陰陽五行戦記おまけ劇場

五行戦隊センゴクマン!

第十七話半

「センゴクマン打上」

◇学校近くのカラオケボックス『敦盛』◇


ナレーション:「某月某日。

『FANG GUNNERS』のメンバーである直江輪、本多美亜子、真田淳二、伊達春樹、明智瑠華、片倉真理の6人は学校近くのカラオケボックスに来ていた。

サバゲーハイ北海道大会に向け、それはちょっとした壮行会……、のはずだった」


「さて、優秀なる兵士諸君。先週の大会では残念ながら準優勝に終わったが、北海道大会ではリベンジの機会が巡ってくるだろう。そこで、『FANG GUNNERS』の更なるチームワークの向上と各員の戦意高揚のため、カラオケ大会を開催する!」

真理姐さんが早速口上を述べると、淳二と美亜子が立ち上がって盛り上がる。

「イエェェ〜イ! 待ってました〜」

「いざ勝負〜♪」

二人が盛り上がるのもわけがある。今回は出たら間違いなく優勝したであろう広奈は不参加である。

言うなれば6人の誰にでも優勝のチャンスはあるということになるのだ。

そして輪も静かに闘志を燃やし、春樹は苦笑い。

「やはり私も、なのか……」

と、ひとり憮然とした表情なのは瑠華である。

「さて、では、チームのリーダであるあたしがトップバッターを務めることにする」

「オレ二番」

「あたし三番」

「俺が次だ」

「…私も歌うのか?」

「じゃあ、明智さんは最後で、僕は5番目でいいかな」

そういう順番になった。

「それじゃ、一番片倉真理『姐〜え?』歌いまーす」

「まやや?」

淳二が驚いたような声を漏らす。

その歌を歌っているのは今をときめく正統派アイドル“厚浦まやや”。

前回広奈が歌った『バカの愛野郎』と同じ系統。“過労”プロジェクトファミリーの一番人気である。

真理姐さんってばそういう歌を真っ先に持ってきたのである。

軽快なイントロのあと、すぐにAサビの歌いだし。

「迷うなぁ〜! 迷彩服なの? コスプレなの? どっちが好きなの?
迷うわぁ〜! すっこしでも目を引きたい 純情な乙女心 純情な乙女心♪」

きちんと振り付き、真理姐さんってばノリノリである。

「…オレはコスプレでいいぞ」

「…いや、勝利のため、ここは迷彩服だろう」

なぜか、輪と淳二が戦っていたりする。

真理姐さんは普段からはあんまり想像が出来ないような、とってもかわいい声で歌い続けている。

「ね〜えってば ね〜え 作戦 聞いて〜(泣) 無駄弾ばっか撃ってないで〜(怒)
ね〜えってば ね〜え 隊形組んでも良い?(笑) って ぜんぜん聞いてなぁ〜い!(怒)」

「…ふむ、問題だな」

「直江君、なにも律儀に歌詞に反応しなくても…」

今度は、春樹が輪にツッコミ(?)

「サバゲーいたしましょう 迷彩にお着替えね〜♪ どうしましょう! あの人の 好みを知らないわ♪」

「…よし、迷彩だ」(←やっぱり歌詞に反応している輪)

「うにゅぅ」(←そしてなぜか悔しがる淳二)

二人の勝負(?)は輪の勝ちらしい。

「迷うなぁ〜! 砂漠迷彩なの? 森林迷彩なの? どっちが タイプよ?
迷うわぁ〜! こんな風になっちゃうのは サバゲーが好きだからよ サバゲーが好きだからよ♪」

「なんか、まんま真理姐のテーマって感じの曲ね…」

さしもの美亜子も圧倒されている始末。

なんというか、誰からも一切のツッコミを受けぬまま、真理姐さんは歌いきった。

「…さすが片倉先輩。いろんな意味で強いなぁ」

春樹はそんな真理に素直に関心。

さて、気になる点数は…。

『81点』

「…こんなもんか」

真理姐さん、とりあえずみんなのターゲットタイムを出すという目的は達成。

続いては、イロモノ大王淳二である。

「じゃ、オレもせっかくだし“過労”プロ系統でいくっす」

そして淳二の選曲は“過労”プロジェクトファミリー、背の低い4人組ユニットの『愛野郎の愛の唄』である。

軽快なイントロとともに、画面には可愛らしいハムスターのアニメーションが流れる。

そして淳二はとっても楽しげに歌いだした。…もちろん、振りつきである。

「LOVE LOVE LOVE LOVE ラブビーム♪ 愛 愛 愛 愛 愛野郎!
LOVE LOVE LOVE LOVE ラブビーム♪ 愛 愛 愛 愛 愛野郎!」

