陰陽五行戦記おまけ劇場

五行戦隊センゴクマン!

第十五話

「センゴクマン狙撃」



「戦闘は防御に始まり、攻撃で終わる。その逆は敗北である」
クラウゼヴィッツ


◇一回戦◇


「おっ、あったあった『FANG GUNNERS』第一試合じゃん。相手は南高校の『サザンクロス』だってさ」

プログラムを見ていた真理が陽気な声でそう言ってトーナメント表を全員に見せた。

初試合を前に、結構気分も高揚しているようだ。

ちなみにこの大会の参加チームは全部で15。

シードでなかった『FANG GUNNERS』は4回勝てば優勝となる。

その大事な一回戦。

「さぁみんな、気合入れて行こう!」

「おおっ」

真理の激に瑠華だけ無言で頷き、残り4人が元気よく応える。

『FANG GUNNERS』は戦闘モードの格好になってフィールドに踏み込んだ。

で、その戦闘モードの格好というのが例のコスプレ衣装の上に予備マガジンなんかが入ったベストを羽織り、ホルスターを装備してサイドアームをぶち込んでいる状態なわけである。

手には電動ガン。さらにとどめとばかりにフルフェイスのゴーグル。

想像しにくい方の為に説明しておくと、この手のゴーグルは外見的にはスターウォーズのダースベイダーみたいなやつなのである。

まぁ、スコー@、ラ@、ルパ@の格好ならまだましな方だったが、新撰組にフルフェイスゴーグル…。

かなり異様な取り合わせだった。

そして名探偵フルフェイスゴーグル。

もう、駄目である。

さらにはセーラー服にフルフェイスゴ−グル。

これまた一昔前のどこかのドラマのようである。

「う〜ん、『今、セーラー服はフィールドの戦闘服だ!』って感じ。…ねぇ瑠華ちゃん。ヨーヨー持って『おまんら許さんぜよ』とか言ってみない?」

「お前、いくつだ」

淳二のボケに輪が冷静に突っ込む。

「いや、あたしとしてはそこに突っ込めるあんたもどうかと思うけど…」

二人を見て呆れ顔なのは美亜子。

「………?」

瑠華にはよく分からなかったらしい。怪訝そうに眉をひそめただけ。

ともあれ、こんな調子である。

おおよそ試合前の緊張感は感じられない。

ほとんど遊園地のアトラクションの控え室、といった趣き。

「はぁ〜、こんなことになるなら『FANG GUNNERS』の名前を使うんじゃなかったなぁ」

こっそり真理がため息。

これまで凄腕のチームとして名を轟かせていたはずの『FANG GUNNERS』。

だが、今日からはイロモノコスプレチームとして長く人々の記憶に残ることになるだろう…。

真理にとって限りなく不本意だった…。

てなわけで、試合開始前に対戦相手と顔合わせ。

そこでじゃんけんで陣地を決め、また敵味方識別用に「マーカー」(色つきの腕章みたいなもの)を腕に取り付ける。

で、そこでやっぱりというかなんというか『FANG GUNNERS』の異様な格好は相手の失笑を誘っただけだった。

フルフェイスゴーグルをしてしまえばいかに女性陣が美貌だろうと全然わからない。

それどころか、傍目にはただの変なやつら、である。

哀れ『FANG GUNNERS』、敵チームにすっかりなめられてしまった。

とりあえず、南高校の『サザンクロス』は全員迷彩服姿でおそろいのハチマキをしていた。

しかも使っている電動ガンも世界一有名なアサルトライフル、M16シリーズで統一していた。

M16A2
M16A2
この画像の著作権は、株式会社東京マルイが所有しております。

ちゃんと、あ、こいつら同じチームだな、と一目で分かるように工夫しているのだ。

格好から銃からてんでばらばらの『FANG GUNNERS』とは大違いである。

で、そのハチマキには気合の入った文字で『退かぬ媚びぬ省みぬ』とマジックで書いてある。

「………もしや、聖帝三原則?」

首をかしげ、淳二が謎の呟きを漏らす。

ともあれ陣地も決まり、いよいよ試合開始のときが近づいた。

両軍それぞれの陣地に分かれてしばらく待つと、いよいよ試合開始を告げる笛が鳴り響いた。

と、同時に…

「我が部隊“サザンクロス”に構えはない!!」

「構えとは防御の型!!」

「我が部隊にあるのはただ制圧前進のみ!!」

「敵はすべて下郎!! 全軍突撃ぃぃ!!」

威勢良く掛け声を掛け合い、言葉どおりに『サザンクロス』の6人がいっせいに自陣を飛び出し突撃してきた。

つまり、全員アタッカー。作戦も何もあったものではない。

全速力で駆け抜けてフラッグをひたすら目指すだけである。

さて、戦闘フィールドの説明をしておくが、敵味方の陣地間の距離は約200m。

使用できるフィールドの領域は大体250m×80m程度に区切られている。

そしてこの広いフィールドの中央部分は100mにわたって視界の悪い林となっている。

陣地の周辺はひらけていて、旗が立ててある場所の周囲には全部で10個、土嚢を積み上げた高さ1mほどのバリケードが設置されており、ディフェンダーはそれに隠れて敵を迎撃し、攻める側もそのバリケードに身を隠しつつ進撃していく事になる。

