〜大長編オリジナル日本史ファンタジー大河ドラマ小説〜

陰陽五行戦記

第一章 ◇平安編◇

第三十話「広奈様最強伝説」



◇2月15日12時半 大江山山頂付近、鉄の御所内部◇


「し、信じられん。全滅だと? この短時間にか?」

地獄の底から響いてくるような重低音で、そう唸ったのはこの鉄の御所の首領、恐らく日本史上最も有名な鬼である、酒呑童子。

将門亡き今、魔王の側で最強の戦闘力を誇っているのが、この大江山の鬼の首領である。

しかも、戦いの直前まで、その配下には100匹の鬼、援軍の天狗100匹、そして最強の切り札だった牛鬼と、持ちうる最大兵力を誇っていたはずであった。

それが、10人に満たない敵に完膚なきまでに叩き潰されてしまった。

しかも敵側の死者はゼロである。

このまま手をこまねいていては自らの命も危機にさらされてしまう。

「残った兵力で、正門を死守しろ!」

酒呑童子の指示を受け、指揮官クラスの鬼が一匹、慌てて飛び出していく。

「残ったものは俺様に続け。…鞍馬へと撤退する」

意外に狡猾な酒呑童子、あっさりと鉄の御所の放棄を決定。

配下の鬼の中でも最後の生き残りとなった親衛隊5匹を率いて、搦め手門(裏口)から脱出しようとした。

ちなみに、その辺の雑魚鬼と違って、これくらいのランクの鬼になると、人間に化けることが可能となる。

従って、敵の目をくらますため、酒呑童子はその名のとおり幼い童子姿、他の鬼5匹も猟師の夫婦、さらわれた貴族の姫3人、ってな姿になっていた。

かなり狡猾。

もしも追っ手に見つかったら、酒呑童子の一味に捕らえられていた、とでも言い訳すればいい。

あっさり逃がしてくれるだろう。

きょろきょろと辺りを見回すと6人一団となって、移動開始。

すでに鉄の御所内部の残存兵力は、酒呑童子が脱出するまでの時間稼ぎと敵の侵入を阻止するため、正門に集結させている。

鉄の“御所”と呼称してはいるが、その実、山賊の砦のような内部を、すでに鬼の姿も見えないそこを駆け抜ける。

岩や丸太を組み合わせた急ごしらえのバリケードをいくつも迂回し、搦め手門へダッシュ。

しかし、よく見ると、その門は内側のかんぬきが外されており、6人の動きを察したか、長身の男が門の向こう側から鉄の御所へと入ってきた。

「どこへ行く気だ」

涼しげな美声が響いた。

6人の行く手をさえぎったのは鬼の面を付けた一人の僧の姿。

桁外れの法力を感じ取ったか、先頭を走っていた酒呑童子の足が止まる。

「だ、だれ?」

酒呑童子のそれは完全に怯えた子供の声だ。

「姿を変えたとて、無駄だ、酒呑童子。涅槃に入るがいい、拙僧が導いてやる」

しかし、相手が悪かった。そう、満を持して登場の良源である。

「くっ、比叡のくそ坊主か」

途端にその子供の口からは元の重低音が漏れる。

だが、あたりには良源以外に人間がいる気配はない。

坊主一人相手に、秘蔵の精鋭5匹と、暴武と殺風が2匹がかりでも敵わない、まさに最強の鬼である酒呑童子。

余裕で強行突破可能である。

あまりにもおいしいシチュエーション。

酒呑童子は完全に自分の有利を確信してしまった。

「……殺せ」

一見あどけない子供の口から漏れる重低音の凶悪なお声。違和感ありまくり。

そんな首領の声に反応したか、5匹の取巻きも元の鬼の姿に戻った。

だが、良源はそんな酒呑童子の反応を鼻で笑い飛ばすと、なにやら真言を唱え、集中し始めた。

すると、その全身からは途轍もない威圧感とともに、酒呑童子すらたじろがせる“魔”の力が放出された。

それは、見る見るうちに大きくなり、やがて良源の姿にもある変化が生じ始めた。

綺麗に剃っているはずの頭から、金色に輝く髪が生えだし、あっという間に肩口まで伸びる。

そして鬼の面でカモフラージュされてはいるが、その額には見まごう事なき、一本の角が生えていた。

口からは鋭い牙、手には長い爪が生え、それはまさに夜叉か修羅か。

いつの間にか、身体も一回り大きくなっていた。降魔大師良源、戦闘モードに変身である。

そのあまりの迫力に、酒呑童子もその親衛隊の鬼5匹も立ちすくんでしまう。

“天敵”に睨まれたコブラの心境であろうか。

良源こそ、後世『角大師』とも呼称されるように、角を生やし“魔”の力を平然と使いこなす、凄まじく型破りな僧侶なのだ。

『邪正一如』。つまり、敵を倒すために使う分には正しい力も、邪な力も一緒。

毒を持って毒を制す。自ら鬼と化して降魔の力を振るうのが良源の最終決戦スタイルなのである。

このハイパーモードがあるからこそ、良源は比叡山に絶大な権力を持ちうることが出来たわけであり、また、こうして酒呑童子と一騎打ちをしようという、危険極まりない作戦を実行できるわけである。

