陰陽五行戦記おまけ劇場

五行戦隊センゴクマン!

第十三話半

「センゴクマン競走」

事前に、

★『おおまかなこまかな』その1★

★『おおまかなこまかな』その2★

を読んでから、この先をお読みください。


◇『おおまかなこまかな』その3◇


ここは函館山をくりぬいて作られているセンゴクマンの秘密基地。

いつもと変らず、今日もサポートロボのマカナちゃんは、にこにことゴキゲンな様子。

気分転換のためか、作戦司令室から出てきた晴明長官に、またこんなことを言った。

「晴明さま、『センゴクちゃりんこ愛馬君』の改造が全て終了しました〜」

「そうか、ではセンゴクマンの5人を呼んでくれ」

「はいですぅ」


「まかな♪まかな♪まかな〜♪」

センゴクマンのメンバーに緊急招集がかかった。

何事かと集まってきた5人に、晴明長官じきじきに説明があった。

「集まってもらったのは他でもない。『センゴクちゃりんこ愛馬君』に大改造を施した。5台それぞれのアプローチで乗り手にあわせたチューニングをしてある。これを乗りこなせば、以前不覚を取った峠の走り屋怪人などを相手にしても、十分勝てるだろう」

「…ほう」

「いいわねぇ」

「おお−っ」

「まぁ…」

「すごいですね」

5人はそれぞれの表情で、感嘆する。

「順番に説明しよう。まず、『センゴクちゃりんこ愛馬君一号』だが…」

「にょわっ、どんな風になったの〜」

淳二が目を輝かせる。

「センゴクレッドは“火”の戦士。“火”の力を生かすべく、ジェットエンジンをマシン後部に装着した。小マカナレッドに命じれば、たちどころに想像を絶する加速をするようになる。ストレートで威力を発揮するチューニングだ」

「おおおーーーっ、すごいっす。了解なり〜」

淳二は無邪気にはしゃいだ。


で、次々とマシンの説明がなされた。

輪のマシンは“水”の力で、ホイールに小型の水素ロータリーエンジン搭載。

ってか、ほとんどそれではバイクと変わらない気がするのは何故だろう。

ともかく、排気ガスの代わりに水しか出さないので非常にクリーンだ。

また、水素ボンベ一本で100kmほどの走行が可能。

美亜子のマシンは“金”の力を発揮すべく、形状記憶合金製のシャシーに改造されている。

リアウィングが出現し、高速モードにゲッターチェンジ(?)できるという優れものだ。

ちなみに変形には何種類かあるので、高速モードのほかにも状況に応じてさまざまな形態を取れるのだ。

春樹のマシンには風の力を生かすべく、前後輪の両脇に、全部で4つの強力なファンが装着された。

この4つのファンで加速減速を行えるし、揚力を得たりダウンフォースを発生させたりと、使い方は色々。

春樹と同様、無限の可能性を秘めている…。が、生かしきれるかどうかは、また別問題。

広奈様には“土”の力で、ホイール内部に超電導モーターを組み込んだ。

いわゆるリニアホイールである。走行音は静かなること林の如しなのに、疾きこと風の如し。

エレガントに速い、広奈様にぴったりのチューニングだ。


「というわけで、小マカナもそれぞれチューニング内容に合わせてソフトの内部を書き換えてある。うまく小マカナと協力すればさらに戦闘力が発揮できるだろう」

晴明長官は、自信満々にそうまとめた。

「いやーっ、こいつは早く乗ってみたいぜ」

大はしゃぎの淳二だったが、彼の希望は一瞬でかなえられた。

「では、早速だが、5人でレースをしてもらう。実戦形式で競ってこそ、すぐに乗りこなせるようになるだろう。また、これで今後の開発に向け、貴重なデータを取れる」

晴明長官にいきなり言われて、春樹なんかは、若干戸惑いを見せた。

「え、でも危ないんじゃ…」

「危険は承知の上だ。なお、各自が手を抜かないように、優勝特典を用意した。このレースの優勝者には、センゴクマンのリーダーの座を約束しよう」

「えええーっ、リーダーは正義の赤じゃなかったの?」

これまで自分がリーダーだと言い張ってきた淳二、大ピンチである。

「リーダーの座は実力で掴み取るものだ」

「うにゅぅぅ…」

晴明長官にそう言われ、淳二は沈黙。

(頑張ってみようかな、僕だって、やれば出来るって証明してみせる)

春樹も、なかなかやる気になっているし、

(ふっふっふ、やはりここは俺こそが真のリーダーだと分からせるチャンスだな)

輪君も、静かに野望を燃やしている。

(面白そうですわね。皆さんがどういう走りをするのか、楽しみですわ)

広奈様は、まったりと構えており、

(あたしが勝つ!)