もちろん陣地の後ろ側もフィールドなので、見つからないようにこっそり後ろから回り込んで攻めるという選択肢もある。

そんなわけで、フィールドの特性上、当然互いの陣地の様子は見えず、敵がどこから何人で攻めてくるかも分からない。

よってアタッカーは敵に見つからないように攻め、ディフェンダーはなるべく早く敵を発見して迎撃する。

そしてミドルアタッカーは状況に応じてその双方を担当する。

もちろんアタッカー同士が林の中で遭遇すればその場で銃撃戦となるわけだ。

「淳二と先輩は右へ、俺と美亜子で左に回る。散開しつつ、作戦開始から5分経過するまでは各自迎撃モード。その後タイミングを合わせて前線を押し上げる。春樹と明智は防御に専念だ」

「分かったわ」←新撰組

「OK」←ラ@

「はい」←コナ@

「うむ」←セーラー服

「いいぜ、次@」←ルパ@

「…誰が@元だ」

きっちりボケてくる淳二に律儀にツッコミを入れつつ輪がまとめる。

「では、ディフェンシブフォーメーション開始」←スコー@

こうして試合開始と同時に6人が持ち場に素早く移動した。

『FANG GUNNERS』の作戦はオーソドックスな守り重視タイプである。

迎撃体勢を敷いて敵を待ち構え、まずは相手のアタッカーを倒してしまう。

その後、敵の数が減ったところを一気に攻撃するというわけだ。

が、そんな『FANG GUNNERS』の作戦を嘲笑うかのように『サザンクロス』は6人一丸となってこっそり堂々と中央突破をしてきたのである。

最初にそれに気付いたのは輪だった。

(しまった)

心の中で舌打ちすると輪は叫んだ。

「敵は中央突破を狙っている。全員戻れ!」

と、その声を聞いた敵が6人でいっせいに射撃を開始。

大声を上げるという事は、敵に居場所を知られてしまうリスクをはらんでいるのである。

せっかく身を隠していてもこれで台無しである。

「くっ」

輪は慌てて身を低くし、木の陰に隠れてその攻撃をやり過ごす。

いくらなんでも6丁の電動ガンでフルオートによる連射をされては隠れるしかない。

火力は集中して用いるべし、という戦場の鉄則どおりの戦いぶりだ。

そして、その間に6人は輪の防衛ラインをあっさり突破。

本陣めがけて雪崩のように駆け込んでいった。

「むっ」

敵の乱入を見てディフェンダーの瑠華がウージーサブマシンガンで怒涛の連射を開始。

「ヒットっ!」

敵の一人がそう叫んで両手を挙げる。

これが自己申告による“戦死”である。

弾が当たった人間はこれにて御役御免、両手を挙げたままフィールドの外に設置されたセーフティゾーンへと待避し試合終了を待つ事になる。

だが、瑠華の攻撃はその一人を仕留めたのみだった。

残る5人は素早く散開し、バリケードを巧みに使って身を隠しつつ旗を目指して前進。

じりじりと進みながらも瑠華に対して強烈な反撃をしてきた。

5方向からの反撃に瑠華は身を低くしてバリケードに隠れ、やり過ごす他ない。

となれば瑠華からの攻撃はなくなるわけで、5人は自由に移動可能となる。

邪魔なディフェンダーを仕留めてしまおうと敵のうち3人がすかさず瑠華のバリケードの前に回り込もうとしていた。

「ああっ、やばいッ!」

「瑠華ちゃんがやられちまう!」

「おーまい瑠華ちゅわーん(?)」

瑠華目当てのギャラリーが悲鳴を上げる。

まさに絶体絶命。

瑠華ちゅわーんぴ〜んち(?)。

と、その時。

パチン。

「なっ?!」

突如敵の一人が驚きの声を上げた。

弾が飛んできた旗の方を見やるとそこから伸びるスナイパーライフルの銃身。

「くそっ、ヒット!」

そう宣言して両手を挙げてフィールドを去る。

その間にも…

「畜生、ヒット!!」

「なんてこったっ。・・・ヒットだ!」

バリケードを出て瑠華に向かってダッシュしていた二人が立て続けに狙撃を受けて戦列を去る。

まさに百発百中。見事な春樹の命中率だった。

観客席から遠巻きに見ていたギャラリーも驚嘆。

「た、助かったぁ〜」

「やるなぁ、あの半ズボン」

…哀れ春樹、半ズボン呼ばわりであった。

しかも、その声はしっかりと春樹の耳に届いていた。

(あう)

