嵐を呼ぶレーサー“直江雨続”の

『嵐を呼ぶレース参戦記』


第十九話「嵐を呼ぶ後継車選び」

◇嵐のプロローグ◇


2006年9月11日未明。

深夜二時ごろから明け方にかけて、この日の南関東地方は記録的な豪雨と落雷に見舞われた。

稲光が数秒ごとにあたりを昼間のように照らし、とどろく雷鳴と土砂降りの雨が屋根を叩く音がおそらくは数百万人の安眠を妨害したことだろう。

実際私もあまり経験したことの無い猛烈な雷を眺めつつ、窓辺から動けなかった。

恐るべき自然の猛威。

ちなみにこのとき落雷で東京、神奈川、埼玉の合計1万4000世帯が停電したそうだ。

そんな秋雨前線がもたらした局地的な嵐が印象深い9月11日。


それは私が嵐を呼ぶアルトワークスを手放し、そして嵐を呼ぶ後継車と出会った日である…。



◇嵐を呼ぶレーサー最大の敵◇


2006年9月。悩みに悩んだ末、嵐を呼ぶアルトワークスを手放すことを決断した私こと、嵐を呼ぶレーサー直江雨続は、早速次の難題に直面していた。

すなわち、アルトワークスの後継となり、私の二台目の愛車となるマシンの選定である。

やはり嵐を呼ぶレーサーが乗る以上、速く、カッコよく、そして私にあふれるほどのネタを提供してくれるマシンが望ましい。

出来れば次はドリフトにも挑戦してみたいし、もっと互角以上の勝負を実戦レースで体験してみたいし、桶スポでのジムカーナでは“はじめてクラス”の上位に食い込んでみたい。

となれば、さらに戦闘力のあるマシンを狙うのは自然の摂理。

そして全世界1億9千万人のファンが憧れを抱くような素敵な車に乗りたいものである。

中古車情報誌やインターネットの中古車サイトを日々眺めながら、思索(妄想)にふける私である。

ちなみに、妄想にふけまくったあげく、執筆時間が足りなくなったのでブログを閉鎖モードにしたのは、私と君だけの秘密だ。

「どれにしようかな〜♪ あれもいいなっ。でもやっぱりこっちも捨てがたいなぁ〜」

そしてそんな日々こそ実は一番楽しいのである。


さて…、


そんな夢と希望が詰まった後継車を、私一人で勝手に決められたのならば、話は早かっただろう。

だが、強大な壁、そしてある意味最強の敵がこの問題には立ちふさがっていたのである。

すなわち。




嫁。




ヨメである。

奥さん、マイワイフである。

いや、正確にはまだ籍を入れていないので、彼女であるが、まぁ、事実上ヨメである。

当然のことながら、今後一緒に暮らすヨメとはよく相談した上で後継車を決めようと、将来の愛妻家であるところの私は思っていたわけである。

なので、早速相談を持ちかけた。


◇第一回目の交渉(雨続の野望)◇


「あのさ、アルトワークスの次はやっぱりS2000を買おうかと思うんだけど」

「ふーん。いくら?」

「えっと、まぁ、その、ちょっと安いやつを中古で探して、……150万くらいかなっ?」

「そのお金は誰が出すの?」

「そりゃーもちろん、夫婦で使うわけだし…」

「……………(目から殺人光線)」

「はっ、私が全額出します」

「で、それを買ったら雨続くんの貯金の残高は?」

「(ごにょごにょ)くらいになるかと…」

「結婚式は?」

「えっと、なるべくならやらない方向で…」

「結婚指輪は?」

「はっ、それはもう、なるべく無いままで済ませる方向で…」

「………(ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ)」←怒りのオーラ発生中。

「すみませんでしたーーーっ」



第一回目の交渉…、決裂。


◇第二回目の交渉(雨続の譲歩)◇


このように翌年には(多分)結婚式を控え、(きっと)結婚指輪やらなにやらを買わなければならない立場の私にとって、S2000はちょっと高すぎました…。

そもそも、ヨメと一緒に暮らすために私は今年の春に引越しを敢行し、またまた敷金礼金その他で大金が吹き飛び、あげく家賃と駐車場代が高騰。

さらには一攫千金を狙って始めた株でも大失敗。結局30万円ほどの大損を出し、無残に全面撤退したことで車に割ける私の予算は大幅に減っていたのです…。

そんな事情もあり、S2000はやっぱり無理そうなのであきらめます。作戦変更です。

第二回目の交渉に挑戦ですっ!


