陰陽五行戦記おまけ劇場

五行戦隊センゴクマン!

第二十二話

「センゴクマン観戦」


「予期しないことと、予期したくないことが起こる、と予期するようにせよ」
マリウス(ビザンチン帝国皇帝)


敗戦のショックは隠しようが無かった。

『夕張のガンマン』のアタッカー2人の手によって『FANG GUNNERS』側はもろくも全滅。

かつてこれほどまでに、コテンパンのケチョンケチョンにやられたことは無かった。

真理姐さんは相手の狙撃の腕を過小評価した事を後悔しており、輪は作戦の不備を悔い、淳二は自分が全く活躍できなかったことに落ち込み、春樹は瑠華や真理姐さんに対して申し訳ない気持ちで一杯、瑠華は瑠華で結局自分が戦力にならなかったことを痛感していた。

美亜子だけはそれなりに楽しいバトルが出来たのでむしろさっぱりとした気分。

なにより「決勝リーグでまたやろう」という好敵手の言葉を受け、ますます燃えていた。

ともあれ、戦場から引き上げてくる途中の『FANG GUNNERS』は、まさに落ち武者軍団。

向かう先はステージの裏手、運営委員会の本部テントの隣に設置された『FANG GUNNERS』用の荷物置き場兼本営だ。

落ち武者軍団と化した『FANG GUNNERS』は、爆発寸前の火薬庫のように不機嫌さと悔しさでパンパンである。

あえてその危険な集団に対し、火中の栗を拾う真似をする者は誰もいない様に見えた…。


と、そのとき。


「「「ナオさま〜(はあと)」」」

ん?

何事かと輪が目をやると、3人の女の子がそろってこちらを見ているではないか。

そして輪が自分たちを見たことで、さらにはしゃぐ。

「あっ、こっちを見たよ」

「ほら、エッたん」

「う、うん…」

年のころは中学1年か2年くらいだろうか。

ひとりは背が高めで健康的に日焼けした小麦色の肌と目鼻立ちのくっきりした顔立ちの子で、長い髪をツインテールにしている。

なんとなく仕切り屋っぽく、しっかりした学級委員長キャラ。

もうひとりは小柄でショートカット。純朴かつ照れ屋って感じが丸分かりな非常に可愛らしい子。

いかにも繊細そうな雰囲気が世の男性の兄性本能をくすぐりまくりの、ロリコンキラー、妹キャラ。

最後の1人はセミロングのストレートに白のカチューシャ。眼鏡をかけていて、どことなくお淑やかな雰囲気のお嬢様キャラ。

で、3人して輪の元へと駆け寄ってきた。

「……???」

戸惑う輪、何事かと注目する『FANG GUNNERS』メンバー。

「一回戦、残念でしたね」

お淑やか系の子がまずそう切り出した。

「でも、次は勝ってね」

ツインテールの子がそう続ける。

どうやら激励してくれているらしい。

たちまち輪は、いかにもフレンドリーなお兄さん、って顔になって、にこやかに応対した。

「ありがとう。頑張るよ。君たちは?」

「あ、あたしは鳥枝杏樹。中学二年生です」

そして隣のロリロリキャラに目配せ。

「えと、わたし…辺見悦子。みんなには“エッたん”て呼ばれてます。よろしくお願いします」

ぺこりと頭を下げると、ちょっとだけ茶色っぽいショートの髪がふわりと揺れた。

この子も中二なのだろうが、背が低くまだまだ発展途上なので、ほとんど小学生に見える。

最後の1人のメガネっ子お嬢様も頭を下げてから自己紹介。

「申し遅れました。倉田里子です」

そろいもそろって3人とも輪君に熱い視線を送っている。

それを見ていた淳二と美亜子。

「さすがは年下キラー。早くも無垢な少女を引っ掛けたみたいね」

「ってか、輪もこういう実績を積むからロリコン言われるんだよなぁ」

「全く、どうせ輪の事だから、このあと絶対ひどい目に遭うわよ」

「だな。泣かれるか嫌われるか、あるいは輪自身が苦行を味わうかのどっちかだな」

そうして2人してやれやれとため息。

いつもながら、なかなか気の合ったところを見せている。

そして年下キラーの犠牲者である例の女の子たちだが、輪が優しく応じてくれたことにすっかり舞い上がっていた。

「あ、あの…、ナオさま。わたしたち、ナオさまのファンクラブを作ったんです、さっき3人で。…これから応援してもいいですか?」

“エッたん”こと辺見悦子のロリコン瞬殺上目遣い光線が輪を襲う。

直撃、クリティカル。

「ファンクラブ…?」

「はい。今のところメンバーはあたしらだけなんだけど」

ツインテールの鳥枝杏樹がそう言ってから、メガネっ子お嬢様倉田里子に説明を促す。

「ファンクラブの主な活動内容は、試合前の激励と衣装のセット。試合中の応援。試合後のドリンクとタオルの差し入れ。お昼は一緒に食事。あと、試合の感想を聞いたり、ツーショットで写真を撮ったり、お兄ちゃんと呼ばせてもらうとか、頭をなでなでしてもらうとか、大会が終わってからも時々会ってもらうとか、ゆくゆくは私たち3人のうちの誰かと…」

と、そこにいささか不機嫌な顔をした真理姐さんが割り込んだ。

「あ〜、はいはい、お楽しみのところ悪いけどさ、ちょっと時間無いんだわ。うちの作戦参謀には次の試合の策を練ってもらわないといけないし、ほかの試合も見たいんだ。こいつをいじるのはあとにしてもらえるかな?」