ちょっとショック。

ともあれ、これで残る敵は二人になってしまった。

「なんだぁ、敵のスナイパーか?」

「まだ、30mはあるのに…」

あっさりと残り二人の戦意が挫けた。

一方の瑠華、春樹の鮮やかな腕前を目の前で見せられ、ちょっと感動。

ゲームとは言え自分のピンチを救ってもらったわけで…。

「明智さん、これで大丈夫。相手の足を止めて」

「わかった」

気を取り直した春樹からの檄に瑠華はめずらしく微笑して応じた。…フルフェイスゴーグルのせいでその笑顔は誰にも見えなかったが。

ともあれ敵の数が減れば攻撃を集中できる、というわけで瑠華も復活しサブマシンガンで敵を牽制。

こうなると『サザンクロス』の生き残り二人も慎重にならざるを得ない。

なるべく春樹に見つからないように、そして瑠華の牽制の弾に当たらないように身を低くしてバリケード越しにゆるゆると移動。

当初予定した中央突破による速攻は、6人全員で一斉に攻めて敵の防御力を分散させ、一人でも良いから旗にたどり着く、というのが本来の狙いである。

いわば短期決戦狙いの作戦なのだ。

だが、攻撃側はバリケードに釘付けにされ、今や攻撃側と防御側の人数が同じになってしまっていた。数の優位が崩れているのだ。

さらに、この段階でようやく林の中から真理が登場。

春樹に対してバリケードで防御していても、反対側から攻められたら丸見えである。

「よし、よく持ちこたえた」

両手を挙げてすごすご退散していく4人の“戦死者”を見て、真理は素早く現状を把握。

こうなったらもはや勝利は見えたも同然である。

真理は隠れている敵めがけ、二挺サブマシンガンを構えて乱射しながら突撃した。

これまた映画のワンシーンのようである。

「ヒット!」

「くそ、負けたぁ。ヒットぉ!」

二挺サブマシンガンの火力の前に敵はあっさりと全滅。

「おおーっ、あのねぇちゃんもなかなかやるなぁ」

「いや〜、このチーム結構いいかも」

ギャラリーも真理の勇姿に満足したようだ。

その真理、早速瑠華の元に駆け寄った。

「よく持ちこたえたな」

ゴーグルを脱ぎつつ笑顔でねぎらう。

「いや、私は一人仕留めただけだ。後はすべて伊達が」

こちらもゴーグルを脱ぎ、髪をさらりとかき上げつつ、瑠華が応じた。

ちなみにその姿に再びギャラリーからKOされるものが続出したが、そんな事を瑠華が知るはずもなく…。

「ん、そうか。結構すごいだろ? 春樹の腕は」

ぱちっと片目をつぶり、瑠華にだけ聞こえるように真理が耳打ちする。

なぜかその声は我が事のように自慢げだった。

「ああ、認識を新たにした」

至極まじめに瑠華はそう応えた。

ちなみに認識を改めたのは瑠華だけではなかった。

ギャラリーの多くも、たった3人で敵を片づけてしまった『FANG GUNNERS』のことを見直した。

単なるイロモノコスプレチームかと思ったが、意外に実力も備わっていたことが分かったためである。

もちろん、さらに詳しいベテランゲーマーにしてみれば、『FANG GUNNERS』の武名を知っていたからこれくらいは当然といったところ。

コスプレしたのも高い実力があればこその余裕、と思っている。

てなわけで、少々遅れて試合終了の笛の音がフィールドに響き、全く活躍できなかった美亜子と淳二が憮然とした表情で戻ってきた。

「なに〜? もう終わり? 雑魚じゃん」

と、不満たらたらに美亜子が言うと淳二が謎の返答。

「雑魚故に人は苦しまねばならん、雑魚故に人は悲しまねばならん、って感じだな」

「はぁ?」

「国民よ、敢えて言おう、カスであると!」

「…何を言ってるのかは分からないけど、あんたがボケをかましてるらしいって事は分かるわ」

というわけで、『サザンクロス』の全滅により『FANG GUNNERS』一回戦突破。

ちなみに現在の撃墜数。

伊達春樹:3

片倉真理:2

明智瑠華:1

である。

快勝した『FANG GUNNERS』は二回戦の対戦相手の偵察の為、次の試合を見物することにした。

ギャラリー席にてとりあえず6人座れそうなスペースを見つけると、順番に座っていった。

このときの位置関係もなかなか興味深い。(←誰に対してどう興味深いのか良くわからないが…)

