『嵐を呼ぶレース参戦記』
| 第四話「嵐を呼ぶ練習走行」 |
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今日の桶川は晴れ。雲ひとつ無い快晴に恵まれるでしょう。 予想最高気温は真夏並み、32度以上です。 アスファルトを溶かすほどの猛烈な暑さとなるでしょう。 特に、クルマにお乗りのドライバーの皆さん、車内の温度は気を抜くと 50度を超えます(笑) 熱中症や、日焼けには十分お気をつけください」
暑いよぉ…。 何でこんなに暑いんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!
フルフェイスのヘルメットをかぶりましょう。 外の気温=暑い。 照りつける太陽=暑い。 フルフェイスのヘルメット=暑い。 レーシンググローブ=暑い。 長袖の上着=暑い。 回るエンジン、燃えるガソリン=熱い。 クルマの窓は全閉=死ぬほど暑い。
つまり、灼熱の車内温度、という思いがけない敵に…。 さすが、名に恥じず“嵐を呼ぶアルトワークス”は、まず私の体内に嵐を呼んだのである。 全身を駆け巡るサウナ並みの熱。シートに座っているだけで、汗が噴き出す。 当然のことながら、眠気なんて一発で吹き飛んでいた。 このクソ暑いところで寝れる人間がいたとしたら、そいつはバカである。 というわけで、睡眠不足ながら眠くはない。…というか寝たら死ぬ(笑) 自慢じゃないが、私は夏でも涼しい北海道出身。 つまり、暑さには弱い。そりゃもう、弱い。これでもかってくらい弱い。 何しろ私の体は北海道バターで出来ていて、気温が28度を超えると溶けてしまうのだ(嘘)。 まぁ気分的には半分くらい溶けつつ、私はその時を待っていた。 コース上では、「初めてクラス」カーナンバー1番〜8番の皆さんが走行中。 私と、今回アルトワークスに同乗してくれるkyu氏は、ピットレーンにて待機中。暑い車内でじっと我慢の子。 普通なら初走行の緊張と不安に襲われそうだが、この暑さのせいで、それどころではない。 7分間の走行時間枠が終わり、「初めてクラス」一組目がピットに戻ってきた。 「初めてクラス」二組目、いよいよコースインである。 さぁ、ここからは、私の初走行の顛末を、動画にて直接その目で見てもらおう。
ウォームアップ、つまり、クルマを暖め、ミッションを暖め、エンジンを暖め、そして車内温度は上昇(笑) 「暑〜〜〜っ」 私の口から、思わず悲鳴じみた声が漏れる。 だが、kyu氏はきわめてクールだった。 「うむ、暑いよ」 悟りきっていらっしゃる。さすがは経験者。 サーキット走行とは、こういうものなのである。みんな耐えているのである。 だが、私は耐えられなかったので、ほんのちょっとだけ、窓を開けた。 多少風が入り、車内温度低下。 余裕が出てきたところで、kyu氏によるコース攻略講座。 それを聞きつつ、私はコースの攻略法を練り、各コーナーのラインをイメージする。 1周目はゆっくり走るので、コースを覚えるには最適、といったところであった。
というか、私にとって“嵐を呼ぶアルトワークス”にフルスロットルをくれてやったのも、これが初めて。 軽量コンパクトなアルトワークスを、水冷直列3気筒SOHCターボのF6Aエンジンがぐいぐい加速させる。 ぶぉぉぉぉぉーん!! エンジンはあっという間にレッドゾーン付近まで吹け上がる。 そして、3速にシフトアップ。 ホームストレートを駆け抜け、すぐに1コーナーに向けてブレーキング。 …ギアは3速のまま。 タイヤを鳴らしつつ(!)、1コーナーをパーシャルスロットルで抜け、短い直線、そしてヘアピンへ。 …ギアは3速のまま(笑) どこで、2速に落としていいのか分からず、ヘアピンにはクラッチを踏んだまま(?)進入。 コーナーの出口が見えたところで、ギアを2速に入れ、クラッチを離し、アクセル全開(笑) ぶぉぉぉーん、キュキュー。 エンジンが吼え、タイヤは鳴る。 「無理すんな、無理すんな」 kyu氏からの指示が飛ぶが、私は別に無理はしてない。 やり方がわかんないだけだ(笑) ちなみに、このとき、アルトの後ろにはスカイライン以下、「初めてクラス」のお歴々が数珠繋ぎ(笑) 私のせいで、すっかり通せんぼ状態である。 「ホームストレートで抜いてもらって」 kyu氏からの指示が飛ぶ。 ああ、そうか、後ろにもクルマがいるんだっけ。 目の前のコーナーの攻略に一杯一杯で、そこまで頭が回っていなかった。 頭を冷やし、一旦落ち着く意味でも、ホームストレートで速度を落とし、速い車にはどんどん先に行ってもらい、私は列の最後尾に。
そのまま、第一コーナー、短い直線、ヘアピン、そしてインフィールドを駆け抜ける。 ギアチェンジが無いって、幸せだ(笑) そう、すでにお分かりのことと思うが、私はヒールアンドトゥが出来ない。 当たり前である。マニュアル車暦1週間の人間が易々とできるようなことではない。 というわけで、これをお読みの読者の中には、ヒールアンドトゥとはなんぞや? という人がいるかもしれないので、この場を借りて説明しよう。
以上。
おっほん(咳払い) ヒールアンドトゥとは、ブレーキングと同時にシフトダウンをしちゃうドライビングテクニックのことである。 自分で出来もしない事を書くのもあれだが、まぁいい。その方法を説明しよう。
1:右足でブレーキを踏む。 なぜ、アクセルを煽る必要があるのか、というと、ギアとエンジンの回転数をあわせないと、うまくギアチェンジが出来ないから。 第一話を思い出して欲しい。あの、悪夢の『ガッコン、ガクガクガク…』事件を。 ギアと速度が合っていない状態クラッチをつないでしまうと、変速ショックで車の挙動がガッコンガッコンしてしまう。 それを避けるため、アクセルを煽って回転数を低い方のギアに合わせておき、その状態でギアチェンジするのだ。 するとスムーズにギアが入り、マシンはガッコンしないのである。 というわけで、サーキットで速く走るためには、絶対に必要なドライビングテクニックなのだが、さて、ではどうしてヒールアンドトゥをすると速く走れるんだろう?