当然のことながら、これを聞いた輪は甚大なショックを受けていた。

「なっ、なんの冗談だこの歌…」

そして淳二はそんな輪の様子を見て、ますますテンションをあげて歌う。

「デートにさそってくださいな 市立函館図書館〜♪
けっきょくいつもの場所ですか… 歴史小説山盛りね♪」

「……間違いなく俺に含むところがあるようだな」

輪の目が怒りに燃えて淳二を睨みつける。

だが、それはますます淳二を面白がらせるだけだった。

…ちなみに、美亜子は爆笑し、春樹は困った表情のまま失笑している。

「ホントは美人に弱いけど 女難と無難じゃ大ちがい♪
それでも人気は出るみたい 美形の女難は やっぱおいしいわ〜!」

「ふふっ、色男も形無しだな」

真理姐さんもついつい笑ってしまう。

ギャラリーの反応も上々。淳二はますます調子に乗っていく。

「兜をかぶって愛野郎♪ “愛”の前立て似合ってる?
照れちゃうんだから愛野郎♪ ほんとはこの技禁止なの
明日もきっとまた使う気だよ〜♪ WOW WOW WOW WOW」

「二度と使わん…」

なにやら堅く決心している輪君。

そして歌も最後のフレーズ。

「LOVE LOVE LOVE LOVE ラブビーム♪ 愛 愛 愛 愛 愛野郎!
LOVE LOVE LOVE LOVE ラブビーム♪ 愛 愛 愛 愛 愛野郎!
愛野郎!!」

「………」

黙りこくる輪。

「いぇぇぇぃ、ありがと〜〜」

淳二、大満足の熱唱だった。

嬉しそうな淳二の様子に、ぱらぱらと拍手も沸き起こっていたりする。

が、おさまりきらない人間が約一名。

「……美亜子、次、俺に歌わせてくれ」

鬼気迫る様子で、輪が美亜子と交渉中。

「ふぅん。ま、面白そうだし、いいわよ」

あっさり快諾。

そうしていると画面に点数が表示された。

『77点』

「おろっ? ずいぶん低いっすね」

「…当然の結果だ。馬鹿者が」

輪はそう言いながら淳二のマイクをふんだくった。

そして、画面に曲名が表示された。

『はぅ、EVER』

函館出身の有名バンド“無礼”の代表曲である。

輪が、怒りを込めて、熱唱する。

「絶え〜ぇ間なく注ぐ“愛”の名を 必殺技と呼ぶ事ができ〜ぃたならぁぁ♪
言〜葉では伝える事が どうしてもできなかった 悲しさの意味を知るぅ♪
使った日の胸騒ぎを〜 何気ない失笑を 嘲りの残るその声を 半笑いのまなざしを〜♪」

