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登場人物紹介 明智瑠華
このお話のヒーロー(誤植ではない)
このお話のヒロイン(誤植ではない)
今回はこの二人以外はその他扱いらしい(笑) |
陰陽五行戦記
序章
◇現代編◇
第三話「ハルカなる戦い」
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思わず瑠華の口をついて疑問の言葉が漏れる。 (わらわの見立てに間違いはない。5人目の“戦士”は伊達春樹に決めたぞよ) 「伊達…だと? しかし、あの男、善良なだけがとりえのような普通の人間だぞ。直江や本多のように武術を修めているわけでもない。何故だ?」 (まだまだ甘いのう。わらわが見たところあやつは最大の潜在能力を持っておる。時間とともに最強の戦士になるやも知れぬ) 「…納得できん。“木”の戦士はなつめではなかったのか?」 (だから、予定は変わったのじゃ。なつめは遊軍として動いてもらう) 瑠華は反論しようとしたが、やがてゆっくりと髪をかき上げるとため息とともに頷いた。 「わかった。…ならば伊達に本当に戦士としての素質があるのか確かめさせてもらう」 比類なき美貌に固い決意を浮かべ、少女明智瑠華は魂を共有する相手、葛の葉姫との会話を終えた。
「朝だよぉぉ〜」 たったったった…。 「えいっ」 「とぉっ」 どさ、どさ。 「ぐえ…」 春樹の一日は下宿の娘あいちゃんとあゆちゃんのフライングツインボディプレスで始まる。 ひとしきり生死の境をさまよってから春樹はようやく目が覚める。 まだ鈍い痛みの残る身体を起こし、春樹は伸びをする。 カーテンを開け、さんさんと降り注ぐ朝日を浴びる。 ああ、今日も生きてる。生きてるって素晴らしい…。 おもむろに着替えて食卓に付いた春樹を迎えたのは、同じ下宿に住む先輩片倉真理であった。 「おっ、春樹おはよう。お前の嫌いな黄身食べといてやったぞ」 春樹の分の目玉焼きは黄身がなかった…。 「あう、片倉先輩、僕は別に黄身は嫌いじゃないです…」 「そうかそうか、そいつは悪かったな。ま、細かいことを気にするな」 そう言い残して真理は颯爽と登校して行った。
学校の女神、みんなの憧れ、歩く高嶺の花、武田広奈嬢である。 「武田さん、おはよう」 …と声をかけようとした春樹だったが、その広奈、前方に何か見つけたらしく小走りで向かっていってしまった。 「あ…」 呆然と見送っていると広奈は前を歩いていた輪に駆け寄っていた。 「おはようございます輪さん。昨日発売されていた『旅行記殺人事件』もう読みました?」 「読んだよ。だけどあのトリックは中盤で分かってしまった。ロンドン三越でのアリバイが甘いからな」 「まぁ、でもわたくし考えましたの……」 こうして春樹の目の前で2人は楽しそうに歩いていってしまう。 硬直するハル。一陣の風。 そしてとぼとぼと歩く春樹の後ろから騒がしい二人組登場。美亜子と淳二である。 「おっ、ハルじゃねぇか? おっは〜」 「あ、おはよう二人とも」 返事に元気がない。 「なんかどんよりしてるけど」 と美亜子。 「おい春樹、もっとハルキ出せ(?)」 「朝っぱらからくだらん」 言葉とともに即座に美亜子のスリッパが飛んでくる。 が、今朝の淳二は一味違った。 「奥義『無空スリッパ返し!!(開発中)』」 しかし、淳二の技がまだ未完成だったためはじき飛ばされたスリッパは美亜子ではなく… 「えっ?」 スパコーン!! やっぱり春樹の顔面を襲った。 「…い、痛いんですけど」 しかし哀れ春樹。二人はそれどころではなかった。 自分の一撃を防御されて美亜子はキレていたのだ。 再びスリッパをどこからともなく取りだし(しかも二刀流、いや2スリッパ流か?)淳二に猛烈なラッシュをかける。 「おのれぇぇ、『参拾八式・十六夜花吹雪!!』」 しかし淳二はさらにこの技にも対処する秘策を用意していたのだ。 「なんのっ、真田忍法『身代わりの術』」 すぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱんぱん!!!! 「やめやめやめやめやめやめやめやめやめやめやめやめやめやめやめやめやめやめやめやめやめやめやめやめやめやめやめやめやめやめやめやめやめやめやめやめやめやめやめてぇぇん(?)」 くらっていたのは春樹。 合計38発のスリッパびんたをもらって悶絶した。 「あ…、星が…見える…」 ぱた。 「ちょっと淳二、なんて事するのよ?」 自分がダメージを与えたことを棚に上げて淳二を非難する美亜子の図。 「すまんなハル。安らかに成仏してくれや」 注:死んでません。 真田家家訓:「他人を犠牲にしても自分だけは生き延びるべし」
