『嵐を呼ぶレース参戦記』
| 第十六話「嵐を呼ぶ耐久レース」 | |||
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K-Carインターカップ第3戦。 ヒーローしのいサーキットを舞台に、軽自動車のみで争われる、耐久レースである。 元はといえば、アルトワークスを購入したのも、私がジムカーナで急遽腕を磨いたのも、これに出場するため。 いわば、我らB.A.R軍団にとって、これこそが本番なのである。 つまり、ここまでのレース参戦記は、ただの前フリである。(長い前フリだ…)
我々が参戦するターボクラスは今回14台の参加。 真夏の太陽の下、難コースしのいを2時間走り続ける灼熱の耐久だ。 熱くて暑い120分。 果たして14台中、完走できるのは何台だろうか…。 そして、初出場の我々は果たして上位入賞できるのか? 嵐を呼ぶレース参戦記(本番)、いざ、はじまりはじまり〜。
反時計回りに周回するのだが、全長約1350m、高低差は約25mというアップダウンの激しい難コース。 この写真で言えば、左側が物凄い坂道になっており、ヘアピンは一番標高が高い。 そして、ヘアピンからホームストレートまでは、ラグナセカのコークスクリューばりの下り坂。 しかも、下り坂の正面はピットロードのコンクリートの壁。 そこめがけて下りていくという、まさに度胸が試される恐怖の最終コーナーになっている。 より詳細なコースレイアウトを知りたい方は、 ヒーローしのいサーキットのHPをご覧ください。
レギュレーションに合致しているか、しっかりチェック。 ちなみに、この時間を利用して他の参加マシンを見ていたところ、ターボクラス14台中、ノーマルシートの(つまりバケットシートをつけていない)マシンは、我らが嵐を呼ぶアルトワークスだけ。 しかも、他のマシンの中には、ワークスのレーシングカーのように、綺麗にボディペイントを施したものや、明らかにお金をかけてチューニングしたことが分かるようなものばかり。 なんというか、気合と資金の注入の仕方が違う…。 一気に不安にかられる私である。 とはいえ、我々は『貧乏・アルトワークス・レーシング』、略してB.A.R軍団。 いかにお金をかけずにレースを楽しむか、というのが一大テーマなのだ。 この際、バケットじゃないくらい気にしない。 ノーマルシートでも文句は言わない。 要は、結果が大事なのだ。 低予算でも戦えることを、我々が証明して見せようぞ。
四重苦?
このときの熾烈な(?)オーディションにより、予選アタックを行うのはT氏に決定していた。 9:00、ターボクラスの予選スタート。 ってなわけで、我々はT氏の激走をスタンドから応援。 予選アタックを行う時間は9時半までの30分しかない。 限られた時間で、どれだけのタイムを叩き出せるだろうか。 そして、14台中、どれくらいのポジションにつけることが出来るのか。 この予選結果次第で、決勝でのいろんな戦略が決まるわけだ。 前後のマシンのタイム差などを考え、ピットのタイミングとか、ドライバーの走る順番とか、ペース配分とか。 無限に組み合わされる選択肢から、ロス・ブラウン並みの戦略眼で私がチームの勝利に向け、最適解を導いて見せよう。 私の灰色の脳みそはカラカラと回転を始めていた…。
こ、このタイム差は…。
なんと、ポールポジションのマシンから10秒落ちのタイム。 あまつさえ、我々の前にいる13位のマシンにも3秒差を付けられていた。 「ふ、ふははははは、圧倒的じゃないか」 そうなのだ、圧倒的なまでのタイム差。 ダントツの最後尾です。 ミナルディだってもう少し速いです。 愕然とする我ら『B.A.R スズキ』。 もしかしてレースを、というかライバルチームを甘く見ていたかもしれない。 この差では、戦略も何もあったもんじゃない。 戦車に竹槍で戦いを挑むような気分。 まさか、これほどまでにマシンの戦闘力に差があったとは…。 初出場初入賞の夢が、遠のいた一瞬である。
この際、参加することに意義があるのだ。 たとえ遅くても、我々4人が全力を尽くし、レースを楽しむことが大事なのだ。 そうです、そうなんです。そういうことです。 常に初陣。負けて悔いなし。 そして、この予選結果を受け、4人で相談。スターティングドライバーと、その後のドライバー交代のローテーションが決定…。 いざ、決勝である。
マシンが、スターティンググリッドに次々と並んでいく。 せっかくなのでその模様は写真にてご覧ください。
ちなみに50号車がトラブルのためピットスタート。 そのため、グリッドには13台が並んでいたのである。
もちろん、最後尾には嵐を呼ぶアルトワークスの姿。 なお『B.A.R スズキ』の栄えあるスターティングドライバーを務めるのは、なんと、
ちなみに、これはレース前の作戦会議で決まったことだったりする。 つまり、大先輩の3人曰く。 「まぁ、最初のうちはまだタイヤもたれてないし」 「ミッションも繋がりやすいだろうし」 「走りやすいうちに、一番下手なやつを乗せておくのがいいんじゃないの」