「ってことで、別の車にすることにした」

「なに?」

「MR-Sかロードスター。これならS2000の半分くらいの予算80万円でなんとか」

「なんでみんなオープンカーなの?」

「好きなんだ。走ってて爽快だし、何より速いし楽しいし」

「わたしは嫌い」

「そこを何とか…」

「だめ。日焼けするし。狭いし。荷物積めないし。それに二人乗りの車は却下」

「却下ですか…、そうですか…」


駄目です隊長。

二度目の交渉も決裂です…。


◇第三回目の交渉(逆襲のヨメ)◇


「そもそも、車って必要なの?」

「と、おっしゃいますと…?」

おかしい。ヨメは年下なのになぜ私は敬語?

「駐車場代いくら?」

「月9000円です…」

「車に乗る頻度は?」

「まぁ、主に土日のみで、平日だと夜に秋ヶ瀬までカートしに行くとか、ちょっと本屋に行くとか」

「そんなことに80万円もする車を買う必要性はあるの?」

「あと、サーキットとかも走りたいなぁ、と」

「サーキット走るとどれくらいかかるの?」

「えーと、参加費が大体1万円くらいで、走った後エンジンオイルやミッションオイル、あるいはタイヤなんかも交換するとして、さらに1〜2万くらい?」

「ふーん…」

「えっと、その辺のお金はすべて自分で出しますが…」

「当たり前です」

「…はい」

「本当に車要るの?」

「…要ります。それはもう、ネタの為に」

「ネタなんてどうでもいいです」

「いやいや、我が人生ネタ人生。私からネタを取り上げたらブログとHPが…」

「そんなの別にどうでもいいです」

「うぬぅ…(そうだった。こいつは嵐を呼ぶレース参戦記もブログも全然読んでないんだった…)」

大変です。うちのヨメにはネタになるから、という私の最大の説得材料が通用しません。

そもそも嵐を呼ぶアルトワークスが、ネット上でどれだけのファンを抱えているかこいつは全然理解していません。

なので…。

「必要なときにレンタカーを借りるんじゃ駄目なの?」

「まぁ、それで色んな車を乗り比べるのも悪くないけど…」

「じゃあ、やっぱり車を買う必要ないんじゃないの?」

「うぐ…」


旗色が悪くなってきたので、私は一時戦略的撤退。

第三回目の交渉は限りなく私の不利なまま終了した…。

それにしても、最近の日本ではスポーツカーがことごとく絶滅の危機に瀕しているが、その理由が身をもってよくわかる気がする。

あくまで経済的、合理的に考えるとスポーツカーを買っても維持するだけで大変なのだ。

そして私とてわざわざ生活が苦しくなるようなことはしたくないわけだ。

そう、現実ってやつは厳しいのだ。

日本の国家財政くらい厳しい。


だがしかし、やっぱりクルマ好きにとってスポーツカーは永遠の憧れなのである。

NSX、RX-7、GT-R、スープラ、シルビア、セリカ、インテグラ…。

それらが次々と消えていく現実はあまりにも寂しい。

モータースポーツはその国にとって誇るべき文化。

自動車王国である日本がこんな体たらくでは世界中で笑われてしまうぞ。


日本の若者よ、スポーツカーに乗ろう!

モータースポーツは文化、スポーツカーは走る文化財だ。みんなで大事に守っていこうじゃないか。


ってことで大いなる使命に燃え、更なる交渉に挑むぞ。



◇第四回目の交渉(雨続の逆提案)◇


とはいえ、車の必要性を議論すると負けそうなので、あえてその部分はすっ飛ばした話し合いに持ち込もうとする私。

こんな感じで切り込んでみました。


「じゃあさ、仮に車を持つとしたらどんなのがいい?」

「………(しばし考える)」


作戦成功。ヨメ、結構真面目に考えております。

そして…。


「やっぱり、一番売れてるのがいいんじゃない?」

「…ワゴンRですか?」

「そう、それ。軽だし、売れてるから中古も安いだろうし。あと、今住んでるところなら、やっぱり小さくて小回りがきく車じゃないと」


なるほど、ヨメはヨメなりに車選びにはそれ相応の判断基準をお持ちのご様子。

まぁ、ヨメが指摘したとおりワゴンRは一世代前の型なら下手すると30万円も出せばそこそこ程度のいいスポーティなRRグレードのMT車が買えてしまいます。

そう言えばそのモデルはGT4にも出てましたね。

う〜む…。

しかし、私の中ではやはりもっと個性的なモデルに乗りたいという気持ちがあります。

みんなと同じ車は性格的に嫌なのです。右へ倣えではネタ人生は楽しめません。


「たくさん売れてるからパーツとかもいっぱいあるんでしょ?」


その手があったか!