そして保健委員の香澄の強制により到着早々保健室へ。 「あら、ハルちゃん。いいところに来たわね〜? おね〜さんとお茶しない?」 白楊高校、保健室の天使(自称)立花なつめがにこやかに春樹を迎えた。 というか、春樹と言えばすでに保健室の常連であり、なつめのお気に入りであった。 この保護欲をそそりまくるあたりが可愛い、とはなつめの弁である。 「大丈夫? ハルちゃん。最近物騒だから気をつけなさいよ。誰にやられたの?」
「しょうがないか…」 仕方なく学食へ行こうとする春樹。 だが、学食へ行けば広奈と一緒に食事ができるかもしれない!! いつもならば屋上で弁当を食べようと誘ってくる淳二、美亜子、輪の3人もなぜか今日はいない。 が、廊下に出た春樹はばったりと3人と会ってしまう。 「あ、今日は僕お弁当を忘れちゃって。だから屋上へは行けないよ。御免ね」 そういって立ち去ろうとするが… 「おっ、ちょうどいいや、オレらも今日は学食なんだ。一緒に行くべ」 結局いつものメンバーでの昼食となってしまった。 ちなみに広奈は四天王に給仕をさせつつ、本日も全メニュー制覇の偉業を成し遂げていた。
キーパーをつとめる春樹の元に広奈FC四天王が襲いかかった。 「やつにJ.S.A.をかけるぞ」 「「おう」」 「ジェットォォ!!」 「三位一体ィィィ!!」 「アタァァァァァァァック!!!」 物凄い勢いで3人がゴールに詰め寄る。 しかし…。 「毎度毎度ワンパターンだ」 ひょい。 ゴール際まで戻っていた輪があっさりとボールを奪う。 「「「なにぃ??」」」 注:J.S.A.は急に止まれない。 どんがらがっしゃーん。 ……さようなら春樹。君の捨て身のファインセーブを僕らは忘れない。
“天使のなっちゃん”がにこやかに迎えてくれた。 「あら、いいところに来たわね〜。おね〜さんと珈琲でも飲まない?」
「おう春樹。どういう理屈かしらんがおまえの弁当箱があたしの鞄に入ってたぞ」 そして真理は弁当箱を振って見せた。 カラカラ…。 明らかに何も入っていない音がした。 「うぅぅぅ、もういいですぅ」 「なんだ、わるかったよ、帰りにラキピでも寄っていくか? うん、寄っていこう、ほれ行くぞ」 強引に話を持って行かれる春樹。 というか春樹は女性の頼みを断れない性格である。 「…分かりました」 そして二人が玄関を出ると買い出しに行っていたと思われる広奈とばったり……。 「あら、春樹さん。さようなら」 どっさりと菓子パンの入ったビニール袋を手に、広奈がにこやかに春樹にあいさつする。 「あ、武田さん。……あ、えと、この人は…」 ものの見事に取り乱す春樹。 このままでは広奈にあらぬ誤解をされてしまう。 「さぁ、春樹、早く行くぞ」 が、皆まで言わせず強引に腕を組んで歩き出す真理。 「まぁ、春樹さん。…お幸せに(はあと)」
広奈の誤解はしばらく続く。
そんな春樹の様子を教室の窓から見つめていた瑠華が、ため息とともにそうつぶやいた。 「あれのどこに潜在能力があるというのだ…」 今日一日何気に春樹のことを観察していたが、瑠華の目にはやはりとても“戦士”に向いているようには見えなかった。 むしろやることなすこと常に最悪の結果を招いている、単なる運の悪いやつって感じである。 「姫には悪いが、今回のことは明らかに見込み違いだ。…それを証明してみせる」 さらりと髪をかき上げると、瑠華はひらりと身を翻し教室をあとにした。
屋上へのドアの鍵がなかったからである。 今日はみずがめ座流星群の極大日。 天文部の春樹は夜遅くまで屋上で天体観測の予定である。 これから屋上でその準備をしようとしたところだったが鍵がない。 天文部の部員は春樹一人。 自分以外に屋上への鍵を借りる人がいるとも思えなかったが、ともかく春樹は屋上への階段へと向かってみることにした。 がちゃっ…。 「開いてる…」 屋上へのドアは鍵が開いていた。 「誰だろ?」 ドアは二つある。 4階から屋上へ向かう階段に通じるドアと、その階段を上り終えた先にある、屋上へのドア。 そして春樹がその二つ目のドアのノブに触れたとき…。 がちゃ。 「あっ…」 ドアは向こう側から開いていた。 開いたドアの向こうは強い西日でオレンジ色に染まっていた。 ふわりと風が流れ、長い黒髪がゆらゆら揺れる。 ドアの向こう、明智瑠華が春樹の顔を値踏みするように見上げていた。 冷徹さすら感じさせる無表情の美貌。 眉の辺りで切りそろえられた日本人形を思わせるような髪の下、少々釣り目気味の瑠華の瞳が春樹の目を見据えている。 