五行戦隊センゴクマン!
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「センゴクマン参戦」
マリウス(ビザンチン帝国皇帝)
対戦チームは道南地区大会準優勝の『FANG GUNNERS』と道央地区大会優勝の『夕張のガンマン』。 この対戦が決まったとき、広報部長の淳二はうなったものである。 「にゅむぅ、いきなり“夕張”の名を冠するチームと戦うことになるとは…」 なにか、思うところでもあるのだろうか? 『FANG GUNNERS』のほかのメンバーが不思議そうに淳二に注目していると、彼はやおら瑠華のほうを向き直り、真剣な顔でこう告げた。 「夕張たん、これはオレ達にとっても天王山だ。相手も夕張、こっちも夕張。どちらが真の夕張たんか…、いきなりの決戦だぜ」 「夕張…たん?」 たんって何? 瑠華は首を傾げたが、淳二は良く分からない理由で、一人萌えて、いや燃えていた。
それも、プロレスや格闘技イベントのように、各チームのテーマ曲を流しつつ、入場行進を行うというこだわりっぷりなのだ。 それは、4つの地区予選を勝ち抜いてきた8つの強豪チームに対する、大会側からの精一杯の敬意でもある。(多分) なので、ステージ裏では、やっぱり大会運営委員の人が、キュー出しのスタンバイ中。 「それじゃ、『FANG GUNNERS』さん、そろそろですので準備をお願いします」 「了解っす。じゃ、アレやろっか」 真理姐さんの呼びかけに、美亜子と瑠華が集まって3人で手を合わせ、同じセリフをハモる。 「「「る・み・ま、レディ、ミッションスタート!」」」 「…にゅぅ、いつの間にかこのネタをマスターしてたとは」 それを見た淳二がちょっと悔しがりってみたり。 「いやいや、負けてられないッス。やるッスよ、ナオ、の○太」 「やれやれ…」 「僕まだハルーだし…」 ってわけで… 「「「じゅ・り・は、レディ、マスク装着(?)」」」 と、そこで進行役の今井さんの声が聞こえてきた。 「ドラゴンゲートより『FANG GUNNERS』の入場でっせ!」 今井さんの進行により、まずはスピーカーから大音量で『FANG GUNNERS』の入場曲が流れ出した。 もちろん広報部長の淳二がセレクトした入場曲は「Battle Without Honor or Humanity」by “Tomoyasu Hotei”である。 ( ここのLISSON TO THE SOUNDTRACKをクリックせよ。聴きつつ読め) てけてんてんてけてけてけてんてけ♪ 軽快なエレキギターのイントロに乗って、まずは『る・み・ま』こと瑠華、美亜子、真理の3人が登場。 たちまちギャラリーから歓声が沸き起こる。 ちゃーんちゃーんちゃっ♪ のところで、3人がファッションショー顔負けの素敵ポーズをビシッと決め、ゆっくりと歩き出す。 ガンナーの“姐さん”を先頭に、その右後ろにつき従うは、ご存知!鉄球女子高生“マッハ夕張”、その隣に魔法使いミャーマイオニー・ゴレンジャー。 美女3人組が大迫力のかっこいい曲に乗って颯爽と歩く姿は、まさに戦場の華。 この凛々しきビジュアルと、血湧き肉踊る音楽のコラボレートで『FANG GUNNERS』の好感度も爆裂うなぎ登りである。 やんやの大歓声が、会場を盛り上げまくり。 さらにギャラリーを驚かせ、かつ笑わせたのはこっそりとそのあとで登場した、後ろの『じゅ・り・は』である。 なんと全員、目の周りにしっかり黒いカトーマスク着用である。 男性陣のへんてこなマスクと女性陣の美しさの見事な対比が、なんとも衝撃的。 哀れ『じゅ・り・は』は“クレイジー3”、ただの引き立て役なのだ。 そう、つまりこれは『殺れビル』一番の見所である廊下闊歩シーンを再現(?)した入場行進なのである。 曲のイメージ的には、サバゲーのチームというよりは、裏社会の女王、マリー・カタクラ姐さん率いる“新・仁義なき『FANG GUNNERS』”って感じである。 ってことで、これから壮絶な斬り合いでも始まりそうな、そんな美しくも危険な香りのする『FANG GUNNERS』の入場である。 とにかくこの入場がギャラリーに与えたインパクトは重大かつ甚大。6人のコスプレ云々を超越し、美女が3人キリッ、ビシッとした表情で闊歩する姿がどれだけカッコいいか、それを見せ付けることになった。 淳二の選曲、今回は大当たりの大成功である。