真理姐さんとしては一応気を遣っていたのだが、この“リンスリーガールズ”はたちまちご機嫌を斜めにした。

「……ごめんなさい。でもわたし…、ただナオさまと少しでもお話がしたかっただけなんです」

と悦子。

「そうよ。別にいいじゃない。ナオさまだってまんざらでもないようだし」

と杏樹。

「邪魔しないでください。それとも嫉妬してるんですか?」

と里子。

「女の人の嫉妬はみっともないです」

「もしかして、ナオさまを狙ってるんですか?」

「きっとそうね。こうやって肌を露出させて、いやらしくナオさまを誘惑しているんだわ」

「やだ、不潔です」

「ね、最低」

言いたい放題である。


「あ〜、なんか凄まじくあたしを侮辱する言葉が聞こえるが、聞かなかったことにしてやる。ほら、早く散った散った」

さすが真理姐さん、大人の余裕で聞き流し、ひらひらと手を振って追い払う仕草。

これには“リンスリーガールズ”略してリンスリも逆切れ気味。

「なによ、さっきいきなりやられたくせに」

「サバゲー弱いのに」

「自分が一番ナオさまの足を引っ張ったのに、勝手な事を言わないでください」


ぶちっ


(ああああああっ、言っちゃった、言っちゃった…。どっ、どどどどーしよぉぉぉ??)

春樹慌てる。

(このプレッシャー!?)

突如湧き上がったものすごい殺気に、美亜子も反応。

(あちゃー、姐さん怒ったねぇ。どーすっかねぇ)

淳二はどちらかといえば傍観気味。対岸の火事を決め込んでいる。

(何をぐずぐずしているのだ? 本営に戻らないのか?)

瑠華は我関せず。というか、現状をあまりよく分かっていない。

無論、真理の怒りはもっとも間近にいる輪が一番感じ取っていたわけで…。

「せ、先輩。どうか抑えて…。冷静に…」

「あたしは冷静! はらわたが煮えくり返るくらいに、そりゃもう、かつて無いくらいに絶好調に冷静!」

どう見ても激昂中。

仕方なく、輪は3人娘のほうをたしなめにかかる。

「君たちも、少し言いすぎだ。今回負けたのは俺の作戦ミスが原因だし、先輩にはなんら責任は無い。さっきの発言は撤回してくれ」

実に男らしい輪の一言は効果てきめん。

3人娘は一発でおとなしくなった。

しかし…

「ナオさま、どうしてそんなにその人のことかばうんですか?」

「もしかして、その人のこと……」

「お付き合いしてるんですか? 恋人なんですか?」

逆に輪が追い詰められた。

「いや、それは…」

輪が口ごもると、3人娘の視線は真理に集中。それも尋常じゃない敵意が込められていたり。

バリバリバリバリ

物理現象をすら引き起こしそうな、火花散る視線のぶつかり合い。

睨み合う視線のレーザービームがフィールドに描く色とりどりの恋模様である。

エキゾチックジャパンである。

で、真理姐さんは爆弾を投下した。

「そーよ。恋人よ。あたしの彼氏よ


!!!!


フィールドに衝撃が走った。

「そ、そんないつの間に…?」

思いっきり動揺する春樹。

「ってか、信じるなよ」

小声でたしなめる淳二。

「…はぁ、ほんと、馬鹿なんだから」

美亜子は最悪の事態を招いた輪に対して、怒り半分、呆れ半分。

瑠華はというと

「ほう、そうだったのか」

…信じてやがる。

そして真理姐さんはいち早く輪の腕に腕を絡ませ、ひしと身を寄せる。

「そーゆうわけだから、あたしのオトコに手ぇ出さないでくれる、お嬢さん方?」

勝ち誇ったようにそう言うと、硬直する輪と腕を組んだまますたすた歩き出した。


後に残されたリンスリーガールズ、当然ながらプンスカ怒っていた。

「そんな…、あんまりです…」

「なによあれ、絶対嘘に決まってるわ」

「そうね。私たちで尻尾を掴んでみせましょう」

「うん…。ナオさま困った顔してたもんね」

「そうよ。あんな露出狂の年増女に負けてたまるもんですか」

「がんばろー」

「「おー」」

…やっぱり言いたい放題である。


さて、見事に火中の栗を拾わされた男、直江輪。当然ながら真理姐さんにささやかな抗議を開始した。

…腕を組まれたままで。

「片倉先輩、どういうつもりですか?」

「どういうつもりも何も、お前は大会中はあたしの彼氏だ」

「それは困る…」

本気で困惑した表情の輪に、真理はいささかお腹立ち気味。

「露骨に迷惑そうだな。それはそれであたしの乙女心が傷つくぞ」

「ぬぅ…」

「それに、放っておけばあの3人、絶対に四六時中お前に付きまとうぞ。作戦も考えられず、ほかの試合の観戦もできない。そして『FANG GUNNERS』は予選リーグ敗退だ。それでもいいのか?」

「ぬぅ…」

「作戦参謀の直江殿。『仏の嘘は方便といい、武人の嘘は軍略という』んだ。これも『FANG GUNNERS』が大会に集中して臨むための軍略と考えろ」

「ぬぅ…」

「ぬぅじゃない! 『はい』は?」

そして輪はたっぷり3秒ほど固まったあと、乾いた雑巾を絞るような声で

「…はい」

「よろしい」

そして真理姐さんは満足げに、さらに輪の腕をしっかり抱え込んだ。

腕を組むというよりは輪にぶら下がってそうな勢いだ。

(う〜ん、いい筋肉の付き方してるなぁ。役得役得♪)

真理姐さん、これで結構したたかなのだ。このシチュエーションを早速楽しんでいたりする。


で、興が乗ってきたので真理姐さんはさらに悪巧みを開始。

『FANG GUNNERS』用の荷物置き場兼本営に到着すると、ドリンク片手の休憩時間を利用し、真理姐さんが新たな策をみんなに提案した。

「大会中、迷惑なファンから身を守るためにも、偽装交際するか?」

偽装交際?

