陰陽五行戦記おまけ劇場

五行戦隊センゴクマン!

第十六話

「センゴクマン乱射」



「疾如風徐如林侵掠如火不動如山」
孫子


◇準決勝第二試合◇


『四ナノ6人衆』函館近未来大学付属ミクロ高校ナノテクノロジー科の精鋭部隊である。

秒単位の精密な作戦行動が売りのチームで、格好もアメリカの特殊部隊SWATをモチーフにしている。

もちろん使用する電動ガンも、SG551SWAT。ホルスターにはソーコムマーク23だ。

シグSG551 スワット
シグSG551 スワット
この画像の著作権は、株式会社東京マルイが所有しております。

SOCOM Mk23
SOCOM Mk23
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対するのは函館白楊高校の『チーム風林火山』

「おや? 同じ学校? あたしらの他に出場チームがいたなんて」

真理が怪訝な顔をする。

輪達も首をかしげるが、実際に『チーム風林火山』を見ると、ますます謎だった。

一分の隙もない迷彩服姿の男が5人。

その手にはそろって電動ガン『AK−47』を持ち、ひときわ体の大きい一人が背中になにか長いケースを背負っている。

AK―47
AK―47
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そして女性と思しき小柄な一人はロシア陸軍(?)の将校服を身に付けていた。

その手には電動ガン『βスペツナズ』。

ロシアの特殊部隊、スペツナズ向けに開発された、カスタムAKである。

AK−47が量産型ならβスペツナズはシャア専用である。(多分)

βスペツナズ
βスペツナズ
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というわけで、明らかにその将校服姿の女性(?)がリーダーと分かる。

全員が色付きのフルフェイスゴーグルを深々とかぶり、その正体は杳として知れなかった。

どうやらこのチーム、オープニングのときからず〜っとゴーグルをかぶりっぱなしだったらしい。

だが、実力は高く、装備をAK−47で揃えた精鋭、通称“AK備え”を擁し、無敵の快進撃を続けている。

まさに正体不明の強豪チームである。

そして準決勝第二試合である。決勝進出を掛けた大一番。

試合開始と同時に、ある周波数に謎の電波が飛び交っていた。

「乱波より陣馬奉行へ。敵軍、2名を残し2人ずつの組で進撃中。一軍は現在B5フィールド。もう一軍はD4フィールド」

「了解。陣馬奉行より鬼美濃と三郎兵衛へ。あと30秒でB1フィールドへ移動せよ。修理はD2フィールドで待機。弾正はE3フィールドにて敵をやり過ごせ」

「「「「了解」」」」

そして疾風のように4人の“AK備え”が戦場を駆け抜け、素早く配置につくと今度は林と同化したかのように見事に気配を消す。

そう、『チーム風林火山』の面々、驚いたことにフルフェイスゴーグルのなかに小型通信装置を忍ばせていたのである。

そして相手陣地の背後にある観客席にスパイ(乱波)を配置し、逐一敵の動きを報告させていたわけである。

戦争において何より重要なのは敵の情報である。

敵を知り己を知れば百戦危うからず。

敵の作戦、数、現在位置が分かれば、対処するのは簡単、というわけである。

かくして、『四ナノ6人衆』高梨、小笠原の二人はD3フィールドに足を踏み入れた瞬間、前方D2フィールドと右E3フィールドからの十字砲火を受け、ものの数秒で二人ともヒットとなってしまった。