まず先頭を歩いていた真理が端に座り、当然その隣には春樹が配置される。

で、瑠華が無言のまま春樹の横に腰を下ろし、瑠華に対しても特に抵抗なく接することが出来る淳二がその隣。

そして淳二の隣には美亜子が座り、最後に輪である。

そんな順番で、彼らは観戦に勤しんだ。

さて、一回戦第二試合は西部高校の『ザ・ガンマン』VS鳥府高校の『陸自だよ全員集合』

『陸自だよ』はごく普通に迷彩服姿に電動ガン。

どうやら陸上自衛隊の装備のコスプレ(?)らしい。

「へぇ、全員ちゃんと六四式小銃だね、しかもホルスターには9mm拳銃だ。結構凝ってるなぁ。すごいすごい」

感心したように真理が解説するが、どの辺がどうすごいのか、他の5人には良く分からなかった。

対する西部高校の『ザ・ガンマン』はその名の通り全員が西部劇に出てくるような“ガンマン”姿。

当然武器は腰のホルスターに携帯しているリボルバーのみ。

しかもちゃんと西部劇でおなじみのコルトS.A.A.(シングルアクションアーミー)、通称“ピースメーカー”である。

これはこれで凄いポリシーのあるチームらしい。

どちらも相当こだわりのあるチーム同士の戦い。

激戦が予想された。


で、結論から言ってしまおう。

勝ったのは『ザ・ガンマン』だった。

というのも試合開始前『ザ・ガンマン』のほうが『陸自だよ全員集合』を挑発したのである。

つまり、電動ガンとリボルバーで戦って勝ったところで嬉しくないだろう、どうせならハンドガンオンリーで勝負しないか? と言うわけだ。

で、『陸自だよ全員集合』は「おお、いいっす」と快諾。

しかし、やってみたら「駄目だこりゃ」だったわけである。

「どうする? 俺たちとの勝負のときもああやってハンドガン戦を挑んでくると思うが 」

試合を見てから輪がそう全員に聞いた。

「とーぜん、受けてたつに決まってるでしょ?」

即答したのが隣に座っている美亜子。

「で、でも、相手はハンドガン戦のプロみたいなものだよ。まだ経験の浅い僕らじゃちょっと厳しいと思うけど」

冷静に分析してそう反対したのが春樹だった。

経験者、かく語りき。

「俺もそう思う。わざわざ相手の得意な土俵で戦う必要もないだろう。敵よりも優れた武器を手にするのも重要な戦略だ。それを自ら放棄することもあるまい」

軍師、かく語りき。

「そうだな。あいつらに負けないくらいの早撃ちが出来ればいいんだけどね。あたしらじゃ無理だろうね」

真理がそうまとめ、結局チームとしては相手の誘いを蹴る、ということで話は決着した。

だが、あの美亜子が黙っているはずがないということを、彼らは程なく知ることになる。


「勇武が智謀を越えている将軍は無茶をする。反対に、智謀に比して勇武に欠ける将軍は、考えを実現できない」
ナポレオン


◇二回戦◇


白楊高校『FANG GUNNERS』VS西部高校『ザ・ガンマン』

で、両軍で顔をあわせたときにやっぱり来た。

リーダーと思しき、黒のテンガロンハットに星型のバッチ、つまり保安官の格好をしたガンマン。

「どうだ? 電動ガンで…」

彼は最後まで言えなかった。

「受けてたつわっ! ただし、あたし一人で!」

「おおおおーっ」

会場全体がざわめいた。

「お、おい、美亜子…」

さすがの輪もこれには絶句。

「いい? 西部劇でよくやってるみたいに背中合わせから10歩歩いて撃ちあうやつ。あれであたしと勝負よ」

美亜子は勝手に話を進めていく。

この逆挑戦状に『ザ・ガンマン』はおおいに燃えていた。

「よしっ、いいだろう」

こうしてサバイバルゲームから一転、いきなり西部劇になってしまった。

そして試合開始。

美亜子が悠然と待っているとやがて林の中からガンマンが六人。

「さぁ、まずは誰から?」

「オレだ。ビリー・ザ・キッド。天国に行く前に、この名を覚えておけ」

…すっかりなりきっている。

「ふ…、今宵のサムライエッジは血に飢えているわ」

……美亜子もだった。

(やれやれ…)