その目に引き込まれそうになり、春樹は息が詰まった。 「…どうした? 屋上に用があるのではないのか?」 そう言われて初めて春樹は我に返った。 「え、あ、…うん」 すっ、と瑠華は春樹から目線を逸らし、一歩後ろに下がった。 引き込まれるように春樹はドアをくぐり屋上へと足を踏み入れた。 がちゃ。 屋上のドアは内側と外側両方に鍵穴がある。 瑠華は黙って外側から鍵をかけたのだった。 これで誰も屋上へは来れなくなる。 と同時に鍵がなければ屋上から出られない。 瑠華はスカートのポケットに鍵を入れると、その美しい髪をなびかせてくるりと後ろを向いた。 濃紺を基調としたシックで大人っぽい服装に腰まで届く黒髪。 思わず見とれてしまう後姿だった。 すたすたと歩いていく瑠華に、春樹は半ば呆然とした気分が抜けきらないまま声をかけた。 「あの、ここで…」 何をしていたの? と聞く前に瑠華が答えていた。 「絵を描いていた」 春樹が瑠華の前方に目をやると、そこには描きかけとおぼしきキャンパス一式があった。 そういえば明智さんは美術部だっけ…。 妙に茫洋とする意識…、春樹は顔が上気しているのを自覚した。 (ぼ、僕なんでこんなにドキドキしてるんだろ) 単に普段まったく会話をしたことがない瑠華と、初めて言葉を交わしたので少々驚いていただけである。 というか、正直春樹は物凄い美人で常に仏頂面、他人とまったく馴れ合わない瑠華を怖がっていたわけで…。 そんな瑠華が屋上にいきなりいたのだからびっくりして当たり前であった。 その瑠華はと言えば春樹に背を向けたままキャンパスの前に戻り、再び鉛筆を手にしていた。 (僕も準備しないと…) 春樹は天体ドームに入るとなるべく静かに今夜の観測の準備を始めた。 まだ周りが明るいうちに天体写真撮影用のカメラを望遠鏡にセットし、星図や懐中電灯などを用意するだけである。 準備といってもそれほど時間はかからない。 ものの5分ほどで仕事を終えた春樹はちょっと困っていた。 ここから出るには瑠華に鍵を開けてもらわなければならない。 てことは、瑠華に話しかけないといけないのだ。 が、その瑠華は集中した様子でキャンパスに鉛筆を走らせている。 (どうしよう…。邪魔をしちゃ悪いよね…) 心配りの人春樹は途方にくれていた。 結局春樹の下した決断は瑠華が絵を描き終えるまで何かして待つ、と言うものであった。 幸い、天体ドームの中には小さなほうき、望遠鏡をふくタオルなどの掃除要具が一式そろっている。 「…掃除してようかな」 掃き掃き…、拭き拭き…。 「ふぅ」 拭き拭き…、掃き掃き…。 「よいしょ、よいしょ」 いつの間にか春樹は掃除に夢中になっていた。 一方その頃…。
その手はほとんど無意識のうちにキャンパスに絵を描いてはいたが、瑠華は頭の中では別なことを考えていた。 今回の瑠華の作戦は以下の通り。 屋上で春樹を待ち伏せする。(屋上にいる口実として絵を描いて待っている) 春樹が来たら鍵をかける。(理由を聞かれたら誰か来たら気が散るからと答える予定だった) すると春樹は鍵をもらわないと帰れないので自分のところへ来る。 それをきっかけに多少の会話を試みる。 他人を交えず二人きりで話をするための、これは瑠華なりの最善策であった。 …というか、春樹と話をするくらいでこれだけ大掛かりな策を考えるあたりが瑠華らしい。 はっきり言えば瑠華は人と話をするのが、特に自分から話しかけるのが大の苦手なのである。 それゆえ、半ば強制的に春樹のほうから自分に話しかけざるを得ないような状況を作り出したのであった。 が、策士策に溺れる。 瑠華はいつまで待っても春樹がドームから出てこないという状況を想定していなかった。 …いらいら。 ……いらいらいらいら。 どう考えても瑠華はのんびり屋さんな方ではない。 時間とともに瑠華の機嫌は著しく悪くなっていた…。
ちょっと汗をかくくらいに掃除に熱中してしまった。 おかげで天体ドームの中は埃ひとつ落ちていないぴっかぴかである。 「そろそろ明智さんも終わったかな?」 時計を見ると5時。屋上に来てから1時間半が経過していた。 がちゃ…。 なるべく音を立てないように春樹は天体ドームの入口のドアを閉めた。 そしてドームの建物越しに恐る恐る瑠華のいるほうを覗き込む。 ぎろっ。 思いっきり目が合った。 というか睨まれた。 (…お、怒ってる) びびる春樹。 だが、怖がっていてもしょうがない。 こうなった以上瑠華に話しかけて鍵を開けてもらわないと帰れないじゃないか…。 春樹はゆっくりと瑠華に近づくと消え入るような声でこう言った。 「邪魔してごめんなさい。あの、鍵を…、開けてほしいんだけど……」 瑠華は無表情のまま頷いた。 「そうか…」 そしてポケットに手を入れた。