何事かと集まってきた、淳二、美亜子、瑠華、春樹。

そしてもう何のことかよーく分かっている輪。

「つまりな、あたしとこいつがくっついたのと同じ事を、お前らもやれってことだ」

それを聞いて思わず、メンバー間で視線が飛び交う。

「なにしろ、うちらのチームは美女が3人。1人でいるとなにかと危ないだろ? そこで彼氏つきだという事をアピールして、未然に身を守ればいいって寸法だ。そうだな、春樹は瑠華と、淳二は美亜子とくっつくってのはどうだ?」

非常に楽しそうにそう提案する真理姐さん、ワイドショー好きの18歳。

なんというか、本来なら先ほどの試合の反省と、次の試合の対策を立てるはずの時間なのだが、のっけから話が思いっきり脱線している。

「姐さんナイス提案! オレ賛成!!」

喜ぶ淳二を美亜子は冷ややかな目で見て、あっさり却下。

「…や〜よ、暑いし。それにあたしは1人でも平気だし」

「いやいや、美亜子ちゃん、どんな変態おやぢが狙っているかも分からないよ。オレが守ってやるって」

「あんたに守ってもらうほど落ちぶれちゃいないけど…」

「そこまで言うなら、美亜子ちゃんを狙う変態をどっちが先に阻止できるか勝負ってのはどうだ?」

「おもしろい。やってやるわ」

…こうして偽装カップルが成立。

ってか、これはこれですばらしく息のあった夫婦漫才である。

“勝負”の一言を出すことで、美亜子をある程度自由に操れる事を、最近の淳二は良く分かっている。

「…明智さん、そんな迷惑なファンっているのかな?」

「ああ、ごく少数だが妙な色のオーラを放ちつつ、私を見ている輩はいるな」

「大変! うん、僕頑張って明智さんのこと守ります」

「…そうか、よく分からんが、分かった。頼む」

そして、いつの間にかみんな敗戦のショックや悔しさをすっかり忘れていたりする。

ある意味次の戦いに向けて、すっかり気分をリフレッシュできているわけだ。

こうして期間限定ではあるものの、輪&真理、淳二&美亜子、春樹&瑠華のカップリングが成立。

その方面での略語を使うならば、マリ×リン、ジュン×ミア、ルカ×ハルといったところ。

こうして成立したカップリングは、すぐに実行に移された。

つまり、ほかのチームの試合観戦、作戦会議、休憩や買出しにいたるまで、このカップルを基本単位としての行動が続けられることになる。

真理はしっかり輪に張り付いており、淳二と美亜子はあたりを鋭く警戒し、瑠華と春樹はぎこちなくはあったが、それでも仲良く一緒にいた。

そんなこんなで、すっかり気分転換も済んだ『FANG GUNNERS』はギャラリー席へと移動した。

ちなみにこの大会ではA、B両リーグの試合を交互に行う。

『FANG GUNNERS』が到着したときには本日の二試合目である予選Bリーグの第一試合がすでに終わったところだった。

だが、この試合は広奈様も出ていないし、特に見なくても問題なし。



ちなみにタイムスケジュールはこんな感じ。

予選Aリーグ第一試合『夕張のガンマン』VS『FANG GUNNERS』
予選Bリーグ第一試合『(道東地区優勝チーム)』VS『(道央地区準優勝チーム)』
予選Aリーグ第二試合『(道北地区優勝チーム)』VS『(道東地区準優勝チーム)』
予選Bリーグ第二試合『チーム風林火山』VS『(道北地区準優勝チーム)』
予選Aリーグ第三試合『夕張のガンマン』VS『(道北地区優勝チーム)』
予選Bリーグ第三試合『(道北地区準優勝チーム)』VS『(道東地区優勝チーム)』
予選Aリーグ第四試合『(道東地区準優勝チーム)』VS『FANG GUNNERS』
予選Bリーグ第四試合『チーム風林火山』VS『(道央地区準優勝チーム)』
予選Aリーグ第五試合『夕張のガンマン』VS『(道東地区準優勝チーム)』
予選Bリーグ第五試合『チーム風林火山』VS『(道東地区優勝チーム)』
予選Aリーグ第六試合『(道北地区優勝チーム)』VS『FANG GUNNERS』
予選Bリーグ第六試合『(道央地区準優勝チーム)』VS『(道北地区準優勝チーム)』