すると今度は、スピーカーから流れ出したのはギターと口笛の音。 吹きすさぶ風が似合いそうな、荒涼たるイメージの曲である。 いかにも“荒々しい男”をイメージさせる、ユーコン川で水を汲む男に似合いそうな曲だ(?)。 そう、この曲はマカロニウェスタン(イタリア製西部劇)を代表する映画『荒野の用心棒』のテーマ曲「さすらいの口笛」by“巨匠”エンニオ・モリコーネなのだ。 ってわけで、当然登場した『夕張のガンマン』の6人は、いわゆるマカロニウェスタンに登場するガンマン、それもアウトローの格好である。 しかも、全員が全員、とても高校生に見えない悪人顔のおっさん(失礼)ばかり。 出てきた瞬間から、その独特の雰囲気にギャラリーも圧倒され気味。 ご存知の方も多いが、北海道夕張市といえば“ゆうばり国際ファンタスティック映画祭”でも有名な、映画の町である。 映画好きなら“GO GO”な場所なのだ。 そして『夕張のガンマン』のメンバーは、実は夕張東木高校の映画研究会の部員で構成されていたりする。 当然、マカロニウェスタンに関する造詣とこだわりは並みのものではない。 もう、6人の入場シーンでは辺りに砂埃が舞い、銃声と馬のいななきまで聞こえてきそうな、そんなウェスタンっぽさが満々である。 ステージ上に荒野が出現し、“絵になる男”6人の登場だ。
そう名乗ったのは190センチ近い長身に、細身の体、細い目のハンサムガイだった。 とても高校生には見えない渋いヒゲ面に、くわえタバコ(未成年者なのでダミー)。 薄汚れたテンガロンハットにくたびれたポンチョ姿、ガンベルトにはコルトS.A.A.45アーティラリー(いわゆるピースメーカー)。 すっかり役になりきった彼の全身からは、映画俳優顔負けのニヒルさを放ちまくっている。 しかし、かっこいいだけではなかった。 (こいつ…強い。超一流の武人だわ) 早速美亜子スカウターが戦闘力を分析。 只者ではないオーラを感じ取った模様。 月刊種子島の記事によると、“名無し”はハンドガンナー。 (一対一で戦ってみたいわね) 美亜子がそう思って見ていると、“名無し”と目が合った。 武人同士の一瞬のアイコンタクト。そして“名無し”は少しだけ口の端を吊り上げた。 その目は好敵手の存在を認め、(いいぜ、やろうか)と雄弁に語っているようだった。 続いてその隣にいた黒ずくめのガンマンが前に出た。 「“大佐”、と呼んでくれ」 薄い唇に細くとがった鼻、鷲を思わせる鋭い眼にきれいに整えた口ひげ。 口にはパイプ(ダミー)をくわえ、これまたとても高校生に見えないおっさんだ。 手には西部劇でおなじみ、ウィンチェスターモデル1892というレバーアクション式のライフル銃を持ち、ガンベルトに吊り下げたのは普通のピースメーカーと比べて、はるかに銃身が長いコルトS.A.A.45バンドラインスペシャルだ。 事前情報では“大佐”はスナイパー。 (おどろいたわね、こいつも“やる”) 美亜子スカウターびんびんに反応である。 「そちらのチームのスナイパーは…」 そう言って春樹を一瞥。その手に持つスナイパーライフルを見つめて少々意外そうな顔。 「…魔法使いの坊やか」 そして“大佐”は馬鹿にしたような笑みを浮かべる。 (はぅ) 春樹、明らかに凄腕っぽい外見の“大佐”に射竦められ、一発で萎縮。 ってか、どう見ても春樹は凄腕スナイパーには見えないのだが…。 ここで一句。
見た目で負けてる スナイパー
余裕綽々である。 それから、ウィンチェスター銃を持った3人組。 パコ、チコ、ペコと名乗ったが、こいつらは全然たいしたことなかった。 ので、雑魚トリオと記憶され、これで終わりである。 「オレは“賞金首”」 最後に登場したのは、いかにも悪人顔の男。 ガンベルトを右肩からたすきがけにし、ちょうど左わき腹の辺りにコルトS.A.A.45キャバルリーを差している。 要するに右手で居合い抜きのようにして使うのだ。 そして小道具なのか、金色の懐中式オルゴールを手に持っていた。 (ふふん、こいつもなかなか…) 強敵を前に、美亜子もテンションが上がる。 と、その“賞金首”がさらに一言。 「いいか、人間には二種類ある。“勝つ奴”と“負ける奴”だ。もちろん、おれたちが“勝つ奴”さ」 そう言って汚い歯をむき出しに、下品な笑いを一発。 参考までに“賞金首”くんは役作りのため、ここ一週間ほど風呂に入ってなかったりする。 見事なまでの悪玉ぶりである。 ってなわけで、『夕張のガンマン』は衣装や役作りという意味では、道南地区大会で戦った『ザ・ガンマン』よりはるかにレベルは上。 はっきり言ってこのチームの周りだけ空気が違うのである。 ついでに言えば、漂ってくる匂いも違いそうだったり…。 「う〜ん、色々と凄いわ。いかにも口笛と荒野が似合いそうな奴らね…」 ボソッとこぼした真理姐さんの感想に、思いがけない反応を示したのは淳二だった。 「そうかしまったっ! こんなことならこっちのコスは『ワイルドアー○ズ』系で行くんだった。真理先輩がヴァージ○アでオレがジェ○ト、そしたらハルはクラ○ブでよかったのに…」 ってな感じで、なにやら悔しそうな様子。 「誰だか知らないけど、いまさら遅いって」 『FANG GUNNERS』にとっては、淳二のこの病気(?)は慣れっこなので、おざなりに美亜子がそう言って終わりである。 そんなやりとりを、“名無し”が不審そうな顔で見、それから輪にこう聞いた。 