「オレら、そこまでひどいことしてねぇよなぁ」

「そうよそうよ。ちょっと笑っただけじゃない」

淳二と美亜子、若干抗議。

だが、輪は相変わらず自分の世界を作って歌い続けている。

「この技を彩る全てを抱きしめてぇぇ〜 ゆっくりと封印するぅ〜♪
撫で斬りの風が吹くぅ この場所でぇぇ♪」

怨念すらこもってそうな熱唱が終了した。

「うまいじゃん、色男」

真理姐さんは楽しげである。

「ふぅぅぅ」

どこか邪気が祓われたような様子で、輪が席に戻る。

こういうタイプは、歌いさえすれば気分も晴れてさっぱりするのである。

そして点数が出た。

『90点』

「うにゅぅ…」

「ふふん」

悔しそうな淳二と勝ち誇った輪。

男のプライドをかけた勝負、明暗くっきりである。

「さて、バカ二人には負けらんないわね」

そして登場したのが美亜子。

今回はまた新曲を引っ提げてのオンステージ。

「4番、『ボァレンテイ』」

美亜子が選んだのは最近アジアをまたにかけて活躍する、韓国出身の歌姫の代表曲。

ダンサブルでリズミカルな曲を美亜子は動きを付けて熱唱。

「タイトな鎧にねじ込むぅ♪ あたしという無敵のボディ♪ どんなちいさな隙にも 貫くチャンスをあ〜げ〜て〜 My Spear♪」

「…また物騒な曲を選びやがる」

輪は肩をすくめてやれやれのポーズ。

「本多さんらしい選曲だね…」

お人好し大王春樹、フォローだかなんだか分からない感想を漏らす。

「敗れちゃ意味ないじゃん♪ 毅然としてたいじゃん♪ Boy, I want to continue win. ここで 戦って♪」

「オレなら逃げるな…」

淳二がボソッとこぼす。

「敵とあたしの間に 勝機が見つけられないな〜らぁ♪ 世界中のね ど〜こにもぉ♪ そんなものなんてないの My Fight♪」

「おおーっ、いいじゃんいいじゃん〜」

真理先輩、なぜか気に入った模様。

この個性的なメンバーのカラオケ大会を一番堪能しているご様子。

うっすらと上気した顔で、美亜子が席に戻った。

なかなか満足そうな表情がその顔に浮かんでいる。

で、気になる点数は、と。

『88点』

「ええーっ…」

美亜子、輪の点数に届かずがっかりである。

「実は前回、俺のほうが負けていたからな、これで一勝一敗だ」

直接のライバルである輪君、カラオケでは互角であることを証明。

「ふん。…今度は勝つからねぇ」

そんな勝負。美亜子はしかし、とても嬉しそうだった。

やっぱり、勝ち負けがないと燃えないのだ。

「にゅぅ、入り込めん…」

今回は77点だった淳二、悔しそうである。

そして、第三の男、登場。

5番手伊達春樹。

「えっと、僕はあまり新しい曲知らないから…」

前回とまったく同じ言い訳しつつ彼が選んだのは、むしろサラリーマン世代に大人気の曲。

人気番組『プロジェクト〆』の主題歌である『地上の僕』。

どこか哀愁が漂う歌詞を、それでも明日への希望を胸に歌い上げていく。

「愛宕山に二人 竜宮にも二人 みんな何処へ行った 助けられることもなく〜♪
五稜郭に一人 そして僕が一人 みんな何処へ行った 見つけられることもなく〜♪
僕の身に起きた事を 誰も覚えていない 人は推理ばかりし〜てる♪
天狗よ〜♪ 高い空から〜見つけてよ 地上の僕を♪
天狗よ〜♪ 地上の僕は今 どうしていたのだろう♪」

春樹はしまいには感極まって声を震わせつつ熱唱。

「その時、直江が言った。『これまでの仮説はすべて成り立たなくなるぞ』。その場にいたメンバーは凍りついた…」

そして淳二が番組独特の、抑揚のないナレーションを入れている。

「良い歌だな」

瑠華が心から呟いた。

「…おそまつでした」

ぱちぱちぱち。

ぺこっと一礼して春樹がやっぱり恥ずかしそうに席に戻った。

特に誰も注目していなかったが一応点数も出た。

『92点』

「なぜだぁ〜」

「やっぱり、高いし」

淳二と美亜子、またも敗戦。

「これで、暫定トップか…。あとは明智の点数しだいだな…」

一応負けたのは輪も同じ。平然と解説してみせるがどこか悔しそうである。

現在のところ、トップは春樹の92点、輪が90点で二位に付け、美亜子の88点、真理の81点、淳二の77点と続いている。

そして大トリを勤めるのはご存知笑えない二重人格者、明智瑠華。

本日も寒色で統一したシックな装い。美しい顔は相変わらずの無表情。

「…私はカラオケというのは初めてなのだが」

そう前置きしつつ瑠華が選んだのは川中島美華の『五行STARS』。しっとりとしたバラードである。

「こりゃナイス選曲だ。瑠華ちゃんのイメージにぴったり!」

“暗くて美しい”と評される川中島美華は、確かに髪形や雰囲気も瑠華に良く似ている。

瑠華が無表情のまますっくとステージに立つと、それだけでプロ顔負けのオーラが出ているようだ。

「…まぁ、こんなこともあろうかと、なつめに適当に曲を見繕ってもらい、練習しておいた。聴いてくれ」

マイク越しに瑠華がそう言い、静かにイントロが流れ始めた。

ごくり…。

五人が固唾を飲んで見守る。

瑠華が静かにマイクを引き寄せ、その少し薄いが色艶のいい唇が、第一声をつむぐ。

が…。

「なっ…」(←輪)

「あれ?」(←美亜子)

「おろっ?」(←淳二)

「マジ?」(←真理)

「うそ……」(←春樹)

