嵐を呼ぶレーサー“直江雨続”の

『嵐を呼ぶレース参戦記』



第十三話「嵐を呼ぶ練習走行U」

◇練習走行2回目◇


さぁ、いよいよ練習走行2回目の開始である。

1回目ではt_m_tomさんの「ad libitum号!」と、王者津野選手の「KWJ ラディッシュ ランサー」に乗っけてもらった私だが、もちろん自らハンドルを握るのが主目的なことに変わりはない。

一説には、上手い人の助手席に乗って、その走りを見ることは、上達への一番の近道とも言う。

つまり、私は間違いなく、上手くなっているはずなのである。

チャンピオンの走りに少しでも近づけるよう、特訓だ。

というわけで、1回目と同じく、ファンカーゴの後ろについて練習走行スタート。

そして、ファンカーゴを一生懸命追っかけてみる。

速い車の後ろに付くことで、そのリズムを盗み、思いがけない好タイムが出ることがあるが、今回はまさにそれ。

藤原拓海もびっくりの学習能力を発揮。嵐を呼ぶアルトワークスは、サーキット前半を快調なペースで駆け抜けた。

そして、もう一つ、今回は、私は同乗者なし、一人っきりでの走行を選んだのである。

もう、初心者じゃない。

一人でも大丈夫。

そう思ってアルトを駆っていたのだ。

ちなみに、人間が一人降りたことによる軽量化の効果は、およそ65キロほどだろうか。

この軽量化が、走りに与える影響を、私は甘く見ていた。

もともとパワーのないマシン、そこに65キロの軽量化は、想像を絶するほどの効果を生むのである。

ブレーキはよく止まるし、なにより加速が全然違う。

そんなわけで、1回目ではあっさりと置いていかれたファンカーゴにちゃんと付いていけるではないか。

実にいい感じ、超乗れてる。

私のテンションも上がる。リズムにも乗っている。

「いいじゃん、一人でも大丈夫じゃん♪」

が、好事魔多し。

いつも以上のハイペースで走っていた私は、そのとき、マシンが限界を超えたことに気付かなかった…。



◇練習走行2回目。一周目にそれは起きた◇



動画を見た?

じゃあ、続きを読んでよろしい。


◇このあとさらに大変なことが…◇


そうなのである。

見ての通りなのである。

落っこっちゃったのである。

インフィールド出口のS字の二個目は、アウト側のエスケープゾーンはコースよりも低くなっており、ちょっと怖い段差なのだ。

落ちたら大変危険な場所。通常走るときは、ここでアンダーステアを出さないように、極力気をつけなければならない箇所である。

その、危険ポイントを、私はオーバースピードで通過してしまい、気が付けばハンドルを切ってもマシンは曲がらない。

痛恨のアンダーステア、と思った瞬間には、視界が斜めに…。

刹那に訪れた浮遊感。

次の瞬間、私を落下の衝撃が襲う。

ガッコン、とヘルメットが上下にゆれる。

一発でパニック。

乱心した私は、とにかくコースに戻らねば、とハンドルを左に切り、そしてブレーキを踏むつもりで、またまた間違えてアクセル全開(笑)

おそらくノーマルシート(体を固定してくれるバケットシートではない)のせいで、体も右に寄ってしまっていたのも原因のひとつ。

命知らず(笑)にも、全開のままグラベルを突っ走るアルト。

しかし、実に運のいいことに、そのままコースに復帰できちゃったのである。

…が、復帰したものの、そこはもう左コーナーである。

アクセルは全開のままである…。



◇臨死体験◇


その左コーナーにアクセル全開のまま侵入してしまった私は、ようやく悟った。

状況は、さらに悪化してる、と。

このまま進むと、またまたアンダーステアを誘発。コーナーを曲がりきれずにコースをはみ出し、今度は土手に頭からつっこんでしまう…。

そうなったら、アルトは全壊。みんなの夢、B.A.R軍団の主目的である耐久レース出場は絶望的。

このままではB.A.Rは「バカな・雨続のせいで・リタイア」の略になってしまう。

「のぉぉぉっ!」

そして、私はここでようやくブレーキを踏んだ。

それも、床まで届けとばかりに強く、強く…。


ガツン!