そんな良源の変身シーンと時を同じくして、その隙にこっそりと酒呑童子らの背後を取った『陰陽武道士』が一人。

実は鉄の御所に先に侵入し、陰陽道の幻覚を使って隠れていた武田広奈である。

(良源様にもしものことがあったら、わたくしたちにかけられた魔王の呪いを払う力を持った方がいなくなってしまいますわ。ここは不必要なリスクをおかすよりも…)

戦いはすべて自分に任せろ、邪魔はするなと、良源からきつーく言われているのであるが、あえてその言いつけには逆らうつもり。

広奈様、実は全開の戦闘モードである。

大切な人を守るためなら、女は時にいくらでも非情になれるのである。

ってなわけで、広奈は鉄の御所内部に増設されていた、急ごしらえのバリケードの陰から酒呑童子の一行を狙う。

隙を見つけたら、素早く動く。すなわち、疾きこと風の如し。

変身中の良源に気を取られて固まっている親衛隊のうち、隊列の最後尾の一匹がまずは標的となった。

広奈は『龍鬚弓』を構えると、『豊穣の箙(えびら)』から矢を取り出し、弓弦につがえた。

そして静かに闘気を集中させると、その矢が広奈の黄金のオーラをまとって光り輝く。

矢を放つ直前、広奈の形の良い唇が、小さな声で軽快に呪を唱えた。

『無音障壁・急急如律令』

そしてきっちり狙いを付け、必殺の矢を放つ。

シュッ…。

小さな風切り音とともに、その金色に輝く矢はおよそ15mの距離を一直線に飛び、その哀れな鬼の後頭部にぐっさりと刺さった。

「!!!!!!」

あまりに容赦ない急所攻撃。その鬼が断末魔の絶叫を上げる。

シュッ…。

そんな鬼に、素早く次の矢をつがえて、さらにとどめの一撃。

今度はものの見事に心臓の位置に刺さった。

容赦ない攻撃に、鬼はぱったりと倒れ、塵と消えていく。

しかし、その断末魔、倒れた音、それらは一切聞こえなかった。

そう、直前に広奈が唱えた陰陽道の術で“律令”に干渉し、その鬼の周囲だけ、あらゆる音を消し去っていたのである。

すなわち、静かなること林の如し。

従って、その鬼が死んだことは、周りにはまったく気づかれていない。

ちなみにこのとき良源は自分の変身に夢中だったりする。

(ひとつ)

続いて素早く矢をつがえ、未だこちらに気づいていない2匹目の鬼に狙いを定める。

『無音障壁・急急如律令』

シュッ…。

「!!!!!!」

広奈様の容赦ない攻撃の前には、雑魚なんぞはひとえに風の前の塵に同じ。

諸行無常の響きあり、である。

すなわち、侵掠すること火の如し。

あっさりと2匹目も絶命。

(ふたつ)