「…何を言っている?」 「そっちの衣装を見て、自分たちの衣装を別なのにすればよかった、と悔やんでいる」 輪君の翻訳を聞いて、『夕張のガンマン』のメンバー、割と嬉しそう。 衣装の面で勝ったような気になったらしい。 「ふへへへっ、人間には二種類ある。その場に相応しい衣装を着る奴と、浮いた服を着る奴だ」 ってなことを“賞金首”が言ったもんだから、なんとなく『FANG GUNNERS』の面々はイタイ所をつかれ、若干の恨みがましさを見え隠れさせつつ淳二に視線を集中。 「な、何ゆえ我輩を見つめますかな? それも、やけどじゃすまないほどの熱視線にて」 と、淳二はしばし動揺した様子だったが、やがて立ち直ったらしく、こう切り返した。 「それほどまでに我輩の惜しげもなくさらしたまばゆいばかりのコスのノウハウがお気に召さないとは、見損ないましたぞ。古今例のない緊急事態にただうろたえるばかりは若さゆえの過ちトカ。それはそれとしてコスプレ王の経歴には委細関係ないことゆえに」 「?」 …立ち直ったどころか、すっかりどっぷり動揺しているらしい。 一同、もはや誰もついていけていない。 しかし、衣装で負けた淳二は『夕張のガンマン』に対し、負け惜しみを言いたくてしょうがない。 で、びしっと言った。 「ともかく、我輩らは心優しき科学の子。現代科学の到達点『電動ガン』で見るものにあまねく夢と希望を与えてるトカ。こんなガンマン相手じゃ赤子の手をサブミッションですぞ。まさに撃墜王の名はほしいままトカ。どちらが真の“夕張たん”か、未曾有の危機的審判の日はもうまもなくっ、そこで目にものを見せてくれるわ」 完全無欠の支離滅裂になった淳二を見やり、“名無し”が苦々しい顔で輪に聞いた。 「何を言っている?」 輪は平然と応える。 「衣装のことはさておき、こっちのチームは電動ガンをそろえているが、そちらは電動ガンが一丁もない。故に試合ではこっちが楽勝だと言っている」 それに対して、『夕張のガンマン』は一様に肩をすくめて見せた。 どこかそのしぐさは余裕たっぷりで、戦う前から勝利を確信しているようである。 「ふふ、やればわかる」 と、“大佐”が猛禽類の笑みを浮かべる。 ちなみにこれを見ていた春樹は(何で直江君訳せたんだろう)と不思議がっており、瑠華は、 「よく分からないが見事な語学力だな…」 と春樹に耳打ち。 二人して感心していたりする。 そんな二人に真理姐さん、こっそり一言。 「あれは翻訳コン○ャクを食ったからだ。さすがはナオえもん(笑)」 一方ですっかり壊れた淳二を呆れ顔で見やり、美亜子がボソッと突っ込み。 「あんたのコスプレ“T田”でしょ。キャラ違うんじゃない?」 「のぉっ!?」 しまった迂闊! って表情のまま2秒ほど硬直したが、淳二はようやく自分のキャラを思い出したらしい。 「そおっス、オレは“微差移動オーラ力”のエース“T田”ッス。おーらかじゃなくオーラちからッス。うっかりオーラロードを開いて、キャラを微差移動させちまったッス」 「語尾が『ッス』に変わっただけで、やっぱり意味わかんないし…」
真理:H&K MP5KA4“クルツ”を両手に持ち、予備マガジンは腰に巻いたポーチに入れてある。 淳二:メインウェポンはP−90、サイドアームにワルサーP38。ポケットの多い衣装なので、予備マガジンなんかはあちこちに収納している。 美亜子:メインウェポンはコルトCAR−15。サイドアームのサムライエッジは例によって懐の中。ちなみに、あずみあこコスの上に再びローブを着て、ミャーマイオニーの格好で登場である。 春樹:APS-2 スナイパーバージョンを手に持ち、ベレッタM92Fはちゃんと腰のベルトにホルスターをつけてそこに下げている。春樹もまたの○太コスの上にローブを着ていてハルーの格好。 輪:H&K MP5 R.A.Sとタクティカルマスターの取り合わせは変わらず。暑そうな黒コート姿。片手にボストンバックを持っている。(中身は秘密) 瑠華:無敵のブレザー姿に手には鎖鉄球“マッハ・ボール”。ウージーサブマシンガンはスリングで肩からかけていて、サイドアームのグロッグ26は小さいのでポケットの中。 というわけで、全員開会式でステージに登場したときの姿のままであった。 春樹と美亜子がローブを着ているし、輪はボストンバック、瑠華は“マッハ・ボール”を意味もなく持っている。 試合が始まれば、細かい小道具は陣地に置いておく手はずである。
という、今井さんの注意があり、いよいよ両チームがそれぞれの陣地に移動して、それから試合開始となる。 ちなみに、『FANG GUNNERS』は南側が本陣なので青チーム、『夕張のガンマン』は北側が本陣で赤チームとなった。