その瞬間、リアがブレイクした…。

思いっきり前荷重になったうえ、リアのドラムブレーキの制動力がリアタイヤのグリップを上回った。

結果、リアタイヤがロックしてしまい、アルトは一瞬でバランスを失い、スピンモードに突入したのである。

私はとっさに思いっきりカウンターステアを当てた。

リアがブレイクしたときの逆ハンドルといえば、GT3でも私の十八番。

ゲームでのドリフトの体験がここでも有効に………、ならなかった。

カウンターの量が多すぎたのだ。

素人の十八番、タコ踊りの出来上がり。

結果、振りっ返しのような形となり、アルトは今度は逆方向にさらに勢いよく回ってしまったのである。

こうなるともう立て直せない。

私はもう一度カウンターを当てる事をあきらめて、ブレーキを踏み続けた。

あとは、マシンがコース上に留まってくれるのを祈るだけ…。

そして、何とか、アルトはどこにもぶつからずにその場に停止してくれた。

「ふぅぅぅぅっ。…ううっ!?」

ほっと息をついたのもつかの間。すっかり逆方向を向いたアルトの運転席からは、絶景が見えた。

すなわち、こっちに向かって突っ込んでくる、後続車の姿である(笑)

「ぎゃぁぁぁぁ、よけてくれぇぇぇぇ!!!」

私の祈りはまたまた天に通じた。

幸いなことに、アルトの止まった位置はレコードラインからは微妙に外れていたらしく、後続車は上手くアルトをよけて進んでいってくれた。

そして、みんながいなくなったのを確認して、私はアルトをUターンさせ、再び走り出したのである。


私が、そんな臨死体験をしていた頃、ビデオを撮っていたT氏や、見物していたE氏、そしてkyu氏の間で行われていたやり取りは、動画に収録されている通りである。

飛び交う悲鳴、そして容赦ない突っ込み(笑)

どうやら彼らの間では、私がコースを間違えたことになっているようだが、真相は、書いたとおりである。


◇直江雨続、死の淵を乗り越えたあとの走り◇


というわけで、1周目からいきなり血も凍るような恐怖体験をしてしまった私。

普通なら一発でびびってしまい、以降は萎縮してまともに走れなくなるだろう。

だが、私は違った。

逆にあれで吹っ切れてしまい、ついでに恐怖心も切れてしまい、走りもキレてしまったのである。

なんといっても、嵐を呼ぶレーサーが、あんなことでへこたれるわけがない。

むしろ怖いもの無しになってしまって、そこそこ攻めた走りを持続することが出来たのである。

ちなみに2周目以降のタイム(動画を見ながら計ってみた)は…

2周目:53.18(スピン直後のラップだが、結構速い)

3周目:54.78(なぜか遅くなってる)

4周目:54.64(E氏「1コーナーノーブレーキなん? あれ」 T氏「うん。だんだん良くなってきてる。でもヒール&トゥで遅くなるね、どうしても」…おっしゃるとおり(笑) ちなみにこの周はホームストレートで譲ったのでタイムダウン)

5周目:53.90(この周もファンカーゴに譲ったため、タイムダウン)

6周目:55.09(またまた譲ってます。後半はホームストレートでまともに全開で走ってないなぁ)

7周目:52.88(ベストラップ。誰にも引っかからずにフリーで走れた)

