『嵐を呼ぶレース参戦記』
| 第六話「嵐を呼ぶ第一ヒート」 | ||
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もちろん「初めてクラス」から。 ゼッケン1番のマシン「EGシビック」が走っている間、私は準備に手間取り、見逃してしまった。 どうやらミスコースだったらしい。 いきなりの波乱である。 ミスコースとは、つまり、決められたコースを外れてしまうことで、当然タイムは無しになってしまう。 これがジムカーナの難しいところだ。 逆に言うと、コースさえ間違わなければ、少なくとも最下位にはならないということ。 「…これは他の人の走りを見て、コースを覚えるチャンス」 ゼッケン12番の私は、まだ少し走るまで時間がある。 ぎりぎりまで観戦し、どういう風に走るかというイメージを頭に叩き込むのだ。 というわけで、慌ててビデオカメラを持ち、パドックのストレート脇にて観戦体勢になった頃にはゼッケン2番のマシン「180SX」が、コースイン。 この競技は現在のF1の予選のように、コース上をマシンが一台占有して、単独でタイムアタックを行うのである。 つまり、この瞬間、サーキットも、観衆の視線も独り占め(笑) 逆に言えば、どんなに遅いマシンであっても、走っている間は多数のギャラリーの視線にさらされることになる。 ミナルディの予選アタックでも、ちゃんと放送してくれる今のF1をイメージして欲しい。 …恥ずかしい走りは絶対に出来ないじゃないか。 急にプレッシャーが増大。 だんだん緊張してきた。 そして、そんな私に追い討ちをかけるように、場内にでかい音声が響き渡った。 「180SXがスタート! さぁ180SXでもね、このコースでは十分に勝てることは証明されています。『OSL四輪じむか〜な』第2戦」 よどみない口調で実況放送が入る。 なんと、このジムカーナの走行では、サーキット全体にちゃんと聞こえるように、一台一台コース上のマシンをしっかり実況してくれるようなのである。 つまり、この私の嵐を呼ぶアルトワークスでの激走(珍走?)も、そりゃもうばっちり実況入り確定。 この桶川に集まった推定3万人の大観衆(大江校長発表)が、私の走りを実況を交えて見ることになる。 ますます、これは恥ずかしい走りが出来ないじゃないかっ! 「さぁ、裏ストレートを駆け抜けて、6番ターンからインフィールドのショートカット。ここは午前中の練習走行でも一度も使ったことのないコースです。さぁ、このコースを今日初めて走ります。ジムカーナという競技は一日2回しか走れない。この今日限りのこのコースを、自分のテクニック、そしてクルマのすべてを引き出してタイムを削り取っていく。非常に難しい競技だ」 ところで、この実況放送、誰がしゃべってるんだろう? ちゃんとプロの人を呼んでいるんだろうか? と思ってkyu氏に聞いてみたところ…。 「あ、これ? 大江さんだけど」 なんと! 日本一速い校長先生こと、Ken-1アカデミーの校長にして現役プロジムカーナドライバーの、大江賢一氏。 この人、ジムカーナの実況まで自分でやっちゃう人だったのだ! 「…びっくり」 多芸多才の見本市みたいな人だな…。 (“自称”小説家にして、旅行記作家にして、嵐を呼ぶレーサーにして、グランツーリスモ評論家(?)にして、本職は某企業の某研究所に勤めるエンジニアの私にとって、ちょっとシンパシー?) などと畏れ多い事を考えつつ、観戦していると…。 あれ? 180SXがあらぬ方向へ…。 「さぁ、しかし…、ミスコースだ。なんとミスコース。大きくミスコースをしてしまいました」 なんと、2台連続でミスコースである。 初めてクラス、初っ端から波乱続出。 「途中でねぇ、飛んじゃうんだよ記憶が。あれ? どこ走ったっけ? って」 と、kyu氏。経験者は語る。 なにしろジムカーナのコースは前回も説明したが、ぐにゃぐにゃのくねくねなのである。 覚えるのも大変なのである。
「…これは大変なことに」 コース図に目を落とし、私は呆然と呟いた。 ちゃんと覚えているかどうか、チェックしてみる。 目をつぶり、頭の中で想像したコース図を人差し指でなぞっていく。 「スタートして、こっちに行って、こうして、ああ行って、そっちで、こっち。んで、あっちで、こうなって、ぐるっと…、あれ?」
コース上ではゼッケン3番の「コペン」が快調に走行中。 (この走りを見て、コースを覚えねば…) なんといっても、ここまで2台連続でミスコースなのである。 コペンには頑張ってちゃんと走ってもらいたい…。 「「…あっ」」 見ていたkyu氏、私の声がハモる。 なんとコペンが最終8の字ターン区間で、インに切り込み過ぎ、パイロンに接触してしまいそうになり、しかも直前でそれに気付いたのか、急ブレーキ。 パイロンの目前でぴたっと止まってしまうコペン。 そしてバッグギアに入れ後退し、マシンの体勢を立て直して、改めて8の字区間をクリア。 ちなみにパイロンに触ってしまったら5秒のタイムペナルティなのである。 「ああいう場合は、バックギアとか入れても全然OKだから。あとコース間違いそうになったときも、バックしてもとのコースに復帰すればミスコースにはならない」 と、kyu氏の解説。 ともあれこれでコペンが走り終えて「初めてクラス」のターゲットタイムを出すことになる。 「さぁ、コペンが今ゴール。タイムは…1'43.317。