「こちら弾正。敵を二人仕留めた」

「陣馬奉行、了解。それでは弾正はB4フィールドに、修理はC3フィールドに移動されたし。3分後、オペレーションウッドペッカー始動する」

「「了解」」

次なるターゲットは『四ナノ6人衆』の諏訪と木曾の二人。

彼らがB3フィールドを辺りを警戒しつつ進軍中、前方に人影を発見した。

その人影、前方B2フィールドに待機していた鬼美濃と三郎兵衛が30mほどの距離から散発的にフルオートで牽制の射撃を繰り返してきた。

オプションで買える、AK−47の多連装マガジンは最大600発と装弾数が多い。

絶えること無く前方で展開される弾幕の為、諏訪と木曾は迂回作戦に切り替えた。

すなわち、B2フィールドを避け、C3,C2,C1と進むルートを選択したのである。

だが、すでにC3には修理、そして背後のB4では弾正が今や遅しと獲物を待ち構えていた。

「…こちら修理。作戦成功。敵はC3フィールドに侵入しつつあり、これよりJ.S.A.をかける。鬼美濃と三郎兵衛は突貫せよ」

「「了解」」

そしてきっちり15秒後、J.S.A.が発動した。

「十字砲火!!」

「掃討殲滅!!」

「アターーック!!」

B2フィールドから疾風のように突撃してきた二人と、C3、B4フィールドで林のように静かに隠れていた二人、合計4人から、烈火のようなフルオート射撃が集中した。

四方から浴びせられた集中砲火に諏訪と木曾はまともな反撃も覚束ないまま、たちまち戦死者の列に名を連ねる事になった。

残るは本陣を守っているディフェンダーの二人のみ。

だが、AK備え4人のJ.S.A.の前には残る二人、村上と須田もなすすべも無かった。

こうして準決勝とはとても思えないほどの圧倒的な力の差を見せ付けて、『チーム風林火山』完全勝利であった。

で、これを観客席から見せ付けられた『FANG GUNNERS』、衝撃は小さいものではなかった。

「まさか、これほどとはねぇ」

ほとんど呆れ半分、といった感じで真理が肩を竦めた。

「最後の四方向からの攻撃、どう対処すればいいのだ?」

これはディフェンダーの瑠華。

さすがにあんな攻撃をされては手も足も出ないことを自覚していた。

「むぅ…」

「ええと…」

輪もそして春樹も考え込んでしまった。

「ここはあれだな、“高度な柔軟性を維持しつつ、各自臨機応変に敵の攻撃 に対処せよ”って作戦しかないっしょ」

「それは厳密には作戦とは言えん」

淳二のボケに瑠華が真面目な顔のまま応じた。

「お、おっしゃる通りでござる…」

淳二、沈黙。

(これはこれでいいツッコミかも。やるわね、瑠華)

美亜子がそんなことを考えていると、輪が顔を上げた。

どうやらJ.S.A.の対処法を考えついたらしい。

「フォーメーションを少し変更しよう」

輪の口から語られた対処策は以下の通り。

アタッカーの美亜子と淳二が最前線というのは変わらないが、そのすぐ後ろには左から真理、春樹、輪が3人並ぶ。

そして自陣にはディフェンダーの瑠華。

例のJ.S.A.を防ぐためにも前の5人は基本的にはかなり密集した状態で、限りなく自陣に近い林にて身を隠す。

敵が四方から攻めてきても、ちょうど円陣を組んだような状態をとり、外側の4人がそれぞれ反撃して相手の足を止める。

その隙に中央にいる春樹の精密射撃で一人ずつ倒していく、というもの。

「サッカー風に言えば、2−3−1だ。通称“フラット3”とでも呼んでおこう」

わずかに微笑を浮かべ、輪がそうまとめた。冗談のつもりかもしれない。

「フラット3…、なんだか予選リーグを突破できそうな、縁起の良い名前だな」

既に優勝を決めたかのような笑顔で、淳二がはしゃぐ。

ともあれ、これにて『FANG GUNNERS』の作戦が決まった。

フラット3がうまく機能するかどうか、それは決勝戦になってみなくては分からない…。

作戦会議の最後、真理が年長者らしくまとめの一言。

「じゃあ、最後に一言いいかな? ええと、この大会への参加は、元はと言えばあたしの我が侭から始まったことだ。あたしは3年だし、こういう大会に出られるチャンスももう無いからね。ま、それで春樹に無理を言ってメンツを探してもらったわけだ。正直、サバイバルゲームってマイナーだし、偏見とかもあるからメンバーが集まるとは期待してなかった。でも、お前らみたいな優秀なメンバーがそろって、しかも優勝を狙える位置にいる。あたしにとっては最初で最後のチャンスだ。絶対に優勝したい。あと一つだ。だから、…ええと、『各員の更なる奮戦を期待する!』…以上だ」