しかしこの段階で、残った親衛隊のうちの一匹が、犠牲になった2匹目の様子に気づいてしまった。

「ぐ!? 敵??」

慌ててきょろきょろと辺りを見回し始める3匹の親衛隊&酒呑童子。

そのうちの一匹めがけ、金色に輝く矢が放たれた。

「ぐあっ!」

しかし、とっさに避けたため、矢は肩口に命中したに留まった。

これでは、致命傷とはならない。

しかも…。

「あ、あそこだっ!」

矢が刺さった鬼が、広奈の居場所を発見してしまったのである。

見つかってしまったからには、と、意を決して広奈がバリケードの陰から姿を現す。

「手出し無用と言ったはずだぞ!」

変身が完了したスーパー良源、ちょっとお怒り気味に広奈に声をかける。

だが、広奈はかまわず残った親衛隊の鬼を狙い、弓を構えた。

あくまで、良源のために、敵の数を減らそうというのである。

それは、しかし、無謀な行為だった。

「ぐぅぅぅぅぅおぉぉ!!」

「がぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

「おぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

獣じみた咆哮を上げ、親衛隊3匹が、広奈めがけ、一斉に襲い掛かった。

鋭い牙、とがった角、長い爪、野生のライオンなどよりはるかに凶悪な鬼が3匹掛りである。

矢で攻撃できるのは一度に一匹が限界、3匹に同時に攻撃されては、対処のしようがない。

とっさに距離をとろうと背を向けた広奈。右手がなにやら印を結び、口元は呪を唱える。

素早く防御に切り替えた広奈だったが、しかし、敵の動きのほうが早かった。

あっさりと広奈を包囲すると、一匹は鋭い爪で広奈の頭部を、もう一匹はその牙で広奈の左腕を、最後の一匹がとがった角で広奈の背中を同時に攻撃。

完璧な連携。ほとんど防御不能である。

防御結界の呪を唱えることも出来ず、広奈はその3つの攻撃をすべて、まともに受けてしまった。

並の人間なら、一撃で即死の破壊力である。

「…愚かな」

良源がそう言って舌打ちをする。

だが、その良源の言葉が向けられたのは、もちろん広奈ではない。

勝利を確信した3匹の鬼だったが、その刹那、彼らの攻撃は広奈の身体をすり抜けた。

否、広奈の身体は一瞬で消滅したのだ。

代わりに、広奈の“幻覚”をすり抜けた3匹の攻撃が、それぞれ味方に命中していた。

「ぐあっ」

「ごふっ」

「がぁっ」

そこへ…。

『風・林・火・山!!』

バリケードの陰でひたすら動かなかった広奈が、この機会を逃さず必殺の『五行妖術』をぶちかましたのである。

すなわち、動かざること山の如し。

五行の土は、方位で言えば中央、四季で言えば土用、そのため、他の4つの属性すらも使いこなすことが出来るのである。

暴風、敵に突き刺さる木の葉と枝、灼熱のマグマ。

風と樹木は“木”、高温の金属が溶けて液状になったマグマは“水”と“金”と“火”、そして“土”の属性だ。

5つの属性の連続攻撃の前に、たとえ強固な肉体を誇る鬼といえどなす術なし。

暴風に巻き込まれ、全身に木の葉や、木の枝が刺さり、更に灼熱のマグマ地獄にその身を焼かれる。

過去、この美しくも恐るべき技を受けたのは巨大ムカデと九頭竜だけである。

馬鹿でかい敵相手でも、威力を発揮する広奈の超必殺技である。

そんなものが死角から直撃したのだ。

当然まとめて吹き飛んだ3匹。

一匹はそのままお亡くなりになり、その身体が消えていく。

(みっつ)

ぷすぷすと煙を上げる身体に鞭を打って、何とか立ち上がろうとしたもう一匹の額に、容赦なく広奈の矢が命中。

(よっつ)

最後の一匹は逃げようとするが、その後頭部にもとどめの矢が命中。

(いつつ)