1分43秒台でゴール」 大江校長の実況が入る。 そして次に走ったのはゼッケン4番の「カローラレビン」。いわゆるハチロクである。 このマシンが何と1'31.256をたたき出す。 「…10秒以上速いし」 さすが「初めてクラス」。タイムがちっとも拮抗してない(笑) 続いて走ったのがゼッケン5番の「黒いタイプR」。 中間タイムは「カローラレビン」のコンマ6秒遅れ。 しかし、最後の8の字区間でなんと曲がりきれずにストップ。痛恨のバックギア。 「…う〜ん、あそこ難しいんだ」 私が走るときは、とにかくゆっくり曲がろう。 軽自動車の最小回転半径を持ってすれば、きっと何とかなる。 こうして、ゼッケン5番の「黒いタイプR」は1'43.101。 それにしても、この競技、結構他のマシンが走っているのを見るだけでも結構参考になることが多い。 いやはや、ゼッケン12番でよかった。 これが1番だったら真っ先に玉砕していたに違いない。 さて、ちなみにこの辺から、コース上には2台のマシンが走るようになる。 いわゆる「追っかけスタート」というわけで、1台目がホームストレートに戻ってきて中間タイムを出したところで、2台目がスタートするシステムになる。 これによって時間の短縮と効率的な運営を図っているのだが、この後、このシステムが原因で、とある波乱が巻き起こることになる…。
そろそろ出陣の用意をせねばならない。 11番のマシンを見つけ、その後に続いてパドックにマシンを移動させ順番待ちの列に加わる。 並び終えたところで私の番まであと4台。 (コース図、コース図…) 最後までコース図を見る私。 そして、目をつぶって人差し指で空中にルートを描く。 「スタートして、こっちに行って、こうして、ああ行って、そっちで、こっち。んで、あっちで、こうなって、ぐるっと……」 傍から見たら、クルマの中でオーケストラの指揮をしている変な人である。 あと3台。 (よし、覚えた) あと2台。 (…暑い) あと1台。 (……溶ける〜)
ちなみに、私がアルトの中で暑さと戦っている頃、コース上では続々と波乱が…。 ゼッケン6番、8番、10番、11番がミスコース。 私が12番なのだが、そこまでの11台中6台がミスコースでタイム無しなのだ。 そして、この11番のミスコースが原因で、私の身に、あるとんでもないことが起こるのである。
軽くタイヤを鳴らしつつ、勢いよくスタートした嵐を呼ぶアルトワークス。 最初の左コーナーを2速のままクリアし、直線で3速へ。 そして、練習走行で散々ミスった鬼門のヘアピンへ。 そこで3から2速へシフトダウン。 アクセルを踏む。 ぶぉーーん! エンジンは勢いよくまわるが、マシンが進まない。 「ん?」 「入ってない、入ってない。落ち着いて、落ち着いて」 なんと、ギアが2速に入っていない。 再びクラッチを踏み、2速に入れなおす。 やっぱりやってしまった痛恨のシフトミス。 しかし、普通ならパニックに陥りそうなものだが、逆にこれで私は肝が据わった。 一気に落ち着きを取り戻し、そこからは順調そのものの走り。 最後の難所の8の字ターンでも、思いっきり減速し、思いっきりハンドルを回す。 「うりゃー」 …曲がった! 「いけるいける!」 あとは全開のまま、パイロンのスラロームをクリアして、ゴール。 ゴール後はガツンとブレーキを踏みつけ急減速。 …クラッチを踏み忘れた。 そしてエンスト(爆笑) いやはや、実に面白かった。 今の私の腕ではマシンの実力を全然引き出せていないが、それでもこの楽しさ。 クルマを操る喜び。 集中して走る緊張感。 実にいいね。実にいい。 大満足で、窓を開け、実況に耳を傾ける。 さて、一体何秒だったのかな? 「…………………………………」 無言。
と、実況が再開。 「え〜、ゼッケン12番の直江雨続様、すみませんが、実況席までお越しください」
呼ばれて2秒後に実況席に到着(笑) すると、大江校長から衝撃の事実が伝えられた。 ゼッケン11番が中間タイムを出した後でミスコースし、ピットに戻ったため、タイム計測が終了せず、計測器はいつまでも11番を待っていた(らしい)。 そこに私のアルトが通過してしまったため、計測器が混乱。 結局私のタイムを計ることが出来なかったとのこと。 つまり…。 「申し訳ないですが、もう一度走ってください」 タイムが出ていれば間違いなく「初めてクラス」デビューウィンを飾ったであろう“奇跡の走り”が、まったくの無駄になってしまったのである。(このお話は冗談の分かる人向けに書いております)
でもまぁ、普通なら1日2回しか走れないジムカーナだけど、おかげで3回走れるわけだ。 むしろラッキー? 私は喜び勇んで、アルトに戻り、再びピットへ。 「じゃあ、今度は一人で走るから」 と、今度はkyu氏の同乗&車載映像は無し。 一人ぼっちでの二回目の走行へと挑む、直江雨続26の春であった…。
仕切りなおしての二回目の走行が始まった。 全国6千万人のグランツーリスモファンにお届けする魂の走り。 二回目の走行で、果たしてタイムは出たのか? そして、忘れちゃいけない、kyu氏の走りはどうなった? 見所満載でお届けする次回。 7月19日の『OSL四輪じむか〜な第三戦』までに終わるよう、急いで書かねばならない(笑) さぁ、直江雨続の走りの真骨頂を見よ!
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