真理の演説はメンバーの戦意高揚に極めて有効だった。

たちまちやる気満々状態になったのが約3名。

「あたしらに任せなさいって。絶対負けないわ」

瞳の中にめらめら炎を燃やし、美亜子がこぶしを握り締めた。

「そうだな。もともと優勝は公約みたいなものだ。負けるわけにはいかない」

実は美亜子と並ぶくらいの負けず嫌い、輪も力強く頷いた。

「真理先輩、こういう時は『すまんな、みんなの命をくれ』でしょ」

これからアクシズを止めてみせるぜ、というくらいの気合で淳二も燃えていた。

「………………」

瑠華は相変わらずの無表情で小さく頷いただけ。

でも、サブマシンガンのグリップをぎゅぎゅっと握り締めている所を見れば、もしかするとそれなりにやる気を出したのかもしれない。

で、最後に残った春樹は、と言えばこれがまたえらい勢いで感動していた。

真理はそんな春樹の様子を見逃さず、すかさず話を振った。

「おい、春樹。お前からも何か言え」

「へっ?」

突然本番が始まってしまった新人レポーターのように、春樹は一瞬口をぱくぱくさせたが、どうにかパニックを静めるとゆっくり話し始めた。

「えと、一生懸命援護するので、背後のことは気にせず、力いっぱい戦って下さい」

春樹の言にみんなが笑顔で応じた。

こうして作戦会議は滞りなく終了。

そして決勝戦において、彼らは凄腕のスナイパーの援護がどれほど心強いものなのか、身にしみて理解する事になる。



「勝敗は兵家の常である。激戦に競り負けた将軍は不運であるが、敵から奇襲されたり、敵の罠にはまったりした将軍は弁解の余地は無い」
レナタス


◇決勝◇


『全国高等学校サバイバルゲーム選手権大会 道南地区予選』も佳境。いよいよ決勝戦となった。

これで勝ったほうが道南地区最強の称号を得ることになる。

試合前の顔合わせでも『チーム風林火山』は一切口を開かず、もちろんフルフェイスゴーグルを脱ぐことすらなかった。

ついに最後まで正体を明かさないまま、こうして決勝戦の火蓋は切られたのであった。

「乱波より陣馬奉行へ。敵軍は後衛一人を残し五人が密集したままC5フィールドへ侵入。その後の動きはこちらからは確認できない」

「了解。陣馬奉行より各員へ。敵は中央突破を仕掛ける可能性もある。鬼美濃と修理はB1フィールド、三郎兵衛と弾正はD1フィールドで敵を警戒せよ」

「「「「了解」」」」

さて、一方の『FANG GUNNERS』は彼らの言うところのC5フィールドの中央にて全方位に対し哨戒行動中であった。

フラット3は木や岩陰に身を低くして動かず、前衛の“ニュータイプ”美亜子と“忍者”淳二が慎重にあたりの様子を伺っている。

だが、敵の気配は無かった。

やがて試合開始から5分を過ぎたところで一度美亜子と淳二はフラット3のところへ報告に戻ってきた。

「敵影は見えない。見事な引き際だな…」

至極まじめそうな表情のまま淳二がボケをかます。

「まだ攻めてきてないだけだってば」

真理が苦笑して突っ込む。

「どうする? こっちから攻め込む?」

それは疑問の形をした美亜子の意思表示だった。

はっきり言えば美亜子は攻め込みたくてしょうがない。

「いや、もうしばらく待とう。向こうも防御に専念しているんだ。この目立つ格好で攻め込めば格好の標的だ。ここは我慢の一手だ」

慎重派の輪がそう釘を刺した。

こうして決勝戦は双方動かず、持久戦の様相を呈していた。

そんなさなか、フィールドの中央に突如完全武装の迷彩服姿の人影が姿を現していた。


「ふっふっふ、俺はゲリラ怪人。魔王クラーマ様のため、今日も元気でゲリラリラ〜♪ この洗脳BB弾に当たったものはあっという間にクラーマ様の忠実な下僕となるのだ。決勝戦に残ったつわものどもなら、さぞかし優秀な兵士となるだろゲリラリラ〜♪」