勝負事の常で、美亜子はめらめら燃えていた。

こうして、5人それぞれの思惑が交差し、レースが幕を開けた。



◇ダウンヒルバトル、開始◇


時刻は夜。場所は道南屈指の難コース、紺谷ヶ峠。

普段は走り屋でにぎわっているポイントだが、晴明長官の術で、人払いされたため、今夜は人っ子一人いない。

まさに、彼らのためだけの、スペシャルステージなのだ。

その頂上付近、サバゲーフィールドに程近い駐車場前ストレート。そこをスターティンググリッドとして、5人が一列に並んでスタートのときを待っていた。

峠を駆け下りて、ふもと付近の300mストレートの先がゴール地点。

そこに、一番先に到着した者がこのレースの勝者となる。

5人が固唾を飲んでハンドルを握り締める中、カウントダウンがスタート。

5、4、3、2、1

GO!

シグナルが、グリーンに変わった瞬間。

「行くぜ小マカナ」

「はいですぅ」

真っ先に切り札を出したのは、淳二だった。

千載一遇前代未聞先手必勝スタートダッシュ!!

「じぇっと点火ですぅ」

ドゴヒャァァァァァ!!

後輪の両脇に備え付けられた2つのジェットエンジンが爆音を上げ、派手なアフターバーナーが後ろに伸びる。

まさに“火”の戦士に相応しい切り札。

そして淳二は猛烈な加速を見せ、あっという間に先頭に躍り出た。

F1マシンと比較してもそん色ないほどの物凄いダッシュ。

ってか、信じられない自転車である。

「うはははは、楽勝♪ って、うにょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ…!?」

淳二の勝どき、というか途中から悲鳴に変わった気がするが、とにかく彼の声はドップラー効果で不気味に低くなっていく。

「なっ、なんて速さだ」

あっという間に差をつけられ、輪君が呆然と呟く。

「なによあれ」

いきなりの先行逃げ切り体勢に、美亜子も焦りの色を隠せない。

見る見るうちに淳二の姿が遠く離れていく。

なお、ジェットエンジンが付いていても、一応は自転車。

速度が上がるに従って、淳二にかかる風圧、空気抵抗は途轍もないものになってきた。

「はにゅぅぅぅ…、緊急避難ですぅ」

時速が200キロを超えたところで、小マカナれっどは自分の身を守るため、畳の下の地下シェルター(?)に隠れてしまった。

「ぐにょぁぁぁっ、がはっ」

もはや口を開けていたら息ができない。

すでに淳二は生きた心地がしない。

視界は細く、狭くなり、景色はあっという間に後ろに流れていく。

だから、どうやって止まるのか、という大命題すら、彼の脳裏には思い浮かばなかった。

もはや自転車から振り落とされないよう、必死にハンドルを握り締めるだけ。

で、ついにそのときが来た。

淳二自身の空気抵抗のせいで前輪が上がってしまったのだ。

もうウィリーさ。

そしたら、当然、ジェットエンジンの推力は斜め上方向に。

で、飛んだ。

99年ルマン、メルセデスのP・ダンブレックもびっくりである。

そのままジェットエンジンの推力の赴くまま、淳二は空高く、そのまま大気圏を突破しそうな勢いでぐんぐん高度を上げていく。

「ぎょぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ」

長く尾を引いて、淳二の悲鳴が山中に響き渡った。


それを後方から見ていた広奈様のコメント。

「まぁ…」


ナレーション:「さらばセンゴクレッド。君の雄姿を僕たちは忘れない。そしてありがとうセンゴクレッド…」


さて、淳二が早々に戦線離脱したものの、バトルは続行している。

輪、美亜子、広奈は横並び。そして意外や意外、トップには伊達春樹がつけていた。

「小マカナ、フィンを加速モードに」

「はいですぅ」

風の力を味方につけること、それはレーシングカーのデザインにおいても最も大切なこと。

すなわち、速く走るマシンには風と対話し、風を操る春樹の能力が一番相性がいいのだ。

ついでに言えば、春樹の背後には猛烈な逆風が吹くため、後続のマシンはどうしてもスピードが落ちる。