陣地に向かう道中、輪君が早速作戦を披露。 「月刊種子島の記事によれば、『夕張のガンマン』の作戦パターンはひとつしかない。ハンドガンナーの“名無し”とスナイパーの“大佐”が攻撃を仕掛け、残りの4人が本陣を守る。これだけだ。そこで…」 と、輪がコートの懐から1枚の地図を取り出した。 昨日、フィールドの視察に来た際に作った簡単な地図である。 それに、さらさらとペンを走らせる。 どうやらメンバーの初期配置位置を書き込んでいるらしい。 書き終わると、自信たっぷりに5人に見せた。
「この図に書いたように配置する。この配置であれば池ルートから侵入する敵を、小川のところで狙い撃てるし、山ルート、道ルートを通る敵は3方向からの射線にさらされることになる。まずはこの陣形でアタッカー二人を撃破し、しかる後に全面攻勢に移る。もし万一、誰かがヒットされた場合は、俺が遊軍としてバックアップする」 「ふぅん…、まずは守備重視か。ずいぶん慎重だね」 真理姐さんが肩をすくめる。 しかし、すぐににこっと笑うと、パチッと片目をつぶってみせる。 「ま、でも慎重だけど確実だ。相手はピースメーカーとウィンチェスター銃だろ? さっき淳二が言った(?)けど、アンブッシュしてフルオート射撃すれば何もさせずに楽勝だな」 ってわけで、輪君の作戦に真理姐さんのお墨付き。 なにせ、ピースメーカーは連発できないシングルアクションのリボルバーだし、ウィンチェスター銃もこれまた連発が難しいレバーアクションライフルだ。 ことに武器の面では、最新の電動ガンに多弾数マガジンまでそろえた『FANG GUNNERS』が圧倒的有利といえよう。 「敵のスナイパーは撃墜王だ。迂闊にこちらの姿を見せないように、しっかりアンブッシュしてくれ。……もっとも、この衣装では目立つな、というのも難しいが」
コリンズ(米陸軍中将)
拡声器で今井さんの声が響き、2秒ほどしてから高らかにホイッスルが鳴り響いた。 これより、いよいよ試合開始である。 「姐さん、アレをお願いします」 淳二に促され、真理はドスのきいた声で叫んだ。 「ヤッチマイナー!」 『FANG GUNNERS』、その一言で戦闘モード。気合入りまくりである。 「「「「おおーっ!!!!」」」」 「…うむ」(←瑠華) そして、それぞれの初期配置場所へと勢いよくダッシュ。 ちなみに、瑠華は“マッハボール”、美亜子と春樹は暑苦しいローブを、輪はボストンバックとコートを陣地に置いてから戦闘に臨んでいる。 基本的に、遊歩道と両チームの本陣以外の場所は林の中である。 さらに起伏に富んでいて高低差もあり、身を隠す場所は木の陰、低い茂みの中、斜面、岩の後ろなど多々ある。 『FANG GUNNERS』のメンバーは輪の指示通りの場所にすばやく移動し、それぞれ、最も隠れやすいと思われる場所にて身を潜める。 片倉真理、18歳。サバイバルゲーム暦は約4年。 中学生のときから戦場に身を置いてきた彼女は、長年の経験と“好きこそ物の上手なれ”で、 そんじょそこらのサバイバルゲーマーでは束になってもかなわないほどの力量を持っている。 そんな真理だからこそ、今回の輪の作戦での“先鋒”に当たる位置に配置されていた。 (先鋒は武人の名誉、この大会の最初のヒットはあたしがいただく) 夜の闇に紛れる黒豹もかくやの見事なアンブッシュ。 獲物を狙う美しき雌豹と化し、真理姐さんは息を潜めて敵の通りかかるのを待っていた。
片倉真理に叩き込まれたスナイピング技術は、すでに師を超えた。 自然と一体となり、じっと我慢。そして何も知らずに接近してきた敵を一発必中の射撃で倒す。 忍耐力と集中力が必要なこのポジションを、何の苦もなくこなす春樹は、やはり天性の狙撃手である。 その春樹、今回は瑠華と組んで、橋を渡る敵を狙撃する役目である。 そんなわけで橋の近くの木の陰にて身を低くし、橋を渡った向こう岸のいかにも敵が潜んでそうな茂みをじっと見つめている。 春樹の右、少し離れた隣の木の下に瑠華がいる。 何かあったらすぐに動けるように、しゃがんだ状態で木の横から少しだけ顔を出して、橋の向こうの様子をうかがっていた。 明智瑠華、16歳。サバイバルゲーム暦は約1ヶ月。 遠距離射撃の命中率やサイドアームの早撃ちなどではほかのメンバーに多少劣るものの、人間のオーラが見えるという特殊能力で、アンブッシュした敵をいち早く発見できるという強みを持っている。 攻撃力はないが、うまく立ち回ればアンブッシュキラーとしての活躍間違いなしの、『FANG GUNNERS』の隠し玉的存在である。 瑠華が見つけて春樹が狙撃する。今後の『FANG GUNNERS』の主軸ともなりそうな黄金のコンビネーションが、今まさにその出番を待っているのである。 まず最初に敵の動きを捕捉したのは、当然ながら最前線にいる真理である。 左前方、およそ60m先の遊歩道を一瞬だけ、ポンチョ姿の長身の男が横切ったのだ。 (“名無し”は山ルートか) 真理が振り返ると、ちょうど美亜子と目が合った。 あらかじめ決めておいたサインを使い、『山ルートより敵が一人進撃中』と伝える。 