ナレーション:「なんと、フィールドに現れたのは魔王の手先、ゲリラ怪人だった。洗脳BB弾を600発も詰め込んだ。違法改造電動ガンを手に、今まさに狩りを始めようとしていた。あやうし、センゴクマン!」

「ふっふっふ、パーティの始まりだぜゲリラリラ〜♪」

ゲリラ怪人は完璧に周囲の風景に溶け込みつつ、まずは『FANG GUNNERS』の陣地のほうへと向かっていく。

と…。

「(来たわね)」

たとえ姿は見えずとも、美亜子にとって敵意を持って近づく者を感知するのは難しいことではない。

その第六感が敵の接近を告げていた。

すぐに美亜子は背後にいる春樹へ指でサインを送った。

「(分かりました)」

春樹は了解の頷きを返すと、APS-2 スナイパーバージョンのスコープを覗き込んだ。

カサ…。

わずかに草が揺れた。

パァン。

敵の姿は見えない、だが反射的に春樹の指はトリガーを引いていた。

銃口から飛び出したバイオBB弾はポップアップ機構の恩恵を受け、順調に飛距離を伸ばし、約40m先の標的へと到達した。

コツン。

そして完璧な隠密行動中(と自分では思っていた)ゲリラ怪人の額に命中。

「…ヒ、ヒットぉぉぉっ!?」

大仰に驚くと、ゲリラ怪人はぱったりと前のめりに倒れた。

やがてその身体は塵となり、風に吹かれて消えていく…。

ナレーション:「説明しよう。ゲリラ怪人はヒットされると本当に死んでしまうのだ」

「変ね…」

不意に敵意が消滅、美亜子は怪訝そうに眉を寄せた。

「……気のせいだったかな?」

その後、スコープの先に一切動きは無かった。

春樹は首をかしげると音を立てないようにスライドをコッキングした。

ナレーション:「こうしてセンゴクマンの活躍により、今日もまた悪の芽が摘み取られた。だが、魔王クラーマある限りセンゴクマンの戦いは続く。頑張れ、負けるなセンゴクマン。地球の未来は君たちにかかっているのだ!」