五人の口から異口同音の呟きが漏れた…。

そう、瑠華の第一声は、えらい勢いで外れていた。

それも、そんじょそこらの外れっぷりではない、真似しようったって絶対に無理なほどの、それはそれは途轍もない音程であった。

凍りつく五人。

だが、瑠華は無表情ながら、それでも一生懸命歌い続けている。

「やっぱりあの五人は↑ 見つからなかったと↓ 五稜郭に背を向けた↑ 願いに疲れた自分がいたよ↓
残酷な現実に↓ 瞳を閉じてしまいたい↑ 明日になれば↑ 彼らを救う↑ すべが↓ きっと見つかるはず↓」

「…なまじ真剣に歌っているから、何も言えん」

輪は腕組みしたまま、脂汗を流して固まっている。

「にゅぅ、オレ、ここまで凄いのはじめて聞いたよ…」

さすがの淳二も、瑠華相手におちゃらけたツッコミは入れられない模様。

「明智さん……」

もはや祈るような気持ちで見守る春樹。

瑠華の歌は外れまくったままサビへと突入。

「五行 Stars↓ 未だ暗い時代に↓ 散らばる戦士のかけらよ↑
無力なひとりよりも↑ みな覚醒できたとき↑ 煌めくよ↓」

外れた音程はもはや修復の見込みは一切見出せない。

正確な音程を真っ直ぐな線路に例えるなら、瑠華のそれは小型飛行機のアクロバット飛行である。

外れ方の次元が違うのである。

(なるほど、この子はいろんな意味で突出している。それは歌にしてもそうなんだ。面白いなぁ)

真理姐さんは、やっぱりどこか楽しげな様子。

瑠華の歌を平然と聞きこなしている。

「I hope you come back↑ いつかは集い↑ 最後の決戦の中で↓
光と闇に分かれて↓ 戦の空に↓ かすかな夢を見つける↑」

「そう、続けて。頑張れ…」

美亜子、こぶしを握り締めて気丈にも瑠華を応援。どこか瑠華に感情移入しているらしく、その顔は真剣そのものだ。

そう、カラオケが初めてという瑠華にとって、これを歌いきることが出来るかどうかは、自分との戦いでもあるのだ。

その真剣勝負に美亜子は強くシンパシーを感じているらしい。

「鏡の向こうには道があるよ↓ 帰還のために↑
ずっと待っている↓ もう一度光り出せば↑ どこかに↑ あの五人↓」

(…なんだろ、この気持ち)

めげず、挫けず、諦めず。瑠華は懸命に歌い続け、それをじっと聞いていた春樹には、ある心の変化があった。

それは、感情の共振というべきか…。

はっきり言ってしまえば、瑠華の歌は聴くに堪えないほどの下手さだったが、でも、質量のようなものすら持って春樹の心に響いてくるものがあったのだ。

圧倒されているといってもいい。

歌は技術ではないのだ。

「We're 五行 Stars↑ みんながいる↓ 描いた夢のむこうに↑
最後に大事なのは↑ 喜びを分け合える↓ 仲間たちよ↓」

歌も佳境に入り、瑠華の声も段々と大きくなっていく。

それに伴い、聞いている五人も徐々に瑠華の世界に引き込まれていく。

歌で一番大切なこと、それは“心”をこめること。

たとえ音程が曲芸飛行のように激しく暴れようとも、心がこもっていれば、気持ちは伝わるのだ。

「I'm Gonna be a Friend↓ 新たな未来↑ つないだ手と手の中で↓
五行の力に抱かれて↓ 戦の空に↑ 戦の空に↑ 私の夢を見つける↓」

終わった…。

ついに瑠華は初めてのカラオケで、初めての曲を歌いきったのだ。

それが技術的にどれほどひどくとも、聞いていた五人にとって、もはや関係なかった。

ひたむきに何かをする、最後までやり遂げる、その尊さを瑠華は教えてくれたのだ。

「最後まで聞いてくれて、感謝する」

困難な試練を完遂した人間独特の、満ち足りた笑顔を見せ、瑠華はそう言って一礼した。

その瑠華の笑顔はとても美しい、と、その場にいた誰もが強く思った。

「頑張ったな」

真っ先に真理が賞賛の拍手を開始した。

「そうそう、瑠華ちゃん、良かったよ」

淳二も笑顔で手を叩く。

「見事ね」

美亜子も、そして輪も無言で頷くとそれに倣う。

「僕、感動した。ホントに」

最後に春樹がそう言い、狭い室内に拍手の音が鳴り響いた。

『FANG GUNNERS』の気持ちが一つになった瞬間だった。

瑠華が歌ったように、なにより大事なのは喜びを分け合える仲間なのだ。

…と、その時、もはや無用の長物としか言いようはないが、採点結果が出た。

『0点』

またしても五人が凍りついた。

「………ぬぅ」

瑠華も、少なからずショックを受けた模様。

(あっ、ど、どうしよう。なんとかフォローしなくっちゃ)