先行逃げ切りが絶対有利な競艇のような状況である。

順調に逃げる春樹、コーナーが迫ると、

「減速モード」

「はいですぅ」

フィンの向きが180度変わり、マシンに急制動をかける。

コーナーへの侵入、春樹は切り札を出した。

「小マカナ、リフティングターンだ」

「はいですぅ」

前輪に荷重がかかったところで前輪のフィンがダウンフォースを、後輪のフィンが揚力を発生させる。

そしてハンドルを切るとどうなるか。

マシン後部の荷重が抜け、リアタイアがスライド。

リアがスライドしたら、ハンドルでカウンターをあて、今度は前輪のフィンを加速モードに。

そうすると、まるでWRCカーの4輪ドリフトのようにしてコーナーの内側を向いたまま、春樹のマシンが猛スピードでのコーナリングをするではないか。

無論、小マカナが細かな挙動をフィンで調整してくれているからこその芸当だ。

春樹と小マカナぶるー、友情のツープラトン、ウルトラCである。

「まぁ、春樹さん素敵」

広奈様、思わず見とれる。

いいぞ春樹、今のはポイント高いぞ。

「くっ、春樹のやつ、いつの間にあんな芸当を…」

懸命に追う輪君だが、中速コーナーではどうしても離されてしまう。

「まぁいい、小マカナ、こちらの切り札を出すにはまだ早い。中盤の低速ヘアピンで勝負をかけるぞ」

「はいですぅ」

最初のコーナーを抜けたところで、春樹は依然として首位。

「よし、勝てる。僕だって頑張れば勝てるんだ!」

4つのフィンを活用し、春樹が加速体勢に入る。

だが、早くも後続の3人は学習していた。

春樹の真後ろにいれば、確かに風の抵抗を受けるが、斜め後方、気流の巻き込むポイントにスリップストリームが存在しているのだ。

真っ先にそのポイントに飛び込んだのは、美亜子だった。

「小マカナ、高速モードに変形よ」

「はいですぅ」

形状記憶合金製の美亜子のマシンが、突如変形。

なぜかフロントウィングとリアウィングが生えてきて(!)、しかも風防ガラスがハンドルの前に出現。

風の抵抗を抑えた、近未来的なフォルムに変わったのだ。

この変形には嵐を呼ぶアルトワークスもびっくりである。

今度は風の力を味方につけ、美亜子のマシンが加速していく。

続いて輪、そして広奈も3台連なってスリップに入り、春樹との差を縮めていった。

そして第二コーナーの入り口、美亜子が春樹とのサイドバイサイドに持ち込んだ。

「見える!」

ピキピキーン。

美亜子の脳裏に電光の煌きが走る。

その瞬間、美亜子は春樹の通るラインと、それを抜くための自分のラインがはっきり見えた。

「そこよっ!!」

スパーン。

「しまったっ」

リフティングターンに入った春樹のインを美亜子は突っ切った。

変形した高速モードのマシンが生み出す、絶大トラクションのよさがあればこその、ナイフのように鋭いコーナリングパフォーマンスだった。

第二コーナーを抜けて、首位が入れ替わる。

短いストレートの後、すぐに低速の第三コーナー。

「小マカナ、出力全開だ」

「はいですぅ」

フィンの力で、立ち上がりからの加速は春樹のほうが上だった。

第三コーナー、今度は春樹がアウト側から美亜子に並びかける。

ピキピキーン。

「ラインは、譲らないわ」

敵の動きも読んだ、美亜子の天才的なブロックライン。

イン側にも切り込めず、しかもアウト一杯に膨らんでしまうラインしか春樹には残されていない。

だが、春樹はスピードを緩めない。

「飛べっ! 小マカナ!!」

「はいですぅ」

4つのフィンが、フルパワーで揚力を発生させる。

コーナーアウト側一杯、ガードレールの上を、全開のまま春樹のマシンが抜けていく。

通常のリフティングターンでは、フロントタイヤは、地面に接地している。

だが、今の春樹は、完全に宙に浮いたままコーナリングしているのだ。

「行っけぇぇぇ!」

「うそ!?」

美亜子のブロックラインのさらにアウト側、コースの外を春樹は高い速度をキープしたまま、空を飛んでクリアしてしまったのだ。