完全勝利。

風林火山の余韻で広奈の周りを舞い落ちる木の葉が、彼女を美しく飾る。

まったくの無傷で広奈は親衛隊の5匹を片付けてしまった。

孫子曰く『その無備を攻め、その不意に出づ』

「手を出すなと……」

不満げな良源だが、広奈はまったく気にした様子なし。

「さぁ、良源様、残るは酒呑童子だけです」

と言って、酒呑童子に矢を向ける。

「ぐぅ、こんな小娘に…」

情けない部下に対する不甲斐なさか、それとも絶体絶命のピンチと思ったか、たじろいだようにも見える酒呑童子である。

だが、今度こそ広奈の動きを止める良源の指示が飛ぶ。

「やめろ。こいつは俺に任せておけ、絶対に手出しするな!」

「…ですが」

「俺の指示に従え!!」

比叡山の僧兵数千を萎縮させる良源の一喝。

「………分かりました」

さしもの広奈も、それには逆らえない。

そんな二人の様子を見、酒呑童子は口元を吊り上げた。

「愚かな。ひ弱な人間の分際でこの酒呑童子様に勝てると思っているのか」

そう言いつつ、ついに酒呑童子は子供の姿から、元の巨大な鬼の姿へと戻っていった。

今度はこちらが変身する番、と言うわけである。

「ぐぅぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ」

開けてはいけない禁断のパンドラの箱、あまりにも強大な酒呑童子の本来の力が解放される。

そして酒呑童子は見る見るうちに巨大化し、見上げんばかりの大きさになっていた。

推定身長5m。

牛鬼と力比べしても勝ってしまいそうな、物凄い筋肉。

耳まで裂けんばかりの巨大な口には、鋭い牙がずらりと並び、不気味に赤い目は爛々と光り、その額には牛のように捻じ曲がった二本の角が、誇らしげに伸びている。

顔だけでも、これまでの鬼の中で、一番の凶悪さである。

しかも、その手にはいつの間にか巨大な棍棒が握られており、あれがまともに命中したら、さしもの良源でも一撃で殺されてしまいそうである。

まさに、鬼に金棒。酒呑童子、正体を現してしまえば予想以上の化け物だったのだ。

だが、良源は平然と構えていて、まったく動じた様子はなかった。

これでも勝てると踏んでいるようなのだ。

そして、酒呑童子の変身が完了した。

はるかな高みから良源を見下ろす酒呑童子。真っ向から睨み返す良源。

びりびりとあたりの空気を震わせんばかりの緊迫感。

日本史上最強の鬼と、最強の降魔僧の究極のファイトが、今まさに始まろうとしていた。


と、その時。

上空から、物凄いスピードで何かが接近してきた。

そして………

『ハイパーヲルス斬りぃぃ!!!!!』

超上空から落ちてきたヲルスバンが、その手に持ったヲルスブレードで酒呑童子の脳天をざっくりと斬り下ろした。

しかも後ろから。

推定高度200mからの落下エネルギーを加えたヲルスブレードの破壊力は想像を絶する。

で、さしもの酒呑童子も身長5mの自分が頭上から攻撃されるとは思っていなかったわけで、こらえきれずに衝撃で吹っ飛んだ。

「ぐはぁぁぁぁぁぁっ!!」

そして吹っ飛んだ先に広奈様のお姿。

このままでは酒呑童子の巨体の下敷きに…。

「まぁ…、あぶない」

危機回避のため広奈様は軍配を振るった。

『風・林・火・山!!』

ごひゅぅぅぅぅぅ!!(暴風の音)

ぐさぐさぐさぐさぐさ(木の葉や、木の枝が次々に突き刺さる音)

ぶしゃぁぁぁぁぁ!!(マグマがえらい勢いで噴き出す音)

じゅばぁー、ばちばち(もろにマグマが命中し、刺さった木の葉や枝が燃える音)

「がふぁぁぁぁぁぁっ!!」(悲鳴)

まともに命中。

ついでにもう一発。

『風・林・火・山!!』

ごひゅぅぅぅぅぅ!!(暴風の音)

ぐさぐさぐさぐさぐさ(木の葉や、木の枝が次々に突き刺さる音)

ぶしゃぁぁぁぁぁ!!(マグマがえらい勢いで噴き出す音)

じゅばぁー、ばちばち(もろにマグマが命中し、刺さった木の葉や枝が燃える音)

「ごがぁぁぁぁぁぁぁ!!」(悲鳴)

どしーーん(酒呑童子が技のせいで吹き飛ばされ、反対方向に倒れた音)

おかげ広奈様は下敷きになるのを免れた。

そして…。

『ヲルスバーン・ナッコォォォォ!!』

ボゴッ!!(もろに入った音)

「うぐはぁっ!!!!」(悲鳴)

おまけにもう一発。

『風・林・火・山!!』

ごひゅぅぅぅぅぅ!!(暴風の音)

ぐさぐさぐさぐさぐさ(木の葉や、木の枝が次々に突き刺さる音)

ぶしゃぁぁぁぁぁ!!(マグマがえらい勢いで噴き出す音)

じゅばぁー、ばちばち(もろにマグマが命中し、刺さった木の葉や枝が燃える音)

「馬鹿なぁぁぁぁぁっ!!?」(断末魔)