春樹が慌てて何か言おうとするが、うまい言葉が見つからない。

俯く瑠華…。その姿はとっても寂しそうだった。

(えっと、えっと……)

混乱を極める春樹。

すると、輪が平然とこう言ってのけた。

「残念だったな、どうやら、マイクが接触不良だったようだ」

そして瑠華からマイクを奪い、マシン本体から一旦コードを抜いて、もう一度挿し直してみせる。

「これでいい。今回は採点不能ということだ」

これぞ、軍師の本領発揮。輪君、とっさの機転は利くほうである。

(直江君!)

ナイスフォローに、春樹感激。

「惜しかったな」

真理姐さんもすかさず話を合わせる。

策士二人、ここにあり。

「…そうか」

瑠華も、それを聞いてどこか安心したような雰囲気を漂わせていた。

嘘も方便、である。

(ふぅ、やれやれ)

(冷や冷やさせるわね)

淳二と美亜子も胸をなでおろした。

なんとかその場は収まったかに見えたその時である。


「ぬはぁ、ぬはぁ、ぬはは! この時を待っていたぞぉ」

奇妙な笑い声がスピーカーから聞こえてきたのである。

何事かと辺りを見回した6人は突如カラオケ機材がガシャガシャと合体していく現象をその目で見た。

「なっ、なんだぁ?」

激しく常識を逸脱した現象に一般人の真理は唖然とするばかり。

(まさか、また出たのか?)

(どういうことよ。前に倒したのに…)

(うにゅぅ、よりによって真理先輩がいるのに)

(ど、どうしよう…)

センゴクマンの4人が一瞬のうちに互いに目配せをかわす。

「やぁやぁそこな娘。実にへったくそな歌であったな。聞くに堪えないっちゅうか、もはや耳の毒騒音公害。よくもまぁ0点なんて、最低最悪な点数を叩きだせたものだ。ていうか、むしろ尊敬? ちなみにマイクは接触不良じゃないよ〜ん♪ ぬはははは…」

「………………っ」

あざけりを含みまくったその言葉に、瑠華の心は激しく傷ついた。

肩を震わせ無言で俯く。

「そのあまりに人並みはずれてひどい歌唱力、魔王クラーマさまの野望のため、この“帰ってきた怪人カラオケ男”がもらい受けるぅ!」

セリフの後半、もはや瑠華は耐え切れずに、口元を押さえて、逃げるように部屋から走り去っていった。

その目には一滴の光るものがあった…ように、春樹には見えていたわけで…。

「…よくも」

春樹の怒りは頂点に達した。

髪の毛は逆立ち、その全身からはまだ変身もしていないのに、真っ青なオーラが立ち上り、轟々と渦を巻いていたりする。

「…よくも、明智さんに(激怒)」


ぷちっ


☆目の春樹イメージイラスト
如月綾さま画。

「ハル?」

その姿を見、淳二は全身の血の気が引いていくのを感じた。

「…まずいわ」

危機感を持ったのは美亜子も同じ。

一方の輪も、とっさに動いていた。

「いかん。片倉先輩、ここは危険だ」

そう言って真理の身体を思いっきり引き寄せた。

「へっ? おおっ?」

とっさのことであったので、ちょうど輪は真理を正面から抱きしめるような体勢になってしまった。

「わっ、バカ、何すん……」

……。

(あ、でもちょっといいかも)

輪のフェロモンに、真理先輩、ちょっとやられ気味…。

が…。

「美亜子、手伝え!」

輪の必死な声に、美亜子もとっさに真理の足を抱え込んだ。

「えっ? ちょ、ちょっと…」

そして二人でえっさほいさと真理を運び出した。

「ん? なんだと? どうやって魔王クラーマさまの野望の役に立つのかって?」

「ま、待ってくれ〜」

淳二も慌てて部屋を飛び出した。

もはや誰も聞いていない。

「うはぁ、うはぁ、うはは! 考えが甘いのう。センゴクマンのテーマソングをそこな娘が歌うバージョンに差し替えておくのだ。すると、あのひどい音程にファンから苦情が殺到。センゴクマンの人気も地に堕ち、この国は晴れてクラーマ様が支配できる、というわけだ。どーだ、参ったか。ぬは〜、ぬは〜」