さて、瑣末な出来事の描写はこれくらいにして決勝戦に戻ろう。

先に痺れを切らしたのは『チーム風林火山』の4人だった。

「(どうやら。本命の到着)」

美亜子は全員に見えるよう、指を4本立てて合図した。

真理、淳二、春樹、輪。全員が頷き、いよいよ熾烈な銃撃戦が開始されようとしていた。

敵は二人ずつの組となり、左右から接近しつつあった。

対する『FANG GUNNERS』は右側から来る敵には輪と美亜子、左側の敵には淳二と真理がそれぞれ迎え撃つ格好。

中央にいる春樹は隙を見て敵を狙撃しようと待ち構えている。

「襲い来るAK−47か…。まるでプラトーンだな」

気分はチャーリー・シーン。

真理はにやりと笑うと先制攻撃とばかり、MP5K A4を撃ちまくった。

どうやら真理の相手は一番身体の大きいやつらしい。

慌てて身体を隠すと弾数の多さに任せてフルオートで反撃してくる。

だが、このときすでに真理は元いた場所から移動していた。

左に回りこみ、さらに牽制の射撃。

敵もそれに合わせて左へと移動。

と、一瞬敵の巨体が春樹から丸見えになった。

どうやら真理はこれを狙っていたらしい。

パァン。

その一瞬を春樹が見逃すはずがなかった。

敵の巨体は格好の的となった。

「くっ、ヒット!!」

戦場に響き渡る見事なバス。

「この声、どこかで…?」

一瞬春樹が首を傾げるが、すぐに次の獲物を探して移動した。

スナイパーの鉄則、それは“一発撃ったらすぐに場所を変える”である。

「よし、まず一人」

一息ついた真理がマガジンを交換しようとベストをまさぐっていると、突如左側からフルオートでの連射を浴びてしまった。

「痛っ、ヒット!! …ぬかったわ」

完全に隙をつかれた格好だ。

というか、まったく敵の気配を感じなかった。

よほど隠密接敵の技量が優れているのか、単に存在感が無いかのどちらかだろう。

大事な決勝で、よりによって真っ先に戦線を離脱してしまうとは…。

「ちくしょう…」

みんなにあわせる顔が無い。

真理は俯き、肩を落としてセーフティゾーンへと向かった。

その、真理を仕留めた敵は隙あり、とばかりにダッシュして、ちょうど春樹の背後に回ろうとした。

交戦中の春樹、輪、美亜子にとって一番の急所を押さえようというわけである。

が、突如木の陰から飛び出した影が、完璧に敵の背後を取り、ほぼ0距離からサイドアームでの射撃を浴びせた。

死角からの攻撃に、敵はなす術もない。

「…ヒット」

「残念だったねぇ。オレのワルサーに撃たれたものは、すべて消えゆくさだめなのさ」

そう言って淳二はにやりと笑う。

隠れている技術なら、淳二も一流だった。

「ていうか、これ初ヒットだな…」

淳二はそう呟き、再び林の中へと消えていった。

一方の右側の戦線。

「まったく、こんなイロモノチームには過ぎたる女だな」

“三郎兵衛”は完全に美亜子に手を焼いており、

「おのれ、直江めぇ、さっさとくたばりやがれ」

“弾正”はなぜか輪を目の仇とばかりに付け狙う。

こちらは膠着状態だった。

だが、時間とともに『FANG GUNNERS』絶対有利となった。

いつの間にか、淳二が三郎兵衛の背後に回っており、また、正面では春樹が隙あらば、と狙いをつけている。

単純に戦力は4対2である。

それが分かったのか、弾正が動いた。

輪が隠れている木をめがけ、フルオートで連射しながら突撃を敢行したのである。

十分に引き付けてから、輪は一瞬木の陰からMP5 R.A.S.を出すと落ち着いて横なぎに連射した。

輪の攻撃は確かに弾正を捉えた。

だが、輪のMP5 R.A.S.にも敵の弾が命中していたのである。

つまり、相打ち。

両者ヒットであった。

「くそっ、俺もまだまだか…」

輪が悔しそうにフィールドから去った。

こうしてまた主役の座が危うくなった輪であった。

そして時を同じくして、背後に回っていた淳二に気付いた三郎兵衛が致命的な隙を作った。