『了解』のサインが美亜子から返ってきたのを確認し、真理は再び前方にセンサーを解き放つ。 と、さすがは百戦錬磨の真理である。今度は池を挟んだ対岸の遊歩道、2時の方向に黒ずくめのガンマン発見。 しかし、移動中というわけではないようで、その場で立ち尽くしているようにも見える。 池を挟んでいるため、真理と敵との距離は50m弱。真理の視力は良いほうだが、茂みにアンブッシュし、しかもゴーグル越しに敵の姿を見ているわけで、その手元の様子を視認するまでには至らない。 (“大佐”だな…。何をしているんだ?) 経験豊富な真理である、この距離ではお互いに必殺の“間合い”の外であることが、よく分かっている。 そのため、油断が生じた。 じっくりと“大佐”の様子を伺おうと、真理は一瞬だけ茂みの脇から顔を覗かせた。 と、真理の全身が凍りついた。 (こちらを狙っている!) そう、大佐はスタンディングの射撃体勢でウィンチェスター銃を構え、あえて自分の姿をさらすことで、真理が隙を見せるのをじっと待っていたのだった。 付け加えるならば、“大佐”の視力、実に4.0である。 その鷹のような目はまさにスコープいらず。特に『FANG GUNNERS』のように目立つ色の服を着た敵は容易に発見可能なのだ。 そしてトリガーが引かれた。 バシュン…。 ウィンチェスター銃はガスライフルであり、それを大佐は完璧なカスタム仕様に仕立て上げていた。 静粛性、長射程、そして抜群の命中精度…。 電動ガンに対しても、これら3つのポイントでまったく引けをとっていないのだ。 そして…。 カツン。 「嘘だ…」 50mの距離で相手の人の顔ほどの大きさの的に命中させることは、ほとんど不可能なはずである。 それは春樹にだって無理な相談だ。 だが、“大佐”の撃った一発のBB弾は真理の持つ先入観を粉々に打ち砕き、見事真理自身を仕留めてしまった。 百戦錬磨の経験が、経験に裏打ちされた距離感が、まったく想定外の力を持つ敵に対して、マイナスに働いてしまったのである。 「ヒット!」 せめて、残された5人に敵の恐ろしさを伝えねば…。 真理は全員に届くように、精一杯の大声でヒットコールをし、フィールドから去った。 真理の心残り、それは“大佐”の位置を誰にも伝えられなかったことである。 大会のルールで、ヒットされた人間は、それ以後一切の会話やサインが禁止されている。 つまり、自分を撃った敵の位置などを味方に知らせることができないのだ。
その声は、もちろん春樹にも届いている。 敵が池の対岸にいる以上、春樹の位置からも視認は可能なのだが、あいにく春樹は木の陰に身を寄せ、橋の方向のみ見えるポジションをとっていた為、それが分からない。 もちろん、“大佐”のウィンチェスター銃の発射音が非常に小さかった為、それを聞くこともできなかった。
こちらは美亜子である。 先ほど『山ルートより敵が一人進撃中』のサインを受け、それを輪と淳二に伝えたところで、真理のヒットコールである。 当然、真理が山ルートの敵に狙撃されたものと思い込んだ。 「輪…」 小声で輪に呼びかけ、小山を指差す。 「分かっている。淳二は?」 「今伝えるわ」 そして、淳二にも進軍のサイン。 (了解っス) しっかり頷くと、淳二は慎重に移動開始。 「俺たちも行くぞ」 当初から遊軍として自分自身の戦力を温存していた輪である。 敵の位置が分かった以上、こちらは戦力を集中し、3対1で戦うのがセオリーだ。 山ルートにいるであろう敵に気を配りつつ、美亜子と連携し、二人で真理のいたポジションまで移動する。 だが、輪と美亜子がいくら目を凝らしても、敵の姿を発見できない。 そう、その時“名無し”はフィールドの西の端ぎりぎりを進み、“大佐”は池の東側に移動しつつあった。
さて、続いて敵の姿を発見したのは、瑠華だった。 やはり、“大佐”は池の対岸にいた。 20mほど東のポイントに移動し、今度は橋の向こうにいるであろう敵、つまり春樹と瑠華の姿を探していたのである。 大佐がいる位置から春樹、瑠華までの距離は池を挟んでこれまた50mほど。 この距離は自分の攻撃は当たり、敵の攻撃は当たらない、いわば“大佐”の間合いである。 それが分からない瑠華は、ともかく敵の発見を伝えるべく、しゃがんだ状態のまま、春樹のほうに向き直ると小声で呼びかけた。 「伊達」 二人の距離は5mほど。 瑠華のほうを向いた春樹の視界に、とんでもない光景が飛び込んできた。 いや、とんでもないというか、むしろ絶景? ナポリを見て死ね?(意味不明) 青春の白き輝き、思春期のエターナルポイント、魅惑のサンクチュアリ、無意識の悩殺、意図せぬフェロモン、天賦のテンプテーション、誘惑の瑠璃の華。 瑠華は気づいていなかったが、ミニスカでしゃがんだら、そりゃもう、大変なことになってしまう。 日に焼ける事を知らぬような、あくまで白い瑠華の太もものその奥を、春樹はばっちり見てしまった。 「あっ…」 その瞬間、春樹は人間湯沸かし器と化し、たちまち全身の毛穴から湯気が吹き出さんばかりに真っ赤っかになった。 心臓は早鐘のごとく打ち鳴らされ、息をするのも苦しく、でも、悲しいかな春樹は目をそらすことができない。 三日三晩夢にまで出てきそうなほど、春樹の脳裏にこのビジョンがくっきりはっきり焼き付いてしまった。 つまり、春樹は史上最大に動揺中である。 「敵だ、池の向こう」 瑠華がそう言っても、まったく耳に入っていない。 「あ、明智さん…、その…、えっと…、あの…」