◇予選Aリーグ第二試合◇


『FANG GUNNERS』が熱心に観戦する中、試合は滞りなく行われ、道東地区準優勝のチーム『地獄のも釧路区』が勝利した。

で、『FANG GUNNERS』次の対戦相手となるのがその『地獄のも釧路区』である。

道北地区大会の優勝チームを撃破したところを見るにつけ、どうやらかなりの強豪チームである。

そんなわけで、試合後には早速作戦会議が催されていたのである。


「敵の取る戦術は、一言で言えば『塹壕戦』だ」

作戦会議は、輪君のその発言から始まった。

『地獄のも釧路区』の戦いぶりは、身を隠すのに適当な“塹壕”に相当する地形を選び、そこに横一線に陣形を敷き、徹底してそこからの射撃を繰り返す、というものだった。

これをやられると、敵チームはなかなか手を出せない。

さらに横一線に配置されているので、相手チームが突出すると6方向からのクロスファイアが集中するという寸法だ。

これに対するには、同じように横一線に並び、“塹壕戦”を仕掛けるほかは無い。

そして塹壕戦とはイコール“消耗戦”に他ならない。

結局第二試合はそうした消耗戦となり、最終的に相手チームの全滅によって『地獄のも釧路区』が勝利を収めている。

「…というわけで、塹壕戦を仕掛けられると非常にやりにくいんだ。実際、第一次世界大戦でのフランス・ドイツがにらみ合う西部戦線は酷いものだった。当時、塹壕にこもった歩兵に対抗することができるのも歩兵だけだった。そのため、塹壕を制圧するには多大な犠牲を覚悟で兵力を投入し、敵を消耗させるしかない。そんな事をやってたものだから、この西部戦線では犠牲者が甚大に発生していたわけだ」

と、そこまで聞いたところで淳二がすかさず手を上げた。

「ハイ先生。薀蓄はいいからさ、塹壕戦に対する有効な作戦はなんかないの?」

「あるにはある」

輪は即答したが、微苦笑を浮かべ、こう続けた。

「歴史を見れば分かるが、塹壕戦はすぐに廃れた。“あるもの”の登場によって」

なんだと思う? と輪は生徒たちを見渡した。

「原爆?」

と美亜子。

「トマホークミサイル」

と淳二。

「毒ガス兵器か?」

と瑠華。

「えっと、飛行機かな」

と春樹。

「…戦車だろ」

と真理。

「片倉先輩が正解。順番から言えば、次は春樹が正解だな」

生徒たちの回答に、直江教官は満足げな様子。

「塹壕戦での被害の多さに危機感を募らせたのは、当時イギリスの海軍大臣を務めていたチャーチルだった。そしてそれに対処すべくイギリスは総力を集めて戦車を開発したわけだ。つまり戦車の登場というのは、対塹壕戦用の切り札という形でだったわけだ。そして戦車の普及によって塹壕戦ドクトリンは廃れ、第二次大戦のドイツ軍に代表されるように電撃戦ドクトリンが…」

と、そこまで得意げにしゃべったところで輪は沈黙した。

こんな事を話していてもしょうがないことに気付いた為である。

「…サバゲーには戦車は無いわな」

と、淳二がボソッと呟くと『FANG GUNNERS』はいやなムードに包まれた。

当の直江教官は、今までに読んだ兵法書、軍事書を頭の中で高速サーチ。

ぽくぽくぽくぽくぽくぽく、チーン!

それっぽい検索結果にたどり着いた。

「…あれとあれが使えるか」

で、複数ヒットした検索結果を組み合わせて、『FANG GUNNERS』のとるべき戦術を構築していく。

さて、輪が必死で考えている間、『FANG GUNNERS』のほかの面々、特に真理姐さんは痛いほど突き刺さる視線×3を感じていた。

少し離れたギャラリー席で、例のリンスリーガールズがこちらをじーっと見ていた。

真理姐さんが睨み返すと向こうも3方向からの視線のクロスファイア。

ばちばちばちばち。

…やっぱり火花が散っていた。

その迫力に、女の戦いの怖さに『FANG GUNNERS』の面々、戦々恐々。


「よし、作戦が出来たぞ」

万有引力を発見したニュートンのような会心の笑み。

輪が満足げな顔で、語りだそうとしたその瞬間。真理姐さんが動いた。

さすがダーリン(はあと)

んで、輪の首に両手を回して、しっかりと抱きついた。


!!!!


フィールドに再び衝撃が走った。

「なっ、何よあれ」

「…ナオさまになんてこと」

「淫らよ、ふしだらよ、泥棒猫よ」

リンスリーガールズの受けた衝撃は甚大。

言いたい放題である。

だが、それ以上の衝撃を受けたのが当の輪だったりして…。

「なッ!?」

ショックのため一瞬棒立ち。

そして我に返ると、慌てて真理姐さんを引き剥がしにかかる。

だが、とっさに真理姐さんの両肩を掴んだところで、再び輪は硬直した。

そう、なんと言っても真理姐さんの衣装は露出度が高いのだ。

輪が掴んだのは衣装ではなく真理姐さんの素肌だ。

18歳の乙女の柔肌の感触に、輪はいささか狼狽気味。

と、その瞬間。


スパコーーーン!!!!

「ぐはっ!」

投擲された美亜子の伝家の宝刀が輪の顔面に炸裂。

「いつまでやってんの!?」

妙にプンスカ怒っている美亜子。

真理が“はぐはぐ”をやめて離れると、さらに輪に詰め寄る。

「で、輪、作戦は!?」

美亜子の顔が、輪の間近に迫る。その表情ははっきり言って壮絶に怖かった。

「あ、ああ…、作戦だが………………………」

美亜子の迫力に押されるようにして、輪が言葉を搾り出すが、その後が続かない。

「む……」

だらだらと輪の顔からいやな汗が噴き出す。

「何? どうしたの?」

「…忘れた」

スパコーーーン!!!!