それを見逃す美亜子ではなかった。

すかさず突撃し、淳二と呼吸を合わせてとっさに挟撃策をとる。

「しまった」

CAR−15とP−90の挟み撃ちに三郎兵衛はたまらず逃げ出した。

が、その姿が春樹から丸見えになった。

そこを春樹が冷静に仕留める。

「ヒット…」

こうして、真理、輪が犠牲になったものの敵のAK備え4人を倒し、こちらの残存兵力は4、敵は2である。

「よっしゃ、これで勝ったも同然」

「そうね、さぁ、攻めるわよぉ」

「う、うん」

が、残ったのは猪突猛進の美亜子とアホの淳二、そして二人を制御できない春樹である。

敵で手ごわいのはAK備えの4人のみ、あとは雑魚だけ。

勝利を確信した美亜子と淳二は一気に敵陣へと攻め込んで行った。

「いくぜぇ、五@門」

「誰が@エ門よ」

突撃する馬鹿二人。

「まてぇ、ルパー@。逮捕だぁ〜」

などとは決して言わず、慌てて春樹がそれを追う。

そして、林を抜け、開けた敵陣へと二人が踏み込んだ瞬間。


山が動いた。


敵の本陣に据え付けられていたのは長射程と1200発の装弾数を誇る、拠点防衛用の重機関砲M60。

美亜子と淳二の姿を確認すると、陣馬奉行はそのM60にかかっていた布を取り払った。

たちまちあらわになる最強兵器…。

射手は例の将校服姿の敵のリーダーである。

「うそぉ」

「ちょ、それ反則…」

ひるんで逃げようとした二人めがけ、それが、火を噴いた。

ずばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばば…

一切の容赦なし。

それは、罠に飛び込んでしまった哀れな獣二匹の末路にも似ていた。

雨あられと浴びせられるBB弾に、たちまち美亜子と淳二は蜂の巣にされてしまう。

「ヒットぉ。あ、圧倒的じゃないか…」

「ヒット。くっ…」

両手を挙げ、その火力の前から慌てて逃げ出す始末。

あっという間に、2対2のイーブンになってしまった。

「おにょれ、“まだまだぁっ!!”とか言って特攻したかったぜ」

セーフティゾーンに消え行く淳二の背中は、ひたすら寂しげだった。

「すれば」

ぼそっとつぶやく美亜子。

だが、出来ない。いくら悔やんでもヒットされたらすべておしまい、なのである。

それがルール。

「…分かってるさ、悲しいけど、これ、戦争なのよね」

「サバゲーよ」

おざなりにツッコミを入れる美亜子。

ヒットの悔しさからそれからはしばらく無言だった美亜子とともに、こうして淳二は戦場を去った。

あとに残されたのは春樹と、そして前線で何が起きたのかまったく把握しておらず、そろそろ暇になっていた瑠華の二人だけ。

(どうしよう、あの重機関銃の射程は僕のスナイパーライフルよりもある。このままじゃ、勝てない)

春樹は逡巡していた。

で、とりあえず自陣に戻って瑠華を呼び、二人がかりで攻めよう、と決意した。

少しだけ瑠華におとりになってもらい、その隙に接近して仕留めれば大丈夫だろう。

そんな事を考えつつ、春樹は林の中を駆け戻り、前線へと瑠華を連れ出した。

「じゃあ、明智さん、すいませんけど僕がバリケードに取り付くまで、何とか敵の目を引き付けてください」

「うむ」

瑠華は躊躇無く頷いたのだが、春樹はますます申し訳なさそうにもう一言。

「あの、本当にすいません。怪我、しないでください」

「気にするな、勝利のためにはそれが上策だ。それに、私はお前の腕を信じている」

瑠華は真剣な顔で、春樹を見つめた。

「明智さん…」

驚いたように春樹が瑠華を見つめ返す。

すると、瑠華は、これまた信じられないことだが、やわらかく微笑して、頷いたのであった。

なにやらとてもいい雰囲気だった。

(そうだ、明智さんは僕を信頼して、危険な役割を果たしてくれるんだ。絶対に失敗は出来ない。片倉先輩や一緒に頑張ってきたみんなのためにも!)

