渕くんの背後に回ったのだった。 「音を頼りにすると、こういうことになる」 練村君をサイドアームのベレッタM93Rを使って仕留めたのは、ダッシュの途中でAK47を鬼美濃に渡し、こっそり迂回作戦をしていた修理だった。 そう、前の試合で『FANG GUNNERS』の真理と美亜子が仕掛けた銃声を利用したトリックを『チーム風林火山』も使って見せたのだった。 結局1800発のBB弾を使ったこの壮大な作戦は、おとりとなった陣馬奉行とAK47を二挺抱えた鬼美濃の二人を仕留めたに過ぎない。 「ヒット…。そうか、あの女は我々のサバゲーにおける認識を超えた存在なのだな。我々はそれに気づかぬままこれまで無意味な戦いを続けていた…」 がっくりと肩を落とす練村くん。 「ヒットだ。…敗北の美学は彼女の頭の中に存在しない、ということか」 負けはしたが、なにやらさわやかな表情の長渕くん。
フィールドに試合終了の笛が鳴り響いたのだった。 最後まで見届けた輪君が呟いたのはこんな一言。 「なんという試合だ。互いの戦闘の次元が桁外れに違いすぎる…」 これにて『チーム風林火山』は決勝リーグ進出決定である。
弾正:6
「北の国からやってきたのは、なんとも人の良さそうな垂れ目のおじさん。
やるなら今しかねぇ、寝ちゃ駄目『FANG GUNNERS』」 |