顔こそ無表情だったが実は瑠華の内心はえらい葛藤中であった。 しかし、いかんせん対人関係の経験がまったくない瑠華にとって、会話のきっかけを見つけるという簡単なことですら、至難の業であった。 (くそっ、何のためにこれまで待っていたんだ。なにかきっかけを…) ぎりっ。 ポケットの中で鍵を握り締めたまま瑠華は固まっていた。 やがて内心の葛藤が表情に表れだした。 自分の顔が引きつっているのを瑠華は絶望的な思いとともに自覚していた。 (きっかけだ、きっかけ。きっかけさえあれば…。きっかけきっかけ…) 瑠華の頭の中で“きっかけ号”がカラカラ音を立てて走り回っている。 そろそろ頭から湯気が出そうだった…。
春樹はえらい勢いで困っていた。 鍵を渡してくれるかと思った瑠華だったがポケットに手を突っ込んだまま硬直している。 しかもこわばった表情、あらぬ方向を向いたままの視線、うつむいた顔、あげくその口はぶつぶつと「きっかけだ…きっかけ」と呟いていた。 (どうしよう、明智さんが壊れちゃってる) 思わず「大丈夫?」と聞きそうになった春樹だったがその瞬間、瑠華の表情が一変した。 ぺかっ、という効果音が出そうな勢いで、突如にっこりと笑ったのである。 びくっ。 春樹は硬直し、目が点になった。 「すこし、わらわと話でもしてゆかぬか? なに、たいした時間は取らせぬぞよ」 そう言ってにかっ。 …………。 春樹は、学校の屋上で宇宙人と遭遇したような、そんな驚きに打ちのめされ、すっかり我を忘れていた。 硬直したままカクカクと首だけ縦に振る。 「うむ。ではしばしの間、相手になってたもれ」 瑠華はそう言ってまたまたにっこり笑い、その後“カン”と音がしそうな勢いで再び元の鉄面皮へと戻った。 心なしか瑠華の顔が赤い。 が、話をしようと言った瑠華だったが、その後口を開かなかった。 「………………………………………………………………………………」 春樹は辛抱強く瑠華が話しかけてくるのを待つ。 「………………………………………………………………………………」 重苦しい空気が流れていた。 この凄まじいプレッシャーに先に耐え切れなくなったのは春樹だった。 思わず瑠華から目線をそらし、と言うか目線を泳がせた春樹は、ふと瑠華の描きかけの絵を発見した。 てくてくとその絵の前に移動してまじまじと見つめる。 夕暮れの函館の町並みが力強いタッチで見事に描かれている。 「…絵、上手なんだ」 「たいしたものではない」 硬直していた空気がようやく流れ出していた。 「ううん、僕、自分が絵を描くの下手だから、絵が上手な人ってホントにすごいと思う」 心底感心した様子の春樹の声。 「単に昔から絵を描くのが好きだっただけだ。絵を描いている間は自分自身と向き合える気がするから…」 瑠華の顔はいつもの鉄面皮ではなかった。 どこかほっとしたような、穏やかな表情が浮かんでいた。 「そっか、なんか分かる気がするよ。絵を描くのって自分の世界を作るってことだもんね」 その言葉に瑠華は強く頷いた。 「ああ。その時間だけは、私のものだ。その時間だけは、私という存在を確信できる…」 春樹の気のせいかもしれないが、そう言う瑠華の顔は、微笑ともとれる表情が浮かんでいた。 入学以来笑った顔を見たことがないと言う伝説の女明智瑠華。 (…僕ひょっとしてすごいもの見ちゃったのかも) 思わず見とれる春樹。 「どうした?」 「えっ、あ、…なんでもないよ」 春樹は慌ててパタパタと手を振った。 「あ、それよりごめんなさい。絵、描く邪魔しちゃったでしょ」 苦笑いを浮かべて春樹が詫びる。 「いや、別に…」 「………」 「………」 再び会話が止まってしまった。
瑠華の顔が再び固まる。 (なにか、話題…、話題話題…) 今度は“話題号”が瑠華の頭の中をカラカラ走り回る。 狼狽した瑠華は唐突にとんでもないことを言い出してしまった。 「もともとお前と話をしようと思って待っていたのだ」 「えっ?」 春樹はそれを聞いて驚きの表情を浮かべ、ついで顔が真っ赤になった。 (あっ、わ、私は何を言っているのだ。これではあらぬ解釈をされかねぬではないか) 焦る瑠華。しかし、いかんせん彼女はこういったことに免疫がない。 というかまともに男性と会話することすらこれまでなかった彼女である。 で、どつぼにはまりつつあった。 「べ、別に変な意味ではない。単にもっとお前のことを知りたくて…」 「ぼ、僕のこと?」 ますます春樹の顔が赤く染まっていく。