ルマン24時間レースなどを見ても分かるように、耐久レースではマシンは走るに従ってトラブルが顔を出してくる。 そのとき、素人では対処できなくても、ベテランならいたわりながら走ることが出来る。 タイヤがつらくても、ミッションが厳しくても、何とかできるのが一流の業。 そんな戦略的構想を踏まえ、私の次がkyu氏、そして、マシンがきつくなる中盤から後半にチーム最速のE氏登場。 予選で走ったT氏は大トリ。 なぜ、T氏が最後かというと、予選で走ったから万一決勝で走れなくても文句を言うなよ、というのがその理由である。 まぁ、マシンが壊れることも計算のうちというわけだ。 とはいえ、もはや我々の目的は入賞とか、前のマシンと勝負とか、そういう次元には無かった。 あのタイム差である。 現実問題、『とりあえず、2時間完走すること』が目下の目標である。 一応大ベテランが最後に控えてマシンをいたわりながら走るという作戦にしたことだし、その辺は、百戦錬磨のお二人なので任せて安心である。
先鋒は武人の名誉。 疾風ウォルフばりに、頑張ってライバルに追いついて見せよう。 …ま、冷静に考えれば百戦錬磨のT氏をもってしても、PPから10秒落ちのマシンを駆って、運転暦2ヶ月の素人が走る。 結果を想像したくもありません(笑)
一応2時間を4人で走るので、私に与えられた走行時間は30分。 とにかく、ぶつからず、コースアウトせず、スピンせず、安全確実に走ろう。
レーススタートの瞬間である。
しかし、最初の2周はペースカーのスカイラインに従って走るようだ。 多分、スタンディングスタートでは序盤に接触の危険性もあることだし、この耐久はローリングスタート方式を採用しているというわけだ。 いわゆるフォーメーションラップである。
ゆっくり走ります。
そのペースについていけないとです。
いきなり遅れてます(笑)
ヘアピンでみんなが減速したので、慌てて追いつきます。
でも、下りのストレートを終えると、前のマシンは見えなくなってます(笑) なんという屈辱…。 末代まで語り継ぎたいほどのどうしようもなさです。 でも、2周目はペースカーがスピードを緩めてくれたおかげでなんとか追いつくことが出来た。 いやいや、これが正しいフォーメーションラップというものである。 スタート前から私は激しく焦る羽目になったわけである。 「ふぅやれやれ、何とか追いついたぜぃ…」 てな感じで、私が一息つきつつヘアピン前の上り坂をえっちらおっちら駆け上がっていると…。 そう、前方ではペースカーがピットロードに入り、レースがスタートしていたのである。
が、私にはそんな様子は見えない。 全然見えてない。 なので、レースがスタートしたことも、前のマシンたちがいよいよ全開走行に突入したことも知らない。 見えるのは前を行くマシンだけ。 そして、それすらも下り坂でどんどん離れていく。 「しまった、もうレースが始まってたのかっ?」 慌ててアルトに全開をくれてももう遅い。 完全に出遅れてしまった。
お願いです。待ってください。
全開なんです。 アクセルを床まで踏みつける勢いなんです。 なのに、この速度差は一体…。
おっと、嵐を呼ぶアルトワークスの背後、ピットから50号車がスタート。 無論、そんなことは必死に走っている私は知りません。
なんと、わずか半周で後に付かれてしまいました。
そして、上り坂での速度差がありすぎるせいで、あっさりインに飛び込まれます。 乗っている私は、このとき甚大なショックを受けていた。
とにかく、速度差が段違い。
1周したあと、早くも差がこれくらい開いてしまった。 ちなみにビデオに撮っていたおかげで、私のラップタイムは結構正確にわかるのだが、このとき、1分2秒台での走行だった。 予選、T氏のタイムの3秒落ち。 …ま、そんなもんです、私の実力。
さて、私がこの周(ペースカーピットイン後2周目)を終えたときには、背後のヘアピンに、トップのマシンが差し掛かっていた。 …速いって。 そのトップのマシンは、予選より速い49秒台(!)で猛烈に飛ばしていたのだ。 なお、PPの19号車だが、レーススタートの周に1号車に抜かれ、4周目には早くもピットイン。 なんと、早々にリタイアとなってしまったらしい。 これで、B.A.R スズキは13位に浮上(笑) でも、そんなことは走っている私は知らない…。 そして、あっという間にトップに追いつかれ、屈辱の周回遅れ。
ヒューン
スパーン。 …ってなもんで、あっさり前に行かれてしまう。
初出場初入賞の夢は、露と消えるのか? それとも、嵐を呼ぶレーサーの神通力が、奇跡を起こすのか? どうなる? どうするB.A.R?
ギャラリーの視線、襲い来る激速マシンたち。 屈指の難コースが牙を剥き、夏の暑さが容赦なく体力を奪っていく…。 嵐を呼ぶレーサー最大の試練は、まだこれからが本番である。 果たしてB.A.R軍団に見せ場はあるのか? 初出場初入賞の野望は?
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