「ぐはっ!」

輪が軽く2回転ほどしてから、ばったり倒れるのをリンスリーガールズはしっかりと見ていた。

「なっ、何よあれ」

「…ナオさまになんてこと」

「野蛮よ、凶暴よ、極悪非道よ」

言いたい放題である。

こうして、リンスリーガールズの中で、美亜子も“ナオさまをいぢめる凶暴女”として認知されたのだが、それはまた別のお話。



「偉大な指揮官の業績を、好機と幸運のたまものにするな。その成果は常に冷静な計算と天才的な勘による」
ナポレオン(仏皇帝)


◇予選Bリーグ第二試合『チーム風林火山』VS『ラスト幕軍』◇


さて、予選Aリーグの第二試合の次に控えているのは、当然予選Bリーグの第二試合である。

道南地区優勝の『チーム風林火山』VS道北地区準優勝の『ラスト幕軍』である。

この試合が、広奈様の本日の初戦となる。

「じゃ、ついでだし、あの子の戦い方をじっくり見てやろうか」

真理姐さんの提案にもちろん誰も反対しない。

決勝リーグで『チーム風林火山』と再戦することをメンバーの誰一人として疑っていないのだ。

「で、ダーリン、その『ラスト幕軍』の記事は?」

「その呼び方はやめてくれ…」

その輪の困った顔が、また可愛くて真理姐さんはやめられないのだ。

ともかく、輪の開いた『月刊種子島』に6人が集まって、記事を吟味。

道北地区準優勝『ラスト幕軍』

幕末の時期の旧幕府軍の軍装に身を包んだ、最後のサムライ軍団で御座候。
使用するエアガンも市販のスナイパーライフルを改造したゲベール銃とミニエー銃で御座候。
こだわり、という意味では、大会屈指の歴史コスプレチームで御座候。
なお、道北地区大会決勝では、チーム一のアタッカー伊庭君が左腕を骨折するアクシデントもあり、惜しくも敗北して候。
北海道大会までの治癒は難しく、片腕での参戦となりそうで御座候。
攻撃力:7 一見すると古臭い銃に見え候。しかし中身は最新のスナイパーライフルで御座候。狙撃を中心に、戦術を組み立ててくるチームで御座候。
防御力:6 電動ガンが一丁もないため、敵の進撃に対するストッピングパワーの不足は否めないところで御座候。
機動力:7 切り込み隊長の伊庭君の怪我が惜しまれるところで御座候。基本的にはアンブッシュ戦法が多いようで御座候。
チームワーク:8 狙撃の際には、互いに死角を作らないようにチーム一丸で配置を決めているようで御座候。また、メンバーの戦意やサムライスピリットは素晴らしいものを持っているようで御座候。
作戦能力:7 積極的に敵陣に攻め込む策をとらない為、どちらかといえば防御主体のワンパターンの戦い方になる傾向が見えるようで御座候。
総合評価:7 火力、という意味では、参加チーム中1〜2を争うほどに不利で御座候。そこを巧みな戦術と狙撃でカバーできるかどうかが勝負の分かれ目で御座候。

「なるほど、チームの色としては『夕張のガンマン』に少し近いな。あのチームともう一度やるときの参考になるかもしれん」

というのが、一読しての輪君の一言。

「というか、あの化け物スナイパーをどう仕留めるか、ってのが、決勝リーグの課題だからな。まぁ、しっかり考えて頂戴ませませ」

「ああ、当然だ」

輪と淳二の息のあった問答に周りのメンバーから、笑みが漏れる。

なるほど、われらが作戦参謀殿は、すでにリベンジの為の策を練っているのだ。

「さ、淳二、ステージに行きましょ。広奈の入場曲とか気にならない?」

「おおっ、そうだった。みんなはどうする?」

淳二と美亜子はステージ偵察組に回るらしい、ほかの4人はギャラリー席確保の為、そのままここに居座ることになった。

少しの間、『FANG GUNNERS』は別行動である。


さて、ステージに向かっていた淳二と美亜子だが、見慣れた3人組の姿を発見した。

例のリンスリーガールズである。

かの真理姐さんの禁断の必殺技“はぐはぐ”攻撃&美亜子のスリッパに輪が撃沈して以来姿を消していたが、なんてことはない、彼女たちも次の試合の顔合わせを見ようと、ステージに向かっていたのだった。

「なんだ、ずっと輪に張り付いているわけじゃないのね。なかなか健全じゃないの」

「だな。一応この大会を楽しんでやろう、って気はあるらしい」

ちょっとだけ、彼女たちを見直した二人。んで、持ち前のバイタリティを発揮して、リンスリに近付いた。

「こんにちは」

背後から、涼やかな凛とした声。

振り返ればそこには“ナオさまをいぢめる凶暴女”。

だけど、凶暴女の割には、今は友好的な微笑みを浮かべていた。

こうして見ると“強くて頼れる背の高いお姉さん”って感じである。

その隣にはこれまた気の良さそうな、愛嬌のあるお兄さんの姿。

「えっと、悦子ちゃんに、杏樹ちゃんに、里子ちゃんだっけ」

…しっかり名前まで覚えているところがさすがである。

「あ、はい…」

人見知りするらしく、辺見悦子は鳥枝杏樹の陰に隠れた。

どうやら、まだまだ警戒されているらしい。

「私たちに、何かご用でしょうか?」

倉田里子の年長者に対する礼儀作法はしっかりしたものだ。

「別に用ってほどじゃないけどね。ステージに行くんでしょ? 一緒にどう?」

「そうそう、せっかくだし、輪は置いといて、オレとお近づきに…」

スパコーーン!!