それを聞いた輪、こっそりため息。

そして両者背中合わせに立つ。

「いくぞ」

自称ビリー・ザ・キッドの合図でカウントスタート。

「1,2,3,4,5…」

カウントとあわせて一歩ずつ歩く。

「6,7,8,9…」

緊張が高まる。

「10っ」

言いながら自称ビリー・ザ・キッドが振り返る。

そして右手を伸ばし、ホルスターからリボルバーを抜…けなかった。

抜こうとしたときには心臓の位置に美亜子の撃ったBB弾が直撃していた。

「…嘘だろ?」

「遅いわねぇ」

にやり。

美亜子の勝ち誇った顔を見、自称ビリー・ザ・キッドはがっくりうなだれて両手を挙げた。

「ヒット…」

『ザ・ガンマン』もこれにはびっくり。

「なんで懐から銃を取り出すほうが速いんだよ」

絶句する一同。

「さ、次は誰?」

…もちろん二人目、三人目、四人目とすべて同じ運命をたどった。

「なるほど、スリッパを取り出す動作と似たようなもんだからなぁ、速いわけだ」

淳二はそう言って納得顔である。

こんなものを見せ付けられては、もはや輪たちには美亜子に文句を言う気力はなかった。

呆れてしまうほどの反射神経だ。

そして五人目。

「ワイルド・ビル・ヒコックだ」

と名乗ったガンマン。

とりあえずこれまでのやつらとは一味違いそうな雰囲気をかもし出している。

で、実際。

「10」

カウントと同時に美亜子は素早く振り向き、同時に右手が懐に伸びる。

そしてサムライエッジを取り出したときに事件はおきた。

そう、なにかの拍子にセーフティレバーがかかってしまったのである。

引き金を引いても弾は出ない。

その一瞬の差がすべてだった。

自称ワイルド・ビル・ヒコックは素早くリボルバーを抜き、即座に撃った。

二人の距離、およそ12m。

自称ワイルド・ビル・ヒコック、見事な腕前だった。

狙い過たず、推定速度秒速60mで発射されたBB弾は0.2秒後に美亜子の心臓、があった場所をむなしく通過した。

「嘘…だろ」

そう、美亜子は避けたのだ。

とっさに上半身をひねって直撃コースだったBB弾をかわしていた。

そしてセーフティレバーを解除すると、即座に発砲。

自称ワイルド・ビル・ヒコックを仕留めたのだった。

「…化け物め」←輪

「マトリックスだなこりゃ」←淳二

「…マジ?」←真理

「嘘みたい」←春樹

「………(内心びっくり)」←瑠華

と、味方すら驚愕させこれで五勝目。

最後の相手となったのが

「ワイアット・アープ。このチームのリーダーだ」

であった。

このとき自称ワイアット・アープの胸中にはひとつの秘策があった。

これまでの戦いで、美亜子が必ず時計回りに振り返っていたことを彼は見抜いていた。

というわけで…

「1,2,3,4…」

カウントとあわせて彼は徐々に右に歩いていく。

「5,6,7,8…」

そして美亜子の向いた方向を0度とすると彼は大体100度方向を向いていた。

これだと美亜子がいつものように振り返っても彼の姿はそこにはない。

彼はもっと右にいるのだ。

「9」のカウントと同時に彼はまるでスピードスケート選手のスタートを思わせるような格好で、腰を沈めた。

「10」

そして彼は思いっきり跳んだ。

身体をひねりつつ右に横っ飛び。

空中でリボルバーを抜き、そのまま撃った。

一発二発三発。

驚くべき技量だった。

地面に倒れこむまでに3回も発砲。

一方の美亜子、見事に作戦に引っかかっていた。

一瞬敵を見失った美亜子が横っ飛びしている自称ワイアット・アープに気付いたとき、すでにその銃口がこちらを向いていた。

その人間離れした反射神経が、無意識のうちに美亜子に回避行動をとらせる。

と同時に右手は懐のサムライエッジをしっかりと掴んでいる。

そして自称ワイアット・アープのピースメーカーから3発のBB弾が発射された。

そのとき、美亜子の身体は回避行動のさなかで、左に素早くステップしているところだった。

一発目、二発目は避けている。

だが三発目が命中コースだった。

もはや避けることは不可能。

その時、美亜子の右手が閃いた。

カチン!