確かにみんなと同じザクでも赤く塗って角をつけれは世界にひとつだけのシャア専用に。

みんなと同じワゴンRでも、あれこれ好みのパーツをつければ世界にひとつだけの雨続専用に…。

そうなれば通常の三倍の速さで走ったり、質量を持った残像を繰り出したり…(注:出来ません)


「ちょっと、考えさせてくれ…」


いけません。このままではヨメの口車に乗せられてしまいます。

そしていつの間にか何の変哲も無いワゴンRに乗せられてしまいかねません。

確かに日常のアシとして使うなら申し分ないので、説得されてしまいそうです。

いやいや、ちょっと待ってみようか。そもそも、こんなに簡単に丸め込まれては亭主の威厳というものが…。

まずいです。一度頭を冷やさなくては…。

ここも戦略的撤退です。

ワゴンRのことは忘れましょう。



◇第五回目の交渉(雨続の切り札)◇


「お互いの妥協点を見つけたぞ」

「なに?」

「まず、購入代金が安いこと。それから小さくて小回りがきく車であること。そして4人乗りであること。この条件ならOKだな?」

「………まぁ、いいけど」

「じゃあ、決めた。後継車はもうアレしかない」


これらの条件を満たし、かつネタとして申し分なく、速く、楽しく、私の愛着が強いマシンといえば…。

そうです。


アレです。


アレ。





「…どうせ、アルトワークスをまた買うんでしょ」

(゜Д゜)

OTL

「お願いだから先に言わないで…」

「予想通りだし別にいいけど、変なステッカーは貼らないこと」

「うぐ…」




◇交渉成立!◇


こうして、見事ヨメとの交渉に打ち勝った(?)私は後継車としてアルトワークスを購入することで合意。

早速嵐を呼ぶアルトワークスとの最後のドライブをかねて9月11日に有給を取り、近郊の中古車屋を巡って二代目アルトワークス探しをしてきたのである。


ってことで、候補その1


99年式アルトワークス 660 RS/Z

見ての通り最終型となる5代目のアルトワークスです。

軽自動車の規格が変わってから出たモデルなのでマシンのサイズが少し大きくなってます。

駆動方式はFF、走行距離6.5万km、修復暦無し、Wエアバッグ、ABS、キーレス、電動ドアミラー、純正14インチアルミ、CDコンポ、フジツボマフラー付き。

水冷直列3気筒インタークーラーターボDOHC12バルブのK6Aエンジン搭載の最上級モデルです。

エンジンスペックは最高出力 64ps(47.07kw)/6500rpm、最大トルク 10.8kg・m(105.91N・m)/3500rpm。

マフラーが換えてあるくらいでエンジンも足回りもノーマルとのこと。

お値段は65.8万円+車検2年つけて諸費用込みで806,120円。

見た感じ外見も内装もそれにエンジンルームも綺麗です。非常に程度のよい一台のようです。

車検が切れていたので敷地内をちょっとだけ動かしてみましたが、車内はいたって静か。

エアコンもよくきくし、エンジン音もあまり聞こえない快適空間です。

う〜ん、やっぱりいまどきの車ってこうなんだよね〜。

嵐を呼ぶアルトワークスの騒音と振動をフツーだと思った私の体には、この車は心地よすぎます。

見積もりをもらって次なる候補を見にさらにドライブ。


ってことで、候補その2


99年式アルトワークス 660 ie

駆動方式はFF、走行距離3.6万km、修復暦無し、社外足廻り、キーレス、純正14インチアルミ、CDコンポ。

ieグレードなのでエンジンは水冷直列3気筒SOHC6バルブのF6Aです。

エンジンスペックは最高出力 60ps(44.13kw)/6000rpm、最大トルク 8.5kg・m(83.36N・m)/4000rpmとRS/Zに比べると若干劣ります。

このマシンもエンジンはノーマルのままとのこと。

走行距離が少ないので、外装も内装も綺麗。

ちょっと試乗してみましたが、クラッチのつながりもいいし街乗りではほとんど文句なしの走りっぷり。

ただ、やはり快適仕様なのでエンジン音があまり聞こえません。

ま、いまどきの車って感じです。

お値段は57.9万円+諸費用で687,060円ナリ。車検は2008年7月までとたっぷり残ってます。

候補その1と比べると程度はほぼ互角、あとは64psのK6Aか60psのF6Aかの違いが12万円の差となっている感じ。

どっちがいいかなと悩みつつ、これも見積もりをもらって次のアルトワークスの元へGO!