そして、8周目はインラップなので、動画は無し。




◇走行終了後◇


ピットに戻ってきたところで、ようやく来た。

なにって、恐怖と動揺である。

アルトを停め、我に返れば全身滝のような汗。

恐怖と、緊張と、そしてその後の熱い走りのせいで、肉体は疲労困憊。

そして、猛烈な暑さとのどの乾き…。

私もそうだが、アルトにとっても、今回の走りはかなりきつかったに違いない。

「…冷やしてやらないと」

と、私はボンネットと、リアハッチのロックを解除。

がちょっ、がちょっ。

そして、運転席のドアを開け、生きて再び大地に立ったのである。

「ああ…、生きてるって素晴らしい」

ヘルメットを脱いで、新鮮な空気を胸いっぱいに吸い込む。

「はぁ〜っ、…怖かったぁ〜〜」

と、早速3人が私の元にやってきた。

「何が起きたん?」


私は動揺を押さえ、3人に説明した。

説明しつつ、アルトのボンネットを開け、エンジンにも新鮮で冷たい空気をプレゼント。

「いや〜、怖かったよ。…でも、参戦記のネタとしては申し分ないでしょ(笑)」

と、ポジティブに話を締めくくったのである。

そして、私はのどの渇きを癒すべく、自動販売機へと向かったのであった…。



◇練習走行2回目、T氏MR2の走り◇


というわけで、私もカメラを持って同乗させてもらいました。

貴重な車載映像、とくとご覧あれ。

1周目:52.20(アウトラップ。この日のMR2はミッションの調子が悪いらしく、2速に入りにくい)

2周目:48.31(2コーナーで2速に入らず苦戦)

3周目:50.09(今度は2コーナーでギアが鳴ってちょっとびっくり。思わずそこでスロー走行)

4周目:47.18(この周は、特に問題なく走れてこのタイム)

5周目:52.71(ヘアピンで2台を先に行かせる)

6周目:45.97(前を行くマシンを追いかけつつ、ベストラップが出た)

7周目:46.38(ほとんど同じペースで走り続けて、チェッカー)

8周目:1'08.86(インラップ)


というわけで、私のアルトワークスはベストラップが52秒88(1名乗車)。

T氏のMR2は45秒97(2名乗車)。分かってたこととはいえ、7秒以上のぶっちりぎりの差をつけられてしまいました。

特に練習走行1回目で乗った津野選手のランサーと比べても、旋回時の横GはむしろMR2の方が上。

さすがはミッドシップ、さすがは私の師匠T氏である。

ミッドシップはコーナリングスピードの高さが身上。見事にそれを乗りこなしているって感じ。

勉強になります。



◇練習走行2回目、E氏CR−Xの走り◇


今度はエキスパート2クラスに参戦の、E氏のCR−Xに乗せてもらう。

同じFF乗りとして、一番見習いたい相手である。

とにかく、速いのだ。そしてマシンも凄い。

1周目:47.65(アウトラップから速い。素晴らしくエンジン音がいいが、これはインテグラTypeRのエンジンに乗せ換えているため)

2周目:45.72(2周目でT氏より速いタイムを叩き出した)

3周目:44.82(さらにそれを更新。E氏は無言の超真剣モードで走ってます)

4周目:46.16(前を行くMR2を抜いたときにちょっとタイムロス)

5周目:45.21(しかし、やっぱりインテRのエンジンは素晴らしい。しかもCR−XはインテRより軽い。その動力性能は推して知るべし)

6周目:44.41(出ましたベスト。めちゃめちゃ速いです。下手すると私より10秒速い)

7周目:52.78(あとはクールダウン)

8周目:53.71(…しかし、クールダウンなのに、私のアルトの全開とタイムが変わらない(笑))

9周目:1'06.48(インラップ)


というわけで、B.A.R軍団のお二人の走りをご覧いただいた。

で、kyu氏のインプレッサだが、今回は練習走行は一人で走りたい、ということで、同乗は無し。

よって車載映像も無し。

ご了承くださいませ。

◇次回予告!◇


そんなこんなで、練習走行の時間も終わり、次回、いよいよジムカーナの本番がスタート。

しかし、嵐を呼ぶレーサーが巻き起こす波乱は、まだまだ続く。

本番一本目、アルトワークスをとんでもない珍事が襲う。

全世界1億3千万人のグランツーリスモファンも唖然の、大ハプニングとは。

果たして、直江雨続は、二度目のジムカーナで成長の証を見せることが出来るのか。


次回、『嵐を呼ぶレース参戦記』第十四話


「嵐を呼ぶ第一ヒートU」


ご期待ください!




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