そして美亜子の目の前に着地。

再び、首位が入れ替わり、春樹は美亜子との差を広げてぐいぐい加速していく。

説明が必要だが、何と言っても彼らのマシンは“自転車”なのだ。

美亜子が限界ぎりぎりでのコーナリングをするときは、体を傾けるため、一瞬ペダルをこげない時間が出てきてしまう。

また、コーナリングの終わり際も、体が水平近くに戻らなければ、ペダルをこぎ始める体勢に入れない。

だが、春樹の空飛ぶリフティングターンは飛んでいる間もペダルをこぎ続けられるため、立ち上がりでのトラクションの掛かりが良く、かなり有利なのだ。

「しまった!」

春樹のフィンからの逆風をまともに受けて、美亜子は失速してしまう。

その脇を、輪がすかさず抜いていく。

次のコーナーはこのコースで一番Rのきつい難所、薔薇ヘアピンである。

「よし、小マカナ、水素ロータリーエンジン始動!」

「はいですぅ」

ヒュィィィィィーーン。

小気味いい高音を響かせ、輪の第一の切り札である水素ロータリーエンジンに火が入った。

輪の水素ロータリーエンジンの利点は、常にエンジンからの動力が伝達されるため、ペダルをこがなくても、トラクションがかかり続けることにある。

つまり、春樹と互角の立ち上がり加速を実現できるのだ。

その威力は、低速のヘアピンからの立ち上がり競争で一番発揮される。

ロータリーの動力をプラスし、輪が懸命にペダルをこいだ結果、薔薇ヘアピンの飛び込みで、輪は春樹に並びかけ、イン側を抑えることに成功した。

だが、春樹にはアウト一杯、コースをはみ出すことをものともしない、必殺の空飛ぶリフティングターンがある。

「小マカナ、飛ぶよ!」

「はいですぅ」

揚力全開。

薔薇ヘアピンのアウト側、二重になったガードレールをも飛び越え、春樹の空飛ぶリフティングターンが決まるかに見えた、その瞬間。


ごひゅううううううううううううう。


「えっ、うわっ!?」

突如、紺谷ヶ峠の山頂から吹き降ろしの突風が春樹を襲った。

この季節、夜になると時々吹く、紺谷ヶおろしの風である。

で、完全無欠に空中にいた春樹は、その風をまともに受けた。

地上にいれば、まだ耐えられたかもしれなかったが、糸の切れた凧のように、春樹のマシンは吹き飛ばされた。

そりゃもう、見事なまでに。

なお、くどいようだが、薔薇ヘアピンのガードレールは二重になっており、これは“ガードレールの向こうは千尋の谷だから落ちたら死ぬぞ”という意味である。

ひぃぃぃぃ ぃぃぃぃぃぃ ぃぃぃぃぃぃ ぃぃぃぃぃぃ ぃぃぃぃぃぃ ぃぃぃぃぃぃ ぃぃぃぃぃぃ↓」


それを後方から見ていた広奈様のコメント。

「まぁ…」


ナレーション:「さらばセンゴクブルー。君の雄姿を僕たちは忘れない。そしてありがとうセンゴクブルー…」


伊達春樹、痛恨の戦線離脱である。

これでトップは輪。

だが、彼はコースの外、落下していく春樹に気を取られた。

「だ、大丈夫、なのか?」

その隙に、彼の背後に、美亜子が急接近。

「ふっふっふ、輪、あんたなら、遠慮なく攻められるわ」

邪悪な笑みを浮かべ、美亜子は小マカナに命じた。

「ドリルモードに変形よ」

「はいですぅ」

ギュイィィィィン。

フロントウィングとリアウィングは引っ込み、今度は前後輪から両側にドリルが生えてきた。

つまり、車輪の両側がドリルになったわけで、計4つのドリルが高速回転。

その恐ろしい姿を見せつけるように、先頭を走る、輪に近づいていく。

「なっ、何の冗談だ、美亜子」

「あはははははははっ、寄らば斬る!」

凶悪な本性剥き出しに、美亜子が輪めがけ、ドリルをぶつけてくる。

「くっ…」

無論、まともに当っては、輪のマシンはひとたまりもない。

とっさに輪は距離を取る。

そのため、次の赤い水コーナーへの侵入で、輪はイン側ぎりぎりまで寄せられてしまったのだ。

対する美亜子は、アウトインアウトの理想的なラインが取れる格好。

輪君、ピンチ。

イン側から、美亜子と同じスピードでコーナーに侵入しては、曲がりきれない!