今、まさに春樹の心は熱く燃え上がっていた。

「よぉぉぉしっ、じゃ、行きますっ!」

「うむ」

気合十分の二人が突撃しようとした瞬間、ふと、敵陣の様子を見た瑠華が、怪訝そうに春樹にこう聞いた。

「ところで伊達、敵陣には一人しかいないが?」

見れば将校服姿のリーダーの姿が無かった。

「あ、あれ?」

と、その瞬間。

試合終了を告げる笛の音がフィールドに響き渡ったのであった。

そう、


山が動いた


のである。

春樹が自陣に向かって戻ったとき、こっそりと敵のリーダーも陣を離れて林の中に隠れていたのであった。

そして春樹が瑠華を連れ出すと、空になった自陣に侵入し、簡単に旗を奪った、というわけである。

「あ…、あうぅ」

がっくりと春樹が肩を落とした。

完全に自分のミスだった。

というか、無線を利用して相手の動きを探っていた『チーム風林火山』のほうが一枚上手だったと見るべきだろう。

“風林火山”とはもともと孫子の兵法から取った言葉である。

そしてその孫子の兵法で一番重点的に語られているのは、敵の情報を如何にして知るか、つまり“スパイの使い方”なのである。

その名前に恥じず、『チーム風林火山』は見事にスパイを使いこなし、情報戦で勝利を収めたといえよう。



「どんな事業でも、実行の機が熟すまで秘匿できなかったものは成功しない」
マキャベリ


◇表彰式◇


というわけで、表彰式が執り行われていた。

まず3位決定戦を勝ち抜いた『室蘭ボー』の6人にそれぞれ銅メダルが授与された。

ついで惜しくも準優勝となった『FANG GUNNERS』に銀メダル。

メダルをもらいつつ、淳二と美亜子が小声で話していた。

「そういえば、結局誰だったんだろ、あいつら。結局表彰式でもフルフェイスゴーグルつけたまんまだし」

「そーね。ま、どーでもいいわ。あたしらに勝った相手の顔なんて、特に見たくもないし」

「そうか? 俺は興味があるな。あれだけ見事な戦術を駆使する相手だ。いったい誰なのか…」

輪の言葉が途中で止まったのは、優勝チームへのメダルの授与が始まったからで、そしてメダルを首にかけてもらうため『チーム風林火山』の6人がいっせいにフルフェイスゴーグルを外したからである。

「なっ」←輪

「にゅっ」←淳二

「うそっ」←美亜子

「ぬぅ」←瑠華

「だれ?」←真理

「た、た…」←春樹

『FANG GUNNERS』の6人を驚愕の渦に叩き込んだ張本人は、悠然と微笑むとこう言った。

「あら、みなさん。こんなところでお会いするなんて奇遇ですわね」

そう、将校服姿で表彰台の中央に立っていたのは誰あろう、武田広奈、その人であった。

広奈様オリジナル将校服イメージイラスト
如月綾さま画。

フルフェイスゴーグルから現れたのは、たおやかな美少女の100万ドルの笑顔。

ミリタリーマニアの観客が沸騰したのは言うまでもない。

何せ彼らにとってはセーラー服姿の美少女よりも、将校服姿の美少女のほうがグレードは上なのだ。(多分)

(かっ、かわいすぎる…)

さっきまで瑠華に夢中だった沼谷健二。あっさりと乗り換えたらしい。

(オレは今日、紺谷ヶ峠で“天使”に会ってしまった)

同様の反応する男性ギャラリーも多数。

たちまち「うちのチームにこんな子がいたらいいなぁ選手権」のトップが入れ替わった。

というわけで、ギャラリーの人気投票によって選ばれる特別賞をダントツの大差で獲得したのも『チーム風林火山』。

MVPはチームリーダーの武田広奈、撃墜王の称号は9人を倒した春樹、ではなく、実は10人倒していた『チーム風林火山』の“弾正”こと高坂鏡が見事ゲットした。

ま、つまり、なんというか、『FANG GUNNERS』、ぼろ負けである。

6人を代表して真田淳二氏が述べたコメントは以下の通り。

「ぎゃふん」

こうしてひとつ絶対に忘れてはいけない教訓が生まれた。


武田広奈を怒らせてはいけない。


五行戦隊センゴクマン第十六話




次回予告

「勝てること、勝てるだけの力、あると信じた6人はただ自惚れていただけなのか。
敗北の翌日、手紙に託されたひそやかな思い。
解読の一瞬は淳二に何を捨てさせ何を読み取らせたのか。
再び強襲する悪の影に、彼らができるのは守ることか、それとも倒すことなのか。
次回五行戦隊センゴクマン「センゴクマン解読」