「ぐえっ」

「あんたは余計なことは言わないの」

スリッパを駆使したどつき漫才を目の前で見せられ、リンスリもいささか圧倒され気味。

結局、断る理由もなく、妙な取り合わせの5人で、ステージ鑑賞と相成った。


「ドラゴンゲートより『ラスト幕軍』の入場でっせ!」

相変わらずの変な格好だが、今井さんの名調子はなかなか場を盛り上げてくれる。

リングアナさながらの呼びかけに、スタッフもてきぱき動き、入場曲を流す。

『ラスト幕軍』の入場曲は、年明けくらいに話題になったハリウッド製の逆輸入サムライ映画のテーマ曲だった。

淳二もリンスリも分からなかったが、美亜子だけは聞き覚えがあった。

(そういえば、パパと見に行ったっけ)

輪もまた綾瀬と見に行っていたらしく、学校でしばしこの映画の話題で盛り上がったのだった。

なにせ、輪も美亜子も、数少ない生粋のサムライスピリットの持ち主なのだから。

(そういえば、輪のヤツ、いつまで真理姐と偽装交際するつもりなのかしら。全く…、綾瀬が見たら泣くわよ)

ぼんやりと美亜子がそんな事を考えているうちに、『ラスト幕軍』の入場は終わっていた。

ステージ上には洋装4人に和装が2人。

特にこれで刀を差せば、完璧にサムライだな、って感じの和装の2人に美亜子の目は引き付けられた。

「ねぇ淳二、あの2人、多分なにかしらの武術をかじってると思わない?」

「んにゅ? 美亜子ちゃん、そんなこと見ただけで分かるの?」

「あんたは分からないの? あのギブスで左手をつってるやつなんて多分結構強いわよ」

どうやら伊庭くんは美亜子スカウターに反応したらしい。

「さてはお手合わせ願いたいなー、とか考えてるっしょ?」

淳二にそう言われ、美亜子は図星だったらしく、小さく肩をすくめて苦笑した。

「そうね。あれで怪我してなかったらね。でもまぁ、『夕張のガンマン』のあいつほどじゃないわ」

「“名無し”だっけ。確かにあいつは強いと思う、オレでも分かるくらいだからな」

「ほんと、面白いわね。サバゲーなんて甘く見てたけど、どの世界にも強いやつはいるわ」

武術家同士の品評会と化している2人の会話を聞きつつ、リンスリの3人はやっぱり圧倒されていた。

とにかく会話の内容が普通の高校生とは思えない。

まさかこの2人が地球を守る5人の戦士“五行戦隊センゴクマン”のメンバーだなんて、彼女らは想像も出来なかった。

…作者も忘れていた。



「タイガーゲートより『チーム風林火山』の入場でっせ!」

「よっ、待ってましたー!」

はしゃぐ淳二。

やがて、フィールドになんとも場違いな、華やかで優雅なクラッシック音楽が流れ出した。

「のわっ」

イントロを聞いて、淳二がこける。

「…やってくれるわね、広奈も」

美亜子、苦笑して眉間を押さえた。

bgm/nuts.mid
提供Crystal Windさま。参考までに。

このサバゲーとは全くもって接点を感じられない、場違いそのものの音楽に、ギャラリーもいささか驚きを通り越して固まっていたりする。

「んにゅぅ、何だっけこの曲、すげー聞いたことあるんだけど曲名が分からん」

苦悶の表情を浮かべ、くねくねと謎の動きをしつつ思い出そうとする淳二だったが、結局出てこなかったらしい。

「チャイコフスキーの『花のワルツ』です」

おっと、知っている人間が意外なところにいた。

控えめに教えてくれたのは辺見悦子ちゃん。

「おっ、サンキューエッたん」

さすが淳二、いきなり愛称で呼んでやがる。

美亜子はそこにツッコミを入れようとしたが、ステージに広奈が現れたのでやめた。

ちゃらりらりらちゃ〜らんちゃ〜らんちゃ〜らん♪

軽やかで華やかなワルツに乗って、広奈様可憐に登場である。

月刊種子島の表紙も飾った、超注目の大会ナンバーワン美少女の登場である。

ギャラリーも息を吹き返し、やんやの大歓声を送っていた。

慣れてみると、この場違いの曲もすっかり広奈様を引き立てるスパイスとなっていて、場の雰囲気を完璧に広奈様一色に染め上げていた。

この途轍もない存在感こそ、広奈様の真骨頂である。

哀れ『ラスト幕軍』、すっかりその存在が希薄になってしまっていた…。

「がんばれよ〜広奈ちゃ〜ん!!」

一応大会中は敵ではあるが、淳二は特にその辺にこだわりはないらしい。

何気にライバルとして意識している輪なんかとは対照的。

ひときわ大きな声で広奈にエールを送る。なんともいいヤツである。

広奈様は淳二の声に気付いたのか、ステージ上からにこやかに手を振り返してくれた。

と、その瞬間、広奈様が手を振った相手はいったい誰なのか? とギャラリーが一斉に振り向いた。

「うにょ?」

大勢の視線を浴び、固まる淳二。

ギャラリーの視線の先には、“あずみあこ”と“T田”の姿。

「『FANG GUNNERS』だ…」「偵察かな?」「しらねーの? 同じ高校らしいぞ」「なんだ、知り合いだったのか」

わいのわいの。

「うにゅぅ、なんか知らんが、目立ってしまったなり」

「つくづく馬鹿なんだから」

そんな2人にリンスリが素朴な疑問をぶつけてきた。