そして、焦れば焦るほどますます動揺がひどくなり、春樹はひたすら取り乱す。 「どうした?」 春樹の様子がおかしい。 怪訝そうな瑠華だったが、その視野の中に、“大佐”がじーっとこちらを見据えているのを捕らえていた。 「気をつけろ伊達、敵が見ているぞ」 そう言って、さらに身を低くし、ひざを抱えるようにして“大佐”の視線から自分の体を木と茂みで遮った。 だが、春樹はといえば敵のほうを見るどころか、身を隠すそぶりがまったくない。 カチカチに固まったまま瑠華から視線をはずせないでいる。 なにしろ、しゃがんだままひざを抱えられた日には…。 (はうあっ) 春樹、鼻から大出血寸前。 「あ、あぅ…、あの、ああああああああ明智さんっ?」 「なんだ?」 「え、つまり、し…、した…(んごきゅ)」 最後まで言えず、生唾を飲み込む春樹君。青春ど真ん中の17歳。 支離滅裂な春樹に、そろそろ瑠華も業を煮やしてきた。 なぜ伊達は敵を見ようとしない? なぜ敵から見えているのに身を隠さないのだ? 「伏せろ、見えているぞ」 「…た、確かに見えてます。し…、下着が…、その」 肝心なところで勇気がしぼみ、消え入りそうな声になる春樹。 「何? よく聞こえ……、む!? 狙っているのか?」 瑠華の目が、ウィンチェスター銃を構える大佐の姿をばっちり目撃。 それなのに春樹は相変らず何かに動揺している真っ最中。 瑠華はそろそろお怒りモード、少々声を荒げた。 「早く隠れろ!!」 「いや、だから…、明智さんこそ、その、下着を隠して、あの…」
伊達春樹、その戦歴に永久に消え去ることのできない汚点を刻みつつ、戦列を去った。 (とんでもない狙撃だ…) たった一発で、それも木の陰からわずかに覗いていた春樹の頭にピンポイントで命中させる敵の腕の見事さに、瑠華は驚きを隠せない。 さらに不可思議だったのは、春樹の撃たれるまでの不自然な様子。 (なぜ、伊達は動かなかったのだ? まさか敵の殺気に射竦められていたのか?) よもや原因が自分のパンツにあったことなど、思いもよらない瑠華である。 ともあれ、狙撃手対決は春樹の完敗。 結果、瑠華はまったく動けない。少しでも木の陰から体を出せばそこを狙撃されてしまう。 従って、こっそりと顔を覗かせて敵の様子を伺うことも不可能。 ひたすら貝のように木の陰に閉じこもるしかないのである。 たった一人で、すさまじい狙撃手と向き合わねばならぬ恐怖。 (駄目だ、私では勝てない。このままではやられる…) 本能的な怯えと恐れ。 (伊達さえ、傍にいてくれれば…) 春樹に依存する心。 (なぜ私を一人にしたんだ。伊達…) 春樹を責める心。 湧き上がる恐怖心よりも、瑠華の心の中では春樹の存在だけが悲しいほどに大きくなっていく…。 戦場に一人ぼっち。瑠華にとって永劫とも思える時間が流れていた。
シャア・アズナブル(ジオン公国軍大佐)
とぼとぼと、そりゃもう12機のリックドムがたった3分で全滅したような気分で春樹がセーフティーゾーンにやってくると、先客が出迎えてくれた。 そう、真っ先にやられた元祖『FANG GUNNERS』の真理である。 で、次にやられたのが春樹なのだから、戦場に残ったのはサバゲー暦1ヶ月カルテットである。 半ばふてくされた様にも見える真理は、無造作にあぐらを組んで、愛銃のクルツをかちゃかちゃと弄んでいる。 とりあえず、春樹は地べたに座っている真理の真正面まで歩いていき、消え入りそうな声で一言。 「…す、すいません」 ぐぁぁぁぁぁぁぁっくり、ってなくらい春樹はうなだれ、真理に詫びる。 まさか「明智さんのパンチラに動揺して撃たれました」とも言えず、ただただ落ち込むだけ。永久凍土に埋められたかのように、春樹の精神状態はすっかり凍ってしまっている。 「まーしょうがない。あとはあいつらが逆転してくれる事を祈ろうか」 あえてお気楽にそう言うと、真理はため息をついて背中を丸めた。 その瞬間、再び重大事故発生。 座っていた真理を上から見下ろす格好だった春樹は、その拍子に真理の胸元をしっかり見てしまった。
永久凍土から活火山へ。再び、春樹は人間ガスコンロになった。 いや〜、なんたって、今回の真理姐さんの格好はメンバー中一番大胆なのだ。 片倉真理18歳。知らないうちに純真な少年を思いっきり誘惑してしまうくらい、赤子の首に袖車である。 で、美女二人から魅惑の波状攻撃を受けた春樹は、もはや燃え上がる青春のエナジーを抑えきれない。 灼熱の感覚が体の奥深くから湧き起こり、それは奔流となって溢れ出した。