ぽて。


ミッションコンプリート。


「ふぅ…」

広奈様、エレガントに勝利。これで一安心である。

すでに真っ黒に焦げ、その身がちりちりと風に吹かれて消え行く酒呑童子を見つつ、優雅に微笑む。

技の余韻でひらひらと舞い落ちる無数の木の葉に包まれ、戦場にあるまじき非常識なまでの美しさを発散しまくりである。

で、収まらないのは良源である。

「おい……」

んな、簡単に死ぬなよ…、ってな言葉を辛うじて呑み込んだ。

まったく見せ場なし! っていうか、はっきり言ってこれでは広奈のために敵の気を引くおとり役を務めたようなものである。

孫子曰く『戦いは正を以って合し、奇を以って勝つ』

むしろ、恐るべきは、広奈である。

「ありがとうヲルスバン。よく戦ってくれました」

戦い終わり、ナイトのように侍っているヲルスバンをねぎらう広奈。

「はっ、長官どの」

お約束のセリフを返すヲルスバン。

「さぁ、良源様。他の皆さんと合流しましょう」

にこやかに良源に告げる広奈。

見せ場を奪われた悔しさなんて、一瞬で氷解してしまいそうな、広奈様の無敵スマイルである。

が、返事が無い。

「…良源様?」

無言。…というか、明らかに異常事態。

良源は、なにやら苦悶の表情を浮かべて、何かを必死でこらえている様子。

人のオーラを感じ取れる陰陽師としての目で見ると、異変の正体が分かった。

「まさか……」

唖然として、広奈が呟くのと、良源が広奈のほうに向き直ったのは同時だった。

「ぐぅっ、お、俺から…、早く離れろっ!!!!」

広奈は立ちすくんだ。

「…魔の力が暴走する?」



◇同時刻 大江山山頂付近◇


「大丈夫? 輪さん」

よろよろと姿を現した輪に、乙姫が心配そうに声をかける。

リバースのダメージがかなり残っている輪だったが、気丈にも指揮を開始。

「…心配ない。それより、動けるものは鉄の御所へ。良源と武田がすでに潜入している。援護が必要だ」

そう言って、みんなの姿を見た輪だったが、五体満足そうなのは春樹と乙姫だけ。

淳二は背中に結構な負傷を抱えているし、美亜子もあちこちから出血が見られる。

特にひどいのが比叡連者の5人。

無事に任務は果たしたものの、もはや満身創痍。急ぎ治療が必要と思われる。

すぐに援軍に使えそうなのは、春樹と、あとは美亜子くらいだろうか。

「淳二と乙姫はここに待機。そこの5人もだ。春樹と美亜子は俺と一緒に来てくれ。敵の首領を討つぞ」

相変わらず気分は最悪、ひどい酔いに頭もふらふらだが、四の五の言ってられない。

輪がてきぱきと指示を出すと、とりあえず、みんなそれに従った。

指揮官代理の春樹から、あっさりと指揮権を取り上げた格好である。

「輪さん、わたしも…」

ひとり指示に従おうとしない乙姫に、輪は優しくこう言った。

「いや、あとは俺達だけで大丈夫だ。乙姫は怪我をしたみんなを守っていてくれ」

「あ、…はい。気を付けて下さい、輪さん」

一瞬悲しげに瞳を伏せたが、それでも健気にそう言って輪を送り出す乙姫。

「ああ」

そして、半ばお約束だが、輪は乙姫の頭をなでなで。

「……輪さん」

顔を真っ赤にして、うつむく乙姫。

(やはり、この子は…)

輪の脳裏にデジャブがよぎりかける。

「さぁ、行くわよ」

「直江君?」

輪の思考は中座した。

「む? …ああ、行くか」

戦闘態勢の美亜子と春樹に促され、輪はくるりと乙姫に背を向けて、鉄の御所めがけ、走り出した。

「頑張れよ〜」

今回は声がかからなかった淳二、あえてお気楽な調子で、去り行く3人に声をかける。

そして、急に表情をゆがめるとどっかと腰を下ろした。

「…痛ぅ、さすがにきつかったな」

鉄の御所に突入した3人を見ながら、淳二は本音を漏らした。

「早く片付けてくれよ、背中が痛くてしょうがねぇ」



◇鉄の御所正門◇


「まだ、敵がいるのか?」

輪が舌打ちする。

正門の奥の、急ごしらえのバリケードに隠れるように、まだ10匹程度の鬼が虎視眈々とこちらを狙っていたのだ。

「一気に突破するわよ!」

美亜子、やっぱり猪突。

「お、おい…」

「本多さん!?」

慌てる男二人。

「援護しなさい!!」

楽しそうな美亜子である。

「やれやれ…、『氷刃投射!』

神刀『毘沙門天』を居合い抜きすると同時に、輪の“言葉”に律令が変化。

鋭い冷気の刃がバリケードから顔を覗かせていた鬼の首を飛ばす。

(ご主人さま、しっかり!)

「う、うん」

小十郎の激に、春樹も火縄銃を出現させる。

「この、このっ!」

二人の援護射撃を受け、美亜子は敵陣に単騎、斬り込んだ。


で、一瞬で敵を壊滅させた。


さて、敵の防衛線を突破し、内部に突入したはいいが、鉄の御所は結構広い。

「どこだ?」

「どこかしら?」

「どこにいるのかな」

酒呑童子と、良源、そして広奈はどこで戦っているのだろうか。

きょろきょろとあたりの様子を伺っている3人。

と、美亜子の目が、上空から猛スピードで落下してくる人影(?)を発見。

「ヲルスバン?」

ヲルスバンはあっという間に地上へと落ちていき、見えなくなった。

一瞬遅れて

『ハイパーヲルス斬りぃぃ!!!!!』

「ぐはぁぁぁぁぁぁっ!!」

「そこだわ」

美亜子が走り出す。

他の二人も続く。

『風・林・火・山!!』

「がふぁぁぁぁぁぁっ!!」

「武田の声だ」

輪も確信した。間違いない、今まさに武田が戦っている。

戦場を前にした緊張感に、さっきまでの酔いが吹き飛ぶ。

『風・林・火・山!!』

「ごがぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「武田さん」

(待っててください。今行きますっ)

春樹、気合十分。

『ヲルスバーン・ナッコォォォォ!!』

「うぐはぁっ!!!!」

「やってるわね」

美亜子の鼓動も高鳴る。

『風・林・火・山!!』

………。

………。

………。

…静かになった。

いくつかの岩石と丸太を積み上げ増設されていたバリケードを突破し、3人が戦場にたどり着く。

「むっ?」

「おっ?」

「あれ?」

3人が見たものは、倒れ、さらさらと塵と消えつつある巨大な鬼と、何かに驚いた様子の広奈、そのそばに侍るヲルスバン、そして強烈な威圧感を放つ、スーパー良源の姿だった。

輪たちと良源との距離、およそ20m。

そして、3人が見ている前で、良源が動いた。

「ぐうぉぉぉぉぉっ!!」

抑えきれない破壊衝動に突き動かされ、良源が広奈との距離を一気に詰める。

明らかに良源から溢れ出ているのは殺気だ。

広奈に、攻撃を仕掛けているのだ。

(なに?)

(なんで?)

(ええっ?)