「あの風林火山の人とお知り合いなんですか?」

「どういったご関係で?」

「仲良しなの?」

立て続けに浴びせられる質問。

「同じ学校で、クラスメイトで、友達よ」

ごくシンプルに美亜子が答えた。当然のことながら、センゴクマンの件は秘密である。

「じゃあ、ナオさまとも?」

「そっ、『FANG GUNNERS』は真理姐さんだけ1つ上の先輩で、あとみんな同じクラスなり。風林火山の広奈ちゃんもクラスメイトだけど、ほかの5人は別のクラス」

今度は淳二が回答。しかし、実はここで淳二は余計な事を言っていた。

「じゃあ、どうしてその広奈さんだけ違うチームなんですか?」

辺見悦子から、厳しい質問。これをやぶへびという。

「うにゅ、それはだな…」

返答に窮する淳二。

そういえばどうしてなんだろう? 広奈ちゃんが戦う理由。

「じゃあ、あんたたち、率直に見てあの子がサバゲーするような子に見える?」

逆に聞き返したのは美亜子だった。

「いいえ」

「全然」

「ちっとも」

素直に首を振るリンスリに、美亜子は満足げに微笑むと、こう続けた。

「あたしたちもそう思った。だからチームに誘わなかった。だけどあの子はね、あたしたちが思っている以上に何でもできるのよ。本物の天才だから“あんたには出来ない”って言われたら、意地でもやってみせようって思う子なの。本質的に負けず嫌いなのかもね。だからあたしたちにも内緒で、ああやってチームを立ち上げて、自分の力を見せ付けてるの。わかる?」

「…なんとなく」

「…ふぅん」

「…そうなんですか」

「はりゃ〜、美亜子ちゃん鋭い分析」

って、淳二まで感心して聞き入っていた。

なるほど、美亜子は意外にも広奈様の本質を良く分かっているらしい。

「そりゃね、広奈とあたしは同類だもの」

「天才同士ニュータイプの共感があるんだねぇ」

感心したように、淳二が呟くが、誰もいまいち意味が分からなかった。



そんな感じで、なぜかリンスリとも仲良くなってしまった淳二と美亜子だが、試合開始時間前にはきっちりギャラリー席の『FANG GUNNERS』のところに戻ってきた。

リンスリは一応離れた席に陣取っている。

「おかえり。どうだった?」

出迎えた真理姐さん、真っ先にその質問。

どうも本人も見に行きたかったらしいが、輪が動かなかったので、この場にとどまったと思われる。

「うん、おもしろかったよ。広奈ちゃん何とかスキーの何とかワルツで登場してさ」

忘れてやがる。

「チャイコフスキーの『花のワルツ』よ」

美亜子が補足。

「そうそう、それですっかり自分のペースに巻き込んじゃって、こりゃもう、試合前から勝負は見えたって感じ」

「…なるほど。さすがだな」

輪が感心したように呟くが、その心中は、きっとまた戦場に出る前から勝負は始まっている、とか何とか、そんな事を考えているのだろう。

そんなこんなで、時間となった。



「戦は五分の勝ちをもって上となし、七分を中とし、十を下とす」
武田信玄(ご存知、甲斐の虎)


◇『チーム風林火山』VS『ラスト幕軍』試合開始◇


さてさて、ギャラリー席で『FANG GUNNERS』メンバーが見物する中、早速試合が始まっていた。

で、案の定というか、試合開始後、北天王山森林公園には、またしてもある周波数に謎の電波が飛び交っていた。

「こちら乱波、敵軍は3人を本営に残し、3人がフィールド東側、池を迂回して、橋の方面に全速力で進撃中。なお、彼らは出撃前『アボルダージ』という言葉を叫んでおります」

そう、またしても広奈様はスパイ役を敵軍のギャラリー席に潜ませていたのであった。

これを卑怯と言うまい。敵を知り、己を知れば百戦危うからず。これもまた戦場においては必勝の法なのだ。

「ご苦労様。敵の狙いは速攻による旗の奪取です。そこで、橋を渡ったところで迎撃します。AK備えはアンブッシュオペレーション“ストーンウォール”の準備を」

「「「「了解!」」」」

「AK備えは敵前衛を撃破の後、橋を渡って東側より敵本営に突入してください。陣場奉行は今からフィールド中央の遊歩道を通って、敵陣にゆっくり近付いてください。目的は分かりますね?」

「はっ、おとり役ということですね」

「はい、お願いします。なお、わたくしはフィールドの西側より進撃し、敵本営の横にて待機します」

なんと、広奈様自ら敵陣へと進撃するというのだ。

これには5人もびっくり。

だが、実はこれには広奈様の深い思惑が隠されていた。

つまり、無線とスパイにより敵軍の動きがすべて見えているからといって、あからさまに軍を動かしては怪しまれる。

そこで、ごく自然な二正面作戦をとった、と見せかけることで、ギャラリーおよびこれから対戦するチームの目をごまかすというわけだ。

Bリーグ第二試合途中経過

さて、そんなことも知らない敵軍の前衛3人、甲賀くん、野村くん、そして左腕をギブスでつって、片手でゲベール銃を持った伊庭くんは、橋を渡り、慎重に敵本営目指して進撃中だった。

んで、まんまと罠にかかった。

パァン!