真理姐さんに気付かれるまで、春樹は直立不動のままダラダラと若気の至りを垂れ流し続け、の○太の衣装は鮮血に染まった。
お互いに敵の存在に気づかぬまま、ふとした拍子に出会いがしらの銃撃が展開されるのだ。 で、淳二と“名無し”もまさにそれ。 両方が巧みな歩行術で足音を消し、気配すらも断っての移動中だったのだ。 気づいたときには双方の距離は10mほど。 だが、敵は右手前方にいると思っていた淳二と、そうでなかった“名無し”の差は大きかった。 勝負は一瞬だった。 バシュン。 まさに電光石火。 淳二がP−90の銃口を敵に向けるより早く、“名無し”がピースメーカーを抜き、抜くと同時に左手でハンマーを起こし、即座に発砲したのだ。 その反応速度はかつて『FANG GUNNERS』が戦った『ザ・ガンマン』の連中とは比較にならない。 さらに、その命中精度も。 「…ヒットぉ!?」 顔面、それもちょうど両目の間に弾は命中していた。 フルフェイスゴーグルに守られ、淳二は痛みを感じることはなかったが、敵の腕の見事さに完敗である。 (活躍してねぇな、オレ…) そして淳二は肩を落とし、とぼとぼとフィールドを去った。 真田淳二16歳。サバイバルゲーム暦は約1ヶ月。 『FANG GUNNERS』の広報部長を務め、メンバーのコスプレの衣装を調達し、入場曲の選曲や小ネタの用意(?)など、チームの人気取りをするべく、手段の為に目的を選ばないのが淳二である。 こと、戦場では真田流古武術を極めたその俊敏さが、サバイバルゲームとの相性抜群。 特に敵に気付かれずに接近する“ストーキング”、いわゆる隠密接敵の技量は『FANG GUNNERS』ナンバー1だ。 しかし、今回は遭遇戦だった為、隠密接敵の出番なし。 あっさりとフィールドを去る羽目になった。
「しまった!」 敵はすでに移動していたらしい。こんな場所にいても無意味だ。 「まずいわね」 美亜子は舌打ちすると、即座に行動を開始した。 すなわち、本陣へ駆け戻ったのである。 淳二が突破された以上、こんな前線にいては本陣に敵の侵入を許し、フラッグを奪われてしまう。 「やむを得ん…」 輪もまた、少し美亜子に遅れながらも、本陣へ戻ろうと、立ち上がり移動を開始。 だが…。 ぱちっ (?!) 輪の背中にBB弾が命中していた。 驚愕しつつ輪が見やれば、池の対岸に“大佐”の姿。 そう、春樹を仕留め、瑠華が萎縮して木の陰に隠れたので、“大佐”は再び来た道を戻り、今度は輪を狙っていたのである。 輪は獲物を狙う“大佐”に、みすみす背を向けてしまったのだ。 (俺とした事が…) 「ヒット!」 後悔を押し殺し、大声でヒットコール。 直江輪16歳。サバイバルゲーム暦は約1ヶ月。 自ら作戦参謀兼チームの強化部長を買って出た、現代に生きる“軍師キャラ”である。 スポーツにたとえるならば、選手兼監督兼コーチという重責を担っているわけだ。 何しろ根っからの歴史フリークにして兵法マニア。 サバイバルゲームを始めるにあたり、とりあえず、揃えた本は数十冊。 各種兵法書や、戦記、戦史、銃器の解説書や特殊部隊の入門書まで、ありとあらゆる軍事関係の知識を蓄えてこの大会に臨んでいる。 …で、その結果がこの体たらくである。 これで、『FANG GUNNERS』は残り、美亜子と瑠華だけになってしまった。 頑張れ輪君、最大の見せ場(女難)も奪われたし、このままでは主役の座が危ないぞ。
本陣へと駆け戻ってきた“あずみあこ”の姿にさすがにギャラリーもざわめく。 美亜子の地獄イヤーにも「やばいんじゃねぇの」とか「負けたな、こりゃ」とか「やっぱあずみあこは太ももだよな(?)」とか、さまざまな声が飛び込んでくる。 だが、そんな雑音は美亜子に耳には入らない。 (まだよ。あたしがいる限り1対6でも逆転して見せるわ) 逆境でこそ、敵が強いほど燃える女、本多美亜子ここにあり。 もう敵を遮るものはない。あとは本陣の旗に向かうだけだろう。ならば、自分が旗を守っていれば、必ず敵は来る。 そんなわけで、美亜子はCAR−15を構え、自軍の旗の前に仁王立ち。 やがて、美亜子の左、傾斜を上ってくる“名無し”の姿が見えた。 “名無し”は完全に無防備。無造作に歩み寄ってくる。 とっさにCAR−15の銃口を向けた美亜子だったが、“名無し”の目を見た瞬間、二者択一を迫られた。 そう、“名無し”の目は(決着をつけようぜ)と雄弁に語っていたのだ。 チームの勝利の為にはここで“名無し”をどうしても倒さなければならない。 このままCAR−15の引き金を引けば、あっさりとヒットを奪うことができる。 だが…。 美亜子はゆっくりと銃口を下ろした。 「いいわ。やろうじゃないの」 チームの勝利と自分の武人としての矜持を天秤にかけたとき、美亜子の選択は最初から決まっていた。