だが、ここで輪は最後の切り札を切った。

「エンジン全開!」

「はいですぅ」

ヒュイィィィィィン!!! 水素ロータリーエンジンが咆哮する。

「むっ!」

そして輪は、コーナーの手前から、直ドリに入ると、マシンを大きく倒し、それを支えるため、自分の足を地面についたのだ。

通常、その体勢だと、マシンに急制動がかかりすぎ、失速してしまうだろう。

だが、ここからが“水”の戦士の面目躍如。

「水生成!」

輪の気合に律令が変化し、地面についた足の裏から水が吹き出した。

そのため、まるで輪の足の裏にも車輪がついているかのように、摩擦抵抗が軽減。

結果、足を地面についたままの体勢ながら、まるでインラインスケートを履いているかのように、スムーズなコーナリングが完成された。

無論、地面に足をつけてペダルをこげなくても、水素ロータリーエンジンが、強力にトラクションを稼いでくれるからこその芸当だ。

そう、まるで氷の上を滑るようなドリフト、それが、

「流水のイナーシャルドリフトだ。見たか、美亜子」

美亜子のドリルアタックをかわし、なおかつ立ち上がりで引き離した輪。

で、後ろにいた美亜子だが、それを見るどころではなかった。

輪の残した水の上に乗った瞬間、見事に滑った。

で、アウト側に膨らんでいく。

なお、このコーナーのアウト側は山肌が露出していた。

そこに、ドリル全開のまま、美亜子は突っ込んだ。

「きゃあああああああああああああ…」

ドガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ………。

美亜子の姿は、自らが掘ったトンネルの奥底に消えていった。


それを後方から見ていた広奈様のコメント。

「まぁ…」


ナレーション:「さらばセンゴクホワイト。君の雄姿を僕たちは忘れない。そしてありがとうセンゴクホワイト…」


「ふっ、やはり最後に残ったのは武田だったか。堂々の一騎打ちというわけだな」

ちらっと後ろを確認して、輪君がにやりと笑った。

そこからはゴールに向けて、ラストスパート。

輪君はありとあらゆるコーナーを「流水のイナーシャルドリフト」で駆け抜け、広奈との差をじわじわ広げていく。

そして、ゴール前、最後の300mストレート。

輪君はここまでで広奈に100mほどの差をつけることに成功していた。

水素ロータリーは全開、スピードにも乗っているし、この差では逆転は考えられまい。

「勝った!」

輪君は勝利を確信し、ペダルをこぐ足に力を込める。

と、そのとき。

「小マカナさん。リニアホイールを」

「“おーばーろーど”ですぅ!」


ヒューーーーーーーン、スパーーーーーーン!!


「な、なんだと!!!?」

100mの差を一気に詰められ、輪は抜かれた。

広奈様のマシンのホイールに装着された秘密兵器は“超電導モーター”である。

これまでず〜っとそこに溜めてきたエネルギーを、最後の最後で一気に開放したのだった。

そう、


山が動いた


のである。


「なぜだっ、なぜ俺は武田に勝てないんだっ」

輪君、魂の叫び。

あっという間に広奈様はゴールに近付いていく。

誰もが彼女の優勝を確信したその瞬間。


「にょわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」

「着陸ですぅ」


ゴーーーーーーール!


ゴールラインを最初に通過したのは、淳二の乗る『センゴクちゃりんこ愛馬君一号』だった。


優勝、真田淳二。








「あ、えっと、…オレ?」


ナレーション:「こうして、第一回センゴクマン対抗ダウンヒルバトルは幕を閉じた。だが、怪人との戦いに備え、彼らはさらに腕を磨き続けるであろう。頑張れ、負けるなセンゴクマン。地球の未来は君たちにかかっているのだ!」








あとがき春樹

楽しんでいただけましたでしょうか? 作者です。

このお話は、掲示板で滝若丸さんにいただいた「5人が『センゴクちゃりんこ愛馬君』でダウンヒルバトル」というリクエストに応えて書き下ろしてみました。

5人それぞれのカラーがでたチューニングと、必殺技を繰り出したバトルになったのではないかなぁ、と思っております。

とりあえず、ご意見、ご感想、ツッコミなど、お待ちしております。


2004年12月26日。GT4発売二日前に。直江雨続。


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