プラスチックのぶつかり合う音。

ギャラリーの中で何が起きたのかを把握できたのは輪と淳二だけだった。

そう、美亜子はサムライエッジでBB弾をはじき返したのであった。

そして返す刀で倒れた自称ワイアット・アープに発砲。

見事命中させていた。

「ふふん♪」

美亜子、勝利の笑み。

サムライエッジをくるくると回して懐にねじ込んだ。

その姿が妙に板についている。意外にこっそりと練習したのかもしれない。

「駄目だったか……」

自称ワイアット・アープ、がっくりとうなだれた。

これにて勝負あり、…に思われた。

しかし、勝ち誇る美亜子の前に輪が進み出てきた。

そしてこう言った。

「美亜子、お前の負けだ」

途端に美亜子の顔がこわばる。

「へっ? な、どうして?」

「お前、それでBB弾を弾き飛ばしたろ?」

「そうよ」

美亜子は力いっぱい頷いた。

「あっ…、そっか」

春樹が事態に気付いたらしい。

「そういうことだ。ルールをよく読んでおけ。このゲームでは相手の弾が武器に当たっても『ヒット』なんだ」

「武器に当たっても?」

一瞬怪訝な顔をした美亜子だったが、すぐに事態を呑み込めたらしい。

「どゆこと?」

淳二はわかっていなかった。

説明したのは春樹。

「えと、本多さん、サイドアームで相手の弾をガードしたみたいなんです」

「だな、オレ見てたもん」

「はい、でもこの大会のルールだと武器に弾が当たっても『ヒット』扱いになるから、その時点で本多さんの負けなんです」

「なんとっ!」

全員の視線が美亜子に集中する。

「ちぇ、あたしとしたことが…」

悔しそうに舌打ちして、美亜子は両手を挙げた。

「ヒット…」

つまりそういうこと。

サバイバルゲームとは『ルールとマナーのスポーツ』なのである。

弾が当たったってことはほとんどの場合本人にしか分からない。

だから当たっても知らない振りして黙っていることは出来る。(これを通称ゾンビという)

だが、それでは“スポーツ”が成り立たない。

あくまでサバイバルゲームはきちんとした“ルール”にのっとったスポーツなのだ。

一番大事なのはプレイヤーのマナーなのである。

大会前にそう春樹に力説されていた美亜子は一番大事な『マナー』に従い、素直に「ヒット」コールをした、というわけである。

夢の6人抜きは達成されなかった。

とはいえ両手を挙げてセーフティゾーン(ヒットされた人の集合場所)に向かう美亜子は正々堂々の真剣勝負を戦った満足感で、実にいい笑顔だった。

それが分かるからだろう。

セーフティゾーンにいた『ザ・ガンマン』の5人が拍手で美亜子を迎えた。

「素晴らしかったよ。君にはカラミティ・ジェーンの称号を贈ろう」

それは彼らにとって最大限の賛辞であった。

どうやら褒められているらしいという事が分かったのだろう、それを聞いた美亜子はにっこり笑ってからこう言った。

「誰それ?」

5人がずっこけたのは言うまでもない。


そしてそんな美亜子の負けっぷりに、自称ワイアット・アープも“漢”をくすぐられたらしい。

「試合には勝ったが勝負じゃ負けていた。お前らの勝ちだ。さ、撃ってくれ」

そう言って立ち上がると潔く両手を挙げた。

「え、でも…」

お人好し大王伊達春樹、やっぱり躊躇。

「いいんだ。楽しかったぜぇ」

そう言ってにやりと笑ってみせる。

“漢”がそこにいた。

「う、うん。じゃ…」

ためらいつつ、春樹がベレッタを構える。

そして自称ワイアット・アープが末期のセリフを呟いた。

痛くしちゃ、や〜よ☆


怒涛の乱射が彼に向かって炸裂したのは言うまでもない。


ともあれ、これにてベスト4進出である。

ちなみに現在の撃墜数。

本多美亜子:5

伊達春樹:3

片倉真理:2

明智瑠華:1

直江輪:1(真っ先に自称ワイアット・アープを撃っていた)