3人が内心で驚愕するそのわずかな時間。

常人ではありえないほどの瞬発力。

豪腕が唸りを上げ、鋭い爪を揃えて、広奈めがけて強烈な突きが放たれた。

広奈は動けない。

「武田!」

「広奈!」

「武田さん!」

悲鳴じみた3人の声が重なる。

どすっ…。

肉体を貫く、嫌な音が響いた。

「ぐふッ…」

ヲルスバンだった。

とっさに広奈の前に立ちふさがり、良源の一撃をその身を盾にして受けたのである。

銀色のメタルスーツの背中から、良源の右手が生えていた。

胸部を貫き、良源の突きはヲルスバンを貫通していたのである。

「えっ?」

さしもの広奈も目の前に広がる凄惨な光景に一瞬呆然。

遅れて悲痛な声を上げる。

「ヲルスバン!」

「ち、長官どの…」

何か言おうとぎこちなく振り向いたヲルスバンの頭を、残った良源の左手が鷲掴みにする。

「駄目! やめてっ!!」

広奈の声を無視し、良源は牙の生えた口元をゆがめ残忍な笑みを形作ると、左手に力を込める。

「早く、逃げ…」

ぐしゃっ。

ヲルスバンの、それはあまりにも無残な最期だった。

「ふははははははははははっ!!」

「いやぁぁぁぁっ!!!」

良源の哄笑と、広奈の悲鳴が、固まっていた3人のスイッチを入れた。

『破ぁぁっ!!!』

問答無用の一撃。

反射的に美亜子の蜻蛉切が煌き、不可視の衝撃が放たれる。

「がぉぉっ!」

獣性に支配された良源の咆哮。

美亜子の攻撃をあっさりとかわす。

その反応の速さと、脅威の身体能力。そしてヲルスバンを屠った攻撃力。

(くっ、強い!)

このわずかの時間で、美亜子は良源の脅威を正確に読み取っていた。

下手をすると、将門レベル。

しかも、スピードは良源のほうが上かもしれない。

ここは接近戦で動きを止めるしかない。美亜子は素早く間合いを詰めようとする。

だが、良源は美亜子には構わず、鋭い爪を閃かせ、今度こそ広奈めがけて突きを放とうとした。

美亜子は間に合わない。

広奈様、絶体絶命の大ピンチ。

当然、この男が黙ってはいなかった。

「やめろぉぉぉぉっ!!」

瞬間、春樹の叫びに律令が劇的な変化を生じた。

良源を中心に凄まじい竜巻が発生。

「ごあぁぁっ!?」

良源の金髪が一瞬ですべて上を向く。

物凄い上昇気流に、良源は地上に留まることが出来ずに舞い上がった。

将門との戦いに向け、春樹が編み出した究極の無力化攻撃である。

(さすがご主人さま。この力があれば、ボクの……)