と、その時になって初めて、帰ってきた怪人カラオケ男は、自分のすぐ前に目を☆にしたセンゴクブルーがいることに気づいた。

「ぬはは〜、…は?」

『撫で斬り!!!』

『撫で斬り!!!』

『撫で斬り!!!』

『撫で斬り!!!』

『撫で斬り!!!』

『撫で斬り!!!』

『撫で斬り!!!』

『撫で斬り!!!』

『撫で斬り!!!』

『撫で斬り!!!』

『撫で斬り!!!』

『撫で斬り!!!』

『撫で斬り!!!』

『撫で斬り!!!』

『撫で斬り!!!』

『撫で斬り!!!』

『撫で斬り!!!』

『撫で斬り!!!』

『撫で斬り!!!』

『撫で斬り!!!』

『撫で斬り!!!』

『撫で斬り!!!』

『撫で斬り!!!』

もはや、悲鳴すら上げる暇もなく、帰ってきた怪人カラオケ男は消滅していった。

輪たちの決死の避難支援活動により、なんとか死傷者は出なかったものの…

この日、函館市でカラオケボックスがひとつ全壊した。

ナレーション:「かくして今日も一つの悪が滅び去った。だが、魔王ある限り戦いは続く。がんばれ、負けるなセンゴクマン」


おしまい。


注意:この作品はフィクションです。登場する人物、団体、歌、及びその歌詞は全て架空のものです。

あとがき春樹


作者です。

旅行記のリライト作業がようやく終わり、その間センゴクマンを書けなかった鬱憤をぶつけるように、たったの二日でこの話を書き上げました。

こう言っちゃ何ですが、カラオケの話はとても書きやすいです。

複雑なプロットとか、緻密な作戦行動や戦略があるわけでもないし(笑)

知ってる曲の替え歌を適当に作って、各キャラに歌わせるだけ(爆)

そんなお手軽な話ですが、その割にはなかなか面白く出来上がったな、と思っております。

ますます瑠華がヒロイン化する今日この頃。

感想など、お待ちしてます。

5月3日 中島美嘉のアルバムを聴きながら 直江雨続


おまけ、5月3日現在、作者の着メロ一覧(全30曲)。

(実は4月30日に携帯を機種変更しました。その際着メロをまた集めなおしたのですが、今回は本編が短いので、こういうおまけをお付けしましょう)


『Love is…』
『ずっと2人で…』
『PRIDE』
『HOWEVER』
(私のカラオケ十八番がこの辺。後半の二つは輪君も歌ってました(笑))

『歌舞伎町の女王』
『my sweet darlin’』
『VALENTI』
(この辺は美亜子に歌わせた曲)

『中島美嘉メドレー』
『STARS』
(最近、中島美嘉がお気に入り。瑠華に歌わせてみたいがために、このお話を書いたという説も(笑))

『ミニハムずの愛の唄』
『愛のバカやろう』
『おさかな天国』
(イロモノですが、これまたネタになった曲。おさかな天国についてはそのうち分かります)

『鬼束ちひろメドレー』
『茨の海』
『Castle・imitation』
『infection』
『流星群』
『月光』
(これまた私の一押し、鬼束ちひろのコーナー(?)。流星群は現代編第三話のイメージソング)

『truth』
『MISIRLOU』
『世俗カンタータ「カルミナ・ブラーナ」より「おお運命よ」』
(上から、F1のオープニング、K−1のピーター・アーツとジェロム・レ・バンナの入場曲)

『夕陽のガンマン』
『続・夕陽のガンマン』
『荒野の七人 』
(そしてお気に入りの西部劇のテーマ曲を三つ)

『愛を越えて』
『real Emotion』
(こちらは好きなゲームの主題歌。幻想水滸伝3とFFX−2)

『颯爽たるシャア』
『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア MAIN TITLE』
『奇跡の海』
(今度はアニメ。上の二つは説明不要。奇跡の海は私のお気に入りの菅野よう子の作曲、新ロードス島戦記の主題歌)

『水曜どうでしょう』
(これまた説明は不要(笑)。HTBのサイトでダウンロードしました)


こんなものを公開してどうするんだ、という意見も聞こえてきそうだが、まぁなにかの話のネタにでもしてください。

以上。


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