どう見ても夕日のせいではなかった。 明らかに春樹は誤解している。 (ぬぅ…、私としたことが何たる有様だ…。情けない…) 春樹の戦士としての資質を確かめるはずが、何故こんな事態になったのか…。 瑠華は悔恨に打ちひしがれ、今度こそ黙ってしまった。 「………………………………………………………………………………」 「………………………………………………………………………………」 先ほどよりも一層重い空気が場を支配していた。 そんな中春樹は彼なりにある解釈をしていた。 (明智さんって怖い人だと思ってたけど、多分違う。きっとすごく口下手で自分の気持ちを人に伝えるのが苦手な人なんだ) ピンポン大正解。 そう思うとかえって気持ちが楽になった。 これまで瑠華に対して身構えていた部分が氷解していく。 (…もしかして明智さん、単に僕と友達になりたかったのかな? だったらきちんとその気持ちに応えてあげなくちゃ) これは微妙に間違っていたが、ともかく春樹は意外に思い込みが激しいところがある。 いったん解釈するとそのまま突っ走ってしまうのである。 で、何とかコミュニケーションを試みようと、当たり障りのない話題を選んで話しかけた。 「明智さん、星は好き?」 はっ、と一瞬瑠華の顔に緊張が走ったが、やがて質問の意図を理解し、こくりと頷いた。 「ああ、星はいい」 「あ、そうなんだ…」 春樹の表情がようやくほころんだ。 「えと、今日はみずがめ座流星群の極大日なんだ。運がよければ1時間に15個くらいの流星が見られると思う。…あの、もし興味があるなら一緒に観測、どうかな?」 言った後で春樹は固まった。 (あっ、…僕ってば何言ってるんだろ) 夜の校舎、誰もいない屋上に二人きりで天体観測…。 それも自分は男で瑠華は女の子だ。 第一瑠華とは今初めて会話をした仲である。いくらなんでも来るはずないではないか。
「分かった」 瑠華は平然と了承した。 「えっ…」 春樹、本日二回目の目が点。 「どうした? 何か不都合でもあったか?」 「あ、ううん」 ここで春樹はまた別の解釈をした。 (もしかして明智さん天文部に入りたかったのかな?) だとしたらこれは部員を増やす絶好の機会と言える。 部員は自分だけ、という寂しい状況から抜け出せるかもしれない。 (よし、頑張って勧誘しよう) またまた見当違いの思い込みであるが、ともかく春樹は多少やる気になっていた。 「…で、観測は何時からだ?」 「えっと、9時くらいから流星群が見られるらしいんで、8時半には始めるつもりだったけど」 「そうか、食事はどうする?」 「あ、その辺のコンビニでお弁当を買ってきて食べようかと思ってたけど…」 それを聞いた瑠華は腕時計で時間を確認すると、2秒ほど考え込み、やがて春樹にこう言った。 「8時半まで3時間ある。少し付き合え、外で食事するのも悪くないだろう」 瑠華は屋上の鍵を取り出すと驚く春樹に渡した。 「そうだな、6時に校門で待て。少し準備してくる」 有無を言わせぬ口調だった。 春樹がプレッシャーに押されるようにして頷くのを見て、瑠華はさらりと髪をかき上げた。 「6時に校門だ。遅れるな」 春樹が呆然としていると、瑠華はさっさとキャンパスを片付け、風のように屋上からいなくなっていた。
約束五分前には律儀に校門前で瑠華を待っていた。 と、その春樹に後ろから声がかけられた。 「あら、春樹さん」 (その声は!) 聞き間違えるはずもない。 これほどの美声の持ち主はこの学校でただ一人。 「武田さん…」 振り返った春樹に広奈はにっこりと笑みを返した。 「今お帰りですか?」 「え、あ、ちょっと…、待ち合わせを…」 ついつい、正直にそう返事してしまった。 そして春樹は事態の深刻さに遅まきながら気づいた。 よく考えてみると自分はこれから明智瑠華と食事に行く(らしい)のだ。 その待ち合わせ現場をこのままでは広奈に目撃されてしまう…。 内心慌てまくる春樹だったが、広奈の口から漏れたのは死刑宣告に等しい一言だった。 「まぁ、でしたらわたくしと同じですわね。迎えが来るまで一緒に待ちましょう」 「は、はい」 (あうぅぅ、どうか広奈さんの迎えのほうが先に来ますように…) このときほど春樹は広奈の執事板垣の到着を待ち焦がれたことはなかった。 が、程なく遠方から甲高いエキゾーストが近づいてきた。 二人が目をやると校門めがけ、黒いバイクが迫ってきた。 (??) そして、いぶかしがる春樹の目の前で停止した。 軽快なエキゾーストサウンドを奏でるそのバイクはフューエルタンクのところにウィングのマークと誇らしげな「HONDA」のロゴ。 