『嵐を呼ぶレース参戦記』
| 第十四話「嵐を呼ぶ第一ヒートU」 | ||
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朝配られるそのアンケート用紙には、ゼッケン、ドライバー名、マシン名のほか、今日の意気込みを書く欄があるのだ。 当然、私はそこにこう書いた。 「前回からの成長を見てください!」 なにしろ、前回参加したときは、アルトに乗り始めてわずか1週間だった。 だが、今回は違う。 幾度も死線を潜り抜けて、成長してきたのだ。 それを、ぜひ大江校長には実況してもらいたい…。
ということは、やはり一本くらいは読者の皆さんに車載映像をお届けしたい、と考えるわけである。 というわけで、kyu氏に助手席に乗ってもらい、いつものようにカメラマンを務めてもらうことにした。
ただでさえ黒いアルトワークスは熱を吸収しやすいし、太陽は照り付けるし、この日の最高気温は34度だし…。 がっ、しかしっ、そんなことは問題にならないくらい、私は集中していた。 前回と違い、睡眠時間も5時間くらい取ってるし、初参加の余計なプレッシャーとも無縁だし、なにより、これまでの練習の成果を発揮してやろう、と気合十分。 そしてコース図もすっかり頭の中に入っている。前回よりもずっと簡単で覚えやすいので、その点の心配も要らない。 まぁ、そんなわけで、いよいよスタート、という瞬間、私は過去最高のコンセントレーションとモチベーションを両立させた、万全の状態だったのである。 何しろ目標は参戦2回目での初入賞なのだ。 キレた走りを見せ付け、会場を沸かせ、そして参戦記で読者に自慢してやるのだ。 というわけで、「雨続の野望」を充満させつつ、いざアルトワークスがスタート! パワーのない車だから、助手席のkyu氏がカメラを顔面にぶつけるようなこともないが、それでもなかなかいい感じで加速。 ちなみに、このときマシン後部でささやかなアクシデントが発生していたのだが、乗っている私とkyu氏は気付いていない。 何も知らない二人を乗せ、アルトはぐいぐい速度を上げていく。 直進するとミスコースなので、緩やかにステアリングを左に切り、インベタでマシンを進ませる。 F6Aが咆哮し、シフトも2速から3速へ。 裏ストレートを爆走し、難所のきつい左コーナーへ差し掛かる。 私は思い切りよくブレーキングを開始。左足はクラッチを踏み、そのまま右足のかかとでアクセルをあおる。 ぶおーん。 エンジンの回転が上がる。 そしてギアを2速に落とし、クラッチを繋ぎ、完全に前荷重の状態でステアを左に切り込んだ。 するとマシンは程よくオーバーステアを誘発し、リアがブレイク。 自分でも思っても見なかったくらいにシャープなコーナリングの完成である。 「おおっ、うまいうまい!」 思わずkyu氏も感嘆の声を上げる見事なマシンコントロール。 私も心の中でガッツポーズ。 多分、初めて実車でもグランツーリスモでの自分の走りと近いことが出来た瞬間。 実車でのドラテクがいよいよシミュレーターのレベルに追いついてきたのだ。 グランツーリスモファンの皆さん、喜べ。やっぱりこのゲームはドラテク向上につながるんだ。 「よっしゃーっ! 俺ってかっこいいぞぉ〜♪」 直江雨続、ある意味幸せの絶頂である。 過去最高のハイテンション、アドレナリンどっぱどぱ。 今なら分かる。このペースで走れば入賞できる! 乗っている私のオーラ全開で、アルトワークスが激走する。 シンクロ率は400%オーバー、いざ暴走だ! と、私の目に、あるものが飛び込んできた。 あるもの。 それは、赤旗。
前走車が事故ってしまったのだろうか? なんということだろうか、当然これまでの激走は無駄に終わり、再出走となるのである。 せっかくいい走りをしていたのに、なんともったいないことだろうか。 私はアルトの速度を緩めると、窓を開け、オフィシャルに聞いてみた。 「どうしたんですか?」 するとオフィシャルはマシン後部を指差すと、こう仰った。 「後ろ開いてるんで、ピットに戻ってください」 と、同時に 「ああっ」 kyu氏の悲痛(?)な叫びがマシン内部にこだました。 「リア開いてる…」 (リア?) バックミラーで確認すると、なにやらいつもより視界が広い気がする。 ?? 直接確かめるべく、私は後ろを振り向いた。 すると…
リタイア…、つまりせっかくの激走なのに、タイムなし。 タイムなし…、つまり無駄、無意味、虚しい。
あれは、その、なんだ、つまり、そう、