小十郎の内心の呟きはもちろん春樹には届いていない。

春樹は、広奈を救いたい一心で、無我夢中で技を繰り出したのである。

「武田さん、今のうちに離れて」

さすが広奈様である。

一瞬のパニック状態を脱却し、すかさず距離を取る。

そして、攻撃態勢にあった輪と美亜子に向けて、鋭い声でこう叫んだ。

「傷つけては駄目。良源様は、悪しき力を制御できずに暴走しています。退魔の武器を!」

「分かった!」

そして輪がダッシュ。

良源から離れた広奈をかばうように、その前に出ると、右手を腰の刀に伸ばした。

『ナウマク・サマンダボダナン・ベイシラマンダヤ・ソワカ』

毘沙門天の真言を唱えつつ、魔を払う神刀を抜き放つ。

神々しい光りがほとばしり、透明な刀身がゆらゆらと輝く。

霧風のように白い光の粒子を放つ、あまりにも美しい刀、神刀『毘沙門天』である。

そしてその輪の対極に、いつの間にか移動していたのが美亜子である。

左手に蜻蛉切を持ち、右手には(なぜか)スリッパが握られていた。

「春樹!」

「ハル!」

さすが幼なじみ二人の呼吸はぴったりだった。

まったく同じタイミングで、春樹に合図する。

「はいっ」

春樹は二人の合図で竜巻をぴたりと消滅させた。

上空3mをクルクル回っていた良源が、そのまま自由落下を開始。

「我に降魔の力、与え給えっ!」

輪の声に呼応して、神刀『毘沙門天』の白き輝きが刀身以上に伸びる。

そして、空中で体勢を立て直し、なんとか両足で着地した良源めがけ、輪が刀を振るう。

『調伏っ!!』

ダンッ、と思いっきり右足を踏み出し、低い体勢から輪の斬撃が良源の胴を薙ぎ払った。

直接刀身は当てていない。だが、かつて源満仲の魔を払ったときのように、白き退魔の輝きが良源を支配していた悪しき力を切り裂いた。

「がっ…」

短い悲鳴を上げ、良源が棒立ちになる。

と、そこに。

『覇ぁぁぁぁっ!!!』

美亜子のスリッパが唸りを上げて良源の面にぶち当たった。

スパごちっ

一瞬スリッパの軽快な打撃音が響き、すぐに鈍い音に変わった。

「むぅぅぅ……」

ぱったり。

良源撃沈。

仰向けに倒れると、遅れて良源の面が粉々に砕け散った。

そして、良源の角は引っ込み、爪も小さくなり、牙も普通の歯に戻った。

生えた髪だけはそのままだったが、色が黒に変化していた。

「美亜子、そのスリッパ…」

途轍もないスリッパの威力に絶句した輪が、美亜子に唖然とした視線を向ける。

「こういうことよ」

くるっと手首を返し、スリッパの表側を輪に見せると、そこには『龍牙手裏剣』が…。

そう、美亜子は魔を払う『龍牙手裏剣』にスリッパをすっぽりかぶせて使っていたのであった。

これなら、良源を傷つける危険性が少なくなる。

鞘に入れたまま刀を振るようなもの。とっさの判断にしては、なかなか冴えている。

そして実際、意識こそ失っているが、目立った外傷も無いまま、良源は元に戻ったようだ。

そんな良源の倒れたところに4人が集まる。

「ヲルスバン…」

倒れた良源のすぐそばに人型の紙を見つけた広奈様が、それを手に取る。

胸のところに大きな穴が開き、頭はくしゃくしゃに握りつぶされている。

「ありがとう…、ごめんなさい」

きゅっと、その紙を胸元に抱きしめ、うつむく広奈の目から少しだけ涙がこぼれる。

「…そんな、ヲルスバンが」

春樹もつられて涙目。

「広奈…」

美亜子も眉を寄せて悲痛な表情だ。

輪のみ、無言でそんな広奈と良源を交互に見、そしてゆっくりと広奈に近づいた。

「武田…」

広奈は答えない。

涙をぬぐうと、じっと倒れた良源を見つめ、再び感情の迸りをこらえている様子だった。

そして不意に輪のほうに向き直ると、そのまま輪の胸に飛び込んだ。

がしゃ、甲冑同士がぶつかる硬質の音。鎧同士の抱擁。

「なっ…」

あまりのことに、たちまち硬直する輪。

「!!!」

そして、重大なショックを受ける春樹。

「た、武田…」

のどの奥から、ようやく声を絞り出す輪だったが、広奈は答えず、さらに輪を抱きしめる両腕に力を込めた。

ぎゅぎゅぎゅぎゅぎゅぎゅぎゅ。

凄い力。

「ごめんなさい輪さん、あと少しだけ…」

か細く震える広奈の声。

密着した広奈の顔は、輪からも、そして春樹や美亜子からも見ることが出来ない。

不意に、輪は悟った。

違う、泣いている訳じゃない。むしろ、これは怒り…、ていうか殺意?

武田は激怒しているのか? ヲルスバンを殺した良源に…。

そして激昂した顔を見られないように、こうして俺に…。

ぞわっ。

輪の背筋が凍った。

(こ、殺される…)

まるで、放射性物質満載の核燃料を抱きしめているような恐ろしさ。

密着した広奈からダイレクトに伝わる本能的な恐怖に、指一本動かせなくなる。

「えっ?」

広奈から放出される危険な気配に、一瞬美亜子も目を疑う。

だが、それはすぐに消えた。

まるで、最初から存在しなかったかのように。

そして広奈はゆっくりと、輪から離れた。

「ごめんなさい、はしたない真似をしました」

貴婦人然とした広奈の所作に、先ほどの強烈な迫力は微塵も感じられない。

「あ、ああ…」

カクカクとぎこちなく頷く輪。

その背中は嫌な汗でびっしょりである。

そして輪においしい役どころを取られてしまった(と本人は思っている)春樹が、なんとか自分の存在をアピールしようと、健気に広奈を慰めにかかる。

「た、武田さん、その…、ヲルスバンのこと…、えっと、なんて言っていいのか…。あの、残念だったけど、でも、武田さんが無事でよかった。…だから、どうか元気を出してください」

誠心誠意、春樹も失地回復に(?)懸命である。

「ありがとう春樹さん。もう大丈夫です」

いつもの広奈様の優雅な笑み。パーフェクトスマイル。

だが、それはこれ以上立ち入るな、というサインに思えて、春樹はこれ以上何も言えなくなった。

言うべき勇気が消えていった。

そのまま俯く春樹に変わって、今度は美亜子が広奈に詰め寄った。

「で? いったい何がどうなってんの?」

広奈は、無表情のまま答えた。

「暴走です」

「暴走?」

「はい、良源様は鬼に対抗するため、自らも鬼と化したのです。ところが、わたくしがすべての鬼を倒してしまったため、良源様の鬼の力は行き場を失い、暴発。破壊衝動の赴くままに、わたくしを襲ったのですわ」