黒いライダースーツに黒いヘルメット。 いったい誰だか分からないその人物は、軽やかにバイクから降りると、呆然としている春樹にヘルメットを手渡した。 「え?」 固まる春樹。 だが、その人物は再びくるりと背を向けるとバイクにまたがった。 そして春樹のほうを向く。 「……………」 が、春樹は固まったままである。 無理もない、誰だか分からないライダーに何の説明もなしにヘルメットを渡されたのだ。 「あの、春樹さん、待ち合わせって…?」 事態を見守っていた広奈に声をかけられ、春樹はようやくフリーズ状態から抜け出した。 「え、でも僕が待ち合わせたのは…、あっ」 春樹の言葉が中途で止まったのはそのライダーがバイザーをあげたからである。 切れ長の双眸が、鋭く研磨された刀のような輝きを放っていた。 「明智さん?」 ようやく春樹はこのライダーが瑠華だと認識できたらしい。 「なにをしている。早く乗れ」 ヘルメット越しに聞こえたのも、間違いなく瑠華の声だった。 春樹がチラッと広奈のほうを見ると、彼女は頬に手を当て「まぁ」のポーズ。 (あうぅぅぅぅぅ) 春樹は心の中で涙を流しつつ、のろのろとそのヘルメットをかぶった。 “ハートに稲妻”マークが入ったヘルメットはなぜかどこかでかいだことのある香水の香りがした。 そして広奈の視線を痛いほど感じつつ、恐る恐る瑠華の後ろにまたがる。 「え、えと…」 そして、ちまっ、と申し訳程度に瑠華のライダースーツの端をつまんだ。 「…………死にたいのか?」 どこか呆れた様な瑠華の声。 「へっ?」 驚く間もなく瑠華の両手が後ろに伸びてきて、春樹の両手を掴んだ。 そしてぐいっと引っ張ると春樹の手を自分のおなかの辺りに回した。 「あ…」 ちょうど、春樹は瑠華を後ろから思いっきり抱きしめているような格好。 「そうやってしがみついていろ」 完全な命令口調。 かくして春樹はその格好のままコチコチに固まった。 春樹は密着した瑠華のウェストの細さに驚き、広奈の視線を想像してブルーになり、初めて乗るバイクへの恐怖を感じ、つまり、狼狽のきわみであった。 そんな春樹の永劫とも思えた時間を終わらせたのは瑠華であった。 「では行くぞ」 声とともに瑠華はバイザーを降ろし、愛機「CB400 SUPER FOUR」を発進させた。 HYPER VTEC直4水冷エンジンが軽快に回り、あっという間に広奈の姿が小さくなっていった…。 遠ざかる二人を眺め、広奈は再び「まぁ…」と呟いた。
夜の帳が下りつつある。 街灯もなく、周りを木々に囲まれたこの場所は非常に暗い。 なんでこんな所に停まるんだろう、と思う間もなく、瑠華から声をかけられた。 「着いたぞ」 「えっ、ここ?」 瑠華に促され、春樹は事態を呑み込めないままバイクから降りた。 そしてヘルメットを脱ぐ。 見ると瑠華もちょうどヘルメットを脱いだところだった。 仕舞い込んでいた長い髪の毛が開放される。 「ふう…」 少し息を吐くと瑠華はさらりと髪の毛をかき上げた。 それが春樹には、たまらなくセクシィな仕草に見えた。 ちょっとどぎまぎ。 「ここから先は歩きだ。ついてこい」 が、そんな春樹の妙な煩悩を知ってか知らずか、瑠華はヘルメットをバイクに置くとすたすたと歩き始めた。 春樹もそれに続く。 木々に囲まれた狭い遊歩道らしきところを5分ほど歩く。 風が吹くたびに木々がざわめき、お化けでも出そうなほどに怖い。 ほとんど肝試しの気分である。 春樹は瑠華にしがみつきたくなる衝動を抑えるのに必死だった。 やがて瑠華の足が止まったのは大きな碑の前であった。 「碧血碑だ。戊辰戦争で犠牲になった旧幕府軍の霊を弔っている…」 「………」 何故こんなところに瑠華は自分を連れてきたのだろうか…。 春樹はそう思ったが、ふと見ると碧血碑の説明が書いてある看板を発見した。 暗くて見えにくかったが読んでみた。 『箱館戦争で戦死した土方歳三や中島三郎助父子をはじめ、北関東から東北各地での旧幕府脱走軍戦死者の霊を弔っているのが、この碧血碑である。 碑石は、7回忌にあたる明治8(1875)年、大鳥圭介や榎本武揚らの協賛を得て、東京から船で運ばれたもので、碑の題字は、戦争当時陸軍奉行であった大鳥圭介の書といわれている。 碑の台座裏に、碑建立の由来を示す16文字の漢字が刻まれているが、その表現からは、旧幕府脱走軍の霊を公然と弔うには支障があったことが推測される。 なお、碧血とは「義に殉じて流した武人の血は3年たつと碧色になる」という、中国の故事によるものである。函館市』 (土方歳三か…) 名前くらいは春樹でも知っていた。 いや、函館の市民ならばほとんどの人は名前くらいは知っている。 