槍術の天才、武芸者の心を持つ女子高生。 その天賦の戦闘センスとBB弾をもよける超反射神経を遺憾なく発揮し、道南地区大会でも『FANG GUNNERS』最強のアタッカーの名を轟かせた。 特に、美亜子の強さが際立つのが、ハンドガンによる早撃ち対決なのだ。 その土俵に“名無し”が足を踏み入れてきた。となれば、当然受けて立つのが美亜子流。 “名無し”と美亜子。二人の視線がぶつかり火花を散らす。 これから起こる決闘を前に、ギャラリーは自然と声を潜め、固唾を呑んで見守る。 最強のアウトローと、少女にして刺客にして剣士の究極の対決。 北天王山森林公園は一瞬の無音状態。 だが、見るものの心の中ではギターがかき鳴らされ、トランペットが高らかに鳴り響き、決闘のテーマ曲が聞こえているようである。 静かなる盛り上がりを見せる、一種異様な雰囲気の中、美亜子は、CAR−15を地面に置くと、右手をゆっくりと自分の胸の前に持っていった。 例によってグラデーションも鮮やかな着物の懐には、愛用のガスブローバックガン、サムライエッジが忍ばせてある。 “名無し”もまた右手をガンベルトの上にて静止させ、さらに左手をそれに添えるようにして美亜子の動きを伺う。 彼我の距離は15mほど。その間に張り詰める猛烈な殺気と緊張感。 それを間近で見せ付けられ、観客席は咳ひとつ聞こえない静寂状態だ。 時間が止まったような錯覚。二人はピクリとも動かず、ただ照りつける太陽が互いの肌を焦がす。 静寂を破ったのは池の方向から聞こえてきた瑠華の声だった。 「ヒット!」 そう、輪を仕留めた“大佐”はさらに移動し、池を一周する形で瑠華の横から狙撃、この試合4人目の戦果を上げたのだった。 (瑠華がやられた?) 美亜子の集中力が一瞬途切れる。 刹那。 “名無し”が動いた。 あの美亜子の動体視力を持ってしても、その銃口の向きを見極めることができない。 それくらいのものすごい早撃ち。 右手が銃を抜くと同時に、左手が残像が見えるほどのスピードでハンマーを起こし、起こしたと思ったらもう引き金が引かれているのだ。 バシュン! 「…っ!?」 素晴らしい反応で美亜子も撃ったが、BB弾が到達するほうが早かった。 薄着の“あずみあこ”に対する心遣いなのか、やはり“名無し”の弾はゴーグルに命中。 だが、美亜子の撃った弾も100分の数秒差で“名無し”のポンチョに当たっていたのだ。 「ブラボー…」 少しの驚きと、好敵手にめぐり合えた喜びと、その技量に対する純粋な尊敬。 “名無し”の口からは思わず感嘆の呟きがもれた。 それを聞き、美亜子は少しだけ満足げに微笑むと、両手を挙げた。 「…ヒットよ」 「ああ、こちらもヒットだ…」 “名無し”もまた、ニヒルな笑みを浮かべ、両手を挙げる。 「あんたのほうが早かったじゃない」 「……いや、撃ったのは同時だ。初速が違うから俺の弾が先に当たっただけのこと」 そう、要するに“名無し”のピースメーカーはそれなりにカスタムしてあるのに対し、美亜子のサムライエッジはお店で買った状態のまま使っている。 その部分を差し引いて、“名無し”は互角だったと言っているのだ。 「決勝リーグでまたやろう、楽しみにしている…」 そう美亜子に告げると、“名無し”はポンチョを翻し、胸ポケットからタバコ(ダミー)を取り出すと、実にうまそうに口にくわえたのである。
フィールドに試合終了を告げる笛が響き渡った。
「
最強でありたい、ただ其の思いから目の前の強敵に立ち向かった美亜子。
その戦い、目に焼き付けろ『FANG GUNNERS』」
なのであとがきに書くことがあまりありません(^^; とりあえず、11月の出来事として、1日に日光サーキットに行き、インプレッサ、MR2、CR−X、ユーノスロードスターの助手席に同乗してサーキットの激走を体験してきました。 最高でした。私もロードスターがほしくなりました。 8日、職場の皆さんと秋ヶ瀬サーキットでカート大会。 私以外はほぼ初心者だったので、2位以外周回遅れでぶっちぎりの勝利v 参加メンバーも大満足で、第二回大会は3月開催予定。 15日、新東京サーキットでまたまたカートレース。 参加人数10人で、予選のタイムアタックで私は5位。ってことで、私より速い人が4人もいるハイレベルな大会。 が、決勝では安定した走行で見事3位ゲット! 過去3回のレースを経験して、これで2位、1位、3位と連続表彰台記録更新中v
いや、今月の私、絶好調です(笑) 11月25日から1週間は文芸社のHP文芸社ON−LINEの“エッセイの庭”コーナーに私の書いたエッセイも掲載されています。 そちらも読んでくださいませ。 では、ご意見、ご感想、敵チームに使ってほしいネタなどなど、お待ちしています。
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