である。



「たとえ慎重に行動すれば多くの利点があると見積もられても、直ちに行動することが最も重要である。迅速は敵の百の手段を未然に防止する」
クラウゼヴィッツ


◇準決勝◇


『FANG GUNNERS』の次なる対戦相手はわざわざ室蘭から参加の『室蘭ボー』ってチーム。

で、これがまた脳みそまで筋肉じゃないかってくらいのムキムキのむさ苦しいのが6人、そろっておなじみの格好である。

使用している電動ガンも、M16A1ベトナムバージョンでそろえてある。

M16A1ベトナムバージョン
M16A1ベトナムバージョン
この画像の著作権は、株式会社東京マルイが所有しております。

このチーム、1回戦、2回戦とほとんど無傷で勝ち上がっていた。

かなりの強豪らしい。

で、2回戦でのそいつらの戦いぶりを見ていた『FANG GUNNERS』、現在作戦会議中である。

早速経験豊富な真理が口火を切った。

「よし聞いて。次の対戦相手、多分かなりの経験者だ。特にゲリラ戦が強い。それに比べておまえらその格好だし、多分林の中で戦ったら勝ち目はないよ」

そう言われて全員自分の格好を見た。

いかにも林に溶け込みそうな相手の格好に比べ、セーラー服や新撰組、派手なスーツのルパ@にコナ@では明らかに目立ち過ぎである。

相手に見つからず、相手を先に見つける、というのが林の中での戦いの鉄則である。

敵を先に発見することはほとんど勝利と等価なのである。

さすがに準決勝の相手ともなれば、こんなイロモノコスプレスタイルでは明らかに不利、というわけだ。

「じゃあどうするの?」

新撰組から質問が飛ぶ。

「今回は速攻で行く。開始と同時に全速力で林を突破して相手の陣地に行き旗を奪う作戦がいい。今回はあたしと春樹もアタッカーをやる」

「なるほど、敵を全滅させて勝利するのではなく、旗を奪っての戦術的勝利を狙うわけか」

軍師輪君、深く頷く。

確かにその作戦ならば、相手の実力が発揮される前に勝つことが可能になるだろう。

納得した輪は真理の考えを補足するように語りだした。

「俺の見たところでは相手は個人レベルでのゲリラ戦法にこだわってるように思えた。チームではなく単独で戦っているんだ。撃墜数を競っているのかもしれない。ということは、必然的に敵は林の中に広く散開して進むことになる。そこをこちらは戦力を一点に集中させ、速攻による中央突破で一気に敵陣に攻め込む。一回戦で敵にやられた戦法を、今度はこっちが見せてやろう」

「よしよし、よく分かってるじゃないか、色男」

「………」

その言葉に輪が絶句する。

思わず吹き出す美亜子と淳二。

真理はかまわず続けた。

「さて、この作戦の成功率を上げるために、ちょっと手を打とう。幸いにもこちらにはBB弾をかわす化け物がいることだし」

そう言って真理は美亜子を見て笑う。

「てことはあたしが囮になって先行するのね?」

「察しがよくて結構」


というわけで今回は変則的な作戦で行く事になった。

美亜子が先行し、真理と春樹、輪、淳二がそのあとに続く。

ちなみにセーラー服の瑠華はディフェンスである。

そんな作戦会議の後にいよいよ準決勝開始の時間。

で、『室蘭ボー』は試合前、頼まれもしないのに勝手に自己紹介を始めた。

とりあえず、はちまきの色が違うのが目印らしい。

自分を指差し、アサルトライフルをちゃきっと構えて物真似(?)して名乗る。

「赤ランボ〜」

「青ランボ〜」

「黄ランボ〜」

「白ランボ〜」

「黒ランボ〜」

「エイドリア〜〜ン!!」

どがどがどがどがどが。

最後のランボ〜(紫)がボケをかますと5人が一斉にツッコミを入れた。

さすがの『FANG GUNNERS』もこれには言葉を失った。

いきなり相手の度肝を抜いて戦意を喪失されるという意味では、これはこれでいい作戦かもしれない。

輪はそんなことを考えており。

どこにでも似たようなやつはいるものね。

美亜子は淳二と紫ランボ〜を見比べてため息。

ま、負けた…。

なぜかうちひしがれている淳二。

うわ、痛そう…。

渾身のツッコミでボコボコになった紫ランボ〜を見て春樹が眉をひそめる。

くっ…、うぷっ、くくっ…。

なぜかツボに入ったらしく必死で笑いをこらえている真理。ちなみに笑い上戸である。

………?

瑠華にはよく分からなかったらしい。

そんな感じで試合前の顔合わせも終わり、両チームが自陣に入り試合開始。

開始直後さっそく美亜子を先頭に瑠華を除く5人が飛び出した。

ダッシュして林の中へと消えていく。

先頭を行く美亜子から15mほど離れて4人がひた走る。

そして敵と遭遇しないまま、フィールドのほぼ中央に到達。

(そろそろ危険地帯ね)

ぺろりと唇をなめると美亜子はセンサーを解き放った。

五感のすべてをフル動員し、どんな些細な動きも見逃さず、どんな小さな物音も聞き逃さないようにしつつ、身を低くしてダッシュ。

もちろん走りつつも足音を立てないように細心の注意を払っている。

と、美亜子の“ニュータイプ能力”が危険信号を発した。

(来るっ!)

とっさに美亜子は左に大きくステップ。

その瞬間、美亜子がいた場所にBB弾がフルオートで撃ちこまれた。

毎秒10発の連射による攻撃。

美亜子はすんでのところでなんとか木の陰に隠れることに成功した。

そして後続の4人に敵の位置を指し示す。

「よし、あたしと春樹で足を止める、お前らは全力で駆け抜けろ」

「はい」

「了解だ」

「任せたぜ、ふ〜じ@ちゃん」

「誰がさ」

淳二のボケにきっちり突っ込むと、真理は走りながら二挺のMP5K A4をフルオートで撃ち始めた。

ばばばばばばばばばばばばばば…。

とっさに美亜子もそれを援護。

CAR−15が初めて戦闘に参加した瞬間だった。

(あいつ、いいセンスしてるな)

