『嵐を呼ぶレース参戦記』
| 第五話「嵐を呼ぶ同乗レッスン」 | ||||||||||||||||||||
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この日本一速い校長先生(勝手に命名)こそ、今回私が参加した「OSL四輪ジムかーな」の主催者である。 で、当然ながら大会の運営のため、サーキットのパドックに来ているわけで…。 「次の君の練習走行さ、大江さんに乗ってもらったら?」 なんて事をこともなげに提案したのはkyu氏。 「えっ、そんなことできるの?」 出来るのである。 直接大江校長にお願いに行ったところ… 「いいよ」(←あっさり) なんと快く了承してくださったのである。 というわけで、2回目の練習走行(今度はロングコース使用)では、まずは数周大江校長によるお手本走行、そして私の走りに助手席から直接アドバイス、という夢のような15分。 早速動画にて確認してもらおう。
このアルトワークスはFF車、つまりフロントにエンジンがあり、前輪が駆動輪のマシンである。 そして、そんなマシンを速く走らせるために大事なのが、フロントタイヤの使い方。 マシンがコーナーに侵入したときの事を例にとって説明しよう。 まず、止まるためのブレーキングを行う。 するとフロントタイヤは100%止まるために使われる。 そして、スピードが落ちたら、今度はブレーキを離しながら、ステアリングを切り込む。 すると、フロントタイヤの性能は止まる100%から、止まる90%+曲がる10%→止まる50%+曲がる50%→止まる0%+曲がる100%というように使われることになる。 このように、フロントタイヤの性能を止まるため→曲がるため、というようにスムーズに移していく。 そうすると、前荷重(ブレーキを踏んだことにより、車が前につんのめっている状態のこと)が残ったままでコーナリングすることになり、フロントタイヤのグリップを有効に使え、少ない舵角で曲がっていけるのである。 そして、コーナーのクリッピングポイントを抜けたら、今度はアクセルを開けていく。 すると曲がる100%→曲がる90%+加速10%→曲がる50%+加速50%→加速100%、というように、フロントタイヤの性能が使われることになる。 そんなフロントタイヤの使い方を常にイメージしながら、ブレーキングし、ブレーキを残しながらステアリングを切り、クリッピングポイントを抜けたら徐々にアクセルを開けてマシンを加速させていく。 「おおーっ、スムーズだ〜」 大江校長の走り、決してマシンを攻め立ててはいないが、コーナリングスピードが私の時と全然違う。 軽く流しているのに、速いのである。 つまり、止まるためのブレーキングから、曲がるためのブレーキングへ、実に滑らかに移行させているのである。 「わかる? ぐっと踏んで、ブレーキを離しながらステアリングを切る」 コーナーの度に大江校長が私に対して、ブレーキングのやり方を説明しつつ見本を見せてくれるのである。 これは素晴らしく勉強になる。
唐突にそんな事を聞いてくる校長。 「もちろん読んでます」 即答。 「あれにさ、コップの水をこぼさない運転、って出てくるでしょ。それってこういうこと」 なんて言いながら、荷重の使い方、走行中のGの変化などについて校長の説明は続く。 それにしても、走りも見事だが、しゃべりも凄い。 ず〜っと乗っていたいところだったが、2周したところで大江校長はピットイン。 そして、ドライバーチェンジである。 今度は私が運転席に、そして校長は何とそのまま助手席に乗り込んでくれた。 そう、私の走りを助手席から見て、アドバイスしてくれるというのである。 なんとありがたいことか。 サーキットデビューのその日に、いきなりプロが同乗走行で直接指導してくれるのである。 なんと恵まれていることか。 まさに、いきなりの英才教育である。
ピットからコースに飛び出すときにやってしまった。
いきなりガッコンである。エンストこそしなかったが、恥ずかしい発進。 そして、走り出したが、私はある事を告白しなければならなかった。 「あのー、実は私、ヒールアンドトゥが出来ないんですが…」 おいおい、そんなんでサーキットに来るなよ! ってな突っ込みは来なかった。 「全然OK、まずはブレーキングだけに集中して」 この一言である。 私は一気に気が楽になった。 「はいっ、頑張ります」 というわけで、大江校長のアドバイスどおり、ブレーキングに気を遣いつつ、思いっきり走るのみ。 うまい具合に私の前後を走っている車がいないので、気ままな単独走行である。
コーナーのたびに、大江校長のアドバイスが飛ぶ。 「はい、ブレーキ踏む。ブレーキを離しつつ、ステアリング切り込む。はいアクセル」 言われた通りのタイミングで、アルトを操ると、凄くいい感じで走れるのである。 「そうそう、いいよ〜♪」 いえいえ、何が良いって、アドバイスが良いんですよ。 私は校長の指示通りに走らせているだけ。 それだけで、何というか、走りのリズムみたいなものが身に付いてきた気がする。