そう、実はこのアルトワークスは、ドライバーとのシンクロ率が上がると勝手に変形するんです。 低速モードから高速モードへとゲッターチェンジするんです。 「アルトワークス、ダブルブーストだ! フェニックスウィング・オーバーロードぉぉぉっ!」 まさにサイバーフォーミュラのごとく。 ここまでの私の激走も、あのリアウィングが生み出す絶大なダウンフォースのおかげで、マシンが安定していたからなんです。 初めてクラス入賞の切り札なんです。
これが、3万8千人の大観衆(大江校長発表)を失笑の渦に巻き込んだ「リアハッチ全開事件」の顛末である。
私がリタイアしたせいで計測が狂ってしまい、14番16番17番の各選手は再出走となってしまったのである。 そしてもちろん、赤旗の原因を作った私は、再出走が許されることはなかった。 まさに、嵐を呼ぶレーサー直江雨続はここでも嵐を呼んでしまったのであった…。 めでたくなし、めでたくなし。
それをお見せしよう。
そして、車を降りた私は、“名探偵困難”な灰色の脳みそをフル回転。 カラカラカラカラカラカラカラ。 快調に空回りを続け、ついに、リアハッチオープンの原因を作った犯人と、その犯行時刻を突き止めたのである。 証拠は、レース参戦記にしっかり残っていた…。
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なにって、恐怖と動揺である。 アルトを停め、我に返れば全身滝のような汗。 恐怖と、緊張と、そしてその後の熱い走りのせいで、肉体は疲労困憊。 そして、猛烈な暑さとのどの乾き…。 私もそうだが、アルトにとっても、今回の走りはかなりきつかったに違いない。 「…冷やしてやらないと」 と、私はボンネットと、リアハッチのロックを解除。 がちょっ、がちょっ。 そして、運転席のドアを開け、生きて再び大地に立ったのである。 「ああ…、生きてるって素晴らしい」 ヘルメットを脱いで、新鮮な空気を胸いっぱいに吸い込む。 「はぁ〜っ、…怖かったぁ〜〜」 と、早速3人が私の元にやってきた。 「何が起きたん?」
説明しつつ、アルトのボンネットを開け、エンジンにも新鮮で冷たい空気をプレゼント。 「いや〜、怖かったよ。…でも、参戦記のネタとしては申し分ないでしょ(笑)」 と、ポジティブに話を締めくくったのである。 そして、私はのどの渇きを癒すべく、自動販売機へと向かったのであった…。
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「…冷やしてやらないと」 と、私はボンネットと、リアハッチのロックを解除。 がちょっ、がちょっ。
がちょっ、がちょっ?
そのあと、ボンネットを開けた記述はあるが、リアハッチについては、何も書いてない…。
ボンネットを開けたところで、すっかりリアハッチのロックを解除した事を忘れていたのである。 その後、自動販売機でジュースを飲んだ私は、のんきにアルトのエンジンを切り、あとは本番走行までほったらかしにしていたのである。 そして、リアハッチがロックされていなかったアルトは、スタートの瞬間、勢い良くリアハッチをご開帳(笑) 見事なゲッターチェンジをみんなに披露することになったのである。
そこで、何気にカメラを回し、再出走となったマシンをやっかみ半分で撮影していたときのことである。 大江校長の実況が、…大変なことに。
私のアルトに乗り込む際、kyu氏は携帯電話をT氏に預けた。 んで、T氏はそれをものの見事に落とした。つまり紛失したのである(笑) 落ちていた携帯は大会本部の実況席に届けられ、この撮影前に、一度アナウンスされていたのである。 「本部に携帯電話の落し物が届いています。お心当たりのある人は、取りに来て下さい」と。 心当たりのあったkyu氏が取りにいったところ、あの実況が生まれたのである。 チーム直江、それぞれ独立に起こった事象が絶妙にかみ合い、見事なネタが生まれた瞬間であった。 そして、大江校長の実況どおり、私はこうしてそのネタを使わしてもらい、参戦記を書いているのである。 見事なコンビネーションだな。(よくわからないが)
しかし、まだまだ私には波乱が待っていたのである。 あのコースアウト&スピン事件を上回る恐怖。 そして、リアハッチ全開事件を上回る大失敗。 嗚呼、我が人生ネタ人生。 嵐を呼ぶレーサーの活躍は、全世界1億4千万人グランツーリスモファンを決して退屈させはしない。 いよいよジムカーナも佳境。
なお、今回使用したリアハッチ全開事件の写真は、ビートクラスの「くま選手」が撮影してくれたものです。 おかげで衝撃のシーンを外部からばっちりお見せできました。 くま選手、写真の提供ありがとうございます。 そして第四戦でのビートクラス優勝おめでとうございます!
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