「それで…、あんなことになったのか」

得心した輪が、腕組みしたまま頷く。

「そうだ」

4人が一斉にその声のしたほうを向く。

声の主は良源だった。

ゆっくりと身を起こすと、そのまま広奈に向かって正座。

「済まなかった。このとおりだ」

地面に額を付けんばかりに、深々と頭を下げた。

良源もまた、誠心誠意のお詫び体勢。

「いいえ、わたくしも悪かったのです。良源様の言いつけに逆らって、酒呑童子や残る鬼をすべて倒してしまったのですから」

慈しむような広奈の声に、良源も少しだけ安心して頭を上げた。

そして広奈と目が合った。

(うっ…)

広奈様、顔は笑っていたがその目はなんの色も浮かべていなかった。

まるで路傍の小石を見るように、良源を見つめている。

一切の感情が見出せない。完璧な虚無の目である。

こんな少女がそんな目を人に向けることが出来るのか…。

良源もまた、言い知れぬ恐怖に、身を堅くする。

広奈は捨てたのだ。良源に恋する人格を、輪に抱きついていたあのわずかな時間に、誰にも悟られること無く。

そして、良源に対するすべての思いも…。

そうでなくては、あのヲルスバンの最期がいつまでも広奈の心を苦しめるに違いないのだから。

そんな広奈の視線に耐え切れず、良源は目をそむけ立ち上がった。

「これで、大江山の鬼は一掃出来た。だが、残念な報告をしなければならない」

何事かと注目する輪、美亜子、春樹に良源は意外な一言を告げた。

「もはや、拙僧は戦力にはなれぬ。振るうべき鬼の力が、すべて滅されてしまった故にな」

「…そういうことか」

輪が愕然とする。

「あたしら、やりすぎちゃった?」

美亜子もまた。

良源は静かに首を振る。

「否、あの状況では、あれが最上の判断だった。なに、心配要らぬ。拙僧がおらずとも、その降魔の力があれば鞍馬の魔王尊を滅することも出来るだろう」

「あ、そうか…」

春樹が再び沈痛な表情になった。

これで終わりではないのだ。まだ鞍馬山に最後にして最強の敵、魔王が控えているのだ。

しかも、頼りになる戦力と思っていた、良源も先ほどの輪と美亜子の攻撃で、その力の源だった魔の力をすっかり消されてしまった。

となると、やっぱり自分たちだけで、魔王と戦うことになるだろう。

それに、良源のほかにも、貴重な戦力が永遠に失われたのだ。

「だが、損失はそれだけではない。ヲルスバンがいなくなっては戦略の幅が狭まってしまう…」

春樹の言いたかったことだが、それを口にしたのは輪だった。

「済まない…」

再び良源が、今度は輪たち3人に頭を下げる。

「……」

「……」

輪も美亜子も、なんとも言葉がない。

重苦しい沈黙が流れた。

で、真っ先にリタイアしたのは春樹だった。

気配りの人春樹は、なんとか良源をフォローしようと、とんでもないことを口にしてしまった。

「えと、良源さんもあまり気にしないでください。武田さんが無事だっただけでもヲルスバンも本望だったでしょうし…」

この発言には、輪、美亜子、そしてフォローされた側の良源すらも、表情を堅くしてしまう。

ヲルスバンを殺された、広奈の心情をまったく無視した発言だからである。

(そんな事を言う権利が、お前にはあるのか)ってな険しい目で3人が春樹を見据える。

一瞬遅れて、春樹は自分の失言に蒼くなった。

「あっ…」

たちまち春樹の背筋をだらだらと脂汗が流れ落ちる。

と、それまで無言だった広奈様、焦りまくる春樹を見、ようやく心からの笑顔を見せたのであった。

「いいんです、春樹さん」

「えっ?」

むしろびっくりする春樹を優しげに見返すと、広奈様は懐からまだ新しい人型の紙を取り出した。

そして…。

『式神召喚・急急如律令』

広奈の声が律令に干渉し、たちまち人型の紙は銀色に輝くメタルスーツに…。

『帰ってきたヲルスバン推参!!』

広奈以外の4人が一気に脱力したのは言うまでもない。

しかも、新しいヲルスバンの額には…

「あっ、角が生えてる?」

驚く春樹の声。

「あの角は…」

それを見た輪が、一瞬良源の額に視線を移す。

「まさか?」

同じく、美亜子も良源を見る。

「拙僧の?」

良源も驚きを隠せない。

「まぁ…」

自分でもびっくりの広奈様。

それは、心の奥底に封じ込めた良源への思いの結晶とも言うべきものだったのかもしれない。

それが、本人の無意識のうちに、ヲルスバンへと干渉したのだろう。


かくして、無事復活を遂げたヲルスバンを伴って、4人は負傷した淳二たちのところへと戻った。

“帰ってきたヲルスバン”を見て、淳二は開口一番。

「シャア専用?」


次回いよいよ魔王との最終決戦?!



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