私が普通にコースどおりに周回していると、中盤のインフィールドで、なぜかコースをショートカットして出てくるマシンが数台。 普通ショートカットするのは、インフィールドで事故車がコースを塞いでいるか、もしくはクールダウンのときのどちらかである。 事故車はいなかったようだし…。 「あれ? もうチェッカー振られました?」 「かな? じゃあ、ゆっくり行こうか」 というわけでタイムアタックは中止。 ゆっくりコースを周回して戻ってきたのだが…。 「ん? チェッカー振られてませんね…」 「じゃあ、続行」 というわけで、再びフルスロットル。
どこで譲ったものか、迷いながら走っていたが、結局そのまま1周してしまった。
後ろにいた速い車を2台先に行かせたのだが、これを利用し、大江校長の最後のレッスンがスタート。 私がヘアピンに侵入しようとしたら…。 「はい、今前の車はどこ走ってる?」 えっ? 唐突にそう聞かれ、私はヘアピンをコーナリングしつつ、前のマシンを目で追う。 前のマシンは、次の右コーナーに差し掛かっていた。 続いて私のアルトも右コーナーに進入。 「ほらほら、前のマシンは今どこだ?」 目で追うと、S字を抜けているところ。 右コーナーをクリアしつつ、続いて私もS字へ。 「わかる? 走っているときにどこに目線をやるか」 「…!(ぽむ)。コースの先を見るってことですね!」 「正解!」 なるほど、そういう意図で、前のマシンを目で追わせたのである。 「サーキットを走るときは、常にコースの先々を見ておくこと。目の前のコーナーだけに集中しないで、視野は遠くに」 ブレーキングのやり方に続き、これが大江校長の教えPART2である。 コースの先を見るようにすることで、万が一そこで事故があっても冷静に対処できるし、なにより、次に自分がどういうコーナーに飛び込むかを前々から見ておくことで、その攻略法をイメージできる時間的余裕が持てる、ってこと。 特に私のようなサーキット走行が初めての人間には、きわめて有効なアドバイスだ。 そして、このコースの先を見るようにする、という教えが、このあとのジムカーナでの走行にきっちり役立ったのである。
実に密度が濃い、充実したレッスンだった。 このコースを単独で走るのに比べ、学習の早さ、習熟の早さが段違いだっただろう。
その段階で、いよいよ本日のジムカーナのコースが発表された。 説明しておくと、ジムカーナのコースって、走る直前に発表されるのである。 つまり、事前に練習が出来ず、コースを覚えて本番一発勝負、なのである。 …とはいえ、一応第一ヒート、第二ヒートと2回チャンスがあり、その速いほうのタイムで順位を競うことになる。
それを見て、私は絶句した。 「そう、ちなみにコース間違えるとタイム無しだから、ちゃんと覚えてね」 こともなげにそう言うのはkyu氏。 前にも書いたとおり、ジムカーナという競技は、こういうくねくねを間違えずに走ってタイムを出すところが面白さであり、難しさでもあるのだ。 なお、この紙だけを渡されて「はい覚えてね」なんていう冷たい仕打ちはなかった。 ちゃんと『完熟歩行』というイベントがあるのである。 これは、しばらくの間、コースをオープンして、そこを自由に歩ける、というもの。 つまり、自分の足でこのジムカーナで通るルートを歩いてみて、しっかり道を覚えましょう、という時間が取られるのである。 というわけで、実際に歩いて見る。
それにしても、ただでさえ暑いのにコースを延々と歩くのだから、結構体力の消耗が激しい。 疲れ果てたところで、お待ちかねのお昼ご飯の時間である。 桶川名物のカレーライス! このカレーは実は今回のジムカーナの参加費用に含まれているので、参加した人だけが食べられるスペシャルな(?)お昼ご飯なのだ。 毎回、これを楽しみにしている人も多数いるらしい(多分)。 というわけで、暑い中、熱いカレーを頬張る。 「うまい!」 お腹も減ってたし、素晴らしいご馳走に感じられた。 さぁ、腹ごしらえが済んだところで、いよいよジムカーナ競技の開始である。
序盤から相次ぐ波乱、あるいは想像以上の好タイム。 「初めてクラス」のライバルたちの走りを見つつ、私は必死にコースを覚えていた。 全国5千万人のグランツーリスモファンを前にして、ミスコースだけは避けねばならない。 だが、押し寄せる緊張と暑さと眠気が、私から集中力を奪っていく。 そしていよいよ嵐を呼ぶアルトワークスが発進。 生まれて初めてのジムカーナ。必死の走りを繰り広げる私。 だが、走り終えてピットに戻った私に、思いがけない波乱が待っていた。 やはり私は、サーキットに嵐を呼んでしまうのか?
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