五稜郭のお土産屋には彼の名を関したグッツがたくさん売っているほどだ。 だが、彼がこんな所に弔われているとは知らなかった。 「…土方歳三はここにはいない。彼の死体は行方不明になったのだ。結局どこに葬られたのかすら分からなかった」 淡々と、瑠華はそう言い、春樹の隣に立った。 そして春樹の顔を見つめ、まったく違う質問を切り出した。 「もし、今、この国が戊辰戦争のような戦乱に巻き込まれたら、お前はどうする?」 「えっ?」 質問の意図を理解するのにしばらくかかった。 なんと答えたらいいのだろうか…。 春樹が迷っていると瑠華はさらに聞いてきた。 「お前は、義に殉じて死ねるか?」 瑠華の口調は真剣そのものだった。 値踏みするような鋭い視線で、瑠華は春樹の返答を待った。 春樹は困惑した表情を浮かべ、こう答えた。 「…戦争は、いけないことだよ」 「……」 瑠華の目に失望の色が走ったが、春樹はそれに気付かず、さらに続けた。 「戦争は良くないよ。人が、たくさん死ぬから」 そしてきっぱりと言い切った。 「だから僕は昔の人みたいに戦えない。…人を殺せない。絶対に」 「…そうか」 瑠華の口調はいつものように感情のこもらない平坦なものだった。 やがて瑠華は無言のままきびすを返した。 (純粋なのだ…、伊達春樹という人間は…) 小走りで自分のあとを追う春樹の気配を感じつつ、瑠華はそう考えていた。 学校で“戦争は悪いことです”と教わればそれをそのまま信じきってしまう。 …それが悪いことだとは思わない。 今の日本で平凡に生きていくなら、そう信じてしまうのが一番良い。 だが、それは瑠華にしてみれば自分の頭でものを考えていないのと同義だった。 そんな人間では“戦士”にはなれない。 直江や武田のように客観的に歴史の流れを、戦いの意味を考えられる知識もない。 本多や真田のように大切なものを守るためには戦いを辞さぬ勇気もない。 (戦士にはなれぬ…。この男は純粋すぎる。…素直すぎる)
バイクにまたがったままの瑠華にヘルメットを返すと春樹は聞いた。 「あれ、降りないの?」 「…ああ、少し用を思い出した。観測は一人でやってくれ」 「あ、そう…。残念」 春樹は一瞬うつむいたが、すぐに気を取り直し微笑んだ。 「今日はどうもありがとう。夕食もご馳走になっちゃって…」 「いや、別に…」 「………」 「………」 また沈黙が流れた。 「じゃあ僕行くね」 「…ああ」 そうして春樹が校門をくぐり、瑠華が愛機を発進させようとした瞬間、それは起こった。
慌てて音のした方向を見ると、ガラス製の玄関の扉が粉々に割られており、そこには一人の生徒とおぼしき人影。 瑠華の視線はすぐにその生徒が放つ暗いオーラを捉えた。 「…魔王の瘴気に当てられているのか」 瑠華は慌ててバイクを停めるとヘルメットを脱ぎ、その生徒のいるほうへと走り出した。 「…えっ、あ、明智さん!」 慌てて春樹が後を追う。 その間にもガラスの破壊音は響いていた。 どうやらその生徒は手に持っているバットで次々と玄関のガラス戸を破壊しているらしい。 そして駆け寄った瑠華が鋭い声で詰問した。 「何をしている!」 街灯の光のおかげでその生徒の顔がようやく見えた。 眼鏡をかけたまじめそうな風貌。 知らない顔だったがおそらく3年生だろう。 「邪魔をするなっ、こんな学校さえなかったら…、くそっ」 再び生徒がバットをガラス戸へと叩き付けた。 ガシャーーーン!!! 「馬鹿が…」 瑠華はそう言うとその身に葛の葉姫を降臨させた。 「やれやれ、最近忙しいことじゃな」 そして葛の葉が口の中で呪を唱える。 目の前のガラス戸を粉砕した生徒はその破壊衝動の矛先を瑠華へと向けた。 バットを構えて瑠華へと突進してくる。 『悪霊退さ…』 余裕の表情で魔を払う呪を唱えた葛の葉だったがそれは途中でさえぎられた。 「危ないっ!!」 後ろから来た春樹が瑠華の身体を押しのけたのだった。 「なっ」 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁっ」 ほとんど悲鳴のような声を上げ、その生徒はバットを振り回した。