また新たなネタを、放つのか『FANG GUNNERS』」



あとがき春樹


作者です。

ええと、本編をお読みの読者さんはなんでこんなものが書きあがったのか、すでにお分かりのことと思います。

まだわからないという方は二十八話をもう一度読み返してくださいませ。

そう、これを書いたのは春樹のためです。

サバイバルゲームとはなんぞや? という読者さんに、春樹に代わって説明しておく必要があるかと思い、作者、勉強してこれを執筆しました。

なんと言っても自称“知識探求型多趣味人間”ですから、いったん興味を持ったらその知識欲にとどまるところはありません。

とりあえず購入した雑誌が「サバイバルゲーム完全マニュアル2003年度版」「エアガン入門6」

参考になるかな、と思って「フルメタルパニック」を全巻購入し読破。

見た映画が「プラトーン」「スターリングラード」

その他、さまざまなサバイバルゲームチームのHPを見たり、実際にエアガンショップにも足を運び、試射等もしてみたりして、情報を収集し、その結果、こういう形での発表となりました。

で、ここでひとつお断りしておきますが、作者は実際にサバイバルゲームというものをしたことがありません。

この作品は、集めた情報をもとに、こんなもんかなぁ、という勝手なイメージで執筆しました。


そういう事情ですので、本当にサバイバルゲームをしたことがある、あるいは毎週やってるぜ、ってなゲーマーの方のご意見などもお待ちしております。


ただ、これを書いているうちに、そして資料をあさっているうちに、本当にやってみたくなってしまいました(笑)

だって、面白そうなんだもん。

果たしてこのまま突っ走ってしまうのか?

作者の運命やいかに?

次回を待て。(をいをい)

2002年11月6日、作者。

あとがき春樹


あとがきのあとがきです(笑)。

ちょこっと加筆しました。

ギャラリーにも名前のあるキャラを登場させようと思って、「センゴクマン爆走」の沼谷健二を出してみました。

さらに名将たちの珠玉の格言を入れてみたり、各チームの持ってる電動ガンも名前を出してみたり、いろいろと書き足しました。

あと、輪君のサイドアームを変更。多分こっちのほうが輪君の好みでしょう。

どうせ作中では一回も使ってないから問題なし(笑)

それから、この作品を書いたことがきっかけで、最近作者は西部劇にどっぷりとハマっております。

「荒野の七人」「シェーン」なんかもかなり面白かったですが、特にクリント・イーストウッドの「夕陽のガンマン」が最高でした。

いや、これはホントにカッコいい! そして音楽も素敵すぎです!

まだ見たことないなら、必見です。いや、ほんとに。

他にも「真昼の決闘」「荒野の決闘」なども見ました。

温故知新、古きをたずねて新しきを知るとはこのことですな。

私の生まれる前の作品なのに、さすが名作と言われるだけのことがあって、どれも非常に新鮮で面白かったです、はい。

新しく興味を持つ分野があるのは、私にとってすごく幸せなことでございます。

それが、どっぷりと浸かれるほどの知識(ネタ)の宝庫だった場合は特に。

知識探求型多趣味人間の生態を皆様も少しは分かってくださったことでしょう(笑)

ちなみにこれらの作品のビデオは全部市立図書館で借りたものです。

実は他にもたくさんのビデオが置いてあるので、この先のんびりと網羅して行こうかな、とか考えております。にこにこ。

もちろん全部無料で借りられます。にこにこ。

ちなみに、こうして毎週洋画を見て、ネイティブの会話を聞いていたおかげでTOEICの点数も上がりました。にこにこ。

というわけで、この件に関して、私はとても良い思いをしております。実に幸せなことです。にこにこ。


そうそう、唯一残念な報告としては、結局サバイバルゲームは今だ未経験のままです。

結構初期投資がかかるそうなので、断念中です。

ま、機会があれば見物くらいは…、もしくはスポット参戦なんかしてみたいな、とは思っていますが。

誘ってくれる人、募集中です(笑)

出来れば紳士的なチーム希望(^^;


2002年12月6日、作者。


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