「なにっ? …ヒットだと!?」

まず、先頭を歩いていた甲賀くんの額に“AK備え、影のヒットマン”こと修理の狙撃が命中。

慌てた野村くんと伊庭くんが木の陰に隠れたところで、一気にAK備えが動いた。

「ストーンウォール発動!」

「「「おおっ!!」」」

前方から3人、そして後方に回りこんだ弾正がフルオート射撃しつつ、一気に包囲を縮めてきた。

これには単発のボルトアクションライフルでは勝負にならない。

それこそ、戊辰戦争時に火縄銃でガトリングガンに立ち向かうようなものである。

だが、そこは気力と根性のサムライ軍団。和装の2人が最後に見せてくれた。

まず、野村くんが最後に放った弾は、見事一番からだの大きい鬼美濃に命中。

スライドをコッキングしている隙に、背後から弾正に仕留められたが、意地は見せた。

そして、片腕の闘士伊庭くんも、甲賀くんが撃たれたときの弾道から、修理の位置を割り出し、オペレーションストーンウォールが発動して、修理が出てきたところを逆に狙撃。

これが見事に命中した。

だが、悲しいかな片腕では普段どおりにスライドをコッキングできず、次の弾を撃つまでに時間がかかってしまう。

その時間が致命的なロスとなり、銃を構えるより前に三郎兵衛にフリーズコールを受けることになってしまった。

「…惜しいな。両腕が使えるときに戦ってみたかったが」

そう言う三郎兵衛に、伊庭くんはクールな笑みを返し、「これも天命だ」と呟くと、静かにフィールドを去った。

かくして、4対3の戦いはたちまちのうちに5名の戦死者を出すという壮絶な幕切れとなった。

「こちら弾正、2人やられた。これより敵本営に乗り込む」

「了解しました。タイミングを計って4人同時に仕掛けます」

そして広奈様の合図により、いささかメンバーが違うもののJ.S.Aが発動。

榎本くん、中島くん、大鳥くんの3人は抵抗むなしく、あっさり玉砕。

これにて『チーム風林火山』まずは、危なげなく一勝目を飾った。

『チーム風林火山』の撃墜数。

弾正:3
三郎兵衛:1
修理:1
陣馬奉行:1


「う〜ん、さすが、ってとこだね。どう見るダーリン?」

「いや、だからな…」

輪は心底困った顔をして2秒ほど沈黙したが、すっかり楽しげな真理姐さんの表情を見て、きっぱりあきらめた。

今日一日はこのダーリン攻撃に耐え忍ぶしかないらしい。

「武田の戦術は進化している。本陣にM60を備え付けて2人がとどまり、戦闘はAK備えが担当、というのがこれまでの戦術だったが、今回は違っていた」

「なるほど、6人全員で攻め込んでたもんな」

ぽん、と手を打って淳二が応じた。

「ふぅ〜ん、じゃあこの分だと決勝リーグ進出は間違いないわね。楽しみだわ」

ライバルチームの相変わらずの健在ぶりに、美亜子の心も躍る。

「でも、まずは僕たちがあと二戦で勝つ事を考えないと…」

控えめにそう提案したのは春樹だった。考えてみれば『FANG GUNNERS』は一回戦で『夕張のガンマン』にコテンパンに負けており、もう後がないのだった…。



予選Aリーグ第一試合『夕張のガンマン』○VS『FANG GUNNERS』●
予選Bリーグ第一試合『(道東地区優勝チーム)』○VS『(道央地区準優勝チーム)』●
予選Aリーグ第二試合『(道北地区優勝チーム)』●VS『地獄のも釧路区』○
予選Bリーグ第二試合『チーム風林火山』○VS『ラスト幕軍』●
予選Aリーグ第三試合『夕張のガンマン』VS『(道北地区優勝チーム)』
予選Bリーグ第三試合『ラスト幕軍』VS『(道東地区優勝チーム)』
予選Aリーグ第四試合『地獄のも釧路区』VS『FANG GUNNERS』
予選Bリーグ第四試合『チーム風林火山』VS『(道央地区準優勝チーム)』
予選Aリーグ第五試合『夕張のガンマン』VS『地獄のも釧路区』
予選Bリーグ第五試合『チーム風林火山』VS『(道東地区優勝チーム)』
予選Aリーグ第六試合『(道北地区優勝チーム)』VS『FANG GUNNERS』
予選Bリーグ第六試合『(道央地区準優勝チーム)』VS『ラスト幕軍』

次回予告

「負けることは許されなかった。崖っぷちの戦いに駆り出される6人。
だが、少年たちの前に、また新たな強敵が姿を現す。
地獄が蓋を開け、黙示録の獣が『FANG GUNNERS』を襲う。
恐怖と勇気の狭間で、彼らの身に降りかかる更なる試練とは。
ワルキューレが戦場を駆け抜けるとき、少年は戦争の業を知る。
次回五行戦隊センゴクマン「センゴクマン反撃」

不屈の闘志で、撃てよ『FANG GUNNERS』」

あとがき春樹


去年の11月以来のセンゴクマンです。長らくお待たせしました。

とりあえず、お正月休みにまたしてもさまざまな資料収集や映画鑑賞などに明け暮れました。

『バトルロワイアル』『バトルロワイアルU』『ラストサムライ』を見ました。

そして『8時だヨ!全員集合』のDVDBOXももちろん購入(笑)

実家では何年かぶりに『沈黙の艦隊』を32巻読破。

それから、『マリア様がみてる』を薦められ、16巻全部購入し、3日で読破。当然アニメも見ております。

非常に面白いです。特に小説は、同じ物書きとして参考になる箇所が多く勉強になります。

そちらの成果(?)は『広奈様がみてる』でどうぞ(笑)

まぁ、そんな感じでネタもたっぷり仕込んだので、この先の展開もどうぞお見逃しなく。

ちなみに次の23話はもうほぼ完成していて、次の次の24話を現在書いているところです。

ですので、新作はそれほどお待たせしないと思います。

ご期待ください。

それでは、ご意見ご感想、敵チームに使ってほしいネタなどなど、お待ちしています。

(今回の『ラスト幕軍』ネタは、 掲示板 でまるえ様に提供していただいたものを若干アレンジして使用しました。改めて、ここにお礼申し上げます)


2004年1月25日、直江雨続



追伸:リンスリーガールズの元ネタ、お分かりの方いらっしゃいます?



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