それはとっさに顔をかばった春樹の右腕を直撃していた。 手首から先がだらりと垂れ下がっている。 明らかに骨が折れていた。 「このたわけが、余計なことを…」 葛の葉は舌打ちして再び呪を唱える。 だが、春樹は瑠華の様子など目に入っていない。 傷みを堪えつつ生徒と瑠華の間に割って入った。 「明智さん早く逃げて!!!」 (なんだと…) 葛の葉を降臨させてはいるが、瑠華の意識も残っている。 春樹のその姿は瑠華を驚愕させるに十分だった。 そして春樹はその生徒に語りかけていた。 「駄目だよ、良くないよ…、そんなことしても、悲しいだけだよ」 おそらくは想像を絶する激痛を堪えつつ、春樹は必死にその生徒を止めようとしている。 カラン…。 生徒がバットを落とした。 呆然とした顔をして春樹の姿をただ見つめている。 (瘴気が弱まった?) その隙を葛の葉は見逃さなかった。 『悪霊退散! 急急如律令!!』 「わぁぁぁぁぁぁっ」 ぱたっ。 魂消るような悲鳴を上げてその生徒は意識を失い、倒れこんだ。 「えっ?」 目の前で起こったことが信じられず、春樹が唖然と振り返った。 そのとき。
駆けつけた警備員と思しき声と懐中電灯の明かりが近づいてきた。 「逃げなきゃ」 何かに気付いた春樹が慌てて瑠華に詰め寄る。 「…僕に怪我をさせたことがばれたら、あの人大変なことになっちゃう」 春樹は問答無用で瑠華の手を握ると、開いていた扉から校舎へと駆け込んだ。 左手で瑠華の右手を掴んだまま、全力疾走で4階までの階段を駆けあがる。 屋上への階段、その前の扉。 「鍵をよこせ」 瑠華の声に春樹はポケットに入っていた鍵を手渡した。 ドアを開けるとすぐに鍵を閉めなおす。 そして屋上まで駆け上がり、またドアを開け、閉める。 「はぁはぁはぁはぁ…」 「はぁはぁはぁはぁ…」 さすがに二人とも息が切れていた。 天体ドームの壁に寄りかかり、春樹はぺたんと座り込んだ。 「明智さん、大丈夫だった? 怪我はない?」 息を切らしつつ春樹がそれでも瑠華のことを気遣う。 「馬鹿が、お前のほうが重傷だ。右手を見てみろ」 「えっ?」 ぷらーん。 手首から先があらぬ方向に曲がっていた。 「あ…」 春樹はそれを見て、世にも悲しそうな表情を作り、瑠華のほうを見、もう一度右手を見た。 「……………はぅ」 そしてそのまま卒倒した。
春樹の骨折は葛の葉の術で治療済みである。 だが、春樹を起こす術はまだかけていない。 瑠華は気絶したままの春樹を膝枕し、その顔を見ながら物思いに耽っていた。 (もう少し見守ってみるか…、もしかしたら姫の言うとおり“戦士”の素質を持っているかもしれない) 瑠華の考えは少しだけ変わっていた。 あの時春樹は命がけで自分を守ってくれていた。 そして自分が怪我をしても加害者を思いやれる心の優しさ、強さ。 春樹は間違いなく“義に殉じて死ぬ”心を持っていることを証明してみせたのだ。 「まったく馬鹿なやつだ。余計なことをして余計な怪我をして…」 ぽたっ…。 春樹の頬に水滴が落ちる。 (涙? なぜ?) どうして自分は泣いているのだろうか。 いつも独りで生きてきた。 誰に頼ることもなく、独りきりで生きてきたのだ。 こうして誰かに助けてもらったことなどなかった。 こうして誰かを介抱した経験も初めてだった。 『あんたはもうちょっと他人に甘えることを覚えたほうがいいわね』 なつめはいつもそう言っていたな…。 これが他人に甘えるという感覚なのだろうか、誰かに依存するという心の弱さなのだろうか…。 「分からない…」 だが、今日は普段の100倍はいろんな感情を使った気がする。 「悪くない…、こういうのも」 瑠華は涙を堪えるために空を見た。 視線の先、満天の星空を切り裂いてひときわ輝く光が流れた。 「流星群……。そうか、始まったか」 瑠華は微笑み、涙をぬぐうと、ゆさゆさと春樹をゆすった。 「起きろ、伊達。天体観測の時間だ」 その声はどこまでも優しかった。
(読み終わったあと、聞いてみてください)
なんか過去最高のラブコメ作品になってしまいました、あはは…。 最近陰の薄い瑠華を活躍させ、かつ某読者さんからの「瑠華×春樹」カップリングへのリクエストに応えるべく書いたのがこれです。 舞台は第一章が始まる少し前ってことになってます。 だから現代編第三話という形にしましたが、どちらかと言うと外伝色が強い作品でもあります。 お断りしておきますが、序章現代編は完結していません。 もうちょっと書く気でいますので、このお話の続きが平安編の第一話ではありません。 その辺ちょっと発表の順番がばらばらですがご了承くださいませ。 ともあれ、この作品は瑠華ファンと春樹ファンの皆様へ感謝の気持ちを込めてお届けしました。 それと、今回は鬼束ちひろさんの「流星群」と言う曲をエンディングテーマにして(というか想定して)みました。 ぜひ読み終わった直後に聞いてみてください。 結構ね、いいですよ。 では、感想などぜひお寄せくださいませ。
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