理由1:エンジンブレーキを効かせることが出来るので、短い距離で減速できる。
早くできるようになりたいものだ。
従って、この周も2速のみで走行。 楽でいいのう。 というわけで、コーナーのライン取りに気を遣いつつ丁寧に一周。
当然ギアも3速に。 そのまま1コーナーに侵入しようとしたのだが、ふとバックミラーを見ると、すぐ後ろのイン側にマシンが一台。 (いつの間に追いついたんだ?!) 慌てる私。(アルトが遅いので、あっという間に追いつかれるのである) いないと思っていたのに、後ろに張り付かれて半ばパニック。 んで、とっとと抜いてもらおうと急ブレーキ。 タイヤがロックしかかる(笑)。 当然、13年前のマシンだからABSなんて素敵なものは付いていないのだ。 「危ない、危ない、ストップストップ」 kyu氏は焦る。 私も何とかマシンを制御下におき、kyu氏の指示通り、ゆっくりコーナーの外側を走行。 後ろの車には、イン側から抜いてもらった。 ほっと一安心で、短い直線へ。当然シフトダウンを忘れていたので… ギアは3速のまま(笑) そして悪夢のヘアピン。 私はやっぱりクラッチを踏んだままヘアピンをクリア。 そして、立ち上がりでようやくギアを2速に入れ、アクセルを開け…、たつもりが、ちっとも加速しないし、エンジンが吹け上がらない。 「あれ?」 「…それ4速」 またしてもやってしまった。 3速から、そのままギアを真下に下ろし、4速に入れていたのである。 3速→2速のギアチェンジ、これにて2戦2敗。 そんな事をやってたもんだから、またしても私の後ろが渋滞。 またまたホームストレートで道を譲るわけである。
「全然クリップ(コーナーのクリッピングポイント)に付いてないよ」 この周のkyu氏のアドバイスは以上。 後は黙々と走るべし。 そして後ろがいなかったのでホームストレートは全開。 3速に上げるタイミングが遅く、2速のままエンジンがレッドゾーン突入(笑)
キキキッ、キュキュ、キキュキュキキーッ。 えらい勢いでタイヤが鳴りまくる。 …ギアは3速のまま(笑) そして、3度目の正直とばかり、ヘアピンへ。 やっぱりクラッチを踏んだままヘアピンに進入。 「2速に落とす〜」 「わかんない(笑)」 んで、立ち上がりで急に2速に入れ、アクセルを開け、クラッチをつなぐ。 キュルキュルキュル。 kyu氏が加速でタイヤを鳴らすな、とアドバイスしてくれるが、そんなことは分かっている。 分かっちゃいるけど、出来ないのだ。 「あとねぇ、ステア戻すのが遅い」 ハンドルを思いっきり切り、コーナーをクリア→目の前に道が開ける→しかしハンドルを切ったまま→マシンがさらに曲がり続けようとする→慌ててハンドルを戻す→クルマがヨタヨタする。 ド素人にありがちな、恥ずかしい走りだ。 言われてみればその通り。今後はコースの先を見、マシンの動きを予測し、ステアを素早く戻し、なるべくマシンをまっすぐ走らせるようにしよう。
これにて練習走行1回目は終了。 1周ゆっくり走ってクールダウン。 エンジンを冷やし、頭を冷やし、車内温度も冷やす。 「うぁ〜、暑っつー」 「うん、暑いもんだ」 何故そんなに冷静だ、kyu氏? ともかく、走っているときは無我夢中で気付かなかったが、落ち着いてみると、とにかく汗だくである。 暑くて汗、失敗して汗、焦って汗。 ヘルメットの中は、すっかり汗も滴るいい男である。 何はともあれ、こうして私の初走行が終わった。 ひとまず、マシンを壊さず、事故も起こさなかったので、まずはよしとしよう。 次は、ロングコースでの練習走行だ。
しかし、この日の練習走行はあと一回あるのだ。 そのとき、なんと大江校長が私のアルトワークスに乗って手本を見せてくれたのである。 超一流のプロから私が受けた珠玉のアドバイスとは? そして、助手席に大江校長に乗ってもらい、私は値千金の直接指導を受ける。 全国4千万人のグランツーリスモファンに先駆けて、嵐を呼ぶレーサーが実車に適応していく。
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