それを見て真理が微笑んだ。

合計3つの銃口から雨あられと敵に向かってBB弾が発射される。

さすがのらんぼ〜(青だった)も身を隠す。

その隙に輪と淳二、そして美亜子があっという間にその場を駆け抜ける。

真理は撃ちっぱなしで相手を牽制。

春樹は立ち止まり隙を狙う。

やがて真理のMP5K A4の発する音が変わった。

弾切れである。

チャンスと見た青らんぼ〜が木の陰から顔をのぞかせた瞬間。

パァン。

春樹のスナイパーライフルから発射されたBB弾が見事にゴーグルに命中していた。

これこそ、春樹と真理の必殺の連係プレーであった。

春樹のバックアップがあるからこそ、真理は遠慮なく全弾撃ちつくせるのだ。

「…ひ、ヒット」

青らんぼ〜が手を上げたときにはもう真理と春樹は駆け出していた。

そして、春樹は林の出口に止まり、敵が慌てて舞い戻ってくるのを防ぐ構え。

いわば敵の逆撃を一人で食い止めようというわけである。

その時には先行する3人は林を抜けていた。

視界が開ける。

敵のディフェンダーは1人。例のエイドリアン…、じゃなくて紫らんぼ〜。

「やばい、みんな戻れぇぇぇぇぇ!!!」

大声で叫びつつ、3人めがけてフルオートで乱射。

「散開っ」

全力で走りながら、輪が叫ぶ。

後続の淳二と美亜子、3人がそれぞれ別の方向へと走り出す。

そして走りながらも紫らんぼ〜に対してフルオートで連射。

たとえば淳二のP−90の装弾数は68発。

連射速度は700〜850発/分である。

つまり、フルオートで連射しても6秒は撃ち続けられるのだ。

そして6秒もあれば50m近い距離を移動可能だ。

輪、美亜子、淳二の3人は遠慮なく撃ちまくり、走り抜けた。

さすがに全速力で走っていては命中精度は無いに等しい。

だが、一応牽制にはなる。

結局紫らんぼ〜はバリケードに身を隠した状態のまま、迎撃することを余儀なくされた。

だが、そこからがすごかった。

まず輪がヒットされ、次いでさすがの美亜子も毎秒10発の連射をよけられるはずも無く、ヒット。

だが、この間に淳二が紫らんぼ〜の背後に回っており、すかさず旗を目指して駆け抜けた。

慌てて紫らんぼ〜が淳二を撃とうと振り向く。

だが、その時には真理と春樹も戦場に到達。

完全に二人に背を向ける格好で紫らんぼ〜が淳二を撃つ。

「うにょあぁぁ〜」

淳二は粘った。

紫らんぼ〜、連射するもののなかなか当たらない。

が、奇声を上げて旗に迫っていた淳二もそのわずか5m手前でついに紫らんぼ〜の銃弾の前に力尽きた。

結局全力で走っていた輪、美亜子、淳二のすべてをしとめたわけで、紫らんぼ〜個人の能力は相当高いことが証明された。

だが、あと一人いた。

「フリーズ!」

真後ろからかけられた真理の声に紫らんぼ〜の動きが止まる。

完全に相手の背後に近づき、いつでも仕留められるぞ、という場合、攻撃側は「フリーズ」と言えばよい。

事実上のヒットであり、これは単に至近距離から撃ったらいくらBB弾でも痛いだろうという温情からの暗黙のルールなのである。

紫らんぼ〜はやがてゆっくりと両手を挙げた。

(ふぅ、マナーのいいやつで助かった)

真理はほっと胸をなでおろした。

なにせ真理のMP5K A4は両方弾切れ状態だった。

はったりもまた戦法のひとつである。

こうして敵の防御を無力化した『FANG GUNNERS』は見事敵陣の旗に到達、無事勝利を収めたのであった。

ちなみに、春樹は舞い戻ってきた赤、白、黒の3らんぼ〜を仕留めており、また一歩撃墜王の座に近づいていた。

『FANG GUNNERS』これにて決勝進出。

ちなみに現在の撃墜数。

伊達春樹:7

本多美亜子:5

片倉真理:2+(旗)

明智瑠華:1

直江輪:1

である。


次回、いよいよ決勝戦! 彼らは無事優勝できるのか?

それではなつめさん、予告をどうぞ!



次回予告

「念願の決勝。だがそこで少年たちの前に新たなる強敵が姿を現す。
向き合う敵の正体は見えず、砲火は再び悲劇と悪夢を呼ぶ。
表彰台で再会する少女が運命にもたらすものは。
忍び寄る悪の影に、トリガーを引くわけをいま改めて6人は知る。
次回五行戦隊センゴクマン「センゴクマン乱射」

迫り来る脅威を、笑い飛ばせ『FANG GUNNERS』 」




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