ってことで、候補その3




98年式 アルトワークス スズキスポーツリミテッド

こちらはアルトワークスとしては4代目となる旧規格最後のモデル。

GT4にも登場しているスズキスポーツリミテッドの4WDです。

候補1と2が共にFFだったのと比べ、こいつは4WD。

嵐を呼ぶアルトワークスもまたFF。こいつは4WD。

どうせ乗り換えるなら四駆の走りを試してみたい気がします。

そしてこのマシン、前の二台と比べるとやっぱり小さい。

全長×全幅×全高が新規格で3395×1475×1450mmなのに対し、この旧規格ワークスは3295×1395×1385mm。

全長10センチ、全幅8センチ、全高6.5センチ小さいです。

見た目にも結構な違いとして認識できます。

駆動方式は4WD、走行距離5.9万km、修復暦あり、キーレス、アルミ、カセットデッキ。

スズキスポーツリミテッドはベースがieなので、エンジンは水冷直列3気筒SOHC6バルブのF6A。

ただし、さっきのieと違い最高出力 64ps(47.07kw)/6000rpm、最大トルク 10.0kg・m(98.07N・m)/4000rpmとパワーはちゃんと出ています。

ちなみに嵐を呼ぶアルトワークスは同じF6A搭載ながら、最高出力 61ps(44.87kw)/6000rpm、最大トルク 9.2kg・m(90.22N・m)/3500rpmです。

若干だけどパワーアップします。

そして私の目を奪ったのがBLITZ(ブリッツ)のブースト計と大森メーターの水温計。

多分前の持ち主がつけたであろう、それは私の心を軽く揺さぶった。

だいたいこんな物をつけたマシンはそりゃー、多かれ少なかれ走り屋仕様でいじってあるに決まっているからだ。

そして室内は思った以上に綺麗だし、シートはスズキスポーツのロゴ入りセミバケット。

さらにこのマシンのエンジンルームはこれまで見た3台の中で一番綺麗だった。


こんな感じのエンジンルーム。

そしてエンジンをかけると室内にはいい感じでF6Aサウンドが響くではないか。

やはり、こうでなくては…。

これと比べると前の2台は車内が静か過ぎてつまらない。まったくレーシーな感じを受けないのだ。


ってなわけで、このマシンにしようかな、と気持ちの天秤が傾きかけたとき。

上空から雨が落ちてきた。

前の2台を見たときは降っていなかった雨が、このタイミングで降り出したのである。

運命を感じる。


雨とはな…、これで決まりだな。


天もこのマシンを選べと言っているらしい。

直江雨続の次なる愛車は、何よりもが決め手となった。

二代目“嵐を呼ぶアルトワークス”には、こいつがふさわしい。


ちなみにお値段は42.9万円+諸費用で総支払額は541,720円。

最初の一台と比べると25万円安い。(一番安かったのが決め手という説もあるが気にするな)

ってことは、まぁ、80万円払ったつもりで、あまった25万円をチューニング費用にすればかなり楽しいマシンになりそうだ。

…するかどうかはまだ未定だが。

ちなみにこのマシン、なぜかスタッドレスタイヤを装着していた。

やれやれ、納車後すぐにネオバを買って履き替えねば。

それにタイミングベルトも念のため交換しておきたい…。


まぁ、そんなことを考えながらあっさり契約。

納車は9月25日の予定。

そして乗ってきた初代嵐を呼ぶアルトワークスはそのままこのお店で0円下取り。

これが永遠のお別れである。

お疲れ様、そしてこれまでの無事故ドライブをありがとう!


というわけで、今の私は二代目が来るのを今か今かと待ちわびている状態である。

まぁ、マシンが来たらB.A.R軍団の元に自慢しにいくとしよう。

それが何より楽しみだ。

そうそう、一応ヨメを乗せてドライブにでも行ってみるか。

なんとかしてこのマシンのよさをヨメに知らしめねばならんからな…。


………それが一番大変な気がするのは私だけだろうか。



◇次回予告!◇


こうして半ば運命に導かれるように二代目嵐を呼ぶアルトワークスを購入した私。

しかし、こうして執筆しつつ冷静に考えるとあれこれ不安材料が…。

1:エンジンをかけたものの実際に試乗していないのでちゃんと走るか未確認。
2:「修復暦あり」だが、どこを直したのか詳細をまったく聞いていない。(忘れてました)
3:先代と比べて本当に速いのかどうかまだ分からない…。
4:ちゃんと9月25日に納車できるかどうか未定。
5:よくよく見るとリアハッチに「アルトワークス」の純正ステッカーが貼っていない。
6:よくよく見るとホイールは「スズキスポーツ」の純正ではないような…。

ってことで、果たして私の買い物は「安物買いの銭失い」なのか!?

それとも、本当にこいつは速くて楽しいお買い得マシンなのか!??


全世界二億人のアルトワークスファンが注目する中、嵐を呼ぶレーサーが二代目に初乗りするぞ。


次回、『嵐を呼ぶレース参戦記』第二十話


「嵐を呼ぶ納車」


ご期待ください!




二代目のこれからの